エンカウントしましたわ
毎度遅い更新ですが、ブックマークしてくださってる方に感謝です。
ヒロイン。それは、良い性質を備えていて読者が共感をもてるようなキャラクターであること。
まぁ、悪役という嫌われることが前提のキャラクターとは違い、好感が持てるようなキャラクターだと知識上では考えていたんだけれど・・・。
うーん、この目の前の女の子はハッキリと"私がヒロインです!!"みたいな雰囲気で未だに尻餅ついてると言うか座り込んだままこちらを怯えてるように見ている。というか見せている。
第三者がいたら、私と燈子ちゃん二人に苛められた様な感じにもみてとらえることもできなくはない。
けれど、一応パーティー会場なので防犯カメラとか設置はされてるんだよねぇ。なぜって?
数年前、同じくここでパーティーが開催されたときに、ちょっとオイタをした人がいるらしく、でもって理事長が今後そういうことが起こっても即刻退学させれるようにというか・・・。
ぶっちゃけると、とあるご令嬢がはしたないことをした挙句、相手を貶めたり、多額の寄付金をちらつかせたりとまあ好き勝手したらしいのよね。それで、今後も同じことが起きらないとは限らないからと設置されるようになったとある程度の上流階級の子供たちは知っているわ。
ちなみにそのご令嬢には別の証拠をというか被害にあいかけた犬に何かあったとき様に色々もたせてたので穏便に話を済ませることができたのだけれど
――閑話休題、話がそれてしまったわ。
つまり、彼女がわざとこういう状況を作っても逆に自分の首を絞めているのだが・・・どうしようか。
ちなみに差し出した手はとっくに引っ込めている。面倒だし、しびれてきたのでやめた。
とりあえず、この場はとっとと去っていこうかなと思って、燈子ちゃんに声をかける。
「燈子さん、この方勝手に転んだようですし私たちはあちらに行きましょう」
「えっ!?」
「えぇ、そうね棗ちゃん。私だったらみっともないからいつまでも転んではいないのだけれど先ほど、棗ちゃんの手を借りることもしなかったようですし、床がお好きなようですわね」
わぁ~お、燈子ちゃんの毒舌、久々だなぁ。ちょっとイラついている様だし、さっさと行こうっと
「なっ、ちょ」
美味しいデザートが私を待っているぅ~。
後ろで何か言っているのを無視して棗と燈子はその場から立ち去った。
※※※
会場に戻ると、新入生や先輩にあたる方たちは、それぞれ挨拶を終えた様子でリラックスしていたり、婚約者同士でダンスを踊っていたりと思い思いに過ごしていた。
「あ、〇〇様が××様と踊られているわよ、去年婚約を結ばれたのでしたわね」
「お二人のお召し物揃えられたようでとてもお似合いですわね」
「◇◇会社の〇〇様のお噂をお聞きになられまして?」
「〇〇様って、半年前に事故で療養している方?」
と、まあ微笑ましい様子でダンスホールを眺めている方もいればうわさ話にピーチクパーチクお喋りする方と他にも会社の益になりそうな会社と縁を結びたいと思っている方などなどパーティーを楽しく過ごされているようね。
かくいう私は、燈子さんと一緒にデザート類を美味しくいただいておりますわ。ン―!杏仁豆腐が美味ですわ!!
「棗さん、ご挨拶やら回られましたの?」
「中学時代に委員会やらなんやらで知り合った先輩や同級生とは軽く挨拶する程度で済ませましたし、ダンスも特に踊るような間柄の人はおりませんので大丈夫ですわ」
あの後、服飾関連やら化粧品会社のご子息ご令嬢らしき先輩にご挨拶に伺うだけ伺いましたわ。
ダンス?はて、何のことやら?婚約者同士や幼馴染で踊る方はいらっしゃいますわね。ゲームの婚約者設定の鳴坂祐とは顔見知り程度で済ませているし、むしろ彼の妹の八千代ちゃんが小中学と懐いてくれて今でも時々、休みの日に一緒に出掛けたりする。家に遊びに行く機会もあったけれど相手は至って普通に妹と仲良くしている女の子という感じで接してくれている。
なので、一緒に踊るような間柄ではないのだ。
そう思っていたのに・・・。
「私と踊っていただけますか?棗さん」
「はは・・・・ハイ、ヨロコンデ・・・」
どうしてこうなった!?




