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紅姫の鐘音  作者: 梅嘉
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紅姫の誤想



 「……あ、れ?」



 張り詰めた静けさの中、アルベルはハッと我に返った。


 瞬時に辺りを見回す琥珀色(アンバー)の瞳。真紅の絨毯に散らばっていたのは、派手に割れた花瓶や硝子のオブジェ、調度品の数々。高級感溢れる純白のレースカーテンは、見るも無残に千切れ落ちていた。


 ふと、視線を落としたアルベルは自分の手元を見て驚愕する。


 アルベルが床に押さえ付けているのは、重厚な青いローブを纏った初老の男。そのローブの下から覗いていたのは、濃紫の服。


 そして、男の胸元では金色の勲章が静かに煌めていた。


 「閣下ああぁぁぁあああっ!!」


 悲鳴にも近い叫び声と共に、周りにいた衛士達が鬼気迫った表情で倒れた男に駆け寄ってきた。


 呆然としながらも手を放し、アルベルがゆらりと立ち上がれば、その拍子に半ば白目を向いた男の顔があらわになる。


 機械人形のようなカクカクとした動きで顔を上げれば、明るい日差しを一身に浴びたバルコニーが目に入った。大理石で作られたその広さは、民家の広さを裕に越すことだろう。


 そしてそこには、華やかな青いドレスに身を包んだ、金髪碧眼の少女が立っていた。海のごとく深い青い瞳は長い睫毛に縁取られ、陽を受けてきらめくのは見事に結い上げられた白金の髪。同じ女のアルベルも見惚れてしまうほどの美少女だ。

 立ち姿でさえも、美麗な絵姿のような神々しさを放っているが、扇で隠された美しい顔には僅かに苦笑が浮かぶ。


 時、すでに遅し。


 先程の衛士達が華奢な両腕を強引に拘束する。その痛みによって急速に冴えていく意識の中、自分の失態に気付いたアルベルはその赤毛に劣らぬほど、顔を真っ赤に染め上げたのだった。




 ◇




 遠い昔に、世界の覇権を争った五つの国々。

世界最大の大陸にはその中でも、優勢を誇った三国が存在している。




 北西のローセリカ帝国


 東のヴェルダンディア王国


 南のリュミエール公国




 それらは《三大国》とも呼ばれ、和平を結ぶまでの数十年のも長きに渡り、幾度も戦を繰り広げてきた敵国同士でもあった。


 不可侵を念頭に設けられた和平締結後、国有軍の縮小化を余儀なくされた各国は、競うように自国の防衛を高めあうこととなる。


 その三大国の一つにして、いにしえより存在する王家によって治められ、伝統と格式を重んじる貴族の国・ヴェルダンディア。


 この国は他国から、向かうところ敵無しと称されるほどの防衛機関を有していた。


 王家直轄の特別治安維持機関《王国警衛》


 国の秩序と平穏のため力を奮う、黒き衣を(まと)った最精鋭集団である。




 『紅姫(くれないひめ)鐘音(しょうおん)』の連載が始まりました。

お読みになった皆様に、楽しんで頂けましたら幸いです。

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