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Chime ―チャイム―   作者: 夏影
第二章 ライバル
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第二十三戒『画面上の死闘』

 第四回戦が始まった。一葉日向いちようひゅうがは五回戦と言い張っていたがこれは四回戦である。


 だが、しかし


 誰も動かない。当たり前だ。

 誰対誰なのかだけでなく、ルールも何もかも決まっていない。


 静まってるわけでもなく、わいわいしているのだが微妙な沈黙を感じる人も結構あった。


「この状況で動き出す奴なんて微生物でもいな…」


 久曽神東風きゅうそじんこちがなにかを言いかけたところで『ガキーン』と鈍い音がした。


「―…いたよ微生物以下の奴が!!あはははははー!!!」


「やあ東風くん!どしたんだい??」


「おぉ水玉!!テニスやろーぜ!!」


 水玉はくるくる回って遊んでいたが、しばらくすると東風の方を振り向き


「えーいやだ!」


「え、何でだよ?会ったらテニスは基本だろうが!!」


「何言ってんのー?東風くんテニス下手なのに!!」


「…!!」


 水玉が言ったことは至って正論であるが、テニス好き(?)の東風にとっては一番カチンとくる一言であった。


「んあああ!もういい!!ゲームでいいからテニスやろうぜ!!」


「んー、しかたがないなー、おっけー!」


「いいんだ…」


「よし来た!水玉3DOS出してくれ!ただし…カセットは俺のを使うぜ!!」


 これを水玉の勝手な改造を避ける作戦なのか、久曽神東風頭良くなったな など一が一人で納得している間に東風は二本同じカセットを取り出し水玉に片方を突き付けた。


「おお…カテオニスか…渋いカセット持ってるね!よかろう受けて立つ☆」


 そう言って水玉はパシッとカセットを受け取った。すさまじい速さで自らの3DOSにセットし、東風にも3DOSを投げる。


「うおっと…投げんなよ!!…よし、『ダブルス・デスマッチ』行こうぜ!!」


「いやいや分かってないね!このゲームは『シングルス・シークレットデッドリーコンバット』でしょ!」


「…は!?」


「え、まさか知らないの??その程度でテニス好きを名乗るとはいい度胸であるな☆」


「いやいや…それお前が勝手に作ったコースだろ!!俺はコンピューターと『世界の誰か』と、全キャラクター全レベル使って、敵の組合わせ、コースの組合わせ、全部コンプリートしたはず…!それに裏アイテムやゴールデンキャラクターも制覇しもはや新しい発見なんて無い…!!なのになんだそのシングルス・シークレットデッドリーコンバットって!!」


「へー、本当にしらないのー?シングルシークレットなんとかっていうのは…じゃじゃーん!!この世界最高ブランドサウザターンのラケットを買うとついてくるこのシークレットシリアルナンバーを入れると開くのだ♪」


「待てさっぱりわからんぞ…はやく始…」


「おいおい水玉!!このソフトにシリアルナンバー入力画面なんてねーぞ!!」


「何いってんの?オープニング画面でこのシークレットコマンドを…」


「いいからはやく始めろよ!!てか…」


「うわっ、一が怒った…めんどくせ、はやく始めよーぜ」


「ん、いーよ」


「ではーそのゲームで5回戦すとーと!!」


「えええちょっと待て!それ以前に墓場で深夜にゲームって!!ゴキ…そもそもここは学校の敷地だぞ!?」


「えーいいではないかはじめくん!ポチっとな!!」


 一の言葉には耳を貸さず、3DOSの電源を入れる。すると何故かソフト起動すらしていないのにスピーカーから大音量で音声が流れた。


  『戦闘開始!!』


 …もちろんテニスゲームの対戦画面である。フィールドのイメージは他のものと同じような画質で、宇宙空間をイメージしたデザインで遠近感が若干失われる。


 突然始まったことで15ポイントを早々にとられた東風だったが、すぐ持ち直してゲーム機を前に構えた。


 しかし東風が気になったのはキャラクターであった。コートに立つ二人の姿はあれだけやりこんだはずの東風も画面の中に見たことがない、全52キャラクターの誰の特徴にも一切当てはまらないものだった。東風と覗き見していた菊野は驚いて目を丸くした。


