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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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お前らの問題

「大丈夫だ。お勉強を見ている限りでは、セラはもう1番上の姉さまになれるだけのテクニックを身につけている。自信を持て」


 などと全く必要のないフォローを世話人からもらったが、全然嬉しくない。



 お勉強。


 アイビスは志願して毎日頑張っていたが、基本的に僕たち低年齢組は毎週1回、個別にお勉強の時間がある。


 それは今年7才になった僕も例外ではなく、娼婦として必要な性的な行為を練習させられてきた。


 …とは言っても、軽いものだけだ。


 いわゆる本番と呼ばれる行為はまだ一切教わっていないし、健全なマッサージの仕方を教わったり、エッチなマッサージの仕方を教わったりといった、そんなところだ。


 相手はいつも世話人だが、男性相手に何かをするという行為に慣れさせる目的があるのだろう。



 ちなみに世話人は今まで自らの暴れん棒を取り出したことは一度も無い。


 見事な自制心だと関心してしまうほどである。



 この世界でも処女に価値を見出す層は一定数いるらしく、この間も客の相手に8才の子が呼ばれて行った。


 僕としては心がずんと重くなるような苦しい思いで見送ったものの、当の本人は喜んでいたし、周りもお祝いムードでの見送りだったし、終わって帰ってきた時も「やっとみんなの仲間入りができた」ととても嬉しそうにしていた。


 クルカラもオープルも「私のばんはまだかな」なんて言っており、それがここの子たちの共通認識なのだろう。



 豪に入れば郷に従えとは言うものの…これがいい事なのかは正直に言ってわからない。


 この世界のことを、小鹿亭という娼館の中の事しか知らない僕に判断できることは限りなく少ないのだ。


 いつかここを出て広い世界を見て、やはりおかしいと思えたなら…その時は全力で世界を変えていこう。


 なぁに、僕には地球での知識がある。


 ラノベだってそれなりに読んできたし、今は魔法だって使える。


 世界を変えるほどのお金を稼ぐ手段はきっと、いくらでもあるに違いないのだ。



 そんなしょうもない事を考えながら、きたるジンムカ様襲来に向けて不安に押し潰されそうな気を紛らわしつつ、みんなとジュリに子どもができた(かも)という話題で盛り上がったり、みんなから「男の人のお相手の仕方は〜」などいらない知識を教えられたりしながら。


 あっという間に1週間が過ぎ、とうとうジンムカ様がやってくる日になってしまった。



「…セラ、そんなに不安そうな顔をしないでください!!大丈夫ですよ!!」

「…うん…」


 陰鬱とした雰囲気を漂わせる僕を励まそうとしているのか、妙にテンションの高いリビアンに身体を洗われながらも、僕の心境はまるで屠殺場に向かう豚さんの様になっていた。


 目の前で揺れる、ジュリと比べるととても慎ましやかなふくらみにも全くテンションが上がらない。


「セラも今はぺったんこですが、そのうち私のように魅力的な胸になりますよ。私も小さい頃はセラと同じぺったんこだったのです」


 魅力的なふくらみ。吸い付きたくなるような可愛らしい薄いピンク色のポッチ。


 こんな美少女に身体を洗ってもらっているのだ。本来なら鼻息が荒くなって先の事など全く気にならないくらいに興奮していてもおかしくないのに…



「…ジュリのほうがおおきい…」

「うっ…私はまだまだ、育ち盛りですからね!!まだまだ大きくなるはずです!!…たぶん…」

「…ジュリも、リビアンとおなじ12さいだった…」

「うっ…うぅ…それでも…希望はあるはず…です…!!」



 ジンムカ様に襲われる可能性がある、と言うだけで、これ程までに心がずーんと沈み込んで、地面に埋まってしまいたい心持ちになっている。


 …そう、襲われる"可能性がある"だけ。別に行為があると決まったわけじゃない。


 前回と同じく、ただ単に話をするだけの可能性だって十分にあるのだ。


 楽しくおしゃべりして…外の話を聞いて…うぎゅ??


「ほらっ、やわらかいでしょう??確かに私はジュリよりすこーし小さいかもしれませんが、柔らかさには自信があります!!それに形も綺麗だと言ってもらえていますよ!!どうですか!?柔らかいでしょう!?」


