(35) 追い詰められる俺たち
第35話です。
会場に奏多と生徒会メンバーらしき人たちが到着した。その団体はステージ上の主催者らしき人の方へ向かうらしく、俺たちの脇の通路を通過するようだ。俺と香はより深くフードを被り、顔を見られないようにした。横を奏多たちが通る際に話していることが聞こえてきた。
「奏多先輩?ここは一体……?」
「僕と唯斗の仕事場だよー!あっちに上司がいるから皆で行こー。」
「ずいぶん……いえなんでもないです。」
「文也?まぁいっか行こー!」
生徒会メンバーの人たちはここがどんな場所かわからないようだ。
ドンッ!
「うっ!」
「す、すみません……!え、……幸輝?」
「!」
亜樹が俺の横を通る際に、ぶつかってきた。たぶん薄暗いからよく見えなかったのだろう。思わず声をあげてしまった。……亜樹には気づかれてしまったようだが、内緒のポーズをすると理解してくれたようでうなずいた。
幸い亜樹が最後尾だったこともあり、他のメンバーは気づかなかったようだ。そのまま奏多たちは主催者らしき人のもとへ向かった。
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「まさか生徒会メンバーが来るなんてね。」
「話していることが少し聞こえたんですけど、生徒会の方々はここで行われてることは知らないみたいでした。」
「うん。たぶん知らないね。奏多先輩が僕の別荘に遊び行ことでも誘ったんじゃない?よく誘われるし。」
「……このままじゃ生徒会の方々も巻き込まれちゃいますよね。」
「とりあえず様子見かな。今の僕たちは追い込まれてる状況だし……」
「あっ!亮太だ……」
「野口……どうして……」
「それよりやばいよ!僕たちのことを伝えられちゃう!」
奏多と生徒会メンバーが主催者らしき男性に合流した。そこに野口がステージの袖口から出てきて、何かを話している。
少し主催者らしき男性と野口が話していたかと思うと、おもむろに男性がマイクを握り話し出した。
「お客様にご連絡がございます。逃げ出した商品についての情報提供をお願いいたします。有力な情報を提供または実際に捕獲したお客様には特別な価格の商品をご紹介します。」
……ざわざわ……ざわざわ
「商品は2つの予定でしたが、付属の商品が確認されたので4つとなります。こちらが商品画像です。」
俺と香だけが商品とされていたみたいだったが、野口の情報で立夏先輩と流星のこともバレてしまったみたいだ。そして壇上に俺たちの写真が大きく映し出された。
(こちらに目線を向けてない画像ばかりだからたぶん学園内の監視カメラの映像か。……こうやって商品を見つけてるのかも。)
「あっ!私はそいつらを見たぞ!仮面をなくしたと言っていたから渡してしまった。たぶんこの会場内にいる!」
「なに!?」
「どこだー!探せー!」
「その商品は私のものだー!」
急に1人の男性が立ち上がったと思えば、先ほど俺たちに仮面をくれたおっさんだった。そして俺たちの情報を大声で報告した。その報告によって、会場内で俺たちのことを探す声がし始めた。
「これやばくないか?」
「うん。もうなりふりかまってられない。逃げるよ。」
4人で一斉に立ち上がり、地上に向かう。俺たちが動き出したことで周りの人の目が一気にこちらに向いた。
「走るよ!」
立夏先輩の声で俺たちは走り出した。四方八方から腕が伸びてくるが、なんとかふりはらいながら走る。もうすぐ階段だというところで俺の腕が捕まってしまった。
「捕まえた!こっちにこい!」
「やばっ!」
グイッ!ドガッ!
俺の前にいた流星が捕まれた俺に気づいて、引き寄せてくれた。そして流星は捕まえてきたやつにパンチをいれた。
「助かった!」
「いいよ!早く逃げよう!」
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階段を上り、会場から抜け出すと待機している人の姿は見えなかった。しかし依然、追ってくる声がする。そのまま走り抜けるように出口へと向かう。
「今日は救出は無理!とにかく僕たちも捕まらないようにするのが大事!」
「そうですね!」
「まだまだ追ってくる!」
「ここを出たら、森へ行って学園に戻るよ!」
「「「了解!」」」
大広間を抜け、廊下を駆け、もうすぐ裏口が見えてくるだろうというところで……
「なっ!」
裏口の前に人が数人立っている。先頭にいるのは前年度会長だった涼宮唯斗だ。他の2人は前年度生徒会メンバーだと予想して、たぶん前年度の書記と庶務だろう。……そして一緒にいるのはずっと探していた響だ。
「ダメだろー?商品が逃げ出しちゃ?……ん?おまえは祭りで会った黒崎の親衛隊の……。やっぱり親衛隊はろくなのがいないな。仕事の邪魔をするんじゃねーよ。」
「奏多を悲しませるのはみんな敵だ。」
「良いこと言うー!そうだよー!奏多くんが悲しんじゃうじゃん!」
「……とりあえず捕まえないとね。」
話しているところを見ているとどうやら完全なる敵らしい。相手がじりじりと近づいてくるので、俺たちもじりじりと下がる。俺たちは流星以外は平均身長以下だし、まともにやり合うことができるのは流星しかいない。さすがに流星も1対4だと勝てるかどうか怪しいようだ。
ゆっくりと俺たちが後退していると、会場がある方向の扉の方から足音が聞こえてきた。追手がもうここまで来ているらしい。……ここまでか。ふと横目で香を見ると、仮面を外したところだった。なぜ?
