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白銀の奴隷  作者: エセル
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君を忘れない2

目を覚ますと見知らぬ天井が俺を出迎えた。

あたりを見回そうとして身体を起こす。

書類とモノで溢れた部屋はお世辞にも綺麗とはよべなかった。

俺をここに連れてきたヒトは片付けるのが苦手なのだろうか。

そんな事を考えていると部屋のドアが開く音が聞こえた。

入ってきたのは薄紫色の髪をした女性。特徴的なのは頭の上にあるピンと生えたフサフサの耳。

狼の獣人だろうか?

彼女はドアを閉めるとこちらを向いた。

振り向いた彼女の顔は―――。


「……ダリア?」


俺がよく知る女性にひどく似ていた。

彼女は一瞬だけ呆気に取られたような顔をしたが、すぐに取り繕うように笑うと、


「主人の前で他の女の名前を言うとは、いい度胸だナ。」


少し怒ったような声で俺を嗜めた。

女性の名前を間違えるのはたしかに失礼だろう。


「すまない、知っている女性によく似ていたものだから。」


俺は謝ると同時に、自分の声に違和感を感じて首を傾げた。

普段発していた声よりも幾分か高い。

まるで妙齢な女性のような声だ。


「まあいい、それよりも体の調子はどうだ?違和感はあるだろうがナ。」


まるで違和感があるのが当たり前のような台詞。

確かに違和感しかないが。

再起不能だと思っていた左腕はちゃんと動く。

掌を何度か握ってはひらく、筋肉の衰えはほぼ無いだろう。

ただ、さらりとした肌、スラリとした指には首を傾げるしか無い。

続いて左脚を確認しようとして、下半身を覆っていたシーツを剥がす。

そこで違和感の正体にたどり着いた。


「これは女性の身体か?」

「ご名答、説明はいるかい?」


彼女はベッドの横にあった椅子に腰掛け、手鏡を俺に手渡して問う。

手鏡を受け取りながら俺はうなずく。


「その前に自己紹介を、ワタシはシオン・シロガネ、水の街ネツィアを拠点とする錬金術師だよ。」


シロガネとは変わった姓だな、少なくともこの国の貴族には存在しない姓だ。


「俺はグレン・レーヴェル、レズン王国の第一王子だった。」


現状がどういう状況かわからないが戻ったところで王族籍はすでに無いだろう。

正直なところ戻る気もないが。

彼女……シオンは俺の正体を察していたのだろう、あまり驚くこと無く受け入れているように見える。


「さて、説明だったナ、グレンはどこまで覚えている?」


躊躇いもなく名前を呼び捨て、だが悪い気はしない。


「ごしゅ「シオンでいい」……シオンどの「呼び捨てで構わない」」


素っ裸で首輪もつけてるのに、なんともチグハグな。

彼女の態度を見るに敬語もよした方が良いだろう。

もともと使ってなかったが。


「シオンと契約を交わしたところまでだな、俺はアナタのものだということだけ。」

「そこからか、契約をした直後にワタシは手持ちのポーションを使って君の傷を癒やした。」


あの傷を治す程のポーションか、これでも王族の端くれだった身だ。

それの価値は安いものではないと知っている。


「君の命はその時点で繋がった。だが損傷の激しかった右眼、左腕、左脚は下等なポーション如きじゃ治癒できなかった。」


王族をして高級と思われるポーションを下等とする彼女は錬金術師としてかなり優秀なのだろう。

歳は俺と変わらないか下に見えるのに。

だが優秀な魔術師、錬金術師は見た目を若く保つ術を知るという。

事実、王城に仕えていた魔術師は見た目からは年齢が判断できないのも多かった。

彼女もそうなのかもしれない。


「そこでワタシは君をアトリエに持ち帰って治療することにしたんだ。」


彼女にとって俺はそこまでする価値のあるものだったのだろうか?

