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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
54/503

和田大樹2

 私の目の前にいる、いるはずない人がいてパニックだ。

 明智くんって外国じゃ!? 実は国内? ……なぜ私の後ろに?


「なんで? どうしてここに」


 慌てていると、両肩にそっと手を乗せられる。

 その時、体が発火したんじゃないかと思うほど熱くなった。やばい、きっと私の顔は赤い。


「わわわ」


 熱さに戸惑っているも、突然後ろに押しやられた。なので視界に人がいなくなる。

 あれ? そういや私は明智くんを見たが、彼は私に目を全く向けてなかった。もしや話し合いの邪魔だから私を押し出したの!?

 そう思うとムカつき、すぐに熱が下がる。

 私が単に邪魔だったんだな……照れた私の純情を返してよ、恥かしい。

 睨むように振り返るも、目は合わない。

 あるのは彼の背中だけ。

 おいおい、当事者を話し合いの輪から外さないでよ! それにしても身長がまた伸びたんだ、もう追いつけそうにないくらいに。男の子の成長は早い。少し悔しいかも……って私も話に入れて!

 彼の横から別所さんたちを覗き見るも嫌な事に気付き、止めた。

 これって保護者の影に隠れる子供的立ち位置だったりしませんか? ママー、助けてーって。


「俺が保証しよう。伊賀崎は目をつけられはしたが、俺が守った」


 自信ありげに明智くんが宣誓するんだけど、彼女たちは引かない。


「は? それのどこが保証よ。あんたがその子を好きなら、庇って嘘ついてるだけじゃない」


 別所友人1さん、少し口が悪くなって来てますよー。そうだよね、相手を畳み掛けるにはまだ言葉が足りませんねー。


「証人は江里口と氷室だ」

「男子2人か。全員とヤッて仲間にしたのかも」


 情報通モドキさん、私を18禁漫画の主人公にしたいのか! これ以上なにかの登場人物枠に入りたくないぞ。


「全員同時!? 気持ち悪い」


 別所友人1さん、楽しそうですねー。そういう話題好きなんですか?


「あ、知ってる3Pってヤツよね」


 別所友人2さん、最初の発言がそれは嘆かわしいですよ?


「4Pよ」

「なんで?」

「三人だけじゃなくて、四人でやるからよ」

「変態だぁ」


 情報通モドキさん、詳しいですね。って私も知ってますが。

 なんだか非現実的な話になってませんか? 女子トークってこういうものだっけ。もっと可愛らしかったような気がするんですがね。

 軽く眩暈がする。


「君らは本当に、そう考えているのか?」


 そんな会話を明智くんが呆れるような声で聞く。

 そうだそうだ、言ってやって! 常識的な話をぶちまけて黙らせようよ! 4PなんてAVでもない限り有り得ないって。


「好きな人をなぜ他人と共有せねばならん。独占してこそだろうが」


 明智くんも彼女らと同じ舞台に立ったー! そこを語るの? 話題にするの?


