セナの誕生日2
朝食を終え、皆で片付けをしていると、家の扉が軽くノックされた。
「誰だ?」
セナが扉を開けると、そこにはカナトが立っていた。
「よう、誕生日の男。飯はもう食ったか?」
「……まぁな。なんで知ってんだよ?」
「キティンに聞いた」
カナトは当然のように言って、家の中をちらりと覗き込む。
「へぇ、結構賑やかだったんだな。で、せっかくだし街でも適当に歩かねぇか?」
「別にいいけど……目的は?」
「いや、特にない。ただの暇つぶしだ」
「ああ、いつも通りか」
セナは肩をすくめながら、マフラーを巻き直して外へ出る。
「行ってきまーす」
軽く手を振ると、キティンが
「楽しんできてね!」と笑顔で見送った。
昼時の街は活気に満ちていて、人々が行き交い、露店からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
「で、どこ行くんだよ」
「適当に歩いて、適当に食う。それでいいだろ?」
「お前ほんと適当だよな……」
「誕生日くらい気楽にしろよ」
カナトはそう言いながら、ふと目に入ったカフェへと足を向けた。
「ここ、アイスが美味いらしい」
「寒くね?」
「食いたい時に食う、それが俺の流儀」
「なんだそりゃ」
呆れながらも、セナはカナトに付き合い、店に入ることにした。
カフェでアイス
店の中は暖かく、窓際の席に座ると、すぐに店員が注文を取りに来た。
「俺はチョコレートのアイスで」
「じゃあ、俺は……ミルクで」
少しして運ばれてきたアイスを一口食べると、
セナは思わず呟いた
「うまっ」
「だろ?」
カナトは得意げに笑い、スプーンを口に運ぶ。
「にしても、お前が誕生日とかちょっと意外だよな」
「どういう意味だよ」
「なんか……あんまりそういうの気にしてなさそうだから」
「まあ、あんまり実感ないけどな」
セナはスプーンをくるくる回しながら、窓の外を眺めた。
「でも……祝われるのって、悪くないな」
ぼそっと呟くと、
「そりゃそうだ」
カナトは軽く笑った。
陽が傾き始める頃、二人はカナトの泊まっている宿へ向かった。
「で、どうするんだ?」
「適当に遊ぶ」
「だからその”適当”が広すぎんだよ」
カナトは笑いながら、部屋の奥から木製のカードセットを取り出した。
「これ、宿の奴に教えてもらったんだけど、やってみるか?」
「カードゲーム?」
「そう。簡単だから、すぐ覚えられるぞ」
「へぇ……まあ、やってみるか」
適当に遊びながら、たわいもない会話を交わす。
「そういや、プレゼントとか貰ったのか?」
「ああ、キティンにマフラー貰った」
「へぇ……お前、ああいうのちゃんと喜べるんだな」
「なんだよ、それ」
「いや、なんとなく」
カナトはにやりと笑い、カードを切った。
「ほら、俺の勝ち」
「……ちっ」
気づけば、外はすっかり暗くなっていた。
「そろそろ帰るか」
「そうだな」
宿を出ると、冷たい夜風が吹いていた。セナは自然と、首元のマフラーをぎゅっと握る。
「……また遊ぼうぜ」
「おう」
軽く拳をぶつけ合い、セナはキティンの家へと帰った。
家の扉を開けると、すぐに温かい空気と食欲をそそる香りが迎えてくれた。
「おかえり、セナ!」
キティンがぱっと顔を上げて駆け寄ってくる。
「おう、ただいま」
「ちょうど晩ご飯できたとこ!今日は特別だからね、いっぱい食べてよ!」
「特別?」
セナが首を傾げると、リリーがくすっと笑った。
「セナの誕生日だから、ちょっと豪華なご飯にしたの」
「……そうなのか」
言われて初めて、テーブルの上に並ぶ料理に目を向けた。普段よりも品数が多く、焼き立ての肉料理やスープ、たっぷりの野菜が彩りよく盛られている。
「すげぇ……」
思わず小さく呟くと、キティンが得意げに胸を張る。
「でしょ!私も手伝ったんだから!」
「キティン、野菜を切っただけでしょ」
「う……うるさいな!それだって立派な手伝いだもん!」
リリーに指摘され、キティンが頬を膨らませる。そのやり取りを見て、セナは自然と口元を緩めた。
「よし、じゃあ食べよっか」
キティンが席につき、皆もそれに倣って椅子を引いた。
「じゃあ、いただきます!」
「いただきます」
フォークを手に取り、まずは目の前の肉料理を一口頬張る。じゅわっと広がる肉汁と、程よく効いた香辛料の風味が口いっぱいに広がった。
「……うまい」
「でしょ?今日は奮発したんだから!」
キティンが自慢げに笑う。
「確かに、これはいい肉だな」
「ふふ、キティンがセナのために選んだんだよ」
「えっ」
セナが驚いてキティンを見ると、彼女は少し照れくさそうに顔をそむけた。
「……せっかくだし、好きなもの食べてもらいたかっただけ」
「そっか……ありがとな」
そう言うと、
「べ、別に!」
キティンそう言ってそっぽを向く。その様子にリリーが小さく笑った。
食事は賑やかに進んでいく。カサブランカはセナの皿にさりげなく料理を取り分け、リリーはいつものように優しく場をまとめる。ブレンネンデスは食べながらも「もっと食べろ!」
とセナの皿に料理を押し込み、セナは苦笑しながらもそれを受け入れた。
「ふぅ……さすがに食いすぎた」
皿がほぼ空になり、セナは軽く息を吐く。
「じゃあ、最後はこれね」
キティンが小さなケーキを運んできた。
「おお……」
「さすがに大きいのは無理だったから、小さいのでごめんね」
「いや、十分だろ」
ロウソクはないが、それでも特別感は十分だった。
「誕生日、おめでとう、セナ」
キティンの言葉に、他のみんなも勢いよく頷く。
「おめでとう!これからもよろしくね!」
「……ああ」
照れくささと、じんわりとした温かさが胸に広がる。
「じゃ、早く食べよ!私も食べる!」
「お前もかよ」
そんなやり取りをしながら、小さなケーキを皆で分け合う。
甘さと温かさが、誕生日の終わりを穏やかに彩っていた。




