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Chime ―チャイム―   作者: 夏影
第二章 ライバル
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第八戒「能力の減衰」

 世界一の財力・佐倉財閥の娘の佐倉水玉。

 奴を丈夫な密室の中に閉じ込めることで無力化させた。


 …はずだったのだが



「いやいやー後ろ空きすぎだよ!」


 …!!!!!


 いつのまに後ろまで!!?

 音や息も無いのかよ!


 そんな素振そぶり今までしてなかったはず…


 いつもならこのくらい読めるのに…

 ひょっとして相手が佐倉水玉だからか…?奴は機械とか…いや、こいつは人間だったはず。行動を読んだことはあるんだ。



 …じゃあなぜだ?


 なんで今心が読めてないんだよ。これじゃ意味が無い。

 心を読めてもあたしがつらいだけじゃねぇか。今が使いどころだろ。


 肝心なところでこうなっててどうすんだ!



「んー…倒したと思ったんだけどな~…」



 奴はさっきから変わっていない。と思う見た目的に。

 行動している。表情がある。こちらを見ている。会話している。

 なのにあたしの目にはその様子がただ流れ込むだけ。耳にその声が雪崩れ込むだけ。

 何も想像できない。その行動を、その未来さきを、その心を。一切読み取れないまま目に次々飛び込んでくる映像。

 あたしの身体はただのカメラだ。

 見るだけ。聞くだけ。感じない。

 もやがかかってる訳でもないのによく見えない。

 自分すら見えない。


 思考が強張る。

 絡まりまくる複雑な脳。


 さっきから意味不明な日本語が頭で大量生産されてる。なんだこれ。


 読めないんだと…あたしは圧倒的に不利だ!

 価値がなくなって勝ちがなくなるとか親父臭いこと言ったがそうなるのはあたしの方かよ!!


 そんなんでたまるか!駄目だ!


 勝たなきゃ駄目だ!!


「ここで倒されるわけあるかよ…!甘く見んじゃねぇ!!」


「いやでも水玉を簡単に抜け出せる密室に閉じ込めたあたりからすると~まだまだってことだよね!修業してあげようか☆」


 なんだこいつは…

 あたしを修業なんて変な題名つけて嘘の特訓をさせられ弱くしようとか?

 洗脳でもするつもりか?


 …いや、すでに洗脳されたも同然だ。さっきからなんなんだ。

 要するにあたしは随分と馬鹿になったんだな。



「さあてじゃあそろそろ飽きてきたしゲームやりたい☆本当に倒しちゃおー!!覚悟はよいか郁殿ー!!!」


「いいぜ倒すのはあたしだけどなぁっ!!!」


 奴はこの戦いをゲームのように軽く言う。

 あたしにとっては問題だらけで重いし、正直もうやめたい。


 もう何も分からないから逃げたくなってきたんだ。


 でもそうなった奴はいい結末になったのを見たことがない。

 分からないけど戦うんだ。


 それしかないような気がする。


「スー…ハー…」


「ん?どーしたの改めて深呼吸なんて!郁ちゃんっぽくないねー☆」


「スー…ハー…」


「ん?聞いてる?おーい郁ちゃん!!ぼーっとしてると殺しちゃうかもしれないぞ☆」


「スー…」


 うるさい集中できねぇな。黙ってくれ…

「よッッ!!!!!」


「わあおっ!!……!!………」


 何も考えなくていい。考えてるヒマがあったら、もっとこいつを追い込むことができるんじゃないか。


 精神は全部攻撃に使えばいい!


「さっきまでより…早いね………!足にジェット………エンじ」



  『ドドドドドドドン!』


  『ドドドドドドドドドドォォォォドドドドドドンッ!!!』


 無言でいい。言葉なんていらない。


 さっさと負けろ。


  『ガシャン!!』



 …こんなにやっても


  『プシュゥゥーーー……』


 無意味……――



「勝てるわけないじゃん☆」



 …それでも奴に勝てない。


 あたしの努力は無駄だったのか。

 チビ一人を倒せないのか。


 くそっ…くそっ!!




「ねぇねぇゲーム……郁ちゃん?」



 …ホント、こいつはムカつくな。

 思わず笑みがこぼれるくらい。




「馴れ馴れしくすんじゃねぇよ!殺す!本当に殺してやるッ!!!」

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