35階層へ
僕は微睡みながら夢を見ていた。
なんで夢ってわかったのかわからないけど、何となくわかったんだから、しょうがない。
そんな僕に走馬灯のように映像が浮かび上がってくる。
あれは、出会った頃の僕とリアさんだろうか。
まだ、リアさんが自分の愛剣に語りかけることが大好きな変態だとは知らず、ただのカッコいい女騎士さんだと思っていた頃。
今でも頼りにしているのは変わらないけど、今はカッコいいという憧れに近い感じじゃなく、一緒にダンジョン攻略に挑む頼もしい仲間という感じだ。
最近とはいえ、なんだか懐かしい記憶だ。
クウデリアも出てきた。
そういえば、出会った頃は回復魔法を連続使用して倒れるような子だったっけ。
今じゃ、その能力で僕たちの攻略の要を担ってくれている。
僕より年下だけど、第3王女とはいえ王族というだけあって頼れる女の子。
心優しい彼女が望むなら、僕に出来ることはなんでも協力してあげたい。
ポルンも魔物なのに僕たちに協力してくれる不思議なコボルトの子供。
その愛嬌のある仕草とモフモフの尻尾にどれだけ癒されたかわからない。
もっと色んな景色を一緒に見たい。
そこで、今の僕が消えていく。
次に出てきたのは、師匠のもとで修行の名の無茶をさせられていた頃の今より少し幼い僕。
あの頃は、骨折の治し方を体で覚えろと言われては、いろんな場所の骨を叩き折られていたっけ。
薬草も毒草も味見で覚えさせられた。
辛かったけど、ためになった記憶だ。
師匠のことも厳しかったけど、嫌いじゃなかった。
そこで、今より少し幼い僕が消える。
その次に出てきたのは、親と暮らしていた頃の最も幼い僕。
貧困街で暮らしながら、血液を売らされたり、怪しげな薬の実験台になることでなんとか命を繋いでいた、リアさんたち曰く、僕の人生の中で多分一番辛かったはずの頃。
お互い、生きるのに必死で善も悪もなかった。
喜びもない変わりに怒りもない。
そうするしか生きる術がなかった、それだけだ。
さらに記憶が遡っていく。
次に辿り着いたのは僕の知らない場所だった。
知らないのに知っている、おかしな感覚だ。
ここはどこだろう。
見回してみるけど、全部が白くて何もない空間で、やっぱり僕の知らない場所だ。
僕は誰だろう。
あれ、さっきまで覚えていたのに思い出せない。
自分の名前がわからない。
僕は朦朧とする意識の中、自問自答する。
そして1つの答えに行き着く。
そうか、僕は……。
「アルル」
「アルル」
「ポルル」
僕をアルルと呼ぶいくつもの声が聞こえる。
あれ、僕は今、何を思い出そうとしていたんだっけ。
うーん、忘れた。
そんなことより、そうだ、僕はアルル、アルル・シフォン、医術士見習いだ。
そこで、僕は目を覚ます。
「あれ、リアさん? クウデリア様にポルンも」
「アルルっ!」
「良かった。目を覚ましましたの。本当に心配しましたのよ」
「ポルル」
僕の胸にとりすがるクウデリアとポルン。
その顔は涙でグシャグシャだ。
リアさんも呆れながらも心の底からの安堵の表情をしてくれていた。
僕は体を起こして周りを確認する。
辺りは暗くなっているけど、焚き火と波の音が聞こえるし、僕たちはまだ34階層にいるようだ。
「あの後どうなったんですか?」
「アルルのおかげで大王海月オボロに勝った我々は、この階層の出口がある島に無事に到着することができた」
「ここまでアルルの体は私が運びましたの」
僕はみんなに迷惑をかけたようだ。
「すみませんでした」
「アルル、我々は仲間だ。仲間が倒れたときに他の仲間が助けることは当たり前だ。だから、我々の間で謝罪は必要ない」
「そうですの。そんなときにぴったりの言葉がありますの」
「そうだぞ、アルル、こういうときは、すみませんじゃなく、ありがとうでいいんだ」
「わかりました。……クウデリア様、リアさん、ポルン、ありがとうございました」
僕は心からの感謝の気持ちを込めた言葉を大切な仲間たちに伝えた。
これで34階層も終わりだし、次はいよいよ35階層だ。
読んでくださり、ありがとうございます。
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m(_ _)m




