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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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対決

 さて、どうするか。

 午後の授業を受けながら、放課後を思案する。

 今後について要と作戦会議をしたかったが、無理っぽい。恐らく別所さんたちは自信満々に愛梨ちゃんを囲んで私を待っている、絶対に通らないといけない靴箱で。

 なにせ私は再生手術という方法で処女検査を逃げ切るらしいからね……ってなんて意味の無い事を。

 最初は別所さんの状況に同情してたけど、ここまで噛み付かれたらムカついてもいいよね? 反撃しなかったら私の評価を地の底にまで落としていきそうだもの。悪いけどそれだけは回避させてもらわないと、悪評はどこまでも広まっていく。

 高校での活動に響いたらどうしてくれるんだ。それだけの為に今まで頑張ってきたのに……。

 でも別所さんは私があの男に襲われたと頑なだった。もしかして自分と私の立場を改竄とかじゃないよね? 思い込むのはいいけど、私をいじめるように追い込むのは感心しないな。

 一歩間違えたら自分すら話題に出るかもしれない危険性があるのに。実際に加納さんは突き止めたし、先生も知っていそうだし……病院に駆け込んだ時点でどこかしら情報が漏れる事を危惧すべきだ。

 でもどんな気持ちで私を追い込むんだろう。少し聞きたい様な、聞いたら危ないような。

 危ないといえば氷室くんのゲームを思い出した。確か仲良くない対象の子の過去を知っていると、主人公を殺しにくるんだよね。


 ごくりと喉が鳴る。


 もし、私が別所さんの過去を知っているとバレたら……殺されたりして。

 彼女なら有り得そうな気がしてきた。どうしたら回避可能? このイベント! 氷室くんじゃないから大丈夫? 大丈夫であって欲しいんですけど。

 授業が終わり、帰りのHR中も戦慄を感じて震えてしまう。

 もう彼女は何か凶器を持ってるかもしれない。なんて恐ろしい事を知ってしまったんだ、私。振り返って背後に別所さんがいたら、叫ぶ自信ありますよ?


「どうしよう」


 後ろを振り向けない。というより扉や窓の隙間を見れなくなった。錯覚でも見てしまいそう。


「大丈夫だよ、伊賀崎さん」


 情けない声を出してると、鬼塚さんが振り返る。


「どうせ噂なんだからさ、気にしない方がいいよ」

「ありがとう」


 気にしてくれている人がいるだけで、嬉しくなる。噂に惑わされないでくれてありがとう、鬼塚さん。


「でもさ、伊賀崎さんの悪口ばかりで変よね」

「ええ? そうなの」

「うん。男子に色目使ってるとか先生に媚びてるとか」


 そんな噂も! 多彩だな。


「大丈夫よ。見ている限り、有り得なくてさ」

「そうだよね」


 中学生が色目って……意味不ですよ。噂の主はドラマの見過ぎでは? 私がそんな事をしても、鼻で笑われて終了です、はい。

 加々良先生なら手の平で追い払いそう。

 噂と私は別人間。きっと私を知らない人は見て驚くね、誰これって。

 本当は嫌われて噂が、じゃないよね?

 ちょっと不安になったので聞いてみた。


「私って……悪目立ちしてる?」

「目立つなら、王子様事件くらい? 学校で盛り上がったし」


 王子様事件? これは黒歴史決定な予感がする。しかも学年ではなく学校で盛り上がったなんて……将来の同窓会とか再会が怖い。


「その、王子様の事なんだけど」

「なに?」


 この場で言っていいのかな?