「そんな状況、俺なら他の二人を倒す。一緒になど出来るか」


 あまりに熱く語るので、全員呆気に取られて彼を見つめる。不機嫌に拳を握る彼に、冗談ですよねと誰か聞いてくれ。


「お前らは好きな人を、別の人と共有していられるのか?」

「え」

「お前らは氷室が好きらしいな。氷室を全員で好きで平気なのか?」

「それは」

「誰かが氷室と一緒にいても共有だからと笑っていられるのか?」


 明智くんが立て続けに彼女達へ質問していく。考える余地を与える気はなさそうだ。


「それに未成年、しかも学生のうちに性交渉してどうする?」

「せっ……す、好きだからヤるんでしょ」


 情報通モドキさん頑張って立ち向かった! 立ち直りは彼女が一番早いようだ。応援すべきではないのだが、その無謀な勇気に拍手したい。


「正気か? 好きと言う感情だけで?」


 彼に感情の揺れ……動揺は無い、本気モードに入った明智くんを説得するのは大変だぞー。


「それは思考を放棄している。考えなければただの動物だ」


 長くなりそうだなぁ。相手が納得するまで追い詰めるし、彼自身納得するまで止まらないからな。


「中学生で子供が出来て、お前は大丈夫なのか?」

「え」


 情報通モドキさん、後ずさる。


「子供が出来る事をするんだ。それを分かっているんだよな?」

「避妊すれば」

「どの避妊方法も確実じゃない。しないことこそ確実だ」


 それはそうだ。彼は間違ったことは言っていない。


「私は関係ない!」

「関係なくは無い。伊賀崎がそんな行為をしているとお前たちが流しているんだろう?」

「だって現にそうだから」

「馬鹿じゃないならそんな行為などしない」

「なんでよ」

「考えれば分かることだ、もう一度聞こう。中学生で子供が出来たらどうする」


 歯を食いしばって情報屋が頑張る。


「病院に行くんじゃないの? 都会の病院ならいつでも無かった事に出来るみたいだし」

「簡単に無かった事に出来ると思うな」

「は? そんなの伊賀崎さんに聞いてよ」

「金額も発生し体に負担も掛かる」

「知らないわよ」

「負担も大きい。一生子供が出来ない可能性も、体を壊し死ぬ可能性もあるんだぞ」

「だ、から」

「お前はその覚悟があって話しているのか?」

「それは、伊賀崎さんが」

「伊賀崎にそんな事はさせない」

「だって」

「有り得ない」


 情報通モドキさん、泣きそうだ。

 もう止めようよ、背の高い人間はそれだけで威圧感があるからきつそう。


「有り得ない噂をばら撒き、伊賀崎を狙う真意はなんだ」

「それは、彼女が」


 彼女らが目を合わせて口篭る。


「伊賀崎を追い詰めて何のメリットがある。別所」


 明智くんが初めて名指しした。彼女の体が少しビクついた様な気がする。


「噂を流しているのは、お前だ。違うか?」


 別所さんを囲む4人が彼女を見る。まるで指示待ちをしているかのように。


「なんで? なんでなの? その女を庇うのはやらせてくれたから?」

「お前は俺の話を聞いていなかったのか?」


 ものすごい形相で別所さんが睨んでいる。


「好きだけで守るなんて、馬鹿げてる」

「そうか。でもそれが俺だ」

「嘘をついてるんだわ、だから何もしないのよ。本当は好きじゃないんでしょ? 友達だから庇ってるんだ」

「それだけならここまで来ない」

「嘘よ! 本当は隣町かどっかに引っ越しただけで」

「パスポートだ。それから、空港で買ったからこんなものしかなかったが」


 明智くんが振り返り、私に小物を渡す。

 熊のキーホルダー……この状況でお土産ですか。


「頼元の分まで考えてなかった、次回には必ず」

「いいえ。私は大丈夫です」


 愛梨ちゃん、こちらに来て微笑む。よし、あのグループの側から離れられたね!


