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【完結】刻の檻刀シリーズ①偽りのチェックメイト-チェスのカードが導く断罪の儀-  作者: 慧依琉:えいる


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第12話:明かされていく真実と深まる疑問



二人は言葉を交わさず、ただ静かに並んで歩いていた……………。

満流は輝夜の体調がまだハッキリしないんだと思っていた。そして輝夜は満流に対してどう接したらいいのかわからなくなっていた。


〝満流は小さい頃からずっと一緒だった。いつだって私のそばにいて、いつだって私を守ってきてくれた。その満流のさっきの表情がとても冷たくて、今まで見たことのない満流だった……………。どうして?私がいないはずの満流を見たことに関係しているの?〟


そんな時だった。



「なあ、輝夜。やっぱお前まだ調子が悪いんじゃないか?」


そう言って輝夜の顔を覗き込んだ……………。考え事をしていた輝夜は、目の前に満流の顔が〝バッ〟と現れたので驚いた。


「び、びっくりした。」



だけど満流は


「お前が無口だと心配になんだよ……………。」


そう言って満流は輝夜から距離を取りつつ、照れくさいのか頭をかいた。そんな満流はいつもの満流だ。




「ねえ……………、満流。」


輝夜は思い切って聞いてみることにした。


「ん?」


「あのさ、満流は遠征には行ったの?」


そう言って満流の顔を見上げた。満流は黙っていた。



満流が返事をするまでには数秒程度のことだったのだろうが、二人にってその時間はとても長く感じた。そんな二人の間に生ぬるい風が通り過ぎた。風は夏の熱を帯びた匂いがした。


「ああ。」


「……………。そう…。」



〝────満流、嘘を吐いた……………。?〟



輝夜の手の先が微かに震え、体温を感じることさえ難しく感じた。だが、満流は気付いていないようえ輝夜に声をかけた。


「どうした?あの日、遠征先でのこと、話しただろ?」


満流が話ていることに輝夜は集中出来ていないようで目がオロオロしている。


「うん…。そうだったわね。」



輝夜の様子が明らかにいつもと違う。それは体調のせいなのか?満流は訝し気に輝夜を見つつ、


「お前、やっぱり調子悪そうだな。」


そう言って輝夜に手を伸ばしたが輝夜に伸ばした手を払いのけられた。


〝────?〟


びっくりした顔の満流。輝夜は慌てて


「大丈夫よ、家に帰ったらちゃんと休むから。」


と言ったが、満流はいつもと違う輝夜の対応に戸惑っていた。



そんな二人に容赦なく空は雨を運んできた……………。



「ヤベッ!本格的に降ってくる前に急ごう!」


そう言って満流は輝夜の手を取って走り出した。輝夜は心あらずな様子でただ満流に手を引かれて走っているだけだった。




〝満流が………嘘ついた。〟 


輝夜は胸の奥で〝チクリ〟と針が刺さったかのような痛みを感じた。輝夜の心の中はそのことがグルグルと回っていた。

今までどこの誰よりも信頼してきた幼馴染の満流。だけど、その満流が輝夜に対して「嘘」をついたのだ。輝夜は唇をギュッと噛んで、


「ごめん、今夜はご飯自分で何とかして。私、もう休むわ。」


「ん……、ああ……………。」


満流はそれだけ輝夜の体調がまだすぐれないのだと思ってそう返事をした。満流の足元には小さく揺れる短い影……………。



輝夜は自分の部屋に戻ってから母がくれたお守りをギュッと握りしめていた。


〝お母さん……………。こういう時、私はどうしたらいいの?満流を信じたいのに、嘘を吐かれて…。これじゃあ、信じきれないじゃない…。私、とっても不安だよ…。〟



だが、当たり前だがお守りからは何も返事はない。輝夜の溢れる涙を堪えきれずその頬を伝う。母を亡くしたあの日以来、こんなに泣くことがなかったのはいつだってそばに満流がいたからだ。なのに、今はその満流のことでこんなに泣いている輝夜……………。頭の中が混乱して何も考えられなくなった時、


