選別の門
門がたたずむ40階層。
僕たちはエルフの巫女様とガンツとともに、だだっ広い草原のような空間に荘厳な純白の門が設置されている場所まできていた。
近くには泉もあり、穏やかな景色が広がっている。
空は晴れ渡り、風も凪いで空気も清んでいる。
ポルンの故郷の29階層を思い出すような場所だ。
「この階層は魔物もいないんですの?」
「ちゃんと魔物たちもいますよ」
「クウデリア様、遠くのほうを見てください。あの豆粒のように見える者たちが、この階層の魔物であるゴーレムたちみたいです」
「門を守るような感じでもなさそうですし、あんなに遠くては襲ってもきませんのね」
「そうですね。正確にいうと、この門も魔物であり、ここの階層主らしいですよ」
「門が階層主ですの!?」
僕たちの目の前の門は、意思のある精霊界への門、別名選別の門と記録には記されていた。
元々から門の形だったのか、後からこの形になったのかは不明だが、この40階層の出口であり、41階層から始まる精霊界の入り口であるらしい。
まあ、これ程安全な階層主もいないだろう。
ただ精霊界って何ですか?
当然、精霊界なんて知らない僕たちはそんなことを思ったし、これについては王宮の記録にも書かれていなかった。
いつも思うけどこの記録を書いた奴、ダンジョンを攻略中に記録していただろうからしょうがないとはいえ、内容が大雑把過ぎるんだよね。
精霊界についてはエルフの巫女様が教えてくれた。
精霊とはざっくり言うと、自然界にあるさまざまなエネルギーたち、そのものが形をとった存在ということだ。
その意思あるエネルギー生命体の暮らす場所が精霊界らしい。
ガンツの話では、そこに存在するのに物質に依存するかしないかで、自分達にも精霊の一部が宿っているとも言っていたが、あまり意味がわからなかった。
とりあえず、精霊的な何か力を持っていなければ、この門は潜れないってことだけは理解できた。
因みに、エルフの巫女様はこの門を通れるということだ。
うん、たしかに巫女様は美しさも精霊級だけど、多分そういうことじゃないだろう。
巫女様の情報を読み取らせてもらったときにあった《神舞の才》って能力を持っていることと関係があるのだろうか?
なんか、能力の構成の中に神性領域がどうとか書かれていたんだけど。
うーん、虹の手を発動中のことは、ぼんやりとしか思い出せないんだよね。
僕は自分の黒く染まった右手を見る。
こいつに最初に触れたときに僕は神性耐性(手)を獲得していた。
もし僕の仮説が正しいとすると、今の僕の右手首から先を構成してくれているダンジョン細胞も神性領域を持っているのかもしれない。
まあ、試してみればわかることか。
「とりあえず、僕たちも門を潜れるか試してみましょうか。ジルエル様の話が本当ならクウデリア様は問題なく通れるとして、通れるか通れないかわからないのは僕、リアさん、ポルンですけど順番はどうしましょう?」
「私が行こう」
リアさんが進み出てくれた。
「次の階層の様子がどんなものかわからないから、まずは私が行くのが妥当だろう」
「いいんですか」
「ふむ、問題ない」
まあ、リアさんも《剣の才》なんて、半分人間を捨てたような能力を持っているから、多分通れるだろうし問題はないだろう。
状態表記だったとはいえ、聖剣とまで名乗ってて神性領域がないなんてことはないだろう。
リアさんが門の前に立つ。
「では、行ってくる」
騎士らしく悠然と歩を進めるリアさん。
そして、
ゴンっ!
という鈍い音とともにリアさんが、その場で蹲った。
うわっ、めっちゃ痛そう。
僕たちから見えたのは、何か不可視の壁のようなもので頭を強打したようなリアさんの姿だ。
「どうやら、あの女性騎士様は精霊界への入界を断られたみたいですね」
エルフの巫女様が、まぁ大変とばかりに目を見開いて口元を押さえている。
いやいやいや、リアさんがいなくなったら、僕たちの戦力は半分以下だ。
これは何とかしないといけない。
僕たちの40階層攻略はすんなりとは行かず、もう少しだけ時間がかかりそうだ。
読んでくださり、ありがとうございます。
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