「…おいどういうことだよ…このキャラ俺達じゃねえか!?俺達そっくりそのまんまなんてキャラが、50年前のこのゲームに存在してるはずないだろ!!」


「えへへ☆改造しちゃった」


「あの短い間に!?」


 そんな会話の間にギリギリ表示できる速さの球を打ち付けた水玉だったが…


「…俺が知ってる一番速い球の倍の速度はあったな…お前こそ本当にこのゲームを極めた俺に相応しい対戦相手だ来い水玉!!」


「中二病っぽい…」


「はじめくんが言うなよ☆

 さて、東風くんがその気ならとことんやるよ♪それっ、これが水玉のカテオニスマッシュだよ!!」


「ちっ、先手打たれたな…どんなのが…出るんだ…っ!!?」


 東風と菊野が目を凝らして画面を見つめる。


「えいっ!!!♪」



 投げられたものは…


「えっ!?なんか突き刺さってるぞ…」

「あれってまさか…爪切り?」


「えへ★まさかボールだけで戦おうとかいう庶民的な考えだったわけじゃないよね?」


「お前テニスを何だと思って…!!」


「まあまあそう怒らず…東風くんも持ってるでしょ!」


「え?爪切りを…?」


 とりあえず何個か怪しいボタンを押してみると出てきたのは爪切りではなかった。


「ん?ナニコレ チェーンソー??」


「違います…これリボルバーです!リボルバーってのはまあ頑丈で弾少なくてうるさい銃です!」


「春雨いたのか!あれ?敵サイドじゃ…」


 そう言いながら普段はリターンに使うボタンを押してみるも…



 『カチカチカチ』


「…あり?」


「「「「弾切れだ!!!」」」」


「あ、言い忘れてたけどこれ、武器とかの耐久もあるからね☆」



「「「「遅いわ!!!」」」」


 東風、菊野、春雨、一の四人の声は夜中の森に響き渡る。

 遅かれ早かれやはり弾切れなことにかわりは無いので勝ち目は薄い。


「ちょっと水玉ずるいぞ!平等に武器くれよ!」


「んー?はいよっ半分こね!☆」


「爪切りの半分ッッ!?」


 ――いらねえ…


 東風は武器を諦め、ゲームの本題であるテニスできちんと点を取りに行くことにした。ラケットをなんとか拾い、球を探す。


 ここまでの様子を見ると弾の命中とポイントは関係無く、あくまでも球での攻撃のみ有効、つまりテニスの得点の取り方のベースは残っている。


「あれ?球どこに…」


「こっちだよー♪」


「は?」


 画面をよく見ると水玉がテニスボールをリフティングしている。


「おいー!!返せ水玉ー!!!」


「ん?いーよ…☆☆☆☆☆」


「え?どこに…」


 するとポイントが入った音がした。しかし既にボールは水玉側にある画面になっていた。


「は?え?いつのまにー!!」


「てへ☆壁に跳ね返して東風くんのフィールドに入れたのだ!」


「もうどっからでも変わらなくないか!正々堂々正面から入れろ!じゃなきゃテニス好きを名乗るんじゃないぞ!!」


「えー別にテニス好き名乗ってないはずだけどなー」


「ならなおさら勝たれちゃ困るぜ!」


 何故か大声で叫びながら色んなボタンを連打して、どうやったのかバズーカを取り出した。


「うおお!なんか出た!」


 自分で感動しながらやりすぎくらいにボタンを奥に押し出してネットに近付きバズーカをぶっ放つ。


 ゲームの外の水玉は笑ってはいるが珍しく驚いた様子に見える。


 バズーカのスピードはそう速くないので水玉にはあまり向かないが、そこは威力と気持ちの勢いで補う


「うおおおおりゃああ!!」


 『ドオオンッ』


 ――命中した…!!


 そう感じ咄嗟に駆け寄りとどめをさしに行こうとしたところ、元気な音声が流れた。


「…甘いよ」


「は??」


 その瞬間、画面上から東風は消えた。大半の人は理解に苦しんだが小さい落とし穴が設置してあったのだ。


「まさかフィールドに障害物が無いとでも思ったのー?」


「え!!…それテニスじゃねえよふざけんじゃねえ…!!」


「あはははは!!!!!」


「待て蛙ー!!」


 今度は現実にラケットを振り回し水玉を追いかける東風。当然当たらないが。


「待て…うおああああっっ!!」


 追いかけるうち本物の落とし穴に落ちてしまった。


「東風くんおっもしろーい!!」


「うおおおお絶対いつかテニスで仕返してや…る…!!」


 そう言って落とし穴の中で目を閉じ崩れ落ちた。


「「気絶した!!!!」」


 しかし東風は放置された。


「ふう…次が最終決戦ってことになるのかグギぃやああああアアあああぁあぁあああ!!」


 何かに気付いた菊野は絶叫しその場にいるほとんどのクラスメイトを驚かせた。


「どうしたのきくのん…え、まさかこの足音で叫んだの!?」


「よくそんな早くに気付いたね!時雨ちゃんには無理!」


 廊下の方から確かにミシミシと音がたっている。


「あ…ははは…は…まあ聴力には自信ひいいい…」


[うちのきくのんは野生だからー]


「……花子が…出…ブクブクブク」


「「気絶した!!!」」


 しかし菊野は放置された…。


「足音程度でこうなるとは…」


[さすがうちのきくのん!]


「花子さん…いつその設定にしたんですか…」


「ていうか留目は花子ちゃんだでたよね~」


「廊下は先生の見回りか…?あれ、こんな時間にこんな部屋騒がしかったら俺らまずいんじゃ…」


「『一さん設定忘れてないですか…神様は何処へ行ったのでしょうか』と妖精が呟いております…」


「えっ…あ……」


 足音はどんどん教室に近づいてくる。


「まさか…幽霊の足音ってことか!!?そりゃきくのんが気絶…」


「霜月…お前まで気絶しないよな…?」


 そしてついに教室の自動ドアは誰かの手によって後押しされながら開いた。



「はぁ…はぁ…やっと見つけた…!!!」


 下から灯りが当たってる状態の和であった。その不気味さに霜月は…


「ぎゃああ!!?」


「「ツッキーも気絶した!!!」」


 言うまでもない、霜月夾花は放置されたのであった…。

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