どうやら輝夜はそのまま眠ってしまったようだった。外は本格的に雨になったようでシトシトと降っていた雨がザーザーと激しく音を立てている。




突然、輝夜の前に銀髪のイケメンがどこからともなく〝スーッツ〟と現れた。そう、狛犬のダナだ。


「はん!アイツが泣かせたんだな…………。」


そう言って薄っすらと輝夜の頬に残っていた涙の跡を優しく拭った。


「なあ、輝夜。アイツなんて忘れて俺にしなよ?俺はお前が産まれてからずっと見てきたんだ。アイツよりもお前の事をよく知ってるんだぜ?」


そう言ってダナは輝夜のおでこに軽くキスをした。



「ダナ…。」


「なんだよ、ケン。見てたのか?悪趣味な奴め。」


「ああ、お前が光になってここへ飛んで行くもんだから気になってな。」




ダナは深くため息をついた。そんなダナに対してケンも深くため息をついてから


「お前の気持ちはわかるが、俺たちと輝夜とは生きる次元が違うんだ、諦めろ。」


同じ仲間としてケンはダナに言ったのだ。




「わかってるさ、だけどこんな弱り切った心を抱いた輝夜を見てらんない。」


「それはお前の役目じゃないだろ?〝キング〟の役目だ。」


ケンのその言葉にダナはピタリと止まった。



「ああ……………。輝夜はクイーンだから産まれた時点でキングのものだ。それは充分わかってるさ。」


ダナは悲しそうに輝夜を見つめた。


「俺たちは輝夜の使徒、踏み込みすぎるなよ。お前が傷付くのが目に見えてる…。」


「……………。」




次の瞬間、二人はある気配を感じ取った。

ケンとダナは顔を見合わせてその方向へと向かうことにした。


「これはまた結界を誰かが破ろうとしてるのかもしれない……………。」





そうして二人が向かった先にいたのは満流だった。

雨の中傘もささずに。だが、濡れている様子もない。



「お前?ここで何をしてる?」


揺らめく影を伴った満流がふわりと振り向いて


「オマエタチニ ヨウハナイ……………。ドケ!」


そう言って満流は駒たちを払いのけようとした。



「な…………っ!お前っ、憑かれたか────!?」


「こんな姿を輝夜に見せるわけにはいかない!」


ケンとダナは満流のこの姿を輝夜に見せまいと二人で満流に立ち向かおうとした。




「……………?………カ・グ・ヤ……………?」



憑かれた満流が〝輝夜〟という言葉に反応した。




「コイツ、自我が残ってる?」


ケンとダナはそう呟いた。そう、自我が残ってるなら内側にいる「満流」に呼びかければ何とかなるかもしれない。


「おいっ!目を覚ませ!満流!輝夜を悲しませるな!」


「カ・グ・ヤ……………」


満流は頭を抱えながらその名前をたどたどしく連呼した。


〝なんだ?満流の中で、どれだけ輝夜の存在が大きいんだ?たかがナイトのくせに…。〟


何度目かの輝夜の名前を呟いたあと、満流は気を失った。



「おいっ!満流!しっかりしろ!」


「ケン、気を失っただけのようだ。」


二人はホッとした。これは輝夜に報告すべきか…。二人は悩んだ。このまま満流の中で悪鬼を抑え込めれば問題ない。きっと満流は輝夜のために抑え込むのだろう。


二人は様子を見て必要になれば輝夜に話をすることに決めた。


「しかし、満流もやっかいな想いを抱え込んでんな。」


「は!俺と同じにしないでくれ。」


ケンの言葉に敏感に反応するダナだが、



「や、同じだろ?お前もコイツも、同じ〝ナイト〟だ。決してキングに成り代われない。」


「わかってるさ。それよりもさ、早くコイツ寝かせに行こうぜ?」


そう言って二人は満流を部屋に寝かせに行った。雨がこれだけ降っているのに満流は一切、濡れていない。狛犬である二人は神力で身体の周りに防御膜を張っているから濡れないのだが、人間である彼はそうはいかない。二人は満流には何故濡れていないのか不思議だった。満流にも何か隠された能力があるのか……………?








