雷狼ポルン
大空に島々浮かぶ33階層。
始まりの島でそれぞれ特訓する僕たち。
自分の能力の検証と力に慣れる特訓をするリアさんとクウデリアと少しだけ離れた、島の端っこでポルンがついに《踊り上手》の能力で新しい踊りを構想・習得することに成功した。
ポルンが新たな踊りを生み出してたどり着いたのは、今も大空を舞うように飛んでいる雷電鳥ホルスから得たイメージだったのかもしれない。
そこには、僕が雷を纏う狼と表現するしかなかったポルンの姿があった。
「ポルル」
ポルンが帯電し黄色身を帯びた自分の毛皮に満足そうに体全体で飛び跳ねながら喜んでいる。
「ポルン、すごいじゃないか」
「ポルルン」
ポルンが、僕にじゃれ付いてくる。
おっと、このまま抱きつかれたら、僕まで感電しちゃうからっ!
帯電したポルンの体に、僕は手だけが触れるようにするため限界まで伸ばす。
いつも思うことだけど、腰が引けて手だけを伸ばすこのポーズ、カッコ悪くない?
そんなことを思わなくもないが、気にしてちゃ僕はとっくの昔に死んでいる。
ポルンの体に触れる僕の手。
ピコーンとお馴染みの音と声がする。
(《電撃耐性(手)》を獲得しました)
まあ、こうなるとは思ってたけどね。
自分の理不尽な能力の獲得も少しだけ慣れてきた。
「うーん、ポルンは自分で頑張って新しい踊りを身に付けたっていうのに、僕の能力獲得は一瞬だなんて、なんか悪いな」
「ポルルル」
ポルンが、そんなことはないとばかりに首を横に振る。
それにともない、毛皮もパチパチと音を弾かせていた。
「とりあえず、ポルンのその姿のことは雷狼状態って呼ぼうと思うけど、いいかな?」
「ポル」
ポルンが首を縦に振り認めてくれたので、これからこの状態を雷狼状態と呼ぶことにする。
炎狼と雷狼、2つの状態をうまく使い分けていけば、ポルンの戦闘の幅も広げることが出来るかもしれない。
「ポルン、何が出来るのかいろいろ試してもらいたいけどいいかな?」
「ポル」
ポルンも乗り気だ。
ポルンは眼下にいる空を飛ぶ魚、空魚の群れに向かい狙いを定めたようだ。
「ポルル」
ポルンの指先から空魚に向かい電撃がはしる。
電撃が当たった空魚は体を硬直させて落下していった。
どうやら、感電させて体を硬直させたようだ。
「他は何か出来そう?」
「ポルル」
ポルンがその場で力むと、ポルンの毛皮の毛が逆立ち帯電量を限界まで上げていく。
「ポルっ、ポルル」
高速移動を開始するポルン。
後ろの木々の間を僕には見えないくらいの速度で駆け巡り、調子に乗り過ぎて最後に大木に正面衝突しなければ、すごくカッコ良かったと思う。
能力に慣れるまでは、無理と無茶は禁止だな。
僕はそう思い、後で注意しないとと考えながら、目を回して倒れているポルンの元に向かう。
目の前で星をクルクルさせながも、ポルンは新たな力を手にいれて幸せそうに笑っていた。
読んでくださり、ありがとうございます。
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