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50:災禍と呼ばれしもの・3

 攻撃手段をひと通り見て、対策をとって、弱点を突けるようになって。

 地の災禍との戦いは、時間が経つごとにエイミたちの優勢へと変わっていった。

 金属の鎧にはヒビが入り、既に片腕は機能を失って足元に転がっている状態で。決して楽な戦いではなかったが、災禍へのダメージは確実に蓄積されているのがわかる。


「残りの災禍を倒すためにも……そろそろ終わりにしましょう!」


 プリエールがそう言い放ち、両手を掲げる。

 魔力が集まるにつれて彼女の手の先に雷が踊り、バチバチと音を立て始めた。


「雷雲より出でし鎚、我が敵の頭上に降り落ちよ!」


 上から落ちた雷は、災禍の胸にある橙色の石に直撃した。

 攻撃を遮られてガクガクと巨体を痙攣させる災禍に、すかさず飛びかかったのはフォンド。


「これで……トドメだぁっ!」


 全身に纏った闘気を振りかぶった右腕に集束させ、パンチと共に一気に放つ。

 シグルスが付与した雷の魔力と一緒に、闘気が狼の形をとって災禍に噛みついた。


〈――――ッ!〉


 衝撃、次いで激しい音が地下坑道じゅうに響き渡り、災禍の体はバラバラに崩れ落ちる。

 橙色の石から黒い靄がぬるりと抜け出し、霧散して……それきり、災禍は動かなくなった。


「お、終わった……のか?」

「一体目でこの強さ……これがあと七体も控えているなんてね」

「ですがこれでディグ村の人々もよくなるはず、ですよね?」


 まず心配だったのは災禍が復活のために力を奪って吸い取っていたせいで無気力になっていたディグ村の住民たちだ。

 彼らの無事を確かめるためにもこの場をあとにしようと、エイミたちが踵を返した、その時だった。


〈……ギ、ガガ……〉

『! まだやるつもり!?』


 あれだけ戦って、破壊されて、もう動けないはずなのに――全員が身を強張らせ、災禍の動向に目を見張る中、


〈ワ、タシ、ハ……私ハ、マギカ・ゲニウス……アナタノ、安全ヲ、オ守リシマ、ス〉


 災禍――古代の町を守る“守護者”だった者は、途切れ途切れにそう告げた。


〈危険ハ、ゴザイマセンカ? ゴ命令、ヲ……〉


 ああ、元に戻ったんだ。

 あまりにも遅い“その時”に、健気に使命を果たそうとする姿に、一同の胸が締めつけられる。

 そんな中で、フォンドが守護者の残骸に歩み寄り、優しく穏やかに微笑みかけた。


「……うん、大丈夫だ。みんなはオレたちが守ったから、お前はゆっくり休めよな」

〈…………〉


 しばしの沈黙。それはまるで、考え込むような、噛み締めるような。


〈……ア、リガ……ゴザイ、マ…………〉


 ぷつん、と小さな音がして、今度こそ守護者は停止する。

 静まり返った大空洞が、いやに広く感じられた。

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