それぞれの目標
ギルドの食堂に入ると、昼時を過ぎていたせいか、そこまで混雑していなかった。木製のテーブルが並ぶ広い空間には、ところどころで酒を飲む冒険者たちの笑い声が響いている。
「適当に座れよ。」
セナがそう言って空いている席に腰を下ろすと、カナトも無造作に椅子を引いてどかっと座る。キティンはすぐに店員を呼び、適当な料理を頼んだ。
「で、カナト。お前、本当に隣の大陸から来たのか?」
セナが向かいのカナトをまじまじと見ながら尋ねると、カナトは軽く肩をすくめる。
「ああ、本当だ。こっちの地理も人もよくわかんねえしな。まあ、鍛治屋の家に生まれて、ずっと鉄と向き合って生きてきたんだけど……色々あって、流れ着いたって感じだ。」
「色々?」
「まあ、そのうち話してやるよ。」
そう言って、カナトはちょうど運ばれてきた料理に手を伸ばすと、手を合わせて「いただきます」と言い、そのまま豪快にかき込んだ。
「……お前、行儀悪いな。」
「腹減ってんだよ。文句言うなら、お前も食え。」
「はいはい。」
セナとキティンも食事を取りながら、カナトの様子をそれとなく観察する。
この男、少しがさつなところはあるが、悪い奴ではなさそうだ。
「ま、とにかく。俺も旅をする理由がある。だから、お前らの旅に混ぜてもらうのが都合がいいんだ。」
カナトはそう言いながら、空になった皿を置いて腕を組む。そして最後に、しっかりと「ごちそうさま」と口にした。
「それで、お前らの目的は何なんだ?」
セナとキティンは顔を見合わせ、少しの沈黙の後、ゆっくりと答えた。
「俺は……やることがあるんだ。」
セナはぼそっと言うが、それ以上の詳細は語らない。
「私は、一人前の冒険者になりたい!」
キティンは胸を張りながら続ける。
「強くなって、誰からも認められるくらいに!」
「ほう、それは頼もしいな。」
カナトは笑いながら言うと、椅子の背もたれに寄りかかりながら考え込むような顔をした。
「じゃあ、腕試しってわけじゃねえが、まずはクエストでも受けてみるか? 旅に出る前に、互いの力量を知っておいた方がいいだろ。」
「確かに……ギルドの依頼を見てみるか。」
セナがそう言い、三人は食事を終えるとギルドの掲示板の前に向かった。そこには様々な依頼が張り出されていた。
「どれにする?」
キティンが真剣な表情で掲示板を見つめる。
「まずは手頃なやつだな。」
セナが依頼書を眺めながら、ある一枚に手を伸ばした。
「……ゴブリン討伐か。街の外の草原にできた拠点の破壊。最近、数が増えてきて問題になってるらしい。」
「ちょうどいいじゃねえか。」
カナトがニヤリと笑う。
「俺たちの初仕事だな。」
こうして、セナたちは初めてのクエストへと向かうことになった。




