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死にたがり社不の不死転生  作者: あずみ


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第四生 獺

タイトルは難読漢字。読めますか?

答えはエピソードの後、後書きで!

 再び意識を取り戻したとき、私は水中で、何かに力強く抱き抱えられていた。


 そして、視線の先には傷口から溢れさせながら水底に落ちていく、()()()()爪狸(つめたぬき)


 自分の死体を目にする、慣れぬ嫌悪感はありながら、状況を理解しようとして体が固まる。



『私はカワウソみたいな奴らに殺されたはず…。今までと同じなら殺された相手に乗り移ると思うんだけど…。』



 周囲はカワウソ(取り敢えずそう呼ぶ)の群れ、しかし自分は何に抱き抱えられているのか。


 くるりと後ろを振り返ると、私を抱き抱えているのは、自分より数倍大きなカワウソだった。



「あぁ…!坊や!すごいわ!!あなたの刃であの大きな獲物を仕留められたのよ!!」



 そのカワウソと目が合うと、大層感動した様子で私を誉めたてた。



『坊や…?』



 呼ばれたことない人称に戸惑っていると、今までと同様に、映像のようなものが頭を駆け巡った。


 カワウソに生まれ、兄弟とともに群れの中で母に育てられてきた記憶。そして今日は、群れでの狩りに初めて連れていって貰える日だった。


 多産のカワウソにおかしな表現ではあるが、同じ日に生まれた兄弟の中では、一番最初に水の刃が使え、体も大きかったため、「にいちゃん」と呼ばれていた。


 その成長の早さから、今回の狩りへの同行が認められて、母に抱き抱えられながら泳ぐ魚に魔法を放ち、狩りに参加していた。


 そんな中、水中では自分たち以外そう見ることない、毛皮に覆われた生き物が泳いでいた。


 その泳ぎに水棲生物のような早さはなく、群れは特大の獲物としてその生き物を捉えた。



 これが、()()()()爪狸(つめたぬき)だった。



 生きると覚悟を決めた途端に、命を奪われたやるせなさと、母に抱かれているのを羨ましく眺めた、あの子供のカワウソを乗っ取った低劣さに眩暈がした。


 子供のカワウソが放った、まだおぼつかない小さな水流の刃が爪狸(つめたぬき)の喉を切り裂いたのだ。



「坊や…?どうしたの…? ほら!あなたのお手柄だから半分貰えたのよ!食べていいのよ!」



 私が呆然としている間に、爪狸(つめたぬき)は肉片にされ、成果の分配がされていた。


 母はその中から、仕留めた一撃のご褒美として、キラキラしたものを差し出してきた。



『魔石だ…!!!』



 浅ましくも、また美味の記憶が呼び起こされ、それが魔石であると認識できた。


 差し出す母の前足から魔石を直接口にいれ、夢中で味わう。


 小さな口には幾分大きかったようで、頬を膨らませながら存分に転がし、噛み砕き、飲み下す。


 もう幾度か経験した、自身が強くなる感覚がする。同時に実の身体にも変化が現れた。


 ビキビキッと、自然にはあり得ない速度で身丈が伸び、身体の各部位が成長する。


 変化が終わると、母の1/3ほどだった体積が、半分ほどまで大きくなっていた。また、足の水掻きの進化や、周囲の水を不思議な力で操作できるようになったことが確認できた。


 試しに母のもとから少し離れ、高速で体を回転させてみたり、何もいないことを確認してから水の刃を放ってみた。


 群れの大人に比べれば劣るが、魔石を食べる前より素早く動けるようなり、刃の大きさ、早さも2倍程度になっていた。



『これ以上の威力をある程度防げてたんだから、爪狸(つめたぬき)のデカイ爪ってなかなか良い性能だったんだな。』



 もっと、再び経験した死の感触とか、乗っ取った子カワウソへの罪悪感とか、カワウソが言葉を喋っているとか。考えべきことはあったのだろうが、ふと、1つ前の体を思い出してしまった。


 爪狸(つめたぬき)の方がカワウソより1.5倍ほど体が大きく、備わった大きな爪を、例えば地上で正しく使えば、カワウソを仕留められずとも、群れを追い返すぐらいはできたはずだ。



『生きるって気合いいれたのに、こんな情けないことってないよね…。』


 気持ちに任せて、野生の生存本能ではまずとらなかったであろう、水への飛び込みにより無様な死を晒してしまったなるせなさが、再度押し寄せて来た。


 ウジウジと下を向き、ひとまず母のもとへ戻ろうとしたとき、『声』が辺りに響いた。



『思念ヲ検知。 対象:ウエダ ルカ…。 蓄積情報ヲ 確認…。完了…。 生存プロトコル 二 基ヅキ 種族ノ派生ヲ実行…。』



 涼やかで、感情のこもっていない女性の『声』。聞こえたのは私だけではないようで、母や群れのカワウソたちも周囲を警戒して攻撃体勢をとった。


 そのとき、私の体が光り、再度変身を始めた。先ほどの成長とは異なり、身体の感触が遮断され、シュワシュワとした光の泡のようなものが体を包む。


 あまりの眩さに目を閉じて暫く耐えていると、光が収まっていった。


 目を開いて、慌てて体を確認すると、大きさはほとんど変化ないものの、毛皮の柄が微妙に変化し、体のフォルムが幾分か引き締まったように思える。


 そして、何を置いてももっとも大きな変化は前足であった。



 泳ぎに特化した水掻きはそのままに、水銀に煌めく大きな爪が出現していた。


 体の半分はあるかと思うほどの巨大な爪は、鋭利な切っ先を水面から射し込む光で、煌めかせていた。


 …。



『な、なにこれぇぇええ!!!』



 目を白黒させて、突然生えた爪を震わせていると、私の変身を確認した周囲もざわめき始めた。


 より近くにと集まるカワウソたちの中から、今回の狩りを主導した、群れ長の息子が泳ぎでてきた。


 カワウソの基準としては精悍な顔つきをしており、備わった厳しい瞳で私の顔と爪を交互に見つめたあと、力強い声で高らかに宣言した。



「我らが神により、幼き英雄にその御力の一端である、荘厳な爪と素晴らしき名を授けられた! ウェタルカよ! 私はその力を我らと共に振るうことを期待する!」


 一呼吸おいて、皆が群れ長の息子が宣言した言葉を飲み込むと、ワッと歓声が上がった。


「英雄だ!」 「すごい爪!」 「今日は宴だ!」 


 カワウソたちが私めがけて押し寄せ、口々に喜色のこもった声をあげる。



『なに?!なに?!全部なに?!まだなにもわかってないから!待って!待ってー!!!』



 私の理解を全て置き去りにされながら、もみくちゃにされる。


 元々の幼いカワウソの気力か、私自身の混乱か、どちらのせいかは解らないが、騒ぎのなか、めちゃくちゃになった私の意識はそこで途切れた。

タイトルの難読漢字は、「かわうそ」と読みます。

私は入力してはじめて知りました。

後ろに「祭」が付くお酒、美味しいですよね…。


今後の難読シリーズもお楽しみに!(予定はありません。)


★閲覧いただき、ありがとうございます。★


ラストだけ決まっており、途中は構想しながらの投稿ですので、修正の可能性はあります。


拙い文ですが、最低週に一回は更新したいとおもっていますので、今後もいらしていただけると嬉しいです。


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