明日からに備えて
東の空が、静かに朱へと染まり始めていた。
カナトが軽く腕を回しながら、ふと呟く。
「そろそろ宿に戻るが、お前たちはどうする?」
セナとキティンは視線を交わし、ひそひそと短く相談する。
「カナトも朝の修行に呼ぶのはどうかしら?」
キティンの提案に、セナも少し考えたあと、ゆっくりと頷いた。
「それも悪くねぇな。ついでに街の地理も覚えてもらった方がいいし。」
キティンがカナトに、自分の家の場所を教える。カナトは軽く頷き、夜風に吹かれながら空を仰いだ。
「よし、じゃあ朝はそっちに向かう。」
三人はそれぞれの帰る道を歩き出した
遠ざかる足音が夜の町の賑わいにかき消された
キティンたちは家に着いた。
扉を開けると、ふわっとあたたかい空気が流れ込んでくる。そこには、ブレンネンデスの豪快な笑顔があった。
「おかえり!お前はもうパルシャンウルフの噂を聞いたか? ま、キティンが帰ってきたときに追いかけられた個体は、お前たちが遭遇したやつと同じだろうがなぁ!」
彼は腕を組みながら続ける。
「まぁ、匂いさえ覚えられてなければ狙われることはねぇ。安心しろ!」
そこへ、アキレアも家の前まで出てきて、少し呆れたように言った。
「はいはい、とにかく疲れてるだろうし、飯でも食って風呂に入って、さっさと寝な。まずは元気を取り戻しなさい」
その言葉に、セナとキティンは顔を見合わせ、軽く笑った。
家の中へ入ると、食欲をそそる香りが漂ってくる。テーブルの上にはすでに料理が並べられていた。
焼きたてのパンの香ばしい匂い、じゅわっと肉汁のあふれるロースト肉。バターソースがかかった蒸し野菜に、器から湯気を立てるクリーミーなポタージュ。
セナは椅子に腰を下ろし、大きく息をつく。キティンも隣に座り、パンをちぎりながら小さく笑った。
「こういう飯、ゆっくり食えるの久々かも」
セナがぼそっと呟くと、ブレンネンデスが腕を組みながら豪快に笑う。
「たっぷり食え! 朝の修行に備えて、腹いっぱいにしとけ!」
「まったく……まずは体力回復が先でしょ」
アキレアが苦笑しながら、スープをよそってくれる。
セナとキティンは顔を見合わせ、スプーンを手に取る。湯気の立つスープをすくって口に運ぶと、じんわりと体に染み渡るあたたかさに、思わず肩の力が抜けた。
「……うまい」
そう呟くと、キティンも笑いながら頷いた。
キティンとリリーとカサブランカが先にお風呂に入った
ここからはキティン目線です
湯船に浸かりながら、キティンはふと顔を赤くして、少しだけ視線を逸らした。
「な、なによ。なんでそんなにニヤニヤしてるのよ、リリー?」
リリーはにやりと笑いながら、キティンに近づく。
「おやおや、キティン。そんな顔をして、セナのことを気にしてるんじゃないの?」
キティンは驚いたように目を見開く。
「な、なんでそんなこと言うのよ!別にそんなことないって!」
カサブランカが横から、静かな声で加わった。
「ふふ、リリーに言われる前に気づきなさい。あんた、セナのことを気にしてるんでしょ?」
キティンは顔を真っ赤にし、湯船の縁をつかんだまま震えるように言った。
「そ、そんなことないわよ!ただ、なんか最近ちょっと……あいつが気になってるだけよ!」
リリーがふふっと笑って肩をすくめる。
「ほら、認めちゃったじゃない。なんだかんだ言って、セナに対して気になるところがあるんでしょ?」
「う、うるさいわね!」
キティンは照れ隠しに湯をかき混ぜ、顔をさらに赤くした。
カサブランカは優しく微笑んで、肩を軽く叩く。
「無理して隠さなくてもいいのよ、セナのことを心配してるし、気になってるんでしょ?」
キティンはしばらく黙って湯船に沈んだ。そこにリリーが軽く突っ込む。
「だって、セナ君って魔法の適正もすごいしあのレベルでお父さんが驚くレベルの動き更に優しいところも増えてきたし、キティンも気になるのは当然じゃない?」
「ち、ちがうもん!そんなんじゃないってば!」
キティンは手を振りながら必死に否定したが、顔が真っ赤で言い訳にも力が入らない。
リリーとカサブランカは、そんなキティンの様子を見て、満足げに笑った。
「ふふ、これからが楽しみだわ」
「うん、今後の展開が気になるわね!昔の私たちみたい」
リリーとカサブランカは楽しそうに微笑み合い、キティンは照れながら湯船に沈んでいった。
ここからセナ目線に戻ります
一方その頃セナ達は
キティンたちがお風呂に入っている間、ブレンネンデスとアキレア、そしてセナはテーブルに座っていた。
「セナ、お前、キティンのことどう思ってるんだ?」
アキレアが、何気ない顔で問いかけてきた。その言葉に、セナは一瞬、言葉を詰まらせた。
「別に、なんでもないっすよ。」
セナは視線をそらして、少し不機嫌そうに答える。
ブレンネンデスがニヤリと笑う。
「なんだ、照れてるのか?」
「照れてないっすよ。」
セナは眉をひそめて答えたが、内心ではその質問に少し動揺していた。
「でも、あんなに気を使ってるってことは、少しは気になってるんだろ?」
アキレアが続ける。
セナは肩をすくめて、ため息をついた。
「気にしてるわけないっすよ。ただ、あいつが気を抜くと危なっかしいから、つい気をつけてるだけっす。」
ブレンネンデスが笑いながら言う。
「本当にそれだけか?」
セナはしばらく黙って、カップを手に取り、少し冷たい水を飲んだ。
「……まあ、気になるっちゃ気になるっすけど、あいつのことなんか。」
その言葉に、アキレアとブレンネンデスはお互いに顔を見合わせて、クスっと笑った。
「お前、やっぱりちょっと気にしてるんだな。」
「別に!」
セナは顔を赤くしながら、怒ったように答えたが、その表情にはどこか照れた様子があった。
「ふふ、まあ、認めたならそれでいいさ。」
ブレンネンデスが笑いながら肩を叩いた。
セナはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと呟いた。
「でも、あいつにはあんまり心配かけたくないっすね。」
その一言に、アキレアとブレンネンデスは少し黙り、何も言わなかった。
その時、キティンたちが風呂から上がる音が聞こえてきた。セナは慌てて顔を隠し、席を立とうとしたが、アキレアがからかうように言った。
「おいおい、そんなに慌てるなよ。どうせ、今度はキティンにどう思ってるか聞かれるぞ?」
セナは言葉を返すことなく、ただ無言で立ち上がった。
セナ達は女性チームがお風呂から上がった事をしっかりと確認しお風呂に向かった
シュッ
ガタァン
大きなお風呂場の扉が開かれた。
セナたちがお風呂に入ると、湯船に身を沈めて、しばらくその温かさを楽しんだ。
「ふぅ、やっぱりお風呂はいいな…」とセナがリラックスした表情を浮かべる。
「うん、ようやく落ち着けるな」とアキレアも肩を回しながら、湯に浸かった。
ブレンネンデスは軽く湯をかき回しながら、「しばらくここでのんびりしようぜ」と言った。
三人はしばらく、静かな時間を楽しんだ。
セナは一番早くに上がりすぐに髪を乾かしキティンのある部屋に戻った




