火炎魔法?!
セナは額に汗を浮かべながら、手のひらをじっと見つめていた。
「……はぁ、やっぱり小さいのしか出ねぇ。疲れた……。ちょっと休ませてもらうよ。」
「ええ、いいですよ。」
キティンは微笑んで頷いた。猫耳がピクリと揺れ、彼女はどこか楽しそうに見守っている。
セナが草の上に腰を下ろして目を閉じると、風の流れる音だけが耳に届いた。
その静けさの中で——キティンはふと耳を動かし、わずかな物音を拾う。
「……ん?今のは……?」
彼女は身を乗り出し、周囲を警戒する。
セナは目を閉じたまま呟いた。
「気のせいかもしれねぇけど……一応、気をつけた方がいいな。」
短い休憩を終えたセナは再び立ち上がり、拳を握りしめた。
「よし、もう一回だ。オラッ!」
彼は深く息を吸い込み、手のひらに魔力を集中させる。淡い光の線が描かれ、小さな魔法陣が瞬く。
——ボッ!
小さな炎が生まれ、ふわりと揺れながら辺りを温かく照らした。
「おぉ、いい感じですよ!」
キティンの声は弾み、彼女の瞳に期待の色が浮かんでいる。
セナは汗をぬぐいながら、苦笑した。
「……少しずつだが、掴めてきた気がする。後は……精度だな。」
「なら、もっと大きな火を目指して練習すればいいんです!」
キティンは身振り手振りを交えて励ます。
「よし……やってやる!」
セナは決意を込め、再び両手に魔力を集めた。何度も繰り返すうちに、炎は少しずつ形を成し、赤みを増していく。
——周囲が明るさを取り戻すごとに、セナの顔には確かな自信が戻りつつあった。
だが、その瞬間。
空気の流れが変わる。
背筋に冷たい感覚が走り、セナの集中が途切れそうになる。
「……今の、なんだ?」
キティンは鋭く耳を動かし、炎の明かりの向こうを凝視した。
「……セナ、気をつけて。誰か——来る。」
低い声に緊張が混じる。
セナはすぐに反応し、炎を消さずにそのまま手のひらに集中させながら、闇に視線を投げた。
「……ちっ、さっきの気配か。」
木々の向こうから、確かに近づいてくる足音があった——。




