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船讐  -空飛ぶ船から始まった物語-  作者: 梅犬丸
第一部 船編・獣国編
13/63

お茶でも飲もうよ

「君きみぃぃ……来る頻度が早すぎるよ。」


少し残念そうな声が響いた。


「うわっ!?」

セナは飛び起き、声の主を睨む。

「お前……いきなり大声出すなよ!心臓止まるかと思ったじゃねぇか。……でも、お前がいるってことは、ここは意識を失った世界ってことだな。……ってことは俺、まだ死んでない!よかった……。」


キファは肩を落とし、ため息をついた。

「僕が生存確認の目印か何かだと思ってるの?……そんな扱いされると、さすがに悲しいんだけど。」


セナは腕を組み、険しい顔をする。

「でも、あのままなら……逃げ切れるよな?」


キファはニヤリと口の端を上げた。

「どうかなぁ。あの犬……普通の個体とは比べ物にならない魔力量を持っていたけどね。」


「……は? おいおい、それじゃまるで追いつかれるみたいな言い方じゃねぇか!」

セナは思わず声を荒げる。


「ごめんごめん。言い方が悪かったね。」

キファは少しだけ申し訳なさそうに微笑んだ。

「ただ、あれは“通常個体”ではなかったんだ。」


「通常……個体?」


「そうそう。ま、立ち話で説明するのもなんだし、たまには座ってお茶でもしながら話そうか。」

キファが指を鳴らすと、ふわりとテーブルと椅子が現れ、温かいポットとカップまで揃った。


「……まぁ、話してくれるんならいいけど。」

セナは警戒を解き、椅子に腰を下ろした。


「さ、飲んでみて。」

キファがカップを差し出す。


ゴクリ、ゴクッ……。


「……ん。意外と……美味いな。」

セナの顔がふっと緩む。


「ふふっ。今“美味しい”って思ったでしょ。やっぱり君はわかりやすいなぁ。」

キファは嬉しそうに笑う。


「悪かったな。お前のお茶が美味すぎるから顔に出ちまったんだよ。」

セナは少し照れ臭そうに視線をそらした。


「はは、嬉しいことを言ってくれるね。」

キファは満足げに頷き、話を戻した。

「さて、本題。あの青い犬——パルシャンウルフだけど。あれは“離れ個体”だよ。通常よりも魔力量も体力も、三倍から十倍はあると思った方がいいかな。」


セナは息を呑む。

「そ、そんな……。俺、どう考えても相手になんか……」


「少なくとも、僕の相手にはならないけどね。」

キファは軽く肩をすくめた。


「……はぁ。わかった。ありがとう。とりあえず俺、そろそろ戻らせてもらうよ。」

セナは立ち上がりかけて、ふと尋ねた。

「そういや……ここに来てからどれくらい経ってる?」


「んー……十時間くらいかな。」


「じゅ、十時間!?そんなに経ってんのか!?」


「うん。だいぶ時間は過ぎてる。でも、君の魔力もかなり回復してるから……戻っても大丈夫だよ。」


「……わかった。なら、行かせてもらう。」

セナの視界がふわりと白く霞んでいく。


——ほわほわほわ……。


「……また、意識が遠のいて……。」


その声も、やがて霧に溶けた。


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