王子を助けた名誉を欲しがったのか、それとも其処から生じる富を欲しがったのか。

彼女の態度を見るに、それはどちらも否だろう。


「損傷部位の治療は難航した、ソレに加えて君の魂の損傷も激しかったのだろう。ポーションで命を繋いだとはいえ君の身体は日に日に衰弱していった。」


いくら上等なポーションとはいえ、根本的な解決にはならなかったのだろう。

傷を塞ぎ、魂の流出を防いだとしても一時凌ぎにしかならなかった。


「そこでワタシは未完成だった霊薬を使うことに決めた。」


シオンの声が少し震えている。

そこにどれほどの葛藤が在ったのかは俺には分からない。

なぜ彼女がそこまで俺を欲したのかも。


「未完成の霊薬?」

「あぁ、賢者の石『大エリクシル』だ。」

「どうしてそこまで―――。」


俺は思わず声に出してしまった。

賢者の石を完成させたという話は聞いた事はない。

錬金術師がその生を持って追い求め続ける存在。

未完成品とはいえ、ソレにかかった時間は莫大なものだろう。

価値など金銭で表せるものじゃない。

シオンは俺に困ったように微笑むと続きを話し始めた。


「未完成品とはいえ効果は絶大だった。損傷部位は瞬く間に治癒し、衰弱していた君の身体も見る間に復活していた。」


だが……と彼女は言葉を続ける。


「君の体の変化はそこで止まらなかった、あとは分かるだろう。君の今の身体は未完成な大エリクシルを使用した代償だ。」


彼女は悔しそうに下唇を噛む。

その表情は自分の力が足りなかったことによる悔しさか、それとも俺を救えなかったことによる自分の無力さにか。

俺を助けてくれた彼女のプライドに報いたい。


「シオン、君の悔しさは俺を救えなかったことか?それとも自分の無力さにか?」

「そんなの両方に決まっている。」

「なら君は誇っていい、死に間際の人間を救い出したことに。俺は君に救われたソレでいいじゃないか。」

「そんなの詭弁だ、ワタシは君を助けるといった、それなのに―――。」

「ならシオン、こんな身体になった俺はいらないか?」


少しずるい質問、すべての財を投げ売って俺を助けようとした。

その理由は知りえないが、彼女にとって俺はソレだけの価値があるものなのだろう。

彼女の首が左右に振れる。


「そんなのずるい、ワタシにとって君は……忘れられなかったヒトだから。どれだけ君に嫌われようと絶対に手放さない。」


彼女から告げられた言葉ソレはまるで―――。


「それじゃまるでプロポーズみたいだ。」

「嗚呼、本当だ。」


彼女は少し嬉しそうに微笑むとポツリと呟いた。


「ワタシの言葉がプロポーズだとするなら、君はどんな言葉を返してくれるんだ?」


少し意地悪な顔をして問いかけてくる。

彼女に対して愛は未だないだろう。

だがそれでも、ここまで懸命に俺の命を救ってくれた彼女に絆されている。

それにもう俺は彼女のものだ、なら答えは簡単だろう。


「ここまでしてくれたシオンを嫌えるわけがないだろう。俺は足の爪先から髪の一本にいたるまで君のものだ。」


俺がそう言うと唇を塞がれた。

口内にぬるりとしたものが侵入してくる……ちょっと待て。


「シオン……まって……ンッ。」


少女のような喘ぎ超えが俺の口から漏れる。


「嫌だ、待たない。」


シオンは否定的な言葉を投げつけると、唇を重ねてきた。

目が座ってる。ちょっと怖い。

彼女の手付きも怪しい。

彼女の右手は脹脛から滑るように太腿の内側へ、鼠径部を焦らすようになで続ける。


「ふっ……やぁっ……。」


まるで生娘のような声……多分まだ処女だとは思うから生娘であっているとは思うが。

男としての矜持は自分から漏れる嬌声によって崩されていく。

俺の喘ぎ声に満足したのか彼女の手は鼠径部を離れ胸元へ。

胸が小さいのは喜ぶべきことか、嘆くべきことか。

下手したら男のときのほうが胸囲があったんじゃないかと思うぐらいに小さい。

そんな慎ましやかな胸を焦らすように円を書くように指を這わせてくる。

俺が体を震わせる度に鳴る鎖の音、胸元に垂れるようにあった鎖を探し当てると掴んで抱き寄せてくる。


「君はワタシのものだろう、ソレに君が煽るような言葉を言うのが悪い。」


左手で俺の頭をなでながら彼女は耳元で囁く。

そしてそのまま耳朶を噛まれる。俺の口から再び嬌声が漏れる。


「その表情も唆る、寝ている君に何度悪戯しそうになったことか。」


彼女はそう言って、俺をベッドに押し倒した。

後に彼女に男に戻ろうとしないのかと問われたことがある。

その答えは、このとき行った閨事が原因だ。

シオンにひたすら貪り食われて、今の身体が女の身だと思う存分知らされたからナ。

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