わたしもアリスみたいに
今回と次回はアイビス視点になります。
後半から残酷な表現や気持ち悪い表現があります。
苦手な方は読み飛ばして頂ければ…
小鹿亭に来る少し前の所から始まります。
アイビスは小鹿亭に来た日に5才になったばかりなのでひらがなで書いていましたが…読みずらかったので漢字にしました。
(アイビス視点)
孤児院に綺麗な洋服を着た男の人が来るようになった。
もしかして娼館の人?
絵本のアリスのお話みたいに可愛い子を誘いに来たんだ!って思って、私は笑顔で「こんにちは!」って挨拶をする。
だけど、私じゃなくて他の子が選ばれてしまった。
私は選んでもらえなかったけど、「君はいい子だね。必ずいい所に行けるだろうから頑張ってね」って頭を撫でてもらえた。
その後も何人か綺麗な洋服を着た男の人が来て、その度に他の子が選ばれたり、誰も選ばれなかったりしたけれど、その次の男の人にやっと選んでもらえた。
小鹿亭って名前の娼館のオーナーさんらしい。
「わたしもアリスみたいになれるかな!」
私は嬉しくってそう聞いてみたら、オーナーさんはちょっと苦笑い。
「アリスみたいにこの国の王子様は難しいかもしれないけれど、小鹿亭には貴族の方も多くいらっしゃるから、君だけの王子様に見つけてもらえるといいね」
王子様は難しいみたいでちょっと残念だったけど、私だけの王子様っていう言葉がなんだかステキで、ワクワクな気持ちでいっぱいになった。
小鹿亭ってどんなところなんだろう?
5歳の誕生日になったら連れて行ってもらえるらしい。早く5才になりたいな。
今日は待ちに待った5才の誕生日!
小鹿亭のオーナーさんが馬車で迎えに来てくれた!
アリスを迎えにきてくれた馬車みたいに豪華じゃなかったけど、初めての馬車はたまにがったんごっとん飛び跳ねて面白い。途中でヨーカ、ルーン、リリカの3人が増えて、ガタゴトと揺れるのをみんなで楽しむ。また乗りたいな。
小鹿亭についた!
小鹿亭には可愛い女の子が沢山いて、私は王子様に選んでもらえるのかな…って不安になった。
ううん、私だけの王子様に見つけてもらえばいいんだ!私はまだ子どもだし、これから大きくなってもっと綺麗になるんだから大丈夫!そう思うことにした。
小鹿亭で初めてのお昼ご飯!
お肉の塊やフルーツが出てきてびっくり!!孤児院ではちっちゃいお肉しか出てこなかったし、フルーツだって夏とか秋にたまーにしか出てこなかったのに。
小鹿亭のみんなに聞いてみると、お庭にフルーツの木があるんだって!
みんなで収穫して、春になったらお祝いにお肉とフルーツが出てくるんだって言ってた。すぐに見に行きたかったけど、お昼ご飯の後はお客さまが来るからお庭に出ちゃダメなんだって。ちょっと残念。
次の日、朝ご飯を食べた後にみんなでお庭に出て、昨日話してもらったフルーツの木をルーンやリリカやヨーカを誘って見に行った!
教えてもらったフルーツの木はただの木で、フルーツがなくてガッカリ。夏になってしばらくしないとフルーツができないんだって。みんなで楽しみだねってお話して、畑やトイレ、井戸に案内してもらった。井戸は危ないから近付いちゃダメですよってシアノに教えてもらった。
シアノは全然笑わなくて、ちょっと怖い。
シアノは1番上の姉さまって言って、小鹿亭にいる女の子たちの中で一番偉いんだってアイラが教えてくれたけど…偉いから全然笑わないのかな?
絵本に出てきた意地悪なマルドレーヌみたいな人だったらどうしよう…
不安になってこっそりアイラに聞いてみると、そんなことないよって言ってた。今日はいつもよりニコニコしてるって言ってたけど、絶対にウソ!
そう思ってたけど、そうじゃないってすぐにわかった。
みんなが世話人って呼んでる人が来て、ヨーカを『お勉強』っていうのに連れて行ったのを見てるシアノの顔が、さっきとあまり変わってないけど、とても悲しそうに見えたから。
なんでそんなに悲しそうなんだろう?