ヒュッ!ガシャン!
「今だよ!」
香が裏口近くにあった謎の置物に仮面を当てた。そこに前生徒会メンバーが気を取られている隙に、俺たちは一気に裏口まで駆け抜けようと走り出した。……だが後ろからかけられた声で足が止まってしまう。
「あれー?瑞希くんのことは置いてくの?」
どうやら奏多が俺たちに追いついたようだ。
ニヤニヤと笑いながら、瑞希の存在をちらつかせてくる。その後ろには現生徒会メンバーがなんともいえない顔で立っている。……やはり表だって味方とは言えないのだろうか。
とりあえず俺たちは前年度生徒会メンバーと奏多、現生徒会メンバーに囲まれてしまったようだ。
「そうだよねー?心配だよねー?でも安心して!みんなで商品になれるからね!」
「何言ってるんだ!商品になんかならない!」
「……はぁ困るんだよね。ときどきこうやって僕たちのビジネスを邪魔してくるやつがいるから。」
「……その人たちをみんな商品に……?」
「当たり前でしょ!広められちゃったら困るもん。」
「了承する人なんているわけないでしょう。」
「そうだね!でもまぁお金に困ってるよーとか家族の地位とかそれぞれ困り事があるみたいだから、皆自主的になるよ?あとはちょっとした話し合いだよ。」
「脅しじゃん!」
「キャー!こわーい!急に怒らないでよー!」
奏多が自分勝手な話をし始めた。香が思わず、声を荒らげると奏多はわざとらしく怖がった声をあげた。それに前年度生徒会メンバーは反応し、俺たちにますます敵意を向けてくる。(響以外)
「とりあえず君たちは商品になることは決定なの!意外と顔良いし高く売れると思うよ?あの瑞希くんってもさいのも趣味のやつがいるみたいだし。」
「な!」
(やっぱり雫も商品に!?まだ無事でいてくれ……)
「あっ!立夏は別に商品にならないけどね残念だけど。」
「え?僕だけ?どうして……?」
「んー、代わりになるから立夏は商品にしないでって約束だったからさ。僕ちゃんと良い子の約束は守るんだよ?」
「まさか……兄さん……?」
(隆弘先輩……そういうことだったのか。ますますこいつらを止めないと。)
「まぁとりあえずみんな捕まえてー!」
その奏多の声で前年度生徒会メンバーは動き出したが、現生徒会メンバーは動き出さない。
「え?朔也?……文也?蘭丸?……亜樹?なんで動かないの?」
そう声をかけられても動かない。
「……俺はできない。こんなことおかしい。」
「亜樹?……お父さんに怒られちゃうよ?いいの?」
「……それでもいいよ。それより友達を失うことの方が怖い。」
亜樹は拳を握りしめながら奏多に反抗した。
「俺もできないなー!可愛い子達が悲しむのは俺も悲しいし、特に大切な子だから。」
「蘭丸……。でもお家が……」
「あはは。勘当されちゃうかもね?でも自分が大事にしたい心があるから。」
蘭丸先輩は覚悟を決めた目をして笑った。
「私もできません。……胸を張って生きていける人間でいたいから。」
「白銀……いつの間に。」
「さぁ?ただ私も少し思うところがあって。」
白銀副会長は楽しそうに笑った。いつもの作り物のような笑顔ではなかった。
「朔也は?僕たちの味方だよね?」
「黒崎、わかっているだろう?」
「……俺もできません。」
「「どうして!」」
「ずっと涼宮先輩を信じてきました。昔から俺のヒーローだったから。でも……俺はこれは正しいとは思わない!」
「朔也!これは正しいことだよ!みんなちゃんと理由があって商品になるんだから!それにたくさんのお客様が喜んでる!」
黒崎会長はまっすぐ涼宮の方を見て否定した。奏多は何事かを喚きながら会長の腕にすがっている。だが会長の目や耳には入っていないようだ。涼宮は何も言わず黙っている。
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「あぁ……もういい!なんなの!?みんなして!」
奏多が現生徒会メンバーに拒否されたことで発狂し出した。そして壁から何かのボタンを取り出し押した。
シューシュー
「ガス!?」
「吸っちゃダメ!」
「って言っても吸わないのは無理!」
天井付近から煙が発生した。瞬く間に部屋中を煙がつつむ。霞む視界の中で、奏多と前生徒会メンバーがガスマスクをつけているのが見えた。
(準備良すぎだろ。また捕まるのか。……商品になんかならないし、絶対にこの活動を止めてみせる。)
・・・暗転




