…………………ギリっす
「ゴボッ!…………ゴボゴボゴボゴボ」
あまりの衝撃に男が息を吹き返す。目がパチリと開いたが、次の瞬間、その目が血走る。それもそうだ。起きてみると自分は水の中にいるのだ。まともに息なんか出来っこない。
バシャッ!バシャバシャバシャバシャ!
男は訳も分からず暴れまわる。この苦しい状況を何とか抜け出したくて。
ザッッッパーーーン!!!!!!!!!!!!!
男が勢いよく水面から顔を出す。その衝撃と全力で男を引っ張り上げようとしていた疲れから、誠三は軽く吹き飛ばされた。
「ハァハァハァハァ!ハァハァハァ……………ハァハァハァ」
男は顔を拭いながら息を整える。時折、何処だここはとばかりに周りをキョロキョロと見渡す。
「すいません!大丈夫ですか!?」
男が力なく呆然と自分を見ていた誠三に声をかける。
「……………こっちのセリフです」
あまりにも早く我を取り戻した男に、誠三は少し呆れたように返した。
「…………そうですよね…………いや~驚きました
全然泳ぐことが出来なくて…………自分にがっかりです」
男は笑みを見せる余裕まである。
「泳げないのに入ったんですか?」
「はい!」
「…………………………はぁ」
「人生で一度くらいはあるじゃないですか?滝に打たれてみたいなって。テレビとかで見ても実際はどうなの?みたいな。大袈裟にやってんじゃないの?みたいな」
「……………………へぇ」
「いやぁ~、滝って怖い!最初はね、最初は結構立ち向かえていたと思うんですよ。いい感じに、その水を受け流す感じ?上から来るのを上手く体を硬直させて当たる場所を少しでも少なくしようと思って。でも一瞬でしたね。一瞬体のバランスを崩した瞬間もう、あれよあれよという間に水が岩のようにのし掛かってきて、もうそのままザッパーンですよ。
泳げないから何とか浮いていようともがいてたんすけど、段々、力がなくなってきて、もう駄目だって沈んでいったんですよ」
「……………………ふーん」
「ちょっと!なんすかその冷たい反応!人が生きることを諦めた瞬間の話をしてるんすよ?」
「……………いや……………すごい軽く話してらっしゃるから…………」
「後悔してません?」
「は?」
「僕を助けたこと後悔してません?命懸けになってせっかく助けたのに出てきた奴こんなんかよみたいな?」
「……………………………………………ギリ…………してないっす」
「ちょっと!ギリって!」
「上がりませんか?」
「………ヘ?」
「水に浮きながらする話じゃないでしょ。見た感じ元気そうだし」
「そ、そうですね。上がりますか」
「あ!」
「どうしました?」
「兄貴!!」




