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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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 本日の昼休みは、残念ながら遥ちゃんとご一緒で出来なかった。


「それじゃあ、別所がただ騒いでいたのか?」

「はい」


 貴重なお昼休みは、別所さんが廊下で騒いだ件で呼び出し中である。なんとも納得のいかない……私はただ、愛梨ちゃんへ話をしに行っただけなのに。

 職員室の中にあるコミュニケーションスペースのソファーに座り、あの時の話をなるべく正確に話している。


「一年生の時にもあまり会話をしていませんし、一緒に何かしたり遊びに行ったこともないです。だから嫌われている理由も分かりません」

「そうだよな、そうなる理由は潔癖としかいいようが無いよな」


 話を聞いてくる先生は懐かしの元担任、加ヶ良先生だ。あまり熱心そうに見えないけれど思慮深い……はず、だから偏見はしないでくれると思う。


「前回泣いた件も今回泣いた件も不明、と」

「逆に私が聞きたいくらいです」

「俺もだ。別所は泣いて何も話さないし、氷室は知らないと言うし……はっきり言って面倒だから、お前らだけで解決して欲しい」

「そんなはっきりと」

「言いたくもなるさ。先生はな、こう見えてかなり大変なんだぞ? 書類作成ばかりで気が滅入る」

「そう愚痴をわたしに言われても。自身で就いた職業ですし給与を貰っているなら、やらなきゃ」

「大人にも事情というものがあって、しがらみとか大変なんだぞ?」

「それを踏まえて選択したんでしょう?」


 同情しませんよと回りくどく言うと、先生がこちらをジッと見ていた。

 いけない、言い過ぎたかも。つい口元を片手で覆った。


「失礼しました。大人の苦労を知らない子供の賢しい言葉です、ご容赦を」


 ホホホと言わんばかりに苦笑すると、先生は溜息をつく。


「そうか。そういえば生徒会で人手が足りないと話が……」

「私は弟の世話がありますので、すみませんが……」

「親はどうした。おじいちゃんやおばあちゃんは?」

「お母さんの両親は高齢なので、あまり頼れないんです」

「そうか。ま、別所はカウンセリングがつくが……ついでにお前も受けとくか?」


 滅相もありません、変な事に気付かれたら大変ですから。


「いいえ、大丈夫です」

「わかった。ならもう戻っていいぞ」

「ありがとうございました」

「困ったことがあったら、すぐに言うんだぞ」


 こちらを見ずに、書類を眺めながら先生が手を振る。


「ありがとうございます」


 一応は気にしてくれているのだ、感謝の気持ちをこめて頭を下げると職員室を後にした。

 休み時間はもうそろそろ終わる。

 ……水原くんの勇姿を眺めながら遥ちゃんの恋バナを聞く予定だったのに、呼び出しで延期だなんて。

 更に納得がいかないのが、私が最後の呼び出しだった事。別所さんと氷室くん、愛梨ちゃんは授業中に呼ばれて私はお昼休みに……くぅうう。

 ほんの少しだけでも、と体育館へ向かうも途中で会ったのは氷室くんでした。何でこんな所にいる? と怪訝な目を向けるも彼は嬉しそうにこちらへ歩いてくる。


「あ、伊賀崎さん。ども」

「どうも」


 私に気付いても、笑顔は変わらなかった。よく笑顔でいられるな。あんな事があったのに。


「どうしたの? 暗いよ?」

「さっきまで職員室で質問を受けていたの。貴重な休み時間がパァよ」

「残念だったね」

「氷室くんは別所さんと付き合っているんでしょう? 彼女をなんとかしてよ」

「いや、俺は付き合ってないよ」

「は?」


 彼が両手を胸の前で振って否定する。


「マジで、マジ仲の良い友達だよ」


 あれ? 話が繋がらないぞ?