 好きな人のすり替え……明智くんの名前を出して問題ない? でも早くその話題を消さないと。


「その、王子様より好きな人がいたら、変?」

「そうなの? それってどういう意味?」


 鬼塚さんが椅子を動かし、近づく。

 めっちゃ興味津々だ。そんなに気になるものかしら。

 私は息を吸い込むとまるで賭けでもするような気持ちで口を開く。


「実は昨日転校して行った明智くんから電話があって」

「ええ!」


 彼女の声が大きい! 明日の授業について話していた先生がギロリとこちらを睨む。


「何を話しているの! 静かに先生の話を聞きなさい」


 ごめん、もう少し状況を考えて話すべきだった。そこまで驚くとは思ってなかったんだ、本当にごめんね、鬼塚さん。

 軽い叱責を受けてHRの間、大人しくする。不機嫌になった先生が教室を乱暴に出て行くと、彼女は思いっきり振り返った。


「で、伊賀崎さん、どういう事?」


 すごく嬉しそう。

 HRが終わったのに、なぜか武智くんと村野さんも座ったまま席を動かない。こちらをちらりと伺っているから、聞きたいのかも。

 殊更、言葉選びを慎重にしなくては。


「その、昨日明智くんと……」

「明智ってあの明智だよな」


 武智くんがいきなり体を反転させた。

 1年生の時に同じクラスじゃなかったけど、知ってるんだ。


「転校しちゃった人よね?」


 村野さんもさらりと会話に参戦。気が付けば、佐原くんもこちらを窺っている。なんなんだ、これは。


「明智ってどこいったの?」

「外国へ」

「すげー、帰国子女かよ」

「子女って男の人も使えるの?」

「一緒らしいぜ」

「へぇー」


 設楽さんも寄ってきた。

 放課後になったのになぜ帰らない。部活はいいの? 三年生が抜けたから二年生がちゃんと行かないと。


「ねぇ、それで告白されたの?」

「え?」


 村野さんがすごい事を聞いてきた。

 彼女らにとって相手は王子様でも明智くんでも関係ないかもね。ただ、こういう話題が好きなだけで……私も他人の色恋好きだから気持ち分かるよ! でもね他人の色恋限定だから自分のは除外です。


「まさか告白なんて」

「いや、告白みたいなもんだよ。外国からわざわざ電話してきたんだろ?」


 武智くん、なぜにそう結びつける。


「そうよね、普通しないよね」


 設楽さん、話を進めないで……しかしなぜみんな頷く。


「そうか、やっと明智は報われたのか」

「え?」


 報われてませんよ! これは作戦の一部です! 明智くん原案の作戦ですよー!

 もともと彼は私に好意じゃなく保護活動をしているだけなんですから娘の様なものなんですよ、私の存在って。

 ああ、みんなに言いたい。


「伊賀崎さんにべったりだったもんね」

「1人で廊下にいると思ったら、伊賀崎さん待ちだったり」

「必ず一緒だったよね」

「登下校も一緒でしょ」


 家の方向が一緒だから。

 そういえば私、明智くんを待たせる事が多かったな。トイレに行くから、用事があるからと……その間も彼は律儀に私を待っていたんだ。本を読んでいたから待たせたと思うなって。


「私服姿の2人を見た」

「!?」


 佐原くん、キミって奴はどうしてそんなところばかり見るの!


「それってデート? いいなぁ私もデートしたい!」

「いや、そんなものじゃなくて」

「照れなくていいってば!」


 村野さん、私の話も聞いて……。


「もしかして王子様がいたから、明智くんに踏み切れなかったの?」


 みんなの視線が私に集中した。

 ……これはなんと答えれば。


「前に、突然好きな人を挙げろと言われて、あの人カッコ良かったなと……」


 途切れ途切れに話すと、各々話が始まる。


「そうだったの!?」

「なら本気で好きなわけじゃなかったんだ」

「勝手に盛り上がってゴメンね」

「明智くんにも悪かったな」

「ごめん」

「それで明智くんを意識し始めたの?」

「やっぱり報われた! 明智くんが王子様だ」


 とりあえず武智くん、その王子様発言を止めようか。


「いいえ、違うわ。ナイトよ!」


 村野さん?


「ええー! ナイト?」


 設楽さん、彼女の暴走を止めて!


