第14話:転校生、砂山悠一
夜月神社に夏を知らせるセミの鳴き声が響く────
相変わらず満流は輝夜の神社で同居している。いわゆる建前としては「修行」だ。よその神社で修行という形になっているのだ。
「もう満流君がうちに来てから2か月が過ぎるんだなぁ……………。どうだ?あれから悪鬼たちは。」
輝夜の父が唐突にそう話を切り出した。
「はい、おじさん、これを見て下さい。」
そう言って満流は輝夜にカードを並べるように目で合図をした。
「お父さん、これが今までに揃ったカードよ。」
輝夜がカードをズラリと並べる。
「うーん……………。あとはポーンが3つとキングとクイーンか。」
「やっぱり全部揃えるべきなのね?」
「そうだな。7つの封印解除もまだ3つ、こっちはそのまま進捗なしか……………。」
「ん…?あれ?」
輝夜が不思議そうにしていた。
「どうした?輝夜。」
父と満流が声を揃えて言う。
「うん…。お父さんに7つの封印の話をしたっけ?って…。」
疑問を口にした。その言葉を聞いて満流が
「え?オレ、てっきりお前が親父さんに言ってたんだと思ったんだが…?」
と言うではないか…。輝夜も満流もお互いの顔を見合わせた。すると
「ハハハ!そんなに驚かないでいいよ。」
父がそう言った。そして続けて
「ほら、入っておいで。」
と声を掛ける。
すると〝ふわっつ〟と二つの光が輝夜たちの目の前に現れた。
「え?駒たち?」
そう、二人の前に現れたのは狛犬のケンとダナだった。
「お前たち、私がこの二人の気配に気付かないとでも思っていたのかい?」
父にそう言われて〝ハッツ〟とする二人。
「ま、そういうことだな。」
と、ケンが言って隣でダナが頷いている。もちろん、輝夜の前で現れるダナは女の子の姿だ。
「じゃあ、お父さんは私達と同じだけ、現状を把握してるってことでいいのね?」
「そうだな、お前たちの手札だけがわからなかったがな。」
輝夜はホッとした。これからは満流と父とそして駒たちとで作戦会議が出来る。こんな力強い味方はいないんだと…。
「しかし、あとの封印について、何か情報はないのかな…。」
「残念ながら僕たちも知らないんだよ…。輝夜のお母さんは俺たちにも辿りつけなかったからさ。」
ケンがそう言うと父は静かに
「そっか……………。」
と、一言だけ言った。きっと母の事を思い出したんだろう……………。
輝夜は手がかりがないのが心配だった。
「輝夜、この前、媒体がないのにお前を突然襲ってきた悪鬼がいただろ?あいつのようにお前の妖力目当てで近付いてくるんじゃないか?」
父が冷静にそう話をした。だが輝夜は
「悪鬼でしょ?ただカードが揃うだけで、封印を解くのに繋がるかどうかは……………。」
輝夜の言葉にはどこか気力が弱いものを感じた。
「何だよ、お前らしくないな、弱気で。今は手がかりがなくたってカードを集めたら何か見えてくるかも知んねぇーじゃねえか?」
満流が輝夜のもどかしい態度に喝を入れるかのように口を挟んだ。
「ハハハ!そうだよ、輝夜。悩んだって仕方ないんだ。今、出来ることからしようじゃないか。」
「お父さん…。」
「そうさ、大丈夫だ、僕たちもついてるんだから。」
ケンがそう言うと隣でダナもうなずいていた。
そんな皆を見て輝夜はちょっとうるっとしていた。
「みんな……………。ありがと。」
こうして夜月神社の夜が更けていった。
翌日、
青葉学園の輝夜のクラスに転校生がやってきた。
ひょろっとした男の子だ。前髪が長くて目にかかっていて表情が今一つ読みとれない。髪の色素が元々薄いのか、光の加減か、彼の髪は時々銀髪に見えた。
「砂山悠一君だ。」
「砂山です、よろしくお願いします。」
緊張しているからか、どうやら声もか細い。皆、口にはしなかったが、大人しい子が来たと思っているだろう。
「席は…。あ、夜月さん。手を上げて。」
先生に呼ばれて輝夜は右手をそっと上げた。
「砂山君、彼女の横の席が空いているのでそこに座って。」
「はい、先生。」
そう返事をして悠一は輝夜の隣にやって来た。
「よろしく……………。」
悠一が輝夜にそう声を掛けると、輝夜は口角を上げて〝ペコリ〟と頭を下げた。そして悠一に声を掛けた。
「もう教科書とかは全部揃っているの?」
「あ…、まだ。」
「そっか。じゃあ、私のを一緒に見ましょうか。」
そう言って輝夜は机をグイグイと寄せた。
「あ…ありがとう。」
悠一がそう輝夜に告げると
「どういたしまして。当面不便でしょうし、隣なんだから頼ってくれていいわよ?」
と声をかけた。悠一は前髪の隙間からチラリと見える輝夜に大きく鼓動が揺れた。
それ以降、何かと悠一に世話を焼く輝夜。
当然、面白くないのは満流だ。昼休憩に輝夜を学食に誘いに来ても輝夜はおらず、クラスメイトに聞くと転校生と共に学食に行ったというのだ。
