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Chime ―チャイム―   作者: 夏影
第一章 キッカケ
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第十六話『刻邑市』

 私は大して頭が良くない。…だからナンプレやルービックキューブとかそういうものなら頑張れば出来るんじゃないかって…ずっとやっていたら、だんだん出来るようになっていきました。

 でも、そんな私でもどうしてもできないものがあります…


「はぁ…疲れた…あ、粉雪さん何やってるの?」

「わっ…和ちゃん!え…ええと…これは…知恵の輪、…です」

「へぇ…これが知恵の輪なんだ…初めて見たよ」

「うん…その、これは二か月前に買ったんだけどまだ解けなくて…」

「ちょっとやってみたいな…貸してくれる?」

「いいよ!」


~2時間後~


「…まさか主人公が死んじゃうなんてね…女の子の夢ぶち壊しじゃん…」

「私はみたことあるよ。四年生の頃かな…びっくりしたよ、ブロケードは結構好きだったんだけど…そういえば、知恵の輪どうなったの?」

「ずっといじってたんだけど…ごめん全く解けなかった」

 和ちゃんは20分くらい頑張ってくれたけど、途中で疲れちゃって息抜きにテレビをつけたら懐かしい番組の再放送に魅入っちゃったのです。それでも見ながらやったんだけどもう2時間もやらせたことになっちゃうなぁ…