「ほら、騎士って感じじゃない? 伊賀崎さんだけを守る騎士」


 村野さん、本当に何から影響を? 私にも教えて……対策させてよ。


「明智くんってカッコいいけど、伊賀崎さんしか見ていなかったよね」

「カッコよかった?」

「何言ってるの! 髪はサラサラだし、肌は白いし、運動できて頭がいいし、何よりストイックで大人びていて素敵だったじゃない」


 同じクラスじゃなかったのに村野さんかなり詳しい。

 実は好きなのかな? 邪魔なら私快く引き下がりますよ? お父さんを幸せにしてくれるなら応援します。


「バレンタインで呼び出そうにも、全く応じなかったって聞いた」

「靴箱にチョコを入れても先生に渡したって」

「靴箱にチョコはないな」

「うん、衛生的にどうかと思う」

「だよね、いくら包装されてるからってねぇ……」


 いけない、誤解を解いておかなければ。

 彼が非道に見えてしまわないようにフォローする。


「あの、明智くんはチョコが苦手で、出来れば食べたくなくて」


 遥ちゃんのチョコを見てすごく嫌そうだった。もしかしてアレルギーなのかも。


「そうなの? なら別ので挑戦すべきだったのね」

「もしかして呼び出したの村野さん?」

「違うわよ。知ってる子」


 そうよ! 明智くんだって青春時代に恋をすべきだよね。私があまり束縛すべきじゃない。帰ったら差し替え成功したよって電話したかったけど……止めとこう。

 声変わり(?)しかけてたし、身長も伸びて金髪の美少女と素敵な恋をして、人生を謳歌して欲しい。


「でもさ電話できて良かったじゃん、明智が運命の人だったんだよ」


 武智くん、甘酸っぱいな。

 中学で運命の人なんて口にしちゃ駄目だ、人生長いんだから気をつけないと恥ずかしいぞ? これから先、高校大学と来て社会に出たら色んな人たちに会うんだから。

 でもみんな眩しいな、これが若さ? みんな素敵な恋をして深い大人になってね。


「他には? 何を話したの?」


 鬼塚さんが話を進めようとする。

 この談義から早く離れなくちゃ、王子様+騎士だなんて……これ以上黒歴史を増やしてなるものか。


「困ってることは無いかって心配してくれた」

「それで?」

「高校は一緒に行けるかもしれないから、みんなと会うのが楽しみだって」

「さすがね」


 さすがって、何がさすがなんだろう? 私手遅れ的なこと仕出かしてないよね?

 高校一緒には嘘。明智くんの連絡先を知って、尚且つ連絡を取っているのは愛梨ちゃんだけ……しかも愛梨ちゃんは彼の詳細をみんなに話したりしないので、きっと話題に出ない。

 事情を話して彼女にも協力をしてもらおう。

 いいぞ順調だ、計画通りだ。でも彼が去って半年以上経つけど、けっこうみんな覚えてるんだね。だから明智くんは差し替えを急がせたのだろうか。



「明智帰ってくるんだ」

「うん、高校は一緒のところを受ける予定で」

「もうそれ告白だよね」


 高校を一緒に行こう! が告白?

 それって片方しか合格貰えなかったら、確実に失恋だよ? お手本にならない危険な告白だ……みんな真似しちゃ駄目だよ!


