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Magia Deuzia  作者: 宇治村茶々
2/2

Happy birthday to you

私は大役を任せられた。担任のシャドウ先生へのクリスマスプレゼントの限定シャンメリーをニュルンベルクまで買いに行くと云う大役を・・・・・・・確かに大役だが、誰でも出来る仕事なので私が任命されたのだ。怪我が治り切っていないので力仕事も出来ない、料理も出来ない、当然、ルミナスやカスケードたちのように歌も上手くない、演技力もない・・・・・・私の仕事は当日トナカイの着ぐるみを着てガイドのビラを配るくらいだ。だから、私なのだ。おまけにバイネインが私の名前で先に連絡を入れてくれているので、私は本当にただ物を受け取りに行くだけだ。



レーヴェニヒにいた頃から全く電車に乗る機会がなかったので乗り換えなどもう少し苦労すると思ったが、モコが作ってくれた『乗っていい電車リスト』のお蔭で全く苦労なく乗り換えできた。目的のシャンメリーがあるお店も駅の目の前にあるらしく後はその駅に着くのを待つばかりだ。


お昼前、少し眠い。



それにしても、自分の誕生日に誰かのプレゼントを買いに行くのは複雑だ。誰にも聞かれる事なく、自分から打ち明ける事もできず、ついに当日になってしまった。自業自得だ。寂しいが、皆がクリスマス会の準備で超忙しい真っ最中に口が裂けても『実は今日私の誕生日です!』なんて言えない。教会に所属する前のレーヴェニヒにいた頃からの友だちフランは私の誕生日を知っているが、立場上迂闊に教会に近付けないので仕方ない。おまけに外部との連絡は厳しく制限されているのでママやパパがバースデーカードを送ってくれていたとしても、想いのこもった手紙を勝手に開けて鋏で切るのが大好きな邪悪な郵便屋さんに邪魔され私の元に届くことはない。カノンさんには心がないのだろうか。とにかく、そんなこんなで今年の誕生日は誰にも祝って貰えないのは確定的だ。


駄目だ、こんな事で泣きそうになってわ。

ママやパパに誇れる強い子にならないと。



私は気持ちを紛らわすため外の景色に集中する事にした。もうすぐ、目的のお店のあるニュルンベルク中央駅につく。当たり前だが、中心部に近付くにつれどんどん電車の中に人が増えてくる。椅子は3駅前に妊婦さんに譲った。一応、鍛えているので立っているのは何でもない。それより、誕生日・・・・・いや、考えるな。忘れろ。今日は私の誕生日じゃない。ただの12月22日!!






それから、特に何かが起こる事もなく普通にニュルンベルク中央駅に着いた。一度違う出口から出てしまったが、すぐに気付き正しい出口に来られた。本当に駅の目の前に目的のお店の入ったデパートがある。人は多いが平和だ。




今は限定シャンメリーの置いてある『ブルックリート』の行列に並んでいる。ここのシャンメリーは本当に人気があるらしい。シャドウ先生はお酒が全く飲めず、甘いものが大好きなのできっと喜んでもらえるだろうとこれに決まった。シャドウ先生は若い先生であまりと云うか全く感情を表にするタイプではないので、いまいち喜ぶ顔が想像出来ない。でも、お菓子やジュースが好きなのだけは確かだ。職員室で先生の机にはいつも何かしらのお菓子やジュースがある。コーヒーを飲んでいる姿なんて一度も見た事がない。


それにしても、人気だ。従者らしき人で周りを固めた明らかに貴族らしい人もいる。

そんな人たちを等しく並ばせるこの店は凄い。



並び始めてから20分以上の時間が経ち、やっと順番が回ってきた。これで予約はありませんなんて言われたらショックで倒れてしまうかもしれない。ここの行列も長かったが教会からここへ来るのはそれの倍以上時間を使う。



