逃走
雪と氷に閉ざされた32階層。
主の氷大亀も倒し、いよいよ33階層だというところで、星光教の狂信者のビルとオリアナに襲撃される僕たち。
リアさんたちは、狂信者の1人、ビルのサイクロプスのような第3の眼の効果か何かで、意識はあるが体の自由を奪われている。
僕は呪いをかけるために途中でビルの術中からは解放されていた。
でも、僕を操ろうとした洗脳の呪いは、僕に呪い耐性(手)を獲得させただけで消滅するという結果に終わった。
「……あなた、何者なの?」
オリアナが警戒感も露に聞いてくる。
僕に何者と聞かれても、ただの15歳の医術士見習いとしか答えようがない。
「僕はアルル。ただの医術士見習いだよ。星光教だとか、そんな人たちに狙われる理由も思い当たらない、ただの一般人なんだけど?」
「……ボクの呪いをあっさりと破る一般人なんていない。この化け物め」
あれ、より警戒をされてる?
というか、額に第3の眼がある仲間がいて、自分も腕の代わりに蛇を生やしてる子に化け物呼ばわりなんてされたくない。
僕の場合、おかしいのは手だけだ。
その手だって、見た目は普通で戦闘力は、ほぼ皆無。
だから、僕がこの人たちに勝つにはリアさんたちの力が必要だ。
僕は魔法のポーチから毒鳥の卵を取り出すと、もう1人の狂信者、ビルに投げつけた。
僕の予想が正しければ、これでリアさんたちも解放されるはず。
ビルは僕の投げつけた卵を大きく回避して、僕の狙い通り、リアさんたちから視線をそらした。
「なんだ? 急に動けるようになったぞ」
リアさんたちに自由が戻る。
「ありゃりゃ、自分の不動の呪眼から解放されちゃいましたか。オリアナさんの呪いを弾かれたりとか、少々予定外ですね。オリアナさん、今回は様子見でいいと言われていたのは本当ですし、そろそろ撤退しましょうか」
リアさんたちを足止めしていたビルが能天気な口調で、そんなことを言ってくる。
「我々が、このまま逃がすとでも?」
「ポルルル」
リアさんが剣を構え退路を塞ぎ、ポルンも怒って牙を剥き出しにしている。
「せっかくですし、ゆっくりしていってくださってかまいませんの。今後のことを考えれば、あなたがた星光教の情報をいろいろ教えてもらいたいですし」
金縛り状態から解放されたクウデリアが、王女の威厳たっぷりに微笑み宣言する。
「こりゃ、参りましたね」
そんな言葉を吐きながら、ビルの表情はまだまだ余裕に満ちていた。
追い詰められているというより、楽しささえ感じていそうだ。
相変わらず表情と言動が一致しておらず、内心が全く読めずに気持ち悪い。
「オリアナさん、脱出の隙を作りたいのですが、お願いしてもいいですか」
「……ビルが自分でやれば良い」
「う~ん、自分のは疲れるんですよ。それにやり過ぎちゃったら、あの人たち死んじゃいそうですし」
「……ボクのも疲れる。殺さないようにするのもしんどい」
「ダンジョンからでたら、美味しいお菓子をご馳走しますし」
「……パフェでもいい?」
「もちろん、いいですよ」
いったい僕らは何を見せられているのだろう。
でも、《剣の才》の一部解放状態のリアさんですら迂闊に斬り込めない何かがビルとオリアナの2人にはあった。
「……交渉成立。起きて、『白多蛇ダリアス』」
オリアナの右手の白蛇が5股に分裂する。
「白蛇鞭」
オリアナの言葉をきっかけに、5匹の腕から生えた蛇たちが伸縮自在、縦横無尽に洞窟内を暴れまわる。
超高速の鞭のように暴れまわる蛇たちは僕らを無視して洞窟の壁を打ち付けて破壊していく。
それは、全体に拡がっていき、やがて洞窟を形成し続けるには致命的なヒビが入る。
「ほらほら、早く逃げないと洞窟の崩壊に巻き込まれて死んじゃいますよ」
ビルがそんなことを言ってくる。
僕たちは完全に遊ばれている。
それだけは伝わってきた。
「アルル、クウデリア様、33階層に避難を」
「わかりましたの」
「リアさんとポルンも早く」
僕たちは崩れる洞窟から脱出するために不本意な形で、初めての33階層に移動した。
読んでくださり、ありがとうございます。
まだまだ拙い文章とひどいおふざけのような表現もあるなかで、ブックマークや評価してくださった方もいて励みになります。
m(_ _)m
ここで1度お詫び。
嫌いな表現のあったかたについては本当に申し訳ありません。




