己の力
ドォンッ!!
ヴァルターが再び、パルシャンウルフの猛烈な攻撃に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ヴァルターッ!」
クロウフェルの叫びが空を切るが、その声も届かない。
ウルフの足元に倒れたヴァルターは、もう動くことができない。目を開けたまま、意識は完全に失われていた。
「くっ、硬すぎる……! このままじゃ、みんな――」
クロウフェルが悔しげに唸る。足元はふらつき、かろうじて立ち上がったものの、次の瞬間、ウルフはその巨大な爪でクロウフェルを一撃で吹き飛ばした。
バッ!!
クロウフェルが空中を飛ぶように弾け、地面に激しく叩きつけられた。手に持っていた斧は吹き飛び、全身が無防備に晒された。だが、彼の意識はまだ残っていた。
「く……う、動けない……」
呻くように吐き出された言葉に、彼の体が震えている。
「おい、クロウフェル! 大丈夫か?」
ブレンネンデスが近寄ろうとするが、すぐにその足を止めた。
ウルフが再び目を光らせ、さらに激しく吠えた。
その時、キティンの前髪が風で浮き、隠れていた金色の瞳に太陽の光が当たる、次の瞬間——金色の目が輝いた。
ゴォォォッ……!
突如として風圧が吹き荒れ、キティンの身体を包み込むように旋風が起きた。まるで獣のように荒々しいエネルギーが身体中を駆け巡り、腕に力がみなぎった。
その感覚は彼女にとって不安でもあり、強烈に惹きつけられるものでもあった。
「また…この力…」
キティンの腕に、まるで獣の力が宿ったように、筋肉が膨れ上がり、爪のような鋭い突起が指先に現れる。その姿は、人間を超えた何か、獣のような存在に近づいていった。
「セナが言ってくれた…この力は私の一部なの……」
キティンは自分に言い聞かせるように呟いた。
「みんなのためにも、私が頑張らなきゃ……!」
その言葉に、ブレンネンデスが力強く頷き、炎を纏った剣を握り直した。
「俺も行くぞ、キティン!」
ブレンネンデスは気合を入れてウルフに向かって駆け出し、キティンもその後に続いた。
「うおおおおおおっ!」
しかし、その前に立ちはだかるのは圧倒的な力を持ったパルシャンウルフ。
だが、二人は恐れることなく、一気に距離を詰めていった。
その一方で、アキレアは倒れた仲間たちのところへ駆け寄り、素早く治療を始めていた。
「しっかり、みんな……」
彼の手がヴァルター、クロウフェル、そして他の冒険者たちに触れると、瞬時にその傷が癒され、意識が戻り始める。だが、その治療も限界が近づいていた。
「急がないと……!」
アキレアは額に汗を浮かべながら、治療を続けた。だが、周囲の状況は一刻一刻と悪化していった。
その時、セナはキティンとブレンネンデスが立ち向かう姿を見つめながら、自分の胸の奥で何かが爆発しそうな感覚を覚えた。
その怒りは、ただの感情ではない。怒りの源は、仲間が倒されていく光景、無力さを感じた自分自身への悔しさ、そして何より——失われた命に対する怒りだった。
「絶対に許さない……!!」
セナの目が鋭く光り、その瞳に宿った怒りの炎が周囲を包み込んだ。
「これが、俺の力だ!!」
その瞬間、セナの周囲の空気が一変した。まるでその場に集まる魔力が逆流し、膨大なエネルギーが彼に集まるのを感じた。地面が揺れ、木々が揺れ、空気が震えた。
セナの体から放たれる圧倒的なエネルギーに、周囲の空気が膨張し、衝撃波が放たれる。風が荒れ狂い、木々が倒れ、周囲の空間がひときわ暗くなる。
「何だ、これは……!?」
アキレアが顔をしかめ、気を失いかけていたクロウフェルですらその異常な現象に気づく。
だが、セナは目を閉じて、その力に身を委ねるように深く息を吸い込んだ。
「俺の仲間を、もうこれ以上傷つけさせない……!」
その言葉が、力を引き出した。セナの背後に広がる魔力の渦が、渦巻きながら彼の体に一層の力を与えていく。
周囲の魔力が増大し、空気の質が変化する中、セナは言葉を力に変え、立ち上がった。
「こいつを……倒す!!」
その時、全ての魔力が爆発的に増大し、戦場全体が震えるような圧力を感じる。その圧力がウルフの動きを一瞬止めさせ、キティンとブレンネンデスの攻撃が、ウルフの隙をつく。