「昨日伊賀崎と電話して、そのまま空港へ向かった」

「ええ!? 来ないで大丈夫だって言ったのに?」

「声に不安定さを感じた。気が付いたら足が向かったんだ」


 なんて行動力。心配させないようにしたのに。


「なぜその子なのよ」


 ぼそりと別所さんの声が聞こえた。彼女を見るとどこか虚空を見ている。あまりよろしくなさそうな状態。


「ちょっと明智くん、ここは引こう」


 小声で話すも、彼は不満そうだ。

 別所さんへの、これ以上の刺激は危ない気がする。


「間違いを正さないのか?」

「庇ってくれるのは嬉しいけど、女子同士の話し合いに男子は入ったらダメだよ」

「なぜ」

「ややこしくなるから」

「早期解決を望んで何がいけない」


 うう、今度はこちらを説得しようとしないで。


「やあ、久しぶり。相変わらず伊賀崎さん守ってるね」


 のんびり口調で和田くんが入ってきた。まだ残ってたんだ、今日は取り巻きさんがいない。珍しい、彼一人だ。


「和田」


 明智くんの威圧が無くなり、少し胸を撫で下ろす。頼むから私も追い詰めるのは勘弁してほしい。


「今日はどうしたの?」

「伊賀崎のトラブルが気になったから来た」


 こんなに簡単に来ないでください。もう容易に彼の電話に出れません。


「そうなんだ。あれ? 彼女は?」


 和田くんが別所さんに近寄る。そして優しそうに頭を撫で始めた。


「なんだか辛そうだね。大丈夫?」

「!?」


 簡単に女の子に触るんだ、和田くん手が早い? なんて見てみると、別所さんの表情がかすかに変わる。


「良かったら話を聞くよ? 僕は神父見習いだからね」


 そうだったんだ、知らなかった。

 ニコニコと和田くんは別所さんに微笑み、彼女を立たせる。


「大丈夫。心配ならうちの懺悔室に来るといいよ。帰りは送るから」

「あ……私は氷室くんと」


 私達があっけに取られていると、別所さんが和田くんから離れようとした。


「大丈夫。僕は司祭になる為に日夜修行中なんだ。全て神に捧げているから心配は無いよ」


 あの安心させちゃうオーラ全開で笑う。これはひとたまりも無いかも。


「それじゃあみんな、またね」


 和田くんが私に笑ったような気がした。もしかして朝の事で気にしてくれてたの? なんだか申し訳ない。でも助かりました。


「それじゃあ話を続けようか」


 明智くんが残った5組女子に向き合う。まだ話し合うの? 和田くんが上手く空気を綺麗にしてくれたのに。


「ちょっと、もう話は終わったわよ、ね」


 急いで彼の前に行き、4人を庇うように立つ。


「終わったの? どうなったの? 百花ちゃんは帰ったみたいだけど」


 友人2さん、よく状況が分かっていないみたい。でもその呑気さにホッとするよ。ぜひとも友人たちとこの場を離れて欲しい。


「なんだか納得いかないけど、今日はここまででいいわ」

「今日はって……もう勘弁して欲しいんだけどね」

「もうそろそろ化けの皮が剥がれてもいいと思うんだけどな」

「剥がれる皮無いから。むしろ私で男の人たちを魅了するってかなり無謀に近いと思うんだけど」

「やってみたの?」

「己の分をわきまえてるわ」

「白々しい」

「しかも医者を魅了する中学生ってどんだけすごい妖艶な美女なのよ。私がしても鼻で笑われお菓子貰ってお終いな気がする」

「何よそれ」


 私は情報通モドキさんの胸を指す。


「あなた! 私より背は低いけど胸はバッチしあるじゃない」

「普通よ」

「その普通が私は羨ましいわ。背の高いあなただってしっかりあるじゃない」


 情けない自分の胸を抱きしめる。うう、某女スパイみたいにならなくとも普通のサイズが欲しい。


「そしてあなたが一番ある」


 友人2さんを指差す。


「ええ? 普通にCだよ」

「言ってみたい、その言葉! 私に分けて? それよりどうやったら増えるの?」

「走るとき痛いから無い方がいいよー」


 言葉は凶器になる、私にとってその言葉は鋭いナイフだ。


「あんたそれは……」


 情報通モドキさんがすこし気まずそうにしてくれた。それ、同情ですよね? やっぱり私の胸が無い方だと思いましたね?


「持てる者の言葉だな」


 明智くんまで参加しないでよ。愛梨ちゃんは恥かしそうに下を向いてる。ごめんね、恥かしい話題をして……でもなんとか彼女らを説得しなきゃ明智くんが怖い。

 胸の話で話題と雰囲気を誤魔化したけど、なんか自滅しそうじゃないですか。これに私耐えられる?


「無い胸でどうやって男子を魅了するのよ、どう考えてもコメディだわ」

「大丈夫だ、伊賀崎」


 明智くんが肩を軽く叩く。


「太れば自然と肉が付く」

「そういう事を聞きたいんじゃない!」

「なら美容整形か? あまり体に良くないから止めておいたほうがいい」

「違うー!!」


 君は私を助けに来たのか、いじめにきたのか。


「やっぱ無理だ。私もうこれ以上追い込めない」


 情報通モドキさんが笑い出す。


「ちょっと、山崎」

「いいじゃん。美咲もいやいや参加してるみたいだし、ヒナだって意味がよく分かってない」

「でも百花が……」

「薬飲んでリストカットして、病んでるのは分かってるけど、こんなに突き詰めても伊賀崎さんブレ無いじゃん。別所を疑うわけじゃないけど、思い込んでるんじゃないかな」

「百花の味方を止めるの?」

「そういうんじゃなくてさ。さっきの和田くんみたいに寄り添えないかなって。他人を追い詰めるより、一緒にいて楽しむ方が別所の為になると思う」

「ごめん、私もちょっといじめはしたくない」


 影が薄かった別所友人3さん……美咲さんと呼ばれている女の子がぼそりと呟く。そういやいつも嫌な顔をしていたけど、それは私を責めるのが嫌でした顔だったのか。誤解してたよ。