 突如として両頬が柔らかいものに包まれる。


 何も考えず返事をしていただけなのに、どうやら何かがリビアンのプライドを刺激してしまったようだ。


 確かに柔らかい胸の間に挟まれモチモチとした感触を受け入れながらも、やっぱりジュリのほうが柔らかくてもちもちだなぁなどと取り留めのないことを考えていると…


「こらぁ!!リビアン!!なに抜け駆けしてるの!?」

「リビアン真面目にやって!!」

「うえっ!?みなさん!!窓から顔を出すと危ないですよ!!」

「リビアンに任せとく方が危ないよ!!!」

「「そーだそーだー」」


 夕食後に小屋に戻ったみんなが窓から顔を出し、ヤジを飛ばしてきた。


 どうやらリビアンのハイテンションな声が小屋の中のみんなにまで聞こえていたらしい。



 包み込むような優しさと、いけない事はしっかり叱ることができる厳しさを兼ね備えた理想のお姉さんのようなジュリ。


 無表情で淡々とした話し方だが、周りへの目配りがしっかりしており、指示出しや冷静な判断を得意としていたシアノ。


 そんな彼女らとは違い今年の1番上の姉さまであるリビアンは、周りのみんなに慕われながらも同時にいじられキャラも兼任する、ちょっとポンコツ暴走気味のリーダーなのであった。



「…ふふっ」


 みんなの元気な声に思わず笑いがこぼれてくる。ここの子たちはみんな前向きで、明るくて、希望に溢れてるんだ。


「…セラ。元気は出ましたか??」

「…うん。みんな、ありがと!!」


 分からない事でうじうじと悩んでいるのがなんだか馬鹿らしくなってきた。


 なるようになるさ。それで問題が起きたなら…その時は、その時にまた悩めばいいのだ。



 みんなからやいのやいのとヤジが飛んできながらも身体を洗い終え、リビアンに手伝ってもらいながら着替えを済ませて、みんなからの応援の声を胸に控え室で世話人を待つ。


 不安がない訳では無いけれど、みんなのおかげで心はかなり軽くなった気がする。


 それにジンムカ様から話を聞けるのは純粋に楽しみでもあるのだ。


 ジュリのこと。外の世界のこと。


 アイビスはお店屋さんになるために出ていったし、今回はこの世界のお店屋さんの事を重点的に聞いてみようかな。



 ………


 ……


 …



 …遅いなぁ。



 しばらく待っているが、一向に世話人が来ない。


 いつもこんなに長く待っていただろうか?


 いや、そういえばいつも僕以外にも、他の誰かが一緒にいた。一人きりで待っていたことなんてほとんどなかった気がするし、いつもこれくらい待っていたのかもしれないなぁ。


 1人だと退屈だ。



 ………


 ……


 …



「…おそすぎるっ!!」


 少し高くて足がブラブラするイスからダンっと飛び降り、ほぼ無意識のうちに天井に向けて叫び声を上げていた。


 未だなんの音沙汰もなく、あれから10分以上は経ったと思う。時計がないので正確な時間はわからないが、20分近く経っているかもしれない。


 いくらなんでも遅すぎる。


 ジンムカ様が遅刻しているのだろうか??


 …いや、それならそうだと世話人が伝えに来るはずだし…何かあったんだろうか。


 魔法の練習をしていればいくらでも時間を潰すことはできるものの、あまりにも遅いと逆に心配になってくる。



 妙にそわそわした気持ちになってしまった僕は、部屋を抜け出すことにした。


 部屋の外に出ると、あたりはシーンと静まり返って…


「…〜〜〜!!」


 …いや、遠くの方から声が聞こえる。


 1階から…か??


 1階に降りて声のする方に進んでいくと、すぐに扉に差し掛かった。


 前にクルカラと探検した時に話し声が聞こえてきた扉だ。


 ここは台所の近くだと思うが、声は扉のさらにもっと先の方から聞こえてくる。


 2階にいても聞こえることから分かってはいたが、誰かが時折怒鳴り声を上げているようだった。


 ここからでは何を話しているのかわからない。


 妙な胸騒ぎに急かされ、僕は扉を開けて声のする方に向かっていった。



 曲がりくねった廊下を進み、また扉を開ける。



 廊下を少し進んだ先にある扉に近付くにつれ、話し声が鮮明に聞こえるようになる。



 断片的に聞こえてくる"ジュリ"、"セラ"、"ふざけるな"といったワードに胸がざわつく。



 この怒鳴り声は…世話人の声だ。



 心臓がドクン、ドクンと嫌な音を立て、背中に汗が滲んで気持ちが悪い。



「セラには何も言うな。ジュリの方は…()()()の問題だろう」



 扉越しに聞こえてきた、今まで聞いた事のない世話人の怒りに満ちた声に身体が震える。



 何も言うな??お前ら??



 世話人は誰と話しているんだ??



 ジュリになにかあったのか??



 それを…僕には知らせないように…??…なんで??…どういう…こと…??



 世話人の声を最後に、沈黙した部屋からは何も聞こえてこない。



 "セラには何も言うな。ジュリの方は…お前らの問題だろう"



 頭の中で世話人の声が反芻され、不安を掻き立てる。



 もう二度と、ジュリに会えないかもしれない。



 そんな漠然とした恐怖に支配され、僕は震える手をドアノブに伸ばしていた。

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