「とりあえずお風呂行こうか…」

「あ、うん…ごめんね変なものに付き合わせちゃって……」

「大丈夫…知恵の輪って珍しいからつい…」

「そっか…あ、準備するね」

「私は先トイレ行ってこようかな…粉雪さんちょっと待ってて」

 そう言って扉を開けて和ちゃんは廊下に出た…んだけど


「あ…水玉…」


 ばったり水玉ちゃんに会っちゃったみたいで、すぐに扉を閉めてしまいました。

 でも、外から機械の音が聞こえてきます。


「なーにやってるの~!☆」

 水玉ちゃんはドアを突き破って入って…あっ

「えー…えーと…!こんにちは水玉ちゃん…その…知恵の輪やってるの…」

「もしかして出来ないの?貸して!」

 こうして知恵の輪を受け取りカチャカチャと動かす。…十秒後、水玉が口を開きました。


「うーん…随分丈夫だなぁ~!こうなったらペンチでじ開けてやる☆」

「やめろ」

「うーん…だめか…じゃあ爪切りでぶった斬ろう☆」

「…もういいか知恵の輪で済むなら…粉雪さんは大丈夫?」

「うんいいよ。家にまだあるし…」

「よし知恵の輪攻略だあぁぁぁぁ☆」

「うん…さらば知恵の輪…」




「……あれ?水玉…どうしたの?」

「う~ん…切れなかった」

「水玉ちゃんに出来ないなんて珍しいね…」

「どういう素材を使うとこうなるわけか…まあいい、他の手口で破壊しよう!かかってこい知恵の輪!!」

 やっぱり普通に解くっていう発想は無いようです。できれば誰かが本当に解けたところを見たかったんだけど…


  ガチャン


 そのとき、菊野ちゃん達が扉を開けました。

「なあ紫陽花たちって風呂行ってなかったよな?貸切り風呂使うぞ………ん?なにやってるんだ?あ、それってまさか!」

「あ、菊野ちゃん知ってるの?」

「知恵袋だよな!!!昔やってたからよく知ってるぞ!」

「いや、よく知ってたら知恵の輪を知恵袋なんていい間違えないと思う」

「知恵袋貸してみろ!」

 菊野ちゃんは知恵袋…じゃなかった知恵の輪を受け取って解き始めました。


「お前みたいな乱暴トウモロコシが知恵の輪を真面目に解いてるってなんか違和感あるよな」

「…グスッ」


 白夜さんの悪口…でしょうか?それに傷ついたのか急に知恵の輪を床に落とし、うずくって泣き出してしまいました。

 すると今度は春雨くんが拾っていじりだしましたが、全然解けなくてついに本気になったみたい。


「零点一つ星警察の名にかけて…必ずやこの知恵の輪を解いて見せます!!!」

「ここで中二病モードかよ…」

「はあぁああぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!」


 フリスビーを振り上げて勢いよく知恵の輪にぶつけましたが、かんっと高い音が上がっただけでした。…ですよね。


 あ、また誰かが入っ…

「ひっ…向日葵!!」

「やっほー紫陽花!なんか話すの久しぶりだね!あ、それってあの知恵の輪?」

「うん…と、解いてみる?」

「もう紫陽花ったらさーもっと自信もって話しなよ!多分無理だけど貸してみー」

 粉雪こなゆき 向日葵ひまわりっていうのは私の妹。

 いつも便りになるし、私よりずっと賢いとっても大事なお姉ちゃんみたいな存在なんです。……妹、なんだけどね。


「うーんやっぱり難し~い!!いやあ…こんなの誰が考えたんだろ」

「向日葵ありがと。もう少し頑ば」

「おっ、粉雪何やってるの?」

「あ、久曽神きゅうそじん!知恵の輪っていうんだけど…」

「へぇ!よっしじゃあ俺が…」


~10分後~


「ああ…なんか増えたね」

「菊野ちゃん…東風くん…」

「いや紫陽花そう深刻に考えないでよ?こいつらが馬鹿なだけだし…」

「う…うん…そうかな…?」

「そうだよ。ほっとけ。じゃあリベンジいきますか!ほら皆も考えよ ここまできて解けないのは悔しいじゃん」

「やるやるやる殺る~!!」

「水玉はやめて!!」


~翌朝~


「Zzz…」

「Zzzz…」


「はぁ…寝不足だぁ…」

「だね…」


 あれから夜中中ずっと順番に起きて頑張りましたが、ゴールは未だに見えてきません。


「ぐ…ここまできて出来ず仕舞いは悔しいよな…」

「じゃあそろそろ水玉に任せちゃいなよ☆」

「!!!??」


 突然水玉ちゃんが飛び起きました。片手に黒い筒を持っています。


「み…水玉…?」

 和ちゃんが目を丸くして三歩ほど後ずさりしたあと、叫びました。


「に、逃げよう、皆!死ぬよ!!!!」

「えっ…逃げ…?」

「いいからはやく!!!」


 必死に声を振り絞っています。


「知恵の輪を攻略するのは水玉だあぁあぁああぁ!!!」

「なんなんだよ?和!何が起きるんだ!!?」

「あ…あれはね…―――」


「わぁっ!!???」

「剣岳さん!?粟倉!!?」



*****


 …あのとき私は初めて首の根っこを捕まれて、窓から飛び降りるという感覚を味わいました。

 剣岳さんが皆を連れ出してくれたんです。

 そのおかげで皆は駐車場に寝そべっていて、全員無事です。あの二人が助けたのか他のお客さんたちもいます。


 でもホテルは…


「はぁ…はぁ…全壊、か…」

「見事に崩れたな…死者がいないだけマシだな…」

「…で、なにが起きたんだ…?」

 菊野ちゃんが緊張気味に言ってます。

「ようするに…あれは…『ダイナマイト』っていう爆弾だよ」

「ダイナマイト…!?」


 どおりでこんなことになるわけです。


「うぇい☆知恵の輪きっと壊したよ!!」

「多分知恵の輪もうなくなってるよ…それよりホテル壊すなよ!!!」


「え?あ、本当だね☆皆生きてるから失敗したかと思った!後で直しとくからへーきへーき!」

「は!?皆死ぬ前提でやったの!!?」


「あ、あれは…」

「係員さん…かな?」




「「「 速やかにお帰り下さい!そしてもう二度と来ないで下さい!!」」」






*****


 こうして柑月学園第三学年Z組第二回(非公認)修学旅行は終了しました。

 刻邑市の滞在期間はたったの5日間でした。

 

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