「美咲!」

「今までどおり5人で楽しく話せばいいと思うの。悪口で一日終わりたくない」

「ほらね? そろそろ潮時だよ。私は……明智くんと話し合いたくない」


 情報通モドキ、もとい山崎さんだっけ、その気持ちよく分かる。私も彼と話し合いをしたくない。精神的に追い詰められるのが分かるから。


「うちね、お肉屋さんなんだ。毎日コロッケ食べてるよ」

「ヒナ、何の話をしてるの?」

「え? 胸の話じゃないの? よく食べるのコロッケだから、教えてあげようかと」


 一生懸命考えてくれてたんだね、ありがとう。でも、コロッケで胸は大きくならないと思うよ。


「ひとまず謝るわ。ごめんなさい、伊賀崎さん」

「そうだね! 昨日は伊賀崎さん怖く見えたけど、今日はそうでもないや。ごめんね」


 山崎さんとヒナさんが謝ってくれた。これは和解したと思っていいのかな。


「信じらんない。百花を捨てるなんて」

「三条、落ち着けよ」


 山崎さんが彼女を宥めるも、ふんと1人憤ってる。


「私も。ごめんなさい」


 美咲さんも謝ってくれた。これで3人。


「もう知らない。百花に明日言うからね」


 別所友人1さん、三条さんはポケットから青い飴を取り出し、口に入れる。


「あ」


 つい私が声を上げたのと同時に、明智くんが動いた。


「って、ええ!!」


 なんと、彼は三条さんの後頭部を叩いたのだ。飴玉が廊下へ飛び出し転がっていく。あの青い飴玉は氷室くんから貰った飴と一緒だ。いまだポケットの中にある。


「いったぁああ……何をするのよ! 乱暴ね」


 三条さんが頭を抱えて怒鳴る。手加減して叩かれたよね? 首は無事かな? 眩暈は? 明智くんの叩きなんて、恐ろしくてめちゃくちゃ痛そう。


「その飴はどこで手に入れた?」


 明智くんは怒る三条さんに謝りもせず、襟を掴んで聞く。ひぃいい、なんか怖い。どう見ても彼が彼女を脅しているようにしか見えない。


「なっ、普通にお店で買ったわよ」

「どこの店だ」

「え、駅前」

「残りの飴はどこだ」

「っも、百花が」


 明智くんは彼女を解放すると、胸ポケットから携帯を取り出しすぐに電話を掛けた。どこにかけているんだろうか? あの飴玉がどうしたんだろうか? 私のポケットの中にある飴玉、これに何か問題でも?


「和田か? 明智だ」


 おおう、和田くんに電話ですか。そんな急いで電話しないといけない代物なの?


「例の飴を彼女が持っている。回収して処分した方がいい」

「何を言ってるの?」


 山崎さんが眉を顰める。私も意味が分からないので、頭を縦に振る事で答えを求めた。明智くんはいつも説明が少ないよね。


「あまり良くないものが混じってるの」


 変わりに愛梨ちゃんが悲しそうな顔で教えてくれた。


「私も昨日知ったんですけど、何か分からない非合法なハーブらしい物が混入されているらしくて」


 申し訳なさそうに話すと、彼女たちはそれぞれポケットから飴玉を取り出した。


「これに?」

「はい」

「うそ、私結構ガリガリ食べちゃってたよ」

「少しなら大丈夫らしいんですが、一ヶ月もすると依存性が出てくるそうです」


 そう聴いた瞬間、三条さんはハンカチに唾を吐く。


「食べ始めたのは、いつ?」


 飴を買った彼女に問い詰めるように聞く。少し嫌な予感がする。


「この前の日曜よ」


 街中でこんな危ないものが売ってるなんて…。


「その駅前の店ってどの辺りにあるのかしら?」

「露天商だから、いつもいるかはわからない」

「どうやって見つけたの?」

「え? 普通に駅の入り口に」

「どんな人が売ってた? 憶えてる?」

「ふつうのおばさんだった」

「そんな……普通に売ってあるなんて、怖すぎる」


 そのおばさんは、氷室くんのゲームの登場人物で怪しいお店の人なんだろうか? 購入できるのは氷室くんだけじゃないの? 誰にでも購入できるものなの?