「だって別所さんの友達なのかな? 一緒にいる4人がそう言っていたよ」

「ふうん」


 何か考えるように彼の視線が上にいく。


「私についてすごい誤解をしているから、解いてね」

「どんな誤解?」


 嬉しそうに聞かないでよ。


「本人から聞いて」

「でも別所さん早退したから、分からないよ」


 あんなに情緒不安定なら、帰って休んだほうがいい。また私を見るなり叫ばれるのは、正直嫌だ。


「明日でも結構です」

「えー、花音ちゃんの意地悪」


 からかう様に言われて、ムッとした。

 廊下で騒がれて私はあんまり愉快な気分じゃないんだぞ? しかも変な噂を流されてさ……尾ひれがついて大変な事になる可能性だってある。


「気軽に名前を呼ばないで。名字でお願いします」

「変わらずガードが固いなぁ、それじゃまたね」


 私の手に何かを押し付けると、楽しそうに教室棟へ歩いていく。

 手の中を見れば、飴玉が……。色が青なのでソーダ味かも、ってこら! 校内にお菓子は持ち込み禁止だぞ。


「そうだ」


 私も教室棟へ向かい、1組に戻ると江里口くんを探す。

 彼は自分の席で眠そうに何かを書きなぐっていた。


「江里口くん」

「なぁに? 不機嫌そうに職員室へ行った伊賀崎さん」


 名前を呼ぶと鉛筆を置いてこちらを見てくれる。

 でも、言ってくれるね、疲労感漂う彼にそんな事言えないけど。


「疲れてるなら、これあげる」

「……これは?」

「貰いもんだけど、疲れてる江里口くんの方が必要かなって」


 先程氷室くんから貰った飴を差し出せば、受け取りすぐに匂いを嗅ぐ。

 何? その飴、臭いの?


「すごいコロンの臭いだ」

「え? そうなの? 綺麗な水色だからソーダ味だろうと思ったんだけど、キワモノ系だった?」

「透明な包装なのに、よく味が分かるね」

「いや、青系だから味はソーダだろうと」

「ふうん」


 江里口くんが訝しげな顔をしたので、少しビクつく。


「もしかして、やばいもの?」

「校内にお菓子持込は……」

「私じゃないよ? 氷室くんが押し付けてきたんだからね」


 怪訝な顔をしたのはそういう意味でか! そういや彼は生徒会の手先だから、規律に厳しいのかも。

 必死に出所を吐くと、困った顔をされた。


「氷室に接近したの?」


 ぐ…接近禁止令を彼から出されていたのに、会話をしてしまった。

 ごめんなさい。


「実は、職員室の廊下で話しかけられたの」

「彼に係わらない事が、伊賀崎さんのこれ……から……を」


 江里口くんが咄嗟に片手を頭に添える。


「どうしたの?」

「……」


 彼は目を瞑り、固まったように動かない。いや違う、頭が痛いのかも。


「大丈夫? 保健室に行く?」

「………」


 何かに耐えているようで、彼はジッとしている。

 偏頭痛かな? 先生を呼んだほうがいいかも。最近書類作成ばかりで疲れてるんだよ、何をそんなにやらされているんだろう。ふと彼の手元にある紙を見るとそこに文字はない。

 書かれているものは文字ではなかった。


「なにこれ?」


 幾何学模様みたい、これを鉛筆でここまで書けるなんてすごいけど目が疲れそう。だからか!

 1人で納得していると、縋る様に手を掴まれた。


「江里口くん痛い? 先生を呼んだほうがいい? 救急車も呼ぶ?」

「大丈夫、治まってきた」

「一応保健室に行かない?」

「大丈夫だから」

「念の為に見てもらった方が」

「その時はそうするよ」


 行く気が無いようで笑顔で諭される。


「そう? でも無理しすぎてるんじゃないの?」

「ははは。そうだね、自分でもそう思う」

「体を大事にしないと。ちゃんと目も休めよう」


 江里口くんは手を離すと、そうだねと少し寂しげ頷いた。

 その日、どうも本調子に見えない彼を気にしつつ過ごすけど……本当に大丈夫だろうか? 顔色が本当に良くない。

 加々良先生、江里口くんをこき使いすぎ?

