ビルとオリアナ
雪と氷に閉ざされた32階層。
氷大亀を倒した僕たちに、声をかけてきた人物。
クウデリアに星光教の狂信者と呼ばれた2人組、ビルとオリアナだ。
2人は純白のローブのフードを真深に被ったまま、こちらに近付いてくる。
「さすがは聖女と持て囃されるだけのことはありますね。クウデリア王女は博識でいらっしゃる。そう思いませんか、オリアナさん」
「……別に思わない」
全然、そんなことを思っていない声で言ってくるビルに対して、素っ気なく返すオリアナ。
ここがダンジョン内でなければ、ただの日常会話で微笑ましい光景だ。
でも、ここはダンジョンで、しかも32階層。
この2人、ただ者じゃないはずだ。
「クウデリア様、星光教とは?」
「私たちは人も魔物も死ねば、光に還元されますが、それを神の所業と捉え、教義として世間一般に広めようという一団がいるんですの」
「それが星光教ですか」
「そうですの。狂信者というのは、星光教の中でも異端で、より積極的に人や魔物を光に還そうと殺人とか破壊も厭わない方々ですの。そのことに特化するためにダンジョン細胞まで移植された人間がいるって噂をきいたことがありますけど、まさかこのようなところで出会うなんて」
「ダンジョン細胞?」
聞き慣れない単語が出過ぎて、頭が混乱しそうだ。
決して僕が馬鹿なだけではないとだけは言っておきたい。
「今回はエルリック王子からの依頼で、安否確認に伺っただけなんで、そう警戒しなくて大丈夫ですよ。自分は他の同僚たちと違って平和主義者を自認してますので、何もしなければ、命は取りません」
「そういう平和主義者のお前からは、血の匂いがずいぶんするとロングが言っているのだが」
「ポルル」
リアさんの言葉にポルンが同意する。
男の言葉が嘘であると言いたいみたいだ。
「いやー、平和主義者ってのは本当なんですけど、どうやら何もしないってことが、皆さん苦手みたいでーー」
男がフードをはね除ける。
その下は、物語にある1つ目の巨人、サイクロプスのような単眼が額にあった。
「ーー自分は嫌々お仕事を手伝ってあげてるだけなんですよ。本当ですよ」
ビルが醜悪に嗤うと、ビルの額の単眼も嗤ったように目を細める。
あれは本当に人間?
僕にそんな疑問が過る。
「今回の目的は、そこの少年です。皆さんは黙って見ててくださいね」
「アルルが目的? 訳はわからんが、そんなこと誰がっ…………なんだ、これは!?」
「体が動かないですの」
「ポルル」
ビルの言葉で斬りかかろうとしたリアさんが動けないでいる。
僕や他の皆も体が動かないのは同じだ。
どんな魔法かからくりかは知らないが、これは不味い。
僕の手では対抗できないやつだ。
「言ったでしょう。自分は平和主義者だって。自分と少年の会話を邪魔しないでいただきたい。少年、自分たちと一緒にきてくれますか?」
「無理です」
僕はきっぱりと断る。
僕にはクウデリア様とダンジョン攻略記録を塗り替えるという約束をしている。
こんな妖しすぎる不審者に付き合っている暇はない。
「大金も用意しますし、地位も思いのままですよ」
「確かに魅力的ですけど、自分でした約束を破ってまではいりません」
「困りましたね」
全然困っていなさそうにビルは言う。
うん、僕も大体わかってきた。
こいつは根っからの嘘つきだ。
「できれば、手荒なことはしたくなかったのですが。オリアナさん、お願いします」
「……わかった」
オリアナがフードを外すと、黒髪赤眼の小柄な少女の顔がでてきた。
少女は身体の一部分、胸だけはリアさん以上みたいだけど、顔立ちや身長から見ると、たぶん年齢は僕と同じくらい。
だけど、胸以上に僕の視線を釘付けにするものがあった。
少女の右腕が白い蛇になっていた。
何、あれ? 舌をチロチロ出し入れしているし、あの白蛇は生きている。
人間の腕から違う生き物が生えてくるなんて、そんなことが可能なの?
オリアナは生気の乏しい目を僕に向けてくる。
「……これから洗脳の呪いをあなたにかけさせて貰う。痛くはしないので、抵抗はしないで」
洗脳とか一番不味いタイプの攻撃だ。
僕は動けないし、抵抗する手段がない。
僕は最大のピンチを迎えていた。
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本日も昼頃に2回目の投稿をしようと思っているので良ければ覗きにきてください。
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