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Chime ―チャイム―   作者: 夏影
第一章 キッカケ
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第二十八話『斎場』

 斎場は校内にあるらしいのでUターンしてそのまま柑月学園へ。

 再登校みたいな感じで新鮮だな…


 学園のパンフレットによれば普段私が使う門と真逆の方向にある柑月ホールというのが斎場になるらしい。土地が広すぎてそんなのあったっけ、ってなったけど一応見たことはあった。

 全く学校なのに何から何まで全部あるなぁ…逆にうちの学校に無いものってなんだろう。気になってきた。


 斎場か…子供が一人で入るのは変かな…まあ入るしかない。一言くらいしか交わしてなくてもクラスメートなのは確かだし。



 躊躇ためらいながらも入ってみた…のだが


 誰もいない!!?


 一回外に出て入り口のスケジュールを確認したけど、ちゃんと『出合滝モモ』の名前もあった。え、モモって名前だったんだ。そんなのも知らないんだけど…

 あと失礼かもしれないけどあんまり似合わない…。


 どうしよう?係員の人はいるんだけど…って片付けだしちゃってるよ!?え?出合滝さんって大人からも嫌がられてるのか!?そこまで扱い悪くされるのも才能のうちと思わなくもないけど可愛そうだな出合滝さん…!


 お、誰か来た。男子…?知らない人だけど…


「おっ、お前ここの学園の制服だよな?初めまして!オレ出合滝の友達っス!ここに転校してすぐ死んだって聞いたので駆けつけたんですが…迷惑かかりましたよね…すみませんオレの責任もある…かもしれないですすみません。」

 保護者かっ!この人出合滝さんの保護者かっ!!

 いやでも出合滝さんの友達っていうから変な人かとハラハラしたけど話が通じそうな人でよかった…ていうか出合滝に友達っていたの


「ええと、恐らくですけど出合滝が問題発言した結果…でスよね。ホントすみませんッ…でした。」

 なんだろうこの人。語尾に「~ス」を付けるのが嫌なのかな…?

 今日はお葬式だから敬語にするべきなんだろうか…あ、この人ばっか喋ってて私無言だ。

「こちらこそすみません…私の不注意…というかクラスメートたちを更生させられなくて…」

「あ、いやいやオレが悪いっス!悪いです!出合滝みたいな危険な奴を遠くに放り出して安心してたせいっです。もちろんあいつ問題児っすから…ですから」

 …変なところ頑張ってるなぁ。どれだけ『~ス』言いたくないの。もはや微笑ほほえましいよ。

「それで、ちょっと気になるな…出合滝さんってどんな人だったの?」

「んー、知ってると思うけど外国人風に喋りたがって、お節介せっかい焼く人の話聞かなくて、自分勝手でした…」

「…うん。会ってもそれしか分からなかったよ。」

「それならまだマシっですよ、あいついつもどこからかホースを持ってきてオレに大量の水をかけてきたんスよ。しかもホースは十本くらい用意してましたからね」

「…それをうちのクラスメートがやったから出合滝さんは死んだんだけど」

「立場逆だったんですね。あいつのもオレじゃなきゃ死んでたと思うっ…思います」

 まさか出合滝さんがホースで水かけてたとは。意外と想像ついたけど。


 それじゃ日向たちと同じだけどね。同じの方が良かったような気がしてきた。みんなで水かけあって水遊び状態なら誰かに集中して攻撃もされなかったかもしれない。

 今さら出合滝は最初からホースで水ぶちまけば皆と気が合ったんじゃ…なんて考えたって出合滝さんはもう帰って来ないんだけど、ね…


 出合滝さんがいなくても私には日向や水玉とか敵がまだまだいるわけで、危険であることに変わりないか。

「…今後の参考に聞きますけど、水かけられてどうやって生き延びたんですか? 」

「え?あぁ、オレは地方のある政治家の娘の警備ボディーガードでして。防御専門だからそういうのは大丈夫なんスです」

「ボディーガードって本当にいるんだ…どこかの漫画だけかと思ってた…」

「へへっ、そうでもないっすよ?オレの周りには何人かいますし」

「また変わった業界なのね…」


*****


 学校の方でチャイムが響く。もう10分くらい経ってたんだ…

 いつぶりだろう…同年代と普通の(じゃないけど)話ができるのは。いや人生初?まともな相談相手なんていなかったものだからつい話しちゃったな…。

 まあそろそろ葬式始まるだろう。誰も来ないけど…あれ?出合滝さんの家族とかっているのかな…?


 って、え?きれいさっぱり片付いてるけど大丈夫??写真すらないよ??


 後ろでドゴゴゴゴって音してるし…え?ドゴゴゴゴ?



「いやっほぉーーーい!!水玉だよ☆ここで何かやってるらしいから来たけど何も無いね!帰るとしよう!」

「頼むから今すぐ帰ってね」

「あ、和ちゃん!ここでは何をしてるのかい?」

「デアイダ…」


 今度はザアァァァァァァァァ!?



