VS 古代樹人 決着
奥深い森の39階層。
僕たちは森の中で、階層主の巨大な古代樹人を相手にしていたはず……なのに、どうしてこうなった?
と、そう思う。
僕は、今も硬直して地面に倒れているリアさんを見つめる。
リアさん曰く、僕の封印耐性(手)レベル10の効果でリアさんの能力《剣の才》を全解放したら、リアさんの体が硬直して剣になったということだ。
どういうこと?
リアさん以上にワケわかんない能力を持っている僕にすら本当に意味がわからない。
とりあえず、少し後ろに下がらないと、ここにいたらゆっくりとしか前進していないとはいえ、古代樹人の攻撃が危ないな。
僕たちを襲ってくる蔓は、ポルンが電撃を纏わせた爪で切断してくれている。
「ポルン、悪いけど、もうちょっとだけ1人で頑張れるか?」
「ポルっ!」
ポルンが任せろとばかりに、帯電して加速すると、古代樹人の周りを動き回って翻弄し、時間稼ぎをしようとしてくれている。
よし、今のうちにリアさんの状態を確認させてもらおう。
「リアさん、能力の解除はできそうですか?」
(アルル、確かに私の意思で能力の解除も出来そうなのだが、これはこれでロングとの一体感を全身で感じるので悪くない感じだぞ)
リアさん、それって人としてどうなんですかと思わなくもないが、そういえば、この人って剣が大好きな人だった。
だから、人の身でありながら《剣の才》なんて、おかしな能力を持ってしまったのかもしれない。
(アルル、頼みがあるのだが、私を剣として使ってみてくれないか)
「リアさん、本気ですか!?」
(私は本気だ)
硬直しているリアさんの表情は変わらないから、いまいち緊張感は薄いけど、伝わってくる言葉はいたって真面目そうだ。
「リアさん、言っちゃなんですけど、僕の非力な力なんかでは細身の女性とはいえ、人間を剣のようには持ち上げられないと思うんですけど」
(大丈夫だ。そこも私の能力の一部分なのだろうが、剣となった自分の自重を操作できるようなのだ。そして、威力もな)
なんだろう、リアさんの剣として性能が異常に高いんだけど。
僕はリアさんの足首を握り、剣として持っている自分を想像してみる。
……………………………………うわぁ、絶対にないわ。
斬新すぎる光景だ。
「あのリアさん、言いにくいんですけど、見た目がすごい嫌なんですけど」
(そういえば、アルルは以前、他の階層で大王海月と戦ったときに、大王海月の体の一部を金属に変えていただろ。あれを私にしてくれてもかまわんぞ)
「えーと、リアさんの見た目を弄ってもいいということですか?」
(そうだ)
「そうだ……って、人間に戻れなくなったら、どうするんですか」
(大丈夫だ。その時はその時だ。私は剣のままでも楽しく生きれると思うし、気にするな。…………それに私はアルルのことを全面的に信頼しているからな)
リアさん、このタイミングでそんなことを言うのは卑怯ですよ。
絶対に失敗なんて出来ないじゃないですか。
心の中でそう思ったけど、なんだかそう言われたことが嬉しくもあった。
「わかりました」
そこまでリアさんに覚悟を決められたら、もう断れないし、悩めない。
ポルンも上空から全体を見てくれているクウデリアの助言があるとはいえ、いつまで持つかもわからないし、僕は封印耐性(手)レベル10で、自分の額に触れる。
(《封印耐性(手)》レベル10の効果により、主魔アルル・シフォンの《%#@%&&》の効果の一部を解放しますか yes/no)
僕はyesを選択すると同時に僕の左手が虹色に染まる。
やっぱり、右の黒い手にはこの光る効果は波及しないようだ。
ということは、僕は左手一本でこれからの作業をしないといけないということだ。
少し難易度が上がる。
だけど、今からやることは、すごくシンプルだ。
①エルフの巫女の体を弄った時の逆で、人間の体から剣の状態にリアさんの身体情報を書き換える。
②剣となったリアさんで古代樹人を斬る。
③リアさんの体を人間に戻す。
これを虹の光の制限時間内でやればいい。
僕は行動する。
「リアさん、いきますよ」
(よろしく頼む)
リアさんの情報を読み取っていく。
(従魔リア・ウィリアム【状態:人剣】の能力の進化が可能です。進化を行いますか? yes/no)
なんか、リアさんの能力が進化可能だったり、状態表記が人剣ってなっていたけど、人剣って何? とか突っ込んでいる時間はない。
進化も突っ込みも後回しだ。
僕はリアさんの情報を書き換えていくついでに、リアさんの愛剣ロングもオリハルコンをリアさんの体の体表部分に活用させてもらうために情報化して組み込んでいき、まさしく剣人一体とも言える黄金に光り輝く美しい一振りの剣が出来上がった。
僕は出来上がった情報を読み取る。
従魔リア・ウィリアム【状態:聖剣】
サイズを弄る時間を短縮するため、大きさは僕の身長くらいあり、バスターソードのような形をしているけど、誰が見てもこれは剣だと言ってくれるはずだ。
あれ、状態表記が人剣じゃなく、聖剣になってる、これって一緒に混ぜたロングのオリハルコンのせいかな?
だけど、ゆっくり考えていたり眺めている暇はない。
虹の手の残り時間は有限なのだ。
「ポルン、お待たせ」
「ポルル」
僕は頑張ったポルンの頭を左手で撫でたあと、古代樹人の前に進み出る。
考えてみれば僕が魔物に直接攻撃をするのなんてすごい久々な感じだ。
でも、恐くはない。
手に持つ聖剣リア・ウィリアムからリアさんの鼓動が伝わってくるから。
「リアさん、いきますよ」
(アルル、いつでもいいぞ)
僕は聖剣を思い切り上段から振り下ろした。
それで走った衝撃波と斬撃は、いとも簡単に古代樹人を真っ二つに切り裂いてしまっていた。
えっ、何この威力。
あり得なくない?
あまりの威力に驚きすぎて、危うくリアさんを元に戻す時間が足りなくなるところだった。
読んでくださり、ありがとうございます。
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