「あのっ、予約したエーデ・・・・・じゃなくて、ラヴィンロールです!」


私はカウンターの向こうのお姉さんに向かって一瞬本当の名前を言いそうになったが、なんとか留まった。私は教会ではエーデル・ヴァイデンヘラーではなくルミナスがその時嵌っていた曲の『Love & Roll』をもじったラヴィンロールなのだ。


教会の人間に本名を教えるのは厳禁なので、同じ部屋で暮らしているルミナスすら私の本名を知らない。私もルミナスの本名を知らない。余計な問題で罰を受けたくないので他の人にも間違いなく本当の名前を伝えていない。だから、教会絡みの用事でここにいる私はラヴィンロールなのだ。気を付けないと。




「シャン・ヴォール・フィオナ一本の御予約のラヴィンロール様ですね。少々、お待ちください」


お姉さんはそう言って店の奥の方へ入っていった。そんな仰々しい名前のシャンメリーだったのか・・・・・そんな事を思っている内すぐお姉さんが戻ってきた。今まで見た事のないくらい立派な紙袋を持っている。それから、シャンメリーにしては高すぎる対価を払い私はその紙袋を受け取った。



「メリークリスマス」

紙袋を受け取ってすぐに退散しようとするとその前にお姉さんが笑顔で言った。

私は慌ててお辞儀をした。正直、ちょっぴり嬉しかった。



そんなこんなで私のミッションは何の山場もなく終わった。いや、帰るまでがミッションだ。落とさないように細心の注意を払おう。


ふと紙袋の中を覗くと、紙袋が二重になっていて更にビニール包装されたボトル自体が薄いクッションに覆われ、万が一落としても大丈夫なほど厳重に守られている。

本当にこいつはシャンメリーなのだろうか。



とにかく、私はデパートを出た。











その瞬間だった。一応、腕に巻いていた魔女発見装置に反応があった。しかも、反応が一定ではなく波形が揺れている。今まさに魔女が誰かを攻撃しているのだ。


私は大きく目を見開いた。


いやいや、無理だ。今の私は前回の戦いの傷が治り切っておらずサポーターをお腹に巻いて電車が普通より少し大きく揺れただけで痛む。そんな状態の私が異形の怪物と戦える訳がない。だいたい、私にはこのシャンメリーを届ける大役が・・・・・・私がこの魔女を無視しても誰にも分からない。


どうせ何が出来る訳じゃない。帰ろう。

帰って、こんな事すぐ忘れてクリスマス会の準備の手伝いを______________。





それは正しい事なの?



それはママやパパが信じて送り出したエーデルなの?



それが誇り高きテンプル騎士団のする事なの?




頭の中でそんな声がする。


胸が熱い。





私は走り出した。お腹の傷が痛む。



行かないと


間違いなく魔女を倒す事は出来ないだろう。それでも、囮になるくらいは、誰かが逃げる数秒くらいなら・・・・・私はガムシャラに魔女の反応が大きくなる方へ走った。




そして、幸運にも難なく怪物の棲む結界への入り口を見つけた。

人通りのない路地裏のゴミ捨て場の壁面の1mほどの高さのところに明らかに不自然な扉がある。

一般人がいたら、まずその人の救出を最優先。いなければ、なるだけ魔女の特徴を把握してすぐに離脱して救援信号。ヨシっ! 行こう! 私は扉を開けた。





扉の中はファンタジーでたまにあるような水没した都市の一画のような場所で、入ってすぐ靴が水に浸かった。


警戒しながら歩みを進めると少し離れたところに同じクラスのウェイクがいるのが見えた。今日も何の手伝いもせずどこかをほつき回っているものだと思っていたが、まさか1人で魔女と戦っていたなんて・・・・彼は上空の何かと対峙している様だ。その何かは建物で見えない。



