フードの男
奥深い森の39階層。
エルフの里は喧騒に包まれていた。
そして、その不穏な空気は僕がいる巫女様の寝所にも波及してきていた。
ジルエルが僕を守るようにフードの男と対峙する。
「今度は第4王子ジルエル様か、本当に邪魔が多いことよ」
「それを言うなら、こっちにとってはお前たちの存在こそが一番の邪魔物だよ」
「違いない」
僕の後ろで戦いが始まった。
多彩な属性の魔法を使用してくるフードの男。
フードの男もすごいが、影魔法で僕とエルフの女の子、巫女様の3人を守りながらも戦いを優勢に進めるジルエルがすごい。
「その程度の魔法の展開速度なら、手数の多い影魔法の敵じゃないよ。そろそろ、こちらから攻めさせてもらおうかな」
「くっ」
フードの男が徐々に追い込まれていく。
王子でイケメンで強いって、何気にジルエルって、すごい人なんだけど。
これでシスコンでさえなければ。
ジルエルは生まれながらにいろいろ与えられた代わりに人として大事なものを神様に取り上げられたのかもしれない。
「このままでは勝てそうにないな」
なんだろう。
フードの男のこのままではという言葉に不安がよぎる。
「ジルエル様、気を付けてください。そいつダンジョン細胞を移植された狂信者かもしれません」
「ダンジョン細胞? 狂信者? なんだそれは?」
ジルエルが僕に聞いてくる。
「えーとですね。ダンジョン細胞っていうのは、人体をダンジョン化することで階層主級の魔物の力を使用することが出来るようになるようです。おそらく、そこのフードの男の使おうとしている奥の手の1つだと思います」
「ほほう、子供よ。お前はそんなことまで知っているのか」
あー、どうしよう。
もう直接、言っちゃおうか。
僕は巫女様の情報操作を継続しつつ、後ろのフードの男に声をかける。
「もう、やめませんか?」
「何をやめるというのだ? この男もワシもお互い手の内は晒しとらんし、戦いはまだまだこれからじゃぞ」
「僕が言っているのはそういうことじゃなくて、騙し合いの話のことです」
「………………」
「どうして、こんなことになってんのかはわかりませんが、あなたに僕のことがわかるように僕にはあなたのことがよくわかるみたいなんですよ」
僕の言葉にフードの男は黙ったままだ。
僕の予想が正しければこのフードを被った男の正体を僕は知っている。
そもそも最初から、おかしかった。
僕はこの男、いやこの人物の声を聞く前、フードを目深に被ったままの姿を見た瞬間から男だとわかっていた。
それはなぜか、僕はこの男を知っていたから。
そして、エルリックや他の狂信者からの情報も持っていないにも関わらず、僕のことを医術士見習いと言った。
医術士ならまだしも医術士見習い。
エルフたちはもちろん知らないし、もしドワーフたちの中に裏切り者がいるとすれば、僕のことはクウデリアの婚約者として報告されているはずだ。
僕のことを医術士見習いと言ったということは、このフードの男は元々の僕のことを知っている人物ということになる。
そんな人物はそう多くないし、僕が思い当たる人物は1人だけ。
「ねえ、そうは思いませんか、師匠」
僕はフードの男にそう声をかけた。
読んでくださり、ありがとうございます。
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