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EDEN's Order(エデンズオーダー)  作者: 後出 書
ディアブロ・カルテル 篇
66/208

アイラ強化大作戦②

「うーん、やっぱ俺の拳を覚えるのは無理か。まだ幼すぎてパワーが足んねぇもんなぁ。あ、いや待てよ。確か……」


 幼いというキーワードで思い出したことがある。


 まだデュランがアスガルド聖騎士団にいた頃、同じ給仕部隊で同じ師から料理と拳法を学んだアジア人の少女がいた。確か当時の年齢は今のアイラよりも少しだけ上だったと記憶している。体格的にも精神的にもまだ未熟であどけなさが残るそんな彼女に師リウロンは八極拳でも虎形拳でもない別の拳法を教えていたのだが、それがどこの流派で何という拳法だったか全く覚えていない。それどころか、少女の方は兄弟子であるデュランのことをとても慕っていたが当の本人は薄情なもので、今ではその少女の名前さえも全く思い出せない。


 ただ、何度か手合わせをしてやった際にやたらと手数が多くスピーディーな拳だったことだけは体が記憶している。また、刀や槍といった武器術にも長けていた。あの拳法であれば力が弱いアイラでも体得出来るはずだ。


「アシュリーに電話で確認出来りゃいいんだが、お互いの電話番号を知らねーから聞きようがねぇ。高い割には使えねーな、このスマホってやつは。そもそもあのガキンチョ、今もまだ聖教にいやがんのか?」


 スマホを手にしながらぶつくさ文句を垂れていると、ジェイルタウンの住人たちが集まって来ていた。


「よー、デュランの大将。噂で聞いたんだが、しばらく店を閉めるってのは本当なのかよ」


「そりゃないぜぇ。俺たちゃこれからどこでメシを食えばいいってんだよぉ」


 捨てられた子犬のような瞳で見下ろしている巨漢。殺し屋兄弟バング・ブラザーズの兄、ライガン。そしてその弟ココと手下たちも項垂れた様子で話しかけてきた。


「悪いな、今朝急にウィルのやつが店ごと家を建て替えるって言いやがってよ。当面はエデンに仮出店を考えてるから、気が向いたら来てくれや」


 そんなことを話していると、他にも噂を聞きつけたであろうろくでなし共がぞろぞろとやって来た。


 元肉屋の殺し屋シリアルキラーのチョップマン。歯を全てチタン製にし、相手の頸動脈を噛み千切ることを得意とする噛み切りジョージ。連続ビル爆破で指名手配中の爆弾魔ケリーにメイファンの自宅にさえ忍び込んだと噂されている空き巣王サマンサ。以前、牙戦でデュランに投げ飛ばされて死の境を彷徨った連続強盗コンビ〝ビューティー&ビースト〟の片割れであるハンスといった名だたる悪党たちが集っていたのだ。


 普段ならまだ開店していない午前の早い時間に店の周りに人が集まるのは非常に珍しい光景である。それを見たデュランはある妙案を思いついた。


「いいところに来たなお前ら。既に聞いているとは思うが、今日からしばらく店は休みになる。だがしかし、店の冷蔵庫には食材のストックが有り余っている。大量の食材を新居に持っていくのも手間だし、かと言って何もせずダメにするのも忍びない。そこでだ。出血大サービスで店の食材を全て使い切ってテメーらにタダでメシを食わせてやる! その代わり、一つだけ条件がある」


 そう言うと、デュランはアイラを指差しこう告げた。


「お前らの戦闘技術をこいつに伝授してやって欲しい。いざとなっても戦えるように鍛えてやってくれ。但し、くれぐれも怪我だけはさせるなよ。もし傷一つでも付けやがったら問答無用で殺すからな」


 こうして、宴会ついでのアイラ強化大作戦が朝っぱらから幕を開けたのだった。

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