「逃げろ、こいつはお前の敵う相手じゃっ_______」


水を蹴る微かな音で私の存在に気付いたウェイクがこちらを向きそう叫んだ。




いや、叫ぼうとしたのだ。



その瞬間、彼の頭が弾けたスイカのように吹き飛び、残った体が力なく水に沈んだ。




「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



私は自分の怪我の事など忘れ、彼の元に走った。同じクラスとはいえ彼と話したのは全部合わせても10回にも満たないだろう。でも、間違いなく同じ教室で講義を聞き、同じお鍋で作ったご飯を食べた仲間だ。めんどくさがりのようだが、Bクラスのどの派閥にも顔が利く存在。Bクラスにとって間違いなくかけがえのない存在だ。


そんな彼が、そんな彼を___________。



私は自分が戦えない身体な事すら忘れ、思い切りの憎悪を込め顔を上げた。







「エーデル、どうして、ここに・・・・・・・・」


上空にいたのはフランだった。眼鏡を外していて、おでこに数字の8を横にした変な模様が刻まれているが、明らかにフランだった。私の最初の人間の友だち、私の大切な友だち・・・・・・・彼女が私と彼を見下ろしている。


他に動くものの気配はない。



「・・・・・まっ、待って、エーデル。・・・・・こっ、混乱しているわよね。でっ、でも、これは間違い・・・かっ、彼は大丈夫!」



私に気付いたフランが地上に降り、震えた声で私に言った。


・・・・・・これのどこが大丈夫なんだ。

頭の形なんてないじゃないか。



「どうして、・・・・・どうして逃げてくれなかったの?」

私はゆっくりと立ち上がり静かに言った。



「そっ、それは彼が想像より彼が強くて、こっ、こうするしか・・・・・・なかったの・・・・私か彼が死ぬしか・・・・お願い、分かって、エーデル」


フランが必死な様相で訴えてきた。




「嘘だ!!近接系の『天装』を使うウェイクを空から攻撃して!!!」


私は叫んだ。フランが嘘を言っているのは明らかだった。地上戦しかできない相手の頭を上空から吹き飛ばすなんて苦戦している人間がする事じゃない。



「こんなに強い力があるなら、ウェイクの『忘却薬』を奪って彼に飲ませる事も出来たんじゃないの!?!?! なのに、どうしてなの!?!?! 前に『忘却薬』の話をしたよね????もしも万が一結界の中で教会の人間に接触したらそれを奪って飲ませて逃げてって・・・・あの時、『分かった』って言ってくれたのは嘘だったの!?!?!」


私は思いの限りを彼女にぶつけた。



「違うの、これは本当に仕方が_____」



「言い訳なんて聞きたくない!!!!!殺さない方法はいくらでもあったはずなのに、そうしなかった!!優しくて、良い人だって、私にはふさわしくないほど立派な友だちだってずっと、ずっと・・・・・・思ってたのに・・・・・・・」


私は怒り、そしていつの間にか泣きながら言った。ずっと、尊敬していた友だちが、あろう事か私のクラスメイトを、・・・・怒りと悲しみで心がぐちゃぐちゃになる。




「やめて・・・・・私にはあなたしかいないの・・・・私はカガリトで、あなたはテンプル騎士団、私たちの関係は絶対誰にもばれてはいけないの・・・・・だから、・・」


フランはそう言いながら、すがるようにゆっくりと私の方に歩みを進めてきた




「来ないで!!!」

私は叫んだ。



「お願い、エーデル。私を一人にしないで・・・・・」

フランは立ち止まり、涙を溢す。


駄目だ、許したい。


でも、出来ない。無理だ。無理なのだ。




私は涙を堪え、唇を噛みながら静かに首を横に振った。



「ウェイクはね、確かに話した事は少ないけど大切な仲間だよ。それに教会には私よりもっと彼の事を想ってくれる人が一杯いるんだよ。だから、だから、・・・・・・もう一緒にはいられないよ・・・・・・私はあなたを許す自分を許せないと思うから・・・・さよなら、フラン・・・・・さよなら、・・・・・・・・・・・大好きだったフラン」


