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嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


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16話


「おい」


 小さな声。それは誰の耳にも届く、


 張り詰めた空気を、踏み荒らすように。


 騎士団の後方から、馬のひづめの音がもう一つ重なった。


 騎士たちが、領民たちが、ざわりと振り返る。


 そこにいたのは、あり得ない人物だった。


「……王?」


 誰かの喉が鳴った。


 バリスハリス騎士団のさらに後ろ。豪奢な外套を纏い、悠然と馬上に座す男。


 バリスハリス王国国王。レオニス・バリスハリス。


 王は、騎士たちの緊張など気にも留めず、楽しげに目を細めた。


「騎士風情が、こんな面白いものを追い出そうと言うのか」


 軽い声音だった。


 その一言で、馬に乗った騎士たちが道を開けた。


「も、申し訳ございません!」


 王の機嫌を損ねたと理解した瞬間だった。


 王は、満足げに鼻で笑った。


「よい」


 馬上の姿は、よく目立った。


 見目は麗しく、整った顔立ち。切れ長の目は鋭く、同時にどこか愉快そうで。挑発的な笑みが、否応なく人の視線を引き寄せる。


 王は、そのまま視線を下ろす。フェンと、真正面から相対した。


「フェン・オルマイディ」


 名を呼ばれ、フェンの背筋が強張る。


「王様が私の名を」


「そこをどけ」


 それは王からの命令だった。


「禁忌の魔女は、俺が連れて帰る」


 ざわり、と領民が息を呑む。


「魔物討伐よりも、どうにも面白そうでな」


 フェンは、白の魔女の前に居座り、歯を食いしばる。


「王様」


 一歩も退かず、頭を下げる。


「白の魔女は、我々ノクスグラートを救ってくださいました。どうか、寛大なご対応を」


 王は、目を瞬かせた。


 そして、くつくつと喉を鳴らして笑う。


「……何か、勘違いをしていないか?」


 声音が、少しだけ低くなる。


「俺はな、禁忌の魔女を煮て食おうなどとは思っておらん。少し、気になっただけだ」


 王の視線が、フェンの背後へ滑る。


 白い外套。沈黙を貫く女。


「神様のように、聖女がごとく。という名声を国外にまで轟かせていた白の魔女様が」


 笑みが、鋭くなる。


「なぜ、ネクロマンサーになったのか」


 王は、興味を隠そうともしなかった。


「それを、聞いてみたくてな」


 その視線が、初めて。


 禁忌の魔女になってからのセレナを、真正面から捉えた視線だった。





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