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船讐  -空飛ぶ船から始まった物語-  作者: 梅犬丸
第一部 船編・獣国編
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己の力

ドォンッ!!

ヴァルターが再び、パルシャンウルフの猛烈な攻撃に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「ヴァルターッ!」

クロウフェルの叫びが空を切るが、その声も届かない。


ウルフの足元に倒れたヴァルターは、もう動くことができない。目を開けたまま、意識は完全に失われていた。


「くっ、硬すぎる……! このままじゃ、みんな――」

クロウフェルが悔しげに唸る。足元はふらつき、かろうじて立ち上がったものの、次の瞬間、ウルフはその巨大な爪でクロウフェルを一撃で吹き飛ばした。


バッ!!

クロウフェルが空中を飛ぶように弾け、地面に激しく叩きつけられた。手に持っていた斧は吹き飛び、全身が無防備に晒された。だが、彼の意識はまだ残っていた。

「く……う、動けない……」

呻くように吐き出された言葉に、彼の体が震えている。


「おい、クロウフェル! 大丈夫か?」

ブレンネンデスが近寄ろうとするが、すぐにその足を止めた。

ウルフが再び目を光らせ、さらに激しく吠えた。


その時、キティンの前髪が風で浮き、隠れていた金色の瞳に太陽の光が当たる、次の瞬間——金色の目が輝いた。


ゴォォォッ……!

突如として風圧が吹き荒れ、キティンの身体を包み込むように旋風が起きた。まるで獣のように荒々しいエネルギーが身体中を駆け巡り、腕に力がみなぎった。


その感覚は彼女にとって不安でもあり、強烈に惹きつけられるものでもあった。

「また…この力…」


キティンの腕に、まるで獣の力が宿ったように、筋肉が膨れ上がり、爪のような鋭い突起が指先に現れる。その姿は、人間を超えた何か、獣のような存在に近づいていった。


「セナが言ってくれた…この力は私の一部なの……」

キティンは自分に言い聞かせるように呟いた。


「みんなのためにも、私が頑張らなきゃ……!」


その言葉に、ブレンネンデスが力強く頷き、炎を纏った剣を握り直した。

「俺も行くぞ、キティン!」

ブレンネンデスは気合を入れてウルフに向かって駆け出し、キティンもその後に続いた。

「うおおおおおおっ!」


しかし、その前に立ちはだかるのは圧倒的な力を持ったパルシャンウルフ。

だが、二人は恐れることなく、一気に距離を詰めていった。


その一方で、アキレアは倒れた仲間たちのところへ駆け寄り、素早く治療を始めていた。

「しっかり、みんな……」

彼の手がヴァルター、クロウフェル、そして他の冒険者たちに触れると、瞬時にその傷が癒され、意識が戻り始める。だが、その治療も限界が近づいていた。


「急がないと……!」

アキレアは額に汗を浮かべながら、治療を続けた。だが、周囲の状況は一刻一刻と悪化していった。


その時、セナはキティンとブレンネンデスが立ち向かう姿を見つめながら、自分の胸の奥で何かが爆発しそうな感覚を覚えた。

その怒りは、ただの感情ではない。怒りの源は、仲間が倒されていく光景、無力さを感じた自分自身への悔しさ、そして何より——失われた命に対する怒りだった。


「絶対に許さない……!!」


セナの目が鋭く光り、その瞳に宿った怒りの炎が周囲を包み込んだ。

「これが、俺の力だ!!」


その瞬間、セナの周囲の空気が一変した。まるでその場に集まる魔力が逆流し、膨大なエネルギーが彼に集まるのを感じた。地面が揺れ、木々が揺れ、空気が震えた。


セナの体から放たれる圧倒的なエネルギーに、周囲の空気が膨張し、衝撃波が放たれる。風が荒れ狂い、木々が倒れ、周囲の空間がひときわ暗くなる。

「何だ、これは……!?」

アキレアが顔をしかめ、気を失いかけていたクロウフェルですらその異常な現象に気づく。


だが、セナは目を閉じて、その力に身を委ねるように深く息を吸い込んだ。

「俺の仲間を、もうこれ以上傷つけさせない……!」


その言葉が、力を引き出した。セナの背後に広がる魔力の渦が、渦巻きながら彼の体に一層の力を与えていく。

周囲の魔力が増大し、空気の質が変化する中、セナは言葉を力に変え、立ち上がった。


「こいつを……倒す!!」


その時、全ての魔力が爆発的に増大し、戦場全体が震えるような圧力を感じる。その圧力がウルフの動きを一瞬止めさせ、キティンとブレンネンデスの攻撃が、ウルフの隙をつく。


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