私は涙を溢しながら彼女に伝えた。


胸が痛い。苦しい。


確かにまだ彼女と友だちでいたい自分がいる。

でも、他の自分が必ずそれを許さない。

何度でも罪悪感に苛まれるだろう。だから、こう言うしかなかった。




「嘘よ、・・・・嘘・・・・そうよ、これは嘘!!!全部、私が彼に見せている幻覚で!本物の彼は________」




「見苦しいんだよ!!!!!!!!」


この期に及んでまだ言い訳をしようとするフランに私は怒鳴ってしまった。

自分でもビックリするほどの声で。


フランはそんな私に気圧されてか、口を押さえて膠着してしまった。




「フランツィスカ・ディーゲルマン、せめて元友だちとして私があなたを倒す。今は出来なくても強くなって必ず」


私はウェイクの『天装』を拾い上げ、そう言ってから彼女に背を向けた。



「嫌なら、ここで私を殺してよ。簡単でしょ?」


私は出口に向かいなら独り言のように誰もいない空に向けて言った。

私は最低だ。彼女にそれが出来ないのは知っている。


だから、言ったのだ。























「行かせない、行かせない、行かせない、行かせない!!!!」


あと数歩で出口という所で後ろからそんな叫びが聞こえた。

慌てて、後ろ向くとフランが私に向けて突進してきていた。


私の身体とフランの身体が勢いよく水の中に倒れ込む。


そして、フランが私のお腹の上に馬乗りになる。痛い。いや、それどころじゃない。

私の上に今乗っているのは完全に私の知っている優しいフランじゃない!




「そうよ、エーデル。私は強い。強いからテンプル騎士団の人間に忘却薬を飲ませるなんて訳ないのよ!!!」

彼女は私に馬乗りになったまま叫ぶ。

まずい、まずい、まずい、まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!




「手も足も動かせないでしょ。私は強いからこんな事だって簡単に出来る!私は強いから口を開かせるのも簡単よ!」


フランがそう言うと、口が勝手に開いてしまう。

まずい、まずい、このままじゃ、このままじゃ・・・・・彼女の思い通りに・・・・・・




「あなたと私は友だちこれからもずっと、ずっと、ずっと、ずっーーーーーと一緒よ、どんなに離れていてもお互いをいつも想う!」



彼女はそう大声で言いながら、私の口にウェイクの持っていた忘却薬をねじ込む。

怖い、怖い、・・・・・・こんなの私の知ってるフランじゃない!!!!


呑み込みまいと必死になるが、無理やりキスされ否がおうにも薬が喉の奥の方に入って行く。

あの日彼女がほっぺにしてくれたあんなに嬉しかったキスが、今はこんなに苦しい。


私は彼女を甘く見過ぎていたのだ。



























目を開けると、景色が横になっていた。どうやら私は寝てしまったらしい。姿勢を起こすと見知らぬ公園のベンチで居眠りをしていたようだった。・・・・ここはどこだろう。私はなぜこんなところで寝ていたのだろう。はてなが一杯だ。って云うか、大事に抱いてるこのちょっと湿った紙袋は何だ???


紙袋の中身を見ると、大袈裟なほど厳重に包装されたボトルが入っていた。お酒だろうか・・・・・いや、違う!こっ、これはシャンメリーだ!!!


確か、限定シャンメリーを買いにニュルンベルクまで行く事になっていたはず。


そう思いラベルを見ると、確かにそれはお目当てのモノだった。しかし、お店に並んだ記憶も電車に乗った記憶すらない。おかしい、・・・・・おかしい、これじゃあ、まるで忘却薬を飲まされた後みたいだ。



もしや誰かが無理矢理私に忘却薬を!?!?!