「どこの高校に行くの?」

「近くに出来た星雲高校に行きたい。受かったらだけどね」

「あそこかー」

「新築で綺麗らしいね」

「私も受けてみようかな」

「塾の判定用紙にはまだ載ってなかったな」

「募集始まったばかりだから、まだ詳しい偏差値が出てないんだろ」


 話が一区切りすると、みんな部活や帰る為に席を立ち始めた。


「いい話が聞けた、またな伊賀崎」


 私も武智くんがロマンチストだと知ったよ、君に幸あれ。


「また話を聞かせてね」


 鬼塚さん、もうネタ切れです。でも噂を一蹴してくれてありがとう。本当に嬉しかったよ。


「頑張れ」


 佐原くん、外で会ったら声を掛けてね。……私も気をつけます。


「明智くんの話、また聞かせてね」


 村野さんと設楽さんは同じ部活のようで、一緒に笑顔で去って行く。1組の子達は純真だなぁ。可愛いぞー、もう頭を撫でたいくらいに! お休みの江里口くんの席を見て、彼にも教えたかったなと思った、残念。

 明日は学校に来れるだろうか?


「さてと、私も帰ろうかな」


 私も席を立つ。

 たぶん靴箱で私はまだかと待っている子達もいるしね。別所さんは分からないけど、他の子はいるだろうな……確実に。

 本当に上手い反撃の話を思いついたよね、再生手術だなんてさ。さて、私はどうするか。

 教室を出て靴箱へ向かう。1組は側に階段があり、降りるとすぐに靴箱へ到着だ。


「なんか不毛なんだよね。考えてもいたちごっこだもん、疲れる」


 困った顔の愛梨ちゃんと彼女達が見えた。心配して近寄ると私に気付いた彼女達の顔に笑みが浮かぶ。

 そうか、そんなに私が待ち遠しかったんだ。帰ってもよかったのに、また愛梨ちゃんと私の時間を邪魔する。


「こんにちは、伊賀崎さん」


 のっぽの別所友人1から挨拶される。

 冥加さんごめん、また名前忘れちゃった。人の名前を憶えるのが苦手で……。


「こんにちは、別所さんたち」


 一まとめで呼ぶ。

 でも意外、別所さんいたんだ。氷室くんを追いかけてなくていいのかな? 彼は部活だから、時間的余裕でここに?


「昨日は自信満々に話してたけど、再生手術を受けてたらそりゃ自信あるよね」


 情報通モドキさんがしたり顔で頷く。参謀はあなたですか?


「証拠はあるの?」

「あなたが隠してるから分からないわ」


 おいおい、憶測で決まりなんだ。


「そういう病院へ入る所を見た、直接聞いたとかないの?」

「有名人気取りは止めてよ。そんなに注目されてると思ってるの?」


 別所さんだけ私を見つめている。

 包丁なんて出しませんよね? ナイフとか構えてませんよね? それだけが怖い。


「ならさ、他の人もそれが該当するわよね」

「どうしてよ」

「決定的な証拠が無いんだもの。ならあなたも私も一緒よ」

「いいえ、違うわ」

「どこが違うというの?」

「あなたはありえるのが証拠よ」


 とんだ言いがかりだ。


「熱を出したから、いけないのね?」

「誤魔化してるのがいけないのよ」

「そう……嘘でも晒さないと気がすまないのね」

「真実は常に明るみにでないと」


 どんな信念の持ち主なんでしょうね。おそらくゴシップ系としか言いようがないけど。


「なら、みんなで産婦人科へ行きましょう」

「再生手術した人は判別できないから、意味ないじゃない」

「違うわ」


 私の真意がバレないように、別所さんを見ずに話す。


「カルテがあるかどうか探すのよ」

「は?」


 驚いているなぁ。


「みんなで産婦人科へ行くの。そこで自分のカルテが無いか調べてもらうのよ」

「それのどこに意味があるのよ!」


 別所友人1さん吠える。意味があるのよ、それが。


「この一年半以内に受診したかどうか」

「!?」


 目の端で別所さんの体が揺れた。

 特定しないから、拒否して逃げて。


「近くの病院だけでもいいから。みんなだって決定的な証拠を掴みたいんでしょ?」

「車で遠くの病院に行ったかも」

「もし私がそういう目に遭ったのなら、即病院へ行かなければならないわよね? なら、あの御影山からこの町の中にある産婦人科へ駆け込むはずよ」

「でも、自信があるのはこの町の病院じゃないからね?」

「可能性としてそれは難しくないかしら」


 私が目を逸らしながら話すのを別の意味で受け止めたのか、4人で相談し始めた。


「もしかして、賭けに出てるんじゃない?」

「行ってみたら証拠が出ちゃうかもよ」

「そうよね、保険証を出せば必ず出るもん」

「行く?」


 チラリと愛梨ちゃんを見ると、自信ありげに微笑まれた。私のする事を信じてくれているのかな? 頑張るね!