 放課後、江里口くんは帰らず生徒会の方へ向かった。

 こんな日くらい早く帰ればいいのに。

 彼の体調を気にしつつ教室をでて、靴箱で行き成り囲まれました。


「あれ」


 誰に? それはもちろん5組の4人にです。

 彼女達と一緒に来た愛梨ちゃんが必死にとりなすけど、聞こえていないようで引いてくれない。

 どうしたものだか……。


「人が真剣に話しているのに、どうしてそんな態度なの?」


 まるで私が酷い人間のように貶される。

 逆に聞きたいよ。どうしてそんなに私を否定するのに必死なのか。


「別所さんの気持ちを全然分かってない……。どこが夢見るお姫様よ」


 それは初耳、誰がお姫様だ! 発言元に白紙撤回を断固求めるぞ!

 要に聞こうかな……一体誰なのよ言い出したのは。


「ちょっとモテるからって調子に乗りすぎなのよね」


 誰がいつモテたんだ? 私は純粋にモテたことはないぞ?

 変な意図的なモテなら……ホイホイ機のようにあるが……それだけは認めたくない。

 頭を抱えたくなると思っていたら、肩を押される。

 考える事に集中してたので、かなり驚いてしまいましたよ。

 お怒りの5組女子に愛梨ちゃんが蒼白になって慌てる。


「あのね、あなたに話をしているのよ?」

「花音ちゃんは何も悪くないわ。何もしていないもの」


 彼女の発言に4人組の視線が集中した。

 愛梨ちゃんに酷いことするなら、私も行動しちゃうぞ。


「頼元さん……可哀想」

「え」

「こいつに騙されて」

「そんな、私は騙されては」

「大丈夫よ。あなたはもう私達の仲間なんだから」

「あの」


 何を言っても聞く耳を持たないのは、4人組の方だ。

 いくら弁明しようとも『うそつき』の一言で片付けてしまう。もうどうやったら帰れるのか。


「あなた達の言いたいことは、別所さんが傷つき帰宅したことへ謝罪と、氷室くん愛梨ちゃんへの接近禁止。及び犯罪者に手を出されたから大人しく何もせず静かにしている事。でいいのかしら?」

「分かってるじゃない」

「明日からちゃんとするのよ」


 溜息をつきながらまとめを言うと、当たり前でしょと返ってきた。

 あのね、どうしてこんな無茶な要求を飲むと思うんだろう? はっきり言って無理です。


「そんな、酷いわ。どうしてそんな事を言うの?」

「頼元さんは黙っていて。私達がしなければならないことなの」


 正義は我にあり、なんですねー。

 こんな事を言うなんて恥かしくないのかな? 将来的に後悔……するわけ無いか。大抵こんな事を言う人達は、大きくなって忘れてるもの。

 しかも、その事を話しても勘違いだの妄想だの笑い飛ばしてくるから手に負えない。


「でもね、傷つけられたのは私の方よ」

「なんですって!?」


 お怒りの四人に指を突きつけた。


「1つ。いきなり公衆の面前で男遊びが激しいといわれた」

「その通りじゃない! まちが」

「2つ。愛梨ちゃんは友達よ、人に決められて友達止めるなんて訳が分からない」


反論される前に強く言い放つ。絶対に逆上するだろうから。


「最後に。私は転んで怪我をしたけど何もされていない。別所さんの勘違いで私の事を決め付けないで」


 正直怒っているので、強い口調で話す。すると、意外なことを言われた。


「伊賀崎さん、恐い」

「へ?」

「そんなに怒りながら話すなんて、やっぱり図星なんじゃない」


 開いた口が塞がらない。

 今までの自分達の口調などまるで知らないとばかりに寄り添い私を恐がる。


「別所さんにもそう言ったんでしょ? 恐しい人ね」

「脅したんだわ」

「だから泣きながら帰ったんだ」


 何がなんでも私を悪役にしたいのか……。

 ここで私が泣けば調子に乗ってたくさん要求してくるだろうし、怒れば弱者を騙ってそこを突いてくる。こういう女子が集まると碌な事がないな。


「別所さんの言い分ばかり話しているけど、私の言い分は真っ向から否定するのは何故?」

「彼女が正しいからに決まってるじゃない」


 なによ、それ? 別所さんが何をしても理由があったと擁護するわけ?


