星光教
雪と氷に閉ざされた32階層。
僕たちは、氷大亀を皆で協力して倒すことができた。
リアさんの手のひらが酷い火傷になってしまったが、他は皆大きな怪我もなく無事で本当に良かった。
リアさんの火傷も、クウデリアの回復魔法で回復可能だろう。
「私はあまり何も出来ませんでしたの」
リアさんの手を回復しながら、クウデリアがそんなことを言ってくるが、それなら僕はどうなるんだと思う。
僕なんてクウデリアに抱き抱えられて空を飛んでただけで、時折ポルンを掴んだり、リアさんを掴んだりしていただけだ。
今もクウデリアは、リアさんの手の火傷を回復魔法で治療してくれているし、僕よりは断然役に立っている。
もっと自信を持って欲しい。
さあ、リアさんが回復すれば、次は33階層に出発だ。
そんな完全に緩みきった僕らに、パチパチパチと拍手のような音が聞こえてきた。
「誰だ」
治療の済んだリアさんが愛剣ロングを手に取り僕らの前に出ると、僕らの前に暗がりから2人の人間が登場する。
それは異様な格好をした2人組だった。
頭までスッポリと包み隠す純白のローブ。
「いやー、まさかこの面子で氷大亀を倒せるとは思いませんでしたよ」
リアさんの質問には答えず、そんなふざけたことを言ってくる。
「聞こえなかったか、私は誰だと言ったのだが」
リアさんが怒気を孕んだ声を上げる。
こんなリアさん初めて見た。
魔物の前でも襲撃者だったザザンさんたちの前でも冷静だったのに、どうしたというのだろう。
「ポルルルル!」
見ると、ポルンも全身の毛を逆立てて2人組を威嚇をしている。
「どうしたんですか。リアさん、ポルン」
「アルル、私にも詳しくはわからん。だが、ロングがあれは人でも魔物でもない何かだと警告をしてくるのだ」
リアさんはまだ《剣の才》の解放状態。
そんな状態のリアさんに愛剣ロングが警告を与えてきたという。
ロングは剣狼ベーオウルフから貰ったもので、人間も魔物も相手にしてきた経験があるという。
そんなロングが人でも魔物でもないというのなら、その通りなのかもしれない。
「人でも魔物でもない何か……」
ポルンが怯えるように威嚇しているのは、それが原因だろう。
「面白いですね。あなたは剣と会話できるのですか? 面白い能力をお持ちで。そちらのコボルトの子供も良い感性をお持ちのようですね。……それにしても人でも魔物でもない何かですか。それは言いえて妙と言うべきか、見当違いと言うべきか、悩んでしまいますね」
2人組の1人が、そんなことを言ってくる。
丁寧な言葉遣いではあるが、軽薄そうな男の声だ。
「オリアナさんはどう思います?」
「……わからない」
もう1人、オリアナと呼ばれたほうは女の子のようだ。
活力のないボソボソとした小声で、もう1人に答えている。
「挨拶が遅れましたね。自分はビル、隣はオリアナといいます。自分たちは、あなたたちのダンジョン内での様子を見てくるように星光教から派遣されてきました」
「星光教!?」
星光教の名前を聞いて、クウデリアの顔色が変わる。
僕たちのことを知ってるようだし、ザザンさんは情報の隠匿に失敗したのかもしれない。
大雑把なエルリックはともかく、抜け目の無さそうな王宮魔術師のセレーナあたりなら、2重3重の策で僕たちの情報を得る行動を取っていてもおかしくはなかった。
「アルル、気をつけて、あれは星光教の狂信者かもしれませんの」
星光教の狂信者?
星光教という宗教があること事態、初めて聞いたんだけど。
いったい、どういう人たちなんだろう。
ただ、クウデリアの言葉を聞いて妖しく嗤うローブの奥のその顔からは、とても友達にはなれなさそうな不気味さだけが漂ってきていた。
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