そう思い慌ててバッグの中の忘却薬を確認したが、普通に丸々一袋残っていた。




おかしい、おかしい・・・・・私の頭はおかしくなってしまったのだろうか。いや、自分では分からないが、疲れていただけかもしれない。そういえば、前に訓練でだいぶ絞られた後、今回と同じような状況になった事があった。慣れない事ばかりで意識が朦朧としてしまったのだろう。そういう事にしておこう。私の頭ではあまり深く考えても仕方がない。



だから、帰ろう。帰って、皆の手伝いをしよう。

今日は私の誕生日だが、教会の人は誰も知らない。

寂しいが、当日に伝えるのは流石に図々しすぎるので仕方がない。仕方がないんだ。






それから、特に大きな事件もなく私は教会に戻り、遅くなったことを普通に怒られた。

流石に公園のベンチで居眠りしていましたと正直に言ったのはマズかった。


とにかく、そこからは色んな場所でクリスマスの飾り付けの手伝いをした。見た事ないほど大きなクリスマスツリーに梯子を登って飾りを付けるのは正直とても楽しかった。自分の誕生日など忘れるほど大変で、楽しく、充実した一日だった。




今日の作業が落ち着いた頃、不意に今日が自分の誕生日であることを思い出した。でも、今は夜の11時50分、もう奇跡は起きない。それより明日に備えて早く寝よう。




「待て。寝る前にラウンジからテープを取って来てくれないか。さっき忘れてきた。今、私は手が離せないから」


自分の部屋へ帰ろうとすると、不意に奥の部屋からジェシカがひょっこり顔を出し私にそう頼んだ。私は了承し、ラウンジへ向かった。



ラウンジを隔てるドアからまだ光が漏れている。

まだ作業をしている人がいるらしい。本当にお疲れ様だ。


私はドアを開けた。


























「「「「ハッピーーーーーーーーーーーバーースデーーーーーーーーーー!!!!!」」」」


私が扉を開けるとすぐに待ち構えてたであろう人たちが一斉にクラッカーを鳴らしてそう叫んだ。

なんだ、これは夢か!?!?!?!?!?!



「誕生日なのに黙ってるなんて水臭ぇじゃねぇか、ラヴィ!」

ルミナスはそう言って、私の肩に軽くパンチをした。


「そうだよ、急だったから全然準備出来なかったよ。ラヴィの誕生日は天井くらいの高さのケーキを用意して驚かそうと思ってたのに!」

それから、ミーミルが言った。



「どうせあなたの事だからクリスマス会の準備の邪魔になると思って黙っていたんでしょう。全く」

カスケードが少し呆れた様子で言った。


「ジェシカが今日『ところであいつの誕生日会はいつやるんだ?』って言ってきてビックリしたんだけど」

それからリヴァイアを少し怒った様子で言った。どうやらジェシカが私の誕生日を知っていてくれたらしい。話をした記憶はないが、彼女とはなんだかんだ教会の中では一番長い付き合いだ。もし話しているなら確かに彼女だろう。


ありがとう、ありがとう、ジェシカ!




「おい、お前。何で無言で俺の身体に電飾巻いてんの? 怖いんだけど」

不意にブーケがルミナスの身体に無言で電飾を巻き付けはじめた。



「イルミナス」

電飾を巻き終え、スイッチを押してからブーケが真顔で言った。




「ぶぶっ!」

私は思わず、変な声で笑ってしまった。

周りの人たちも笑う。ブーケだけ真顔だ。こんなのズルい!!



