クウデリアの後悔
33階層の入り口付近。
僕たちは折り重なるように駆け込んできていた。
どうやら、全員いるようだ。
32階層での洞窟の崩壊に誰も巻き込まれなくて良かったと安堵する。
洞窟が崩れて、あちらの様子がどうなったか不安もあるけど、戻るわけにはいかない。
隠れながら、少し様子を見ていたけど、星光教のビルとオリアナが追ってくる気配はない。
迂闊に敵の言葉を信じるのも危険だけど、本当に撤退してくれたのかもしれない。
しばらくして、僕たちはようやく一息つくことができた。
今は大木の根元で、水分と軽食を取りながら休憩中だ。
「あいつらが本気で我々のことを殺す気だったら、とっくに我々は皆殺しだったな」
「そうですね」
僕もリアさんの言葉に心から同意だ。
あの魔物の一部を取り込んだような異形の姿を思い出す。
その能力は完全に僕らの上をいっていた。
「クウデリア様、あいつらに言っていたダンジョン細胞っていうのと、あの体の一部に宿した魔物の力って関係あるんですか?」
「おそらくそうですの」
僕の疑問をクウデリアが肯定する。
「星光教の最大の教義はすべての命を光へと統一することですの。それはそもそもすべての命は死ねば光に還るという教えを示したものでしたのに、ある一部の者たちはそれを曲解しましたの。……人体も魔物も1つになるべきと」
「人体と魔物が1つになんて、そんなことが可能なんですか?」
「普通には無理ですの。最初の頃は弱い魔物を生け捕りにして、そのまま体の一部を人体に移植出来ないかと試したりしたみたいですが、失敗ばかりでしたの。それで、他の方法として考えられたのが人体のダンジョン化でしたの」
「人体のダンジョン化?」
「人体事態をダンジョン化することで、自らの体にあった魔物を自分自身の体の中で産み出してもらおうという計画でしたの」
そこまで聞いてリアさんも絶句している。
「ダンジョンは、人体と同じく成長し様々なモノを自分で作り出している。それならその一部を細胞として取り出せば、より移植として使いやすいと考えたのでしょうね」
「それが、ダンジョン細胞ってことですか」
「ええ、そこからもいろいろあったみたいですが、結果としてダンジョン細胞の抽出、作成に成功しましたの。だから、私たちを襲った狂信者たちは、ダンジョン細胞を移植されてダンジョン化した元人間だと思いますの」
「あの、どうしてクウデリア様はそんなに詳しいんですか?」
僕が気になったのは、その点についてだ。
あいつら星光教が勝手にやっているだけなら、ここまでクウデリアが詳しい訳はない。
王宮のどこか、もしくは王族が関係しているのは間違いない。
「アルルは不老不死や生命創造って、興味があったりしますの?」
「全く興味ありません」
人間死ねば光に還る、それでいいと思っている。
そりゃ、親しい人や優しい人が死んだときとかすごく悲しくなるし、助けたかったとは思ったことはあるけど、それとこれとは別の話だ。
「王族の中には、それらをどんな手を使ってでも欲しいと思う人種がいますの。その方たち中には、私の兄や姉も何人かいまして、私も1度協力しないかと話を持ちかけられたことがありましたの」
「クウデリア様は断ったんですか?」
僕の言葉にクウデリアが悲しそうな顔をして首を横に振る。
「軽蔑してくださっても結構ですの。私は浅はかにも1度協力の要請を引き受けてしまった身ですの」
クウデリアはどういう感情の表情なんだろう。
後悔、怒り、哀しみ、他にも様々な感情が渦巻いたような顔をして、僕たちに微笑みかけた。
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