 それとも全く関係なくて、普通に危険な店が出ているだけ? どっちなんだろう。


「回収する。全部出せ」


 電話を終えた明智くんが大きな手の平を出してきた。おずおずとみんなその手の平に飴玉を乗せていく。


「でもさ、一ヶ月間食べ続けなきゃ大丈夫なんでしょ?」


 ヒナさんがのんびり笑いながら言うと、明智くんが怒鳴った。


「お前は馬鹿か! 体に良くない物を分かっていて摂取するのは危ないんだぞ」

「ふ、ふえええ」


 あちゃー、泣かせちゃった。気持ちは分かるけど、怒鳴ったら駄目だよ。


「ヒナさん、明智くんはあなたの心配をしてるのよ」

「え……そうなの?」

「どうでもいいなら怒らないわ。心配しているからこそ怒るのよ」

「そう? なら……明智くん、ありがと」


 ふぅ、ちゃんとフォローしておかないと。怖い人で終わってしまうぞ、明智くん。


「それで、明智くん。飴玉集めてどうするの?」


 さすが情報通モドキ……いや、和解したので情報通と呼ばせてもらおう。情報通の山崎さんは飴玉をちゃんと知りたいんだね。


「成分を調べる」

「それは大丈夫です、うちに資料があります」

「愛梨ちゃん、調べたの?」

「私、というより家のものが……カバンに入っていたから調べられたの」


 あ! そういや愛梨ちゃんの家に行った時、カバンに入ったお菓子が無いと言ってたな。


「愛梨ちゃんの家って、お菓子禁止なの?」

「間食は良くないと最近よく取られてしまって……」

「あの若い執事さんに?」

「はい。近藤さんの時はそうでもなかったんですが」

「でもそれが良かったのか……な?」

「なんでも、包装と匂いで気になって調べたそうです」


 それは執事の対応の部類に入るんでしょうか? 愛梨ちゃんが助かってるから良かったけど。


「そうだよね、これって透明の包装で密封タイプじゃないもんね」


 ポケットから飴玉を取り出して眺める。よく見れば怪しさ満載だ。


「伊賀崎」

「ん?」


 飴玉を持った手首を明智くんに思いっきり握られた。


「いた、たたたた、痛いよ、痛い」

「なぜ伊賀崎がそれを持っている」


 めちゃくちゃ力入ってませんか? 痛い、痛いですよ?骨が折れる!


「離して! 痛い、痛いよ、本気で痛い!」


 彼は私の手から飴玉を引っ手繰ると、手を離してくれたけど……酷い、赤くなってる。私にも力加減を配慮してよ。


「伊賀崎さん愛されてるんだね」


 ヒナさんが嬉しそうに笑う。今のどこに愛があったんだ? どこに。


「心配だから急いで飴玉取ったんだ。痛いのも心配したから?」


 そうじゃない、彼は力加減を知らないのだと話したい。


「伊賀崎、話はまだだ。これはどうした?」

「貰いました」

「誰にだ?」


 ああ、やっぱし拾ったと言えば良かった。彼女らより、彼が怖い。要、助けて。


「と言うのは嘘で、実は拾って後で捨てようかと…」

「誰にだ?」

「拾って……」

「誰にだ?」

「だから、拾って」

「伊賀崎の嘘はすぐに分かる。誰にだ?」

「嘘を見抜くなんてさすが愛されてるだけあるね、本当に明智くんは伊賀崎さんが好きなんだ。すごーい」


 山崎さん、それは違う。俗に言うお父さんが子供の嘘を見抜く対応ですよ、これは。可哀想な娘に優しくしてあげて。


「ごめんなさい、……氷室くんにです」


 目を瞑って縮こまりながら答える。怖い、怖くて目が開けられない。



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