主発の日の朝
澄んだ朝の空気が街を包み、太陽がゆっくりと昇り始めていた。セナたちはすでに支度を済ませ、ギルドへと足を運んでいた。
「おう、早ぇな!」
ギルドの扉を開けると、クロウフェルが笑いながら待っていた。その隣にはミアが手を振っている。
「おはようございます、セナ君、キティンちゃん、カナト君」
「おはよう、ミアさん」
「おはよ!」
三人がそれぞれ挨拶すると、ミアが手元の荷物を指さした。
「今日は出発の日ですよね。クロウフェルさんが準備してくださった荷物があります」
「おう、旅支度ってのは何かと大変だからな。しっかり揃えといたぞ!」
クロウフェルがどっしりとした布袋を差し出す。
「これは当分の食料と水だ。それからこっちは――」
別の袋を持ち上げて見せる。
「荷物袋だ。丈夫で軽くて、少々の衝撃じゃ壊れねぇようにしてある」
「ありがとうございます!」
セナが礼を言うと、クロウフェルはさらにもう一つ袋を取り出した。
「それと、これが地図だ。ビスト大陸全体を描いたもんでな、街道や村も全部載ってる。特にオススメの街や場所には印を付けといたから、困ったらそこを目指せ」
セナは地図を広げ、丁寧な書き込みに感心する。赤い印がつけられている場所がいくつかあり、横には短いメモも添えられていた。
「ここは安全な宿がある」「ここは腕の立つ鍛冶屋がいる」「この村は食料が安い」
クロウフェルの心遣いが伝わってきて、セナの胸が熱くなる。
「クロウフェルさん……本当にありがとうございます」
「気にすんな。お前たちが無事に戻ってくるのが、一番の礼だ」
クロウフェルは豪快に笑い、セナの肩を叩く。
ミアも優しく微笑んで、セナたちに小さな袋を渡す。
「これは応急処置用の薬です。旅の途中で何があるかわからないでしょう?」
「ミアさん……助かります」
「ふふ、元気で帰ってきてくださいね」
準備を整えた三人が街の門へと向かうと、そこには大勢の人々が待っていた。
リリーが真っ先に駆け寄ってくる。
「セナ君、キティン、カナトさん! 気をつけて行くのよ!」
「お姉ちゃん……ありがとう」
リリーは笑顔を浮かべながらも、どこか寂しそうに目を伏せる。
「無理しちゃダメだからね。怪我したらすぐに戻ってきなさい」
「うん、わかってる!」
キティンが元気よく答えると、ブレンネンデスが腕を組んでにやりと笑った。
「ったく、若い者は元気があるな」
「ブレンネンデスさん……」
「いいか、命を大事にしろ。強くなるのは結構だが、無茶すんなよ」
力強い声に、セナはしっかりと頷いた。
カサブランカも静かに歩み寄り、冷静な声で告げる。
「覚悟を決めた以上、後戻りはできないわよ。でも、あなたたちなら大丈夫」
「カサブランカさん……ありがとうございます」
その後ろから、アキレアもゆっくりと歩いてきた。
「セナ君、キティン、カナトさん……また無事で会える日を楽しみにしているよ。焦らず、自分の歩幅で進みなさい」
「はい!」
三人が声を揃えて返事をすると、クロウフェルがまた豪快に笑い声を上げた。
「おう、行け若ぇの! オレたちはここで待ってっからよ!」
周りの人々もそれに応じて声を上げ、応援の声が広がる。
「気をつけろよ!」
「また戻ってこいよ!」
「お前たちならきっとやれる!」
温かい声援に包まれ、セナたちは力強く頷きあった。
「……行こう!」
セナが一歩を踏み出すと、キティンとカナトも続く。
「じゃあね! 絶対に帰ってくるから!」
キティンが笑顔で手を振り、カナトも軽く手を挙げて応えた。
背中に感じる温かさと期待感を胸に、三人はゆっくりと街道を歩き出す。
冒険の旅が、今ここから始まった。
それぞれの目標と覚悟を胸に、強さを求めて――