〝ちぇ、輝夜のお人よしが発動か……………。アイツ、自分の立場わかってんのかよ?下手に一人で行動してたらまた奴らに狙われちまうぞ?〟
満流は輝夜を追って学食へと向かった。だが、満流が目にしたのは転校生と楽しそうに笑っている輝夜だった。
「は?何だ?あの笑顔はっ!俺にも最近見せないくせにっ!」
輝夜たちの元にダッシュする満流。大勢の生徒たちをかきわけて二人の元に辿り着く。
「ちょ、お前っ。こっちこい!」
そう言って満流は輝夜の腕を引っ張った。
「満流?!急に何なのよ?!」
だが、満流からは返事がない。輝夜は共にいた悠一の存在が気がかりだったので声をかけた。
「砂山君、ごめんね。先に一人で食べてて?」
「ああ……………。」
そして満流と共に学食から離れて学校の中にある庭園へと向かった。
「ちょ、満流。何なのよ、急に!」
そう言って輝夜は満流の手を振り払った。
「お前、一人でいたら危ないってわかってんだろ?」
「学校の中だし、大丈夫よ。」
「そんなの、わかんねえじゃねえか!」
満流はかなり怒っている。それは輝夜にも伝わった。
「ねぇ、それって心配してくれてるの?それともヤキモチ?」
輝夜に言い当てられてドキッとする満流。
「は?ヤキモチ?心配してんだよっつ!ったく……!」
輝夜はちょっと納得行かないけど、それでも心配してることも事実なんだと思った。
「学校の中だから、何かあったらすぐに満流が駆けつけてくれるんでしょ?」
「そりゃな、お前の気配を追うことは可能だからな。」
「だったら……………、しばらくは彼の面倒を見てあげたいと思うから、満流も仲良くなって?」
「は…はあ!?」
「そういうことで!」
そう言って輝夜はニッコリと笑った。
〝クソッ、こういう時に笑うのズルくね?ったく……………。〟
「わかったよ……………。」
満流は結局、輝夜には甘かった。
そしてそれ以降、どうやら三人で行動することが増えた。それで満流は気付いたことがある。
どうやら悠一も輝夜に淡い気持ちを抱いているようだ。
〝チッ、俺の方がずっと輝夜と共に過ごしてきて頼られてるんだからな、〟
ということでより一層、悠一を敵視していた。
悠一の方はというと
〝輝夜さん……………、あなたのように優しい女性はそういない。〟
すっかり輝夜にハマっているようだ。悠一の方も満流を敵視していた。輝夜がいない二人っきりの時にお互いに激しく火花を放っていた。
そんな時、悠一は輝夜と満流がただの幼馴染とは思えない絆がある事に気付く。
〝輝夜さん……………あなたは彼を好きなのですか?〟
悠一が心の中でそう思った時、彼の足元の影が小さく揺らいだ。それはほんの一瞬だったので輝夜も満流も気配を感じはしたが、それがどこからなのかを辿る事が出来なかった。
そして三人で帰宅していた時のことだ。
輝夜が怪我をした時、咄嗟に満流が輝夜に触れたのを目撃した悠一はとうとう自身の気持ちを抑えきれず、彼の足元の影が大きく揺れていきなり巨大化した。
幸い、いつもの公園の近くだったのでそのまま公園で対峙するつもりで二人は視線を交わした。今回も満流が誘導し、その間に輝夜は結界と自身が戦うために覚醒する必要があった。
〝砂山君、気絶してるのね……………。〟
悠一の状態を確認してから輝夜は悪鬼退治に集中することにした。
「神刀、────影切!召喚っ!」
そう言って彼女は手の平から影切刀を召喚した。その間、満流は悪鬼を固定するために霊札を取り出して投げ放った!
輝夜は影切刀を両手で構えて一気に悪鬼の影に刺す!
「悪鬼!────断つっ‼」
そう言って霊力を影切刀を通して流し込んだ!
〝ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……………‼〟
悪鬼は悲痛な悲鳴を上げながら昇天した。
そしてカードが二人の間に舞い落ちる…。もうカードをひっくり返さずともわかっていた。〝ポーンだ。〟そして輝夜がカードを手に取った。
「え…っ?」
なんと!カードが二枚になっていた。
「え?何でだ?」
「わからない…。それよりも見て!」
そう言って輝夜は満流に二枚のカードを見せた。
そこには「ポーン」と「ナイト」のカードがあった。
「は?!ナイト??って、もう2枚持ってるよな?」
「うん…。それにこれも黒のナイトだよ?」
二人はわけがわからないまま顔を見合っていた。このカードを合わせると黒のナイトが3枚になるからだ。
「う…う、ん…。」
悠一が目を覚ましそうだった。
「とにかく、これは帰ってからだな。」
「ええ、覚醒解除するわ。」
「そうだな、」
二人がそう話していると気絶していた悠一が〝ユラリ〟と起き上がって二人の元にやってくる。
「砂山君?」
何だか悠一の様子がおかしい。輝夜と満流は悠一に対して警戒する…。
ご覧下さりありがとうございます。新しく登場した砂山悠一。彼は敵なのでしょうか。味方なのでしょうか…。次回をお楽しみに!