「ダメよ」


 別所さんが声を上げる。


「みんな騙されないで、伊賀崎さんはなんでもするんだから」


 何でもとは、過大評価されたもんだな。


「次は私は何をするんでしょうか?」

「体を使って医者に受診した事を消してもらったに違いないわ」


 それって法律違反では? 医療費とかどうしたんでしょうね、お医者様的にアウトですし、看護師さんたちがそんな不正黙ってない。

 彼女はどんな火サスを見たんだ。お色気入った殺人事件じゃないんですからね。私は発育の遅い中学生でーす。

 はっ、ロリなら有り? でもカルテ改竄はリスクが高いから無理だよ。


「あのさ、私もう疲れた」


 和解できない相手にこれ以上時間を割きたくない。何をどう言っても違う事ばかり指して、口を開けば汚いの嘘つきだの……。

 妄想に付き合ってられない。


「喧嘩相手なら別の人にして」

「誤魔化して逃げるの?」

「誤魔化すも何も、何を言っても私が全部悪いんでしょ? なら話し合っても意味がないじゃない」


 私は彼女達をスルーして靴箱から靴を取る。靴を隠したり捨てたりするような腐った根性の持ち主じゃない。それだけが救いかな。


「別所さんは氷室くんが好き、私は明智くんが好き。それでいいじゃない」

「花音ちゃん」


 愛梨ちゃんが嬉しそうな顔になる。だけど別所さんは違った。


「何よ、1人だけすっきりした顔をして。落ち込んで泣きなさいよ」

「やっと違う事を話してくれたね。あなたも氷室くんだけ見てすっきりすればいいじゃない」


 泣き叫んで否定ばかりする別所さんが、会話をしてくれた。汚い嘘つきばかり連発してた時とは大違いだ。


「分かってるんでしょ? 私と氷室くんが全くなんでもない事を」


 みんなの視線が別所さんに行く。が、彼女は一向にひるまない。


「明智くんになったのは、王子様に汚い事がバレたからでしょ!」

「別所さん一体どうしたの? 確かに一年生の時はあまり仲良くなかったけど喧嘩をする程話したこともなかったよね」


 その時、何か音がした。なんの音だろう? 振動音?


「私は確かに事件現場にいたし興奮しすぎて熱が出たよ」


 愛梨ちゃんが少し離れて柱の影に入る。

 電話が掛かってきたみたい。もしかしたら執事さんからかな? 校門で待機中だったり?

 あちゃー、最近下校が遅いから心配させてしまってるかも。


「野次馬は良くなかった、反省してる。だから無い事挙げて責めないで」


 飽くまでしらをきろう。あの事件は誰にも係わってない。別所さんも関係ないと。


「明智くんも体で縛ってたんでしょ? 家来の様に従わせて」


何故そう斜め上を行く。会話のキャッチボールしようよ。


「私と明智くんは何も無かったよ? ただ彼は私を心配してくれただけで」

「何も無いのに、何も無かったのに何で守られるのよ!」


 別所さんが頭を振りかぶりながら叫ぶ。

 もうこちらを見ていない……やはり和解は無理なのだろうか。


「伊賀崎を守るのは、好きだからに決まっている」


 昨日聞いた声が私の背後でした。急いで振り返ると身長差なのか突然ネクタイが目に入ったので、改めて少し顔を上げる。


「すまない、遅れた」


 そこには、話題の明智くんがいた。



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