ボーダーラインと最適解
目が覚めると
午前3時だった
どれだけ寝ていたんだろうか
いつの間にか掛けられていた毛布
カーテンも閉まっている
「姉ちゃんか…」
カーテンを少しだけ開けて外を見る
昨日降っていた雨は止んでいて
まだ暗い空には星がやけに綺麗に瞬いていた
少し…走ってこようかな
ふと放り出したままのスマホを見ると
冴木からの着信とメッセージの通知があった
後で良いか…
僕はジャージに着替え
ランニングアプリをひらき
庭に出てストレッチをする
走る前のルーティンだ
夜と朝の間の少し冷えた空気が
目覚めたばかりの身体に心地良い
はぁ…
ため息を一つついて
走りはじめた
走ると少し頭がスッキリする
走りながら一つ一つ冷静に考えてみよう
昨日の事を思い返す
幼馴染みって言ってた
ミナも冴木と幼馴染みだけど
彼らの関係性はミナのソレと全然違うように見えた
けれど、そもそも冴木もイブくんも男だ
あの2人の間柄は恋愛とかでは無いのだろう…たぶん
僕が勝手に冴木に対して想いを寄せてしまっているだけで…
ただそれだけで…
少し仲良くなれたから浮かれていただけで…
そんな僕にはあの2人の親密さが目にも胸にも痛すぎただけで…
冴木も僕に想いを寄せられても困るだろう
うん、そうだな
冴木と僕はまだ知り合って間もないただの友達なんだ
まだ、間に合う
芽生えはじめた恋心?を捨てることは簡単には
出来そうもないけれど
胸の奥深くに封印して
ボーダーラインを引こう
冴木にとって僕はただの友達だ
今もこの先もたぶんずっと…
友達というラインを越えないように行動しよう
学校以外では関わらないようにしよう
2人きりになるのは避けよう
これ以上好きになってしまわないように
きちんと線を引くんだ
僕は想いを振り切るように
走るスピードを上げた
胸が切なくて苦しいのか
息がきれて苦しいのか
もうわからない
帰ったら風呂に入ろう
そして今だけ泣こう
風呂から出たら
もう
冴木を好きになる前の自分になろう
僕は俺らしくなろう
走りたいだけ走って
家にたどり着き
風呂に入った
湯船に浸かると、とめどなく涙が溢れた
今だけだ…
泣くのはこれが最初で最後だ
全部出して流してしまおう
風呂から出て
髪を乾かして服を着る
走って風呂入って泣いて
サッパリした!…と思う
よし!
腹も減ったし…なんか食べるか
今日は部活あるからな
ちゃんと食べないとな
キッチンで朝食の準備をしていると
姉たちが起きてきた
「ちょっと〜拓ちゃん大丈夫?」
「そうよ!いつの間にか帰ってて寝落ちしてるんだもの…何かあったの?」
「いや?別に何も無いよ 歩き回って疲れただけだよ」
「あら、そう?なら良いけど」
「姉ちゃんたちも食う?」
「うん!食べる食べる!」
「ヤダ!拓ちゃん目玉焼き上手ね!」
「拓ちゃん、今日部活よね?お弁当必要だった?」
「あーコンビニでなんか買うからいいや」
「そ?」
姉たちの明るい声に日常を感じて少し安心する
3人で朝食を食べて一息つく
あ、冴木のメッセージ見てないな
流石に見ないとな…
スマホを取ってメッセージを確認する
『拓真、買い物付き合ってくれてありがとな
楽しかったよ!
急に帰っちゃったけど大丈夫だったか?
あと、イブが乱入しちゃってごめんな
また一緒に出かけような!』
…なんて返信しようか
『おはよ!昨日は急用で帰って悪かったな
帰ってから疲れて寝落ちしちゃって返信も遅れて申し訳無い
また学校でな!』
…こんなもんか
俺は当たり障りのない内容をサッと打ち込んで
メッセージを送信した
これで良い
俺達はただの友達だから
これが俺の最適解なんだ