「デアイデビルとかいうのはどこだ?ポキポキを知らない身で何をしているー」

 案の定ホース集団が侵略に来た。

「デアイダルね!?そしてその人 おもにお前が殺したんだよ!反省してよ!」

「ハンセー?長谷ー?」

「は?長谷?」

「刀とかチェーンソーとかホースとか持ち歩いてないで辞書でも携帯したらどう?」

「え?ジショー?」


 とにかく柑月ホールを守らなくては。追い出そう。


「ええとね、今から何もないところで静かに話を聞いて過ごさないといけないっていう、あんたたちにとって最高につまらない儀式みたいなのが始まるんだよ。だから教室でなんかやってて、壊してもいいから。」


 なんだか最近は日向達こいつらの思考力をナメた発言しかしてないような気がするけど思考力か足りてないのは事実だしいいか。


「えーじゃあデアイデビルはー?」

「……その人はもうどこにもいないからそのホース構えるのやめて」

「逃げたんだー追いかけてポキポキしてやるー」

「だからー!!」


 そのとき、さっきの男子の声がスピーカーを通して聞こえた。こんなやり取りの間に式が始まっていたみたいだ。


「えーでは今から出合滝モモさんの葬式始めるっます。進行係が…さっきまではいたんスけどね…代わりはオレ、柏葉かしわば ギンっス。でも誰も聞いてないからこれ独り言ですね。葬式がなんだかオレよくわかってないんですけどまず出合滝さんに一言っス」

 なんと。進行係が帰ってしまったのか。やっぱりこの学園、問題なのは子供だけじゃないんだ…


「出合滝、お前はかなり迷惑だったがいい友達だ。大変なのって意外と楽しいんだ。オレなんかの不注意で死なせてしまってすみませんでした。」

 まだ、ただの独り言を交えながら出合滝さんに感謝や謝罪の言葉を連ねているけど、そこで異変に気づいた。うん。だめだ。こいつらやる気だ。


「今出合滝にメッセージを言ってる奴が…」

「そうだなーやるかーー」


 終わった。柑月ホールの終わりだ。


「全くお前がポキポキなどとアホな菓子を薦めるから犠牲者が」

「なぎはらえー!ぱーとつー」

「うおーーポキポキー!!!」

「ハイドローポンプ!!!!」


 …さあどれが誰のセリフだろうか?

 全部日向が言いそうな感じなんだけど…

 とにかくもうだめだ!残念だけど自分の身の安全が第一みたいだ…!

 このままだと私が出合滝さんのごとく星になってしまう!!


「本当に…生まれてきてくれて嬉しいっス…!」

 銀さんだっけ?あれ銀さんって呼び方だと違うものがイメージされるかな?とにかくギンが涙ぐんで喋り続けている。

 どういう流れでそんなクライマックスな文章になったか知らないけどこのホールが本当にクライマックスだよ!!

 というわけでもう逃げるしか!外から皆を監視するほかない!


「どりゃあああああ!!」

「うおっ…お前らっスか出合滝殺したのは」

「うおーーーデアイデビルーー!!」

「なぎはらえー!!」

「なーぎーはーらーえー!!!」

「えっ、これ死亡フラグってやつっスか?」


 どうしよう凄い心配なんだけど一歩でも踏み入ろうことなら即死な気がする。

 今まで出合滝さんのホース10本に耐えたギンなら30本くらいなんとか…してほしい頼むから!なんとかできると信じたい。


「いえーい!水玉の超高圧洗浄ホースだよ!」

 アカーーン


 いや水玉はヤバいよね?超高圧とかついてるけど大丈夫なの??

「初対面の奴を心配するとかどこまでも人が良いよなお前。別に死亡フラグなんて元々立ってねえから大丈夫だ。壁越しだからって油断するんじゃねぇぞ?」

 本人が死亡フラグとか言ってたから心配なんだけど…。


「どうしたんスか?かなりヤバい集団スね。どおりで出合滝が死ぬ訳っス」

「!?」

「全部防御しながら、ここから見て裏側の出入口から逃げて回ってきたんスよ。何も不思議なことはないっス!」


 …私の前に現れるのは常に超人だな…。


 そう思いながらホールの逆方向へ少し後ずさる。

 私が一秒ほど前に立ってたあたりを目掛けて大量の水やガラスの破片、壊れた椅子などが飛んできた。ついに壁は破壊されたんだ。まあこいつらに暴れさせた地点でこのホールは終わっていたのだから今さら驚くことはない。

 とりあえず斎場が無くなったからこれで残念ながら出合滝さんのお葬式は終わりだろう。いかにも出合滝のお葬式らしい、出合滝の人生と同じ終わり方だった。このホールは出合滝さんのものでいいや。

 しかし私は後ずさらなかったら死んでいたのではないだろうか?いつも死と隣り合わせの仕事だなぁZ組のまとめ役って…。私もボディーガード欲しいな。

 自称ボディーガードのギンは、もうどこかへ歩いている。帰るのかは知らないけど。

 あの人は出合滝さんへのメッセージのとき、嘘か正気か知らないけど確かに泣いていた。出合滝さんが変人だったからどこかで人の死という、重い現実を軽く受け止めていたけれど、始めて心から死を理解できた気がした。

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