他のみんなも悲しそうな顔をしてる。
『お勉強』って、怖いことなのかな…
ちょっと不安になったけれど、他の子たちが追いかけっこして遊ぼって誘ってきてくれたから、一緒に遊んだ。
しばらくしてヨーカは帰ってきたけど、あちこち怪我をして泣いて帰ってきてびっくり。
どうしたんだろう…他の子に聞いても「特別なお勉強をしてるんだ」って言って、それ以外は教えてくれない。
それからヨーカにはシアノが、私とルーンとリリカにはアイラがずっと一緒にいてくれて、ヨーカはいつもシアノに抱きついてた。
次の日からもヨーカは『特別なお勉強』に連れていかれて、そのたびに怪我をして泣いて帰ってくるのを見て、私はとっても怖くなった。
そのうちヨーカと私たちは離れて過ごすようにされたけど、何が起きてるのかわからなくてとっても怖い。
ご飯にお肉やフルーツは出てくるけど、とっても美味しいはずなのに、あんまり美味しく感じない。
毎日毎日、怖くて怖くて。
そんなある日、ヨーカがお勉強に行きたくないって泣いて嫌がってるのを見てしまった。
びっくりして、怖くて、私は動けなくなった。
たけどヨーカが泣いてるのを見て、セラって子が世話人にやめてって叫んでて、私も一緒にやめてって叫びたかった。
でも怖くて声が出てくれなかった。
セラとは何回かおしゃべりして遊んだことがある。しゃべり方がちょっと変で可愛い子。
セラがせっかく止めてくれたのに、世話人はヨーカを『お勉強』に連れて行ってしまって、今度は止めようとしたセラもシアノに食堂に連れていかれてしまった。
少しして食堂から出てきたセラはとってもしょんぼりしていて、シアノに怒られたんだってわかった。
やっぱりシアノはマルドレーヌみたいに意地悪な人だったんだ。
ヨーカが世話人にいじめられてるのを知ってて、それを止めようとした子を叱る悪い人なんだ。
シアノに近付いたら今度は私がいじめられちゃうかもしれない。そう思ってシアノには近付かないようにした。
それからしばらくして、ある時セラが「ヨーカ」がいないって騒ぎ出した。
私も周りを見渡してみたけどヨーカはどこにも見当たらない。
外から帰ってきたシアノからヨーカはお客さまの所に行ったって聞いて、セラが叫んで暴れだしたのをシアノやみんなで止めたけど、セラが動かなくなっちゃった。
もしかして…しんじゃった…の?
とても怖かったけど、セラは気絶っていうのをしちゃっただけらしい。
でも…
なんでセラは、暴れたの?
娼婦がお客さまのお相手をするのは当たり前の事なのに。
そうしないと、王子様に見つけてもらえないのに。
…お客さまのお相手は怖いことなの?
…王子様に見つけてもらうために、セラがお客さまのお相手をしたかったのかな?
アイラに聞いてみたら、それは違うよって言ってた。ただ、今日のお客様は特別で、とってもとっても怖い人なんだって。
そうだったんだ。
みんな怖がってて、抱き合ってる。
私もルーンとリリカと一緒に抱き合って、アイラにみんなまとめて抱きしめてもらった。
アイラに抱きしめてもらうと少しだけ安心できる気がする。
今日はみんな早く寝ましょうって寝る準備をしていると、部屋にいつもよりずっと怖い顔をした世話人がやってきた。
こんな時間に世話人が来ることなんて今まで無かったのに。
みんな驚いていると、世話人は私を見つけて「アイビス、来なさい」と言った。
…なんで、なんでそんなに怖い顔、してるの?やだ…
怖くて動けない私の手を引っ張って、世話人に連れていかれる。
助けて欲しくてアイラを見ると、アイラは私に手を伸ばしたままシアノに止められていた。
やだ、助けて。
怖くて声が出なくて、外に連れ出される。
「身体と髪を洗わなくちゃいけない。まずは服を脱ぎなさい」
そう言われて服を脱がされて、ばっばっとあちこちを洗われる。
「アイビスにはこれからお客様のお相手をしてもらう。とても怖いお客様だ。だが、今日だけだ。今日が終わったらもう来ない。…痛い事もあるかもしれないが、我慢してほしい」
そう言われて、私はやっと口を開いた。
「…よ、ヨーカ…は…?」
「…先に、お客様のお相手をしている」
「…いたいの、やだ…」
「…今日だけだ。我慢してくれ」
それ以上何も言えず、何も言われず、綺麗な服を着せられてお客さまのいる部屋に連れていかれる。
部屋に入ると薄暗くて、ギシギシ、ニチャニチャという音だけが響いていた。
血の臭いに鼻の奥がツンと痛くなる。
まわりに髪の毛が沢山散らばっていて。
もぞもぞと動いていたナニかが私を見て、ニタリとおぞましい笑みを浮かべた。