「てめぇ、ぶっ殺すぞ!!!」


ルミナスが怒った。まるで、コントみたいだ。


私がこんな楽しい誕生日会を開いて貰える日が来るなんて夢みたいだ。

嬉しすぎる。最早、ほっぺをつねって夢か確かめるのが恐いほど幸せだ。ありがとう、ジェシカ、ありがとう、皆! 嬉しくて、嬉しくて、自然と涙が・・・・・・。



「やっぱり、遅すぎた?」

そんな私を見て、リヴァイアが聞いてきた。


「ううん。ごめん、可笑しくて、涙が出てきちゃった」

私はそう言った。




「らっ、ラヴィちゃん、はっ、早くしないと23日なっちゃうから、そのっ、早く」

モコが私の手を引き、私を真ん中の席に座らせた。目の前には蝋燭がピッタリ12本刺さった美味しそうなケーキが置かれている。



「ほい、電気消すよお!」

エレクタがそう叫び、電気を落すと部屋の明かりは蝋燭の炎だけになった。





私は思い切り息を吸い込み、蝋燭の炎を消していった。






「「「「お誕生日おめでとう!!!!!!」」」」

明かりが戻り皆がそう叫ぶ。嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。


夢ならもう一生醒めないでいい。

それくらい今は満たされている。


























時は経ちクリスマス会当日、私はトナカイのきぐるみを着てビラを配りまくった。残念ながらフランもメロエも見なかったが、仕方がない。第一、フランが立場上教会に来れない事は事前に聞いている。それは仕方ない事だ。



まあ、それはさておきルミナスとカスケードたちの演劇も6階の人たちの公開実験も、Bクラスの模擬店やカフェもどこも大成功に終わった。


ついでにシャドウ先生へのサプライズもちゃんと成功した。

先生は今年の寄付は過去最高額になるかもしれないともらしていた。


実はビラを配りながら、色んな場所を回っていたのだが確かにどこもクオリティが高く先生がそう言うのも納得がいくものだった。特にルミナスたちの演劇は凄まじかった。音楽もナレーションも舞台セットも演技も歌も全てが完全にその道の人たちのソレだった。大人顔負けとかそんなレベルの話じゃない。正直、引くほど上手だった。最後にサンタの衣装に着替えて出てきた彼女たちには、はちきれんばかりの拍手が送られた。


少なくとも私が見た劇の中では群を抜いて一番だった。


数日前にこんなすごい才能を持った人たちが私なんかの誕生日を皆で祝ってくれたなんて信じられない。とにかくすごかった。


私なんかが疲れたと言ったら、彼女たちにあまりにも失礼だろう。

だから、言わない。次は食堂の片付けを手伝いに行こう。あそこは広いし、大きなクリスマスツリーがある。いくら人がいても手が足りないはずだ。





食堂に行くと、そこにはBクラスの男子だけが残って電飾やツリーの片付けをやっていた。中にはめんどくさがりのウェイクもいた。とりあえず、中心のツリーの片付けを手伝おうとツリーに近付くと梯子の上からタナトスが降りてきた。


「おっす、ラヴィータ、お疲れ。後は俺ら男子でやるからお前はもう寝ていいぜ。寝不足は美容の大敵だろ?」

タナトスがそんな事を言った。


「でっ、でも・・・・・・・・」



「片付けの後、男だけで打ち上げしたいそうじゃ。花がなくて嫌じゃのう」

私がごねようとすると、横からキルリスが両腕を抑えたオーバーな身振りで言った。


そうか、なら邪魔しては悪い。



「そっ、それじゃあ、おっ、お言葉に甘えて、そのっ、私は先に寝るね。おっ、おやすみなさい!」

私は作業している男子たちに向けて出来るだけ大声で言った。




そして、最後にさっきの声が届かなかったであろう入り口付近で電飾をダンボールに詰めているウェイクにも小声で挨拶をした。



「ウェっ、ウェイク・・・。わっ、私、先に寝るから、そのっ、頑張ってね。おやすみ」







「んー。おやすみ、エーデル」


彼は背中を向けたままいつもの覇気のない声で言った。

さあ寝よう。いや、まだ他の場所で手伝えることが残っている筈だ。もうひと踏ん張りしよう。


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― 新着の感想 ―
[一言] ひぇ 最後ウェイクが「エーデル」と呼んだのも闇が深い、あれは元の人格の自動操作じゃなくフランがエーデルを見れる様に直接操作してる。 どうりでハロウィン時ウェイクが突然消失した、それにフランが…
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