翌朝、輝夜はベッドで目を覚ました。


〝あれ?昨日…。お守りを握りしめてその壁にもたれてそのまま眠ってしまったような気がしたんだけど…。〟

不思議だなと思いながらいつもの朝を迎えた。そして境内の掃除に外に出ると満流がやってきた。



「よっ!輝夜。」


元気な満流。いつもと変わらない満流。その様子に輝夜は悩んでいたことが馬鹿らしくなって


「おはよ。」


と口角を上げて返事をした。その様子を石造の駒たちは静かに見守っていた。







そしてあっという間にまた放課後…。


満流の部活を教室で待っていた輝夜にまたしても山上が近付いてきた。



「また君か…。ここで神凪君を待っているのか?」


「ええ…。そうですが…。」


〝この先生、私には関わりがないはずなんだけど……………。〟そう思いながら輝夜は答えた。だが、その答え方が気に食わなかったのか、山上が輝夜に食って掛かって来た。



「はっ!今時の高校生は呑気なもんだ!勉強よりも恋愛が大切だと」


昨日応対した山上からは想像出来ない悪意を持った言葉に輝夜は驚きつつ言葉を返す。



「……………?私達の関係が先生に関係ありますか?」


その言葉を聞いて山上は逆上するかのように輝夜に向かってより強い口調で言いがかりをつける。


「そんな態度だから風紀が乱れるんだ!」



〝はあ?!〟輝夜は内心怒りが満ちてきたが、やはりどう考えても様子がおかしい。そこで輝夜は山上の影を見つめた。




「どうした!?何か言い返すことはないのか?」


そう言った時、山上の影が〝ユラリ〟と揺れた。


〝────やっぱり!〟


輝夜は山上が悪鬼に憑かれてると判断した。だが、ここは校舎。しかも一つの教室だ。あまりにも「空間」が狭い。



〝これだと動けない!困ったわ!〟




そんな時、輝夜の頭の中に誰かが話かけてきた。



〝────輝夜!時空結界を使え!〟


〝時空結界?〟


〝ああ、お前なら出来る。いつもの結界を作る要領で宇宙でも想像すればいい。そのまま全神経を集中させるんだ。〟




輝夜はその言葉通りに時空結界を張るために全神経を集中させた。



山上が変わらず輝夜を挑発してくる…。だが、輝夜は時空結界を張るためにその言葉を聞いている暇はなかった。全神経を〝時空結界〟のために集中させていると輝夜の髪が神気で満ちてユラリと揺れ上がる。すると輝夜の周りの空気が渦を巻くようにうねりながら広がっていく。


そして輝夜自身が少しずつ光を帯びて青い光と赤い炎が同時に舞い上がり、輝夜を一周包んでから〝パーン〟と弾けるように一瞬で広がっていった。




輝夜と山上だけが〝無〟の空間にいた。



「ナンダ?ココハ……………!」


山上は既に気を失っており、足元の影が大きく揺れて膨れ上がった。



「ここなら思いっきり出来るわ!出でよ!神刀、────影切!」


輝夜の言霊で影切刀が強い青い光を放ちながら輝夜の左手の平から召喚される!



悪鬼はその光を見て〝マ…………!マブシイッ‼〟と一瞬、ひるんだ。


輝夜はすかさず影切刀を両手で構えてから一気に悪鬼の影を深く刺す!


「悪鬼!────断つ!」


輝夜の霊力が影切刀を通して一気に悪鬼に流れ込む!



〝ウォォォォォォ……………ッツ‼〟悪鬼は強烈な悲鳴を上げながら昇天した。





ハラリとカードが輝夜の目の前に落ちて来た。




「────ポーン。」


そして同時に輝夜が瞬間的に作った〝時空結界〟は解除された。


輝夜はさっきの自分の頭に響いてきた声が誰のものだったのか、気になっていた。






そしてその様子を遠く離れたグランドから満流は見ていた。


〝───────輝夜……………。〟




「おい、神凪!次、お前の番っ!」


部活仲間がそう言って満流を呼んだ。その声に満流は静かに振り返り、去って行った。








ご覧下さりありがとうございます。満流は一体どういう状況なのか、また、輝夜の頭の中に話かけてきたのは誰なのか、疑問が深まるばかりです。

しかし、明かされた事実もありましたね。輝夜がクイーン……………。ではどうやってクイーンのカードを手に入れるのでしょうか?

今後もお楽しみに!


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