「それに引き換え、何? あんたの態度。反省が無い」


 反省するも何も、私にはやましい事はない。別所さんの件に限りだけど。


「私が何をしたというの? 何もしていない」

「別所さんを泣かせたでしょ」

「別所さんは私を汚いと罵って勝手に汚れていると判断したのよ?」

「そうさせたのは、伊賀崎さんじゃない」


 駄目だ、もう埒があかない。


「もう大人に介入してもらいましょ」

「逃げるの?」

「話が噛み合わないから、大人に仲介してもらうのよ」

「大人に庇ってもらうのね」

「違うわ。私相手だと何がなんでも私が悪いと判断されるから、間に人をいれるのよ」

「庇ってもらうんじゃない。やっぱり後ろめたい事があるんだ」


 クスクスと4人で笑いあう。


「いい加減にして!」


 突然愛梨ちゃんが大声を出した。


「こんなのおかしいわ」

「頼元さん、落ち着いて」


 1人が彼女の肩に手を置き、目を覗き込むように強く話す。


「いいえ、黙ってなんていられません」

「え? なんで」

「あなた方、ちゃんと花音ちゃんの話を聞こうとしてますか?」

「頼元さん、黙るの」

「いいえ、出来ません」


4人が目を合わせあう。


「この人を信じたいのね、でも間違っているわ」

「いいえ、私は知っています。だから違うといい続けます」


毅然と4人の間を通り抜けて、私の側に来てくれた。


「この前まで花音ちゃんの事を悪く言わなかった、なのに別所さんの一言でなぜこうも変わるのですか」


 別所さんの一言? 何を言ったのだろう、彼女は。


「泣いている別所さんを可哀想だと思わないの?」

「可哀想です、周りを見ずに誰かを傷つけて自分を守る彼女は可哀想です」

「頼元さん……」

「それよりも嘘を押し付けられて、責められている花音ちゃんの方がもっと悲しいです」

「頼元さん、もう庇わなくていいよ」

「だから」

「だって頼元さんが病院に連れて行ったんでしょ?」

「え」

「あのオリエンテーションの時に」

「いいえ、連れて行ってなどいません」

「でも車で送ってあげたんでしょ」

「はい、うちの車で送りました」

「病気なのに病院へ行かなかったの?」

「それは花音ちゃんの家族が連れて行くべきだと」

「病院に行けば、バレちゃうから? 話し合いで決めたの?」


 情報通の女子が嬉しそうに話す。


「違います!」

「確か頼元さんも尋常じゃないほど泣いてたらしいね? 何があったの?」

「!!」


 いけない、彼女の事を突く気だ。

 どんな気持ちで泣いていたか分かられちゃ駄目だ。


「もう分かった。私が病院にいけばいいんでしょ」

「花音ちゃん」

「私が病院に行って処女かどうか検査を受ければ、いいのよね?」


 愛梨ちゃんが振り返って私を止めようとする。


「いいのよ、これで解決なら望むところよ」

「頼元さんの力に頼るんでしょ」

「愛梨ちゃんが何を助けてくれるのと言うの? 医者に診断してもらうのよ?」

「お金を払って嘘の書類を作ってもらえば解決じゃない」


 私は頭を掻いた。


「あのさ、それを愛梨ちゃんがするメリットって?」


 昨日一緒に帰ったのなら、愛梨ちゃんの家がお金持ちだって事がわかったんだろうな。でもいくらお金持ちでもそのお金は愛梨ちゃんが稼いだものじゃないし、好きに使えないと思う。

 それがなぜ分からないのかな? 彼女のお祖母さんは絶対そんな事に使わせなさそうだ。


「複数の病院で調べてもらうわ。それなら納得する?」


 私は4人の顔を順番に見つめた。



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