セナの誕生日
ここからはキティン視点です
キティンは、毎晩セナが眠った後、赤いマフラーを編み続けていた。細かい編み目に想いを込め、一針一針、心を込めて仕上げていく。そしてついに――
「やった!遂に完成したわ!」
キティンは喜びの声を上げ、満足げにマフラーを抱きしめた。ふわりと柔らかく、温かみのある手触り。セナのことを思いながら作り続けたこのマフラーには、彼女の気持ちがたくさん詰まっていた。
「よし!」
意気揚々と立ち上がったキティンは、マフラーを手に家を飛び出し、カサブランカのもとへと駆け込んだ。
「お母さん!明日の朝、私セナを起こして誕生日プレゼントを渡したいの!だから、このマフラーを庭の木の裏の箱に入れておいてくれない?」
キティンは少し頬を赤らめながら頼んだ。するとカサブランカは、穏やかに微笑みながら頷く。
「いいわよ、ちゃんと用意しておくから安心しなさい」
「ありがとう、お母さん!」
キティンは嬉しそうに笑い、明日の朝を思い浮かべながら眠りについた――。
ここからはセナ視点
その頃、セナは夢の中でキファの訓練を終えていた。
霧がかった空間の中、セナは汗を拭いながら息を整える。キファは、いつも通り何かを考えているような笑顔でこちらへと歩み寄ってきた。
「いやぁ、まぁね。かなり強くやったと思うよ。僕も嬉しいよ、ここまで強くなるなんて」
その言葉に、セナは少し誇らしげに胸を張った。しかし、その表情にはまだ曇りが残っている。
「確かに、自分でも前よりはかなり戦えるようになったと思う。でも……あのウルフには、どう足掻いても勝てない」
セナが悩ましげに呟くと、キファはふっと笑い、
パシッ!
「いったぁ!何すんだよ!」
額をデコピンされたセナは、思わず顔をしかめる。
「一つ言うよ」
キファは真剣な表情に変わり、静かに語りかけた。
「あのウルフと再び戦うつもりなら、多くの仲間を連れて行った方がいいよ。少なくとも、君が知っている中で一番強い人を。まあ、これが今日君にできる最後の助言かな?」
「……」
「君も知ってるでしょ?ギルドの人たちが明後日、ウルフ討伐に行くって。何としても説得して、ブレンネンデスさんたちを連れて行った方がいいよ後今日で訓練は終了まぁ君が新たに力を解放させたりしたらまた僕のいるこの世界に来るかもね!」
キファの言葉が脳に深く刻まれる――そして、視界がぼやけ、意識が遠のいた。
誕生日の朝
「セナ!」
聞き慣れた声が響き、セナはまどろみの中でゆっくりと目を開けた。目の前には、仁王立ちするキティンの姿があった。しかし、今日は何かが違う。
「……んだよ、朝からやけに元気じゃねぇか」
「今日はセナの誕生日でしょ?」
キティンは少し頬を赤らめながら、ちらっと視線を逸らす。
「早く起きて、外に来てくれないかしら……」
どこか恥ずかしそうにしながら、それでもしっかりと言葉を紡ぐ。
「……誕生日?」
セナは一瞬、ぼんやりとした頭で考えたが、すぐに思い出した。
「……あ、そっか。今日か」
まだ少し眠気の残る体を起こし、ゆっくりとベッドから立ち上がる。
「外って……どこに行くんだよ?」
「いいから早く!」
キティンはじれったそうに腕を組み、セナを急かす。
「わかったよ、わかった。行けばいいんだろ?」
少し文句を言いながらも、セナは服を整えて外へ向かう。
家の扉を開けると、澄んだ朝の空気が肌を撫でた。庭の方へと歩いていくと、そこには大きな木が立っていた。
「ここに来て」
キティンが指さしたのは、木の裏側。セナが訝しげに回り込むと、そこには小さな箱が置かれていた。
「……これ、何だ?」
「開けてみればわかるわよ」
少し得意げな表情を浮かべるキティン。セナは不思議そうにしながらも箱を開ける。
中に入っていたのは、丁寧に折りたたまれた赤いマフラー。
「これ……」
セナが手に取ると、柔らかく、温かな手触りが指に伝わった。思わず、そっと頬に当てる。
「キティン、これ……」
「誕生日プレゼントよ。ずっと、セナのために編んでたの」
キティンは少し照れながら、でもどこか誇らしげに言った。
「……!」
セナは言葉を失った。何かを言おうとして、しかしうまく言葉にならない。
「……いいのか、これ……俺なんかに」
「何言ってんのよ、当たり前でしょ?セナのために作ったんだから」
キティンは呆れたように笑った。
「……そうか」
セナはふっと笑い、マフラーをそっと首に巻いた。
「……すげぇ、あったかい」
「でしょ?」
「……ありがとう」
短い言葉だった。しかし、その一言に込められた思いは深い。
キティンは満足そうに微笑み、セナは少し気恥ずかしそうに視線を逸らした。
セナは、首に巻かれた赤いマフラーを指でなぞりながら、まだ少し照れくさそうにキティンを見た。
「……本当に、ありがとうな」
「ふふっ、どういたしまして」
キティンは満足げに笑い、どこか誇らしげだった。
すると、不意に家の方から誰かが近づいてくる音がした。
「セナ君、おめでとう!」
元気な声と共に、4つの影が駆け寄ってくる。リリーだった。
「え?」
「誕生日おめでとう、セナ君!」
リリーは手を後ろに隠したまま、少しもじもじしている。
「これ、私たちからのプレゼント!」
そう言ってリリーが差し出したのは、小さな布袋だった。セナが受け取り、中を覗くと中には銀色のペンダントが入っていた。シンプルなデザインだが、中心には小さな宝石が埋め込まれている。入っていた。
「これは、うちの家系に伝わるお守りよ。持っていると、厄災を遠ざけるって言われているの」
「……そんな大事なもの、俺がもらっていいのか?」
「いいのよ。あなたも家族のようなものだから」
カサブランカは優しく微笑む。セナはしばらくペンダントを見つめていたが、やがてそっと手に取った。
「……ありがとう」
胸にかけると、どこか安心感が広がる。
「さて、せっかくの誕生日なんだし、朝飯も豪華にしないとね」
カサブランカが笑いながら言うと、リリーが嬉しそうに手を挙げた。
「お母さんと一緒に作ったんだよ!キティン達もたくさん食べなさいよ!」
「おお、それは楽しみだな」
セナは赤いマフラーを少し握りながら、改めて周囲を見渡した。自分のために準備してくれた朝食、心のこもったプレゼント、そして温かい祝福の言葉。
「……なんか、すげぇな」
「当たり前でしょ?セナの誕生日なんだから」
キティンが少し笑って言う。
「……そうか」
セナはふっと笑い、静かに頷いた。
こうして、セナの誕生日は温かく迎えられたのだった。




