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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
43/504

明智新吾2

 考え込む彼から一歩離れてみて、このまま逃亡できないかなと様子を伺ってみた。

 試しにもう一歩下がったらこちらに顔を向けられたので、集中して周りが見えない人ではない事がわかりました……。そうですよね、教師なんで生徒の様子は目の端に留めてますよね、残念です。

 でも逃げる姿勢じゃないので、あまり近づかないで欲しい。顔の整った人と言うものは、普通の人間の心臓には負担が大きいんですから。


「では、質問です。何故、私が好きだと嘘を?」


 突然嘘確定ですか? まぁ、そうよね。どうみても私は好意的に見えない。見抜かれて当然でしょう、うん。学校のみんながおかしな反応で困ってたが、こういう対応されると現実に接する事が出来たとホッとする。

 ただ、それがこの人でなかったら良かったのに。

 ちらりと彼を見れば、ギロリとこちらを睨まれた。こちらは14歳の中学生、なに凄むんですか! 大人の対応じゃないぞ? 子供から好意を寄せられても笑って流して、ガン無視してくれませんかね。

 そのくらい明智新吾なら出来そうな感じがするんですけど?


「話を聞いていますか?」

「!?」


 さすが先生、聞いてない生徒は見逃さない……ちゃんと聞いてますし、考えてますよ。日々、色んな事を考えているからこれでも大変なんです。

 普通の中学生が背負うには重すぎる事ばかりで……大人の記憶があっても対応が出来ていないのが、ちょっと悲しいかも。


「すみません、もうなんだか……」

「あなたは思っている事を全部私に話せばいいのです」


 溜息混じりに答えれば、さらりと難しい話を要求される。

 私の置かれている状況は結構難解で面倒、しかも理解してもらえなさそうな話な訳ですし、下調べも終わってない。仕方ないので、ここは最初の作戦通りに押していくかと意を決して顔を上げる。


「実は緊張して言えませんでしたが」

「はい」

「あなたの事が好きなんです」

「ほう?」


 ドスが効いた声で返された! しかも心なしか視線が痛い。

 『あなたが好きなんです! 作戦』で簡単に終わらせたかったんですけど、不発で終了。ああ、自分の演技力の無さが憎い。


「まだ言い続けますか、戯言を」


 ただの小さな恋的な告白シーンなのに、なぜにこんな責められる。

 エンディングで優しく微笑む彼はきっと嘘です、主人公は夢でも見たんですね、絶対。


「顔ですよ、顔」

「は?」


 お怒りモードの彼に、これ以上色んな意味で近づいて欲しくなくて呆れる理由を口にする。

 それにしてもどうしてこの道に人が通らないんだろう。通行止めでもしているんじゃなかろうか、それとも天が私を見放しているのか……ありえる。


「顔がなんですか」

「あなたの顔が好みだったんです」

「この顔が?」

「カッコいいじゃないですか」


 眉がピクリと反応する。ひぃいいい、地雷原でありませんよーに!


「顔のパーツもバランスがいいですし、身長だって高い。体に合ったスーツを着こなしているのも、袖にほつれもなく、襟元も清潔」


 昔、少しだけ人事に係わった事がある。もちろん前世だけど。

 面接で一生懸命なのはいい、でも身嗜みを気をつけて欲しい人が多かった。ワイシャツの下にカラーものは駄目、髪の毛いじりすぎ、ピアスが派手すぎ。社会人は見た目が大事なんです。特に清潔感が大事。


「体臭もないですし、言葉遣いも優しい」


 つい全身隈無く見てた。これは役得かも。


「あ、爪も綺麗にしているんですね、これはモテるわ」


 手の甲もCMに出れるくらい綺麗だ。攻略対象っていいですねー、こんなにも恵まれている体を手に入れられるんですから。


「外見で判断したと?」

「よく一目惚れされませんか? 告白されたり手紙貰ったり」

「無い」

「ええ!? 周りは男子校だらけとか? もしかして幼馴染の美人女性がいるとか?」

「美人かどうかはわからないが、幼馴染はいる」

「そっか、じゃあ遠慮して言えなかったのかな?」

「何を遠慮することがある」

「普通に考えたら思いつくでしょ、親しい人がいたら付き合っているんじゃって」

「ありえない」

「ありえなくないですよ、そんなもんなんです。記念告白すら出来ないほどの美形カップルに、近づくなんて恐ろしすぎて無理です」


 そうか、そういう事情があって一人だったんですね。いい歳をした男性が女子高校生と恋愛状態になるなんて、おかしいと常々思っていたんです。出会いって難しいんですねえ。


「私の話を聞きましたね」

「え」

「ならば次はあなたです」


 え? 順番だったんですか!? ならもっと違う情報を聞きたかったですよ、高校に関する話とか。


「あなたは何を隠しているんですか?」

「え」

「胡散臭いんですよ、あなたは」

「な」


 なんですと!? 突然現れては消え、また現れては問い詰める人に言われたくないぞ? 怪しさで言うなら明智新吾、あなたの方だ! と指差して言いたい。

 名前も名乗らず、情報だけ得ようとする。ゲームで存在を知らなければ、即警察に通報です! 今からでも通報してやろうか? 何か一矢報いたい。


「怪しいなら、あなたもじゃないですか! 名前も名乗らず、人を悪人呼ばわりして」

「私の名前を知らないのですか?」

「当たり前です、自己紹介もされてません」

「それは失礼しました」


 殺気に満ちた視線が収まり、通常の顔に戻る。


「私は冥加新吾と申します」

「伊賀崎花音です」


 遅すぎだが、お互い自己紹介をして軽く頭を下げる。よし、これぞ日本人。でもあれ? みょうが? ……って誰よ、それ。


「え、茗荷? おそうめんやお刺身に添えてある?」


私が戸惑っていると、溜息を付きながら説明をする。


「冥利に尽きる、の冥に加えると書いて冥加と書きます」

「へ、え……えっと珍しい名字ですね」

「そうですね、よく驚かれます」


 私はそんな事に驚いたわけじゃない、名字が違うことに驚いたんですけど。

 一体どういう事なんだろう? ゲームでは明智と名乗っていたじゃないか! 

 初めて会話が出来たのに、明智の名前を出して問い詰めることは出来ない。聞けばきっとまたあの尋問官モードに切り替わり、容疑者さながらに詰問されるだろう。一旦これは持ち帰りだ、要と話し合おう。

 混乱する頭を押さえつけ、気持ちを切り替える。まずは目の前の男性と渡り合わなくては。


「えーっと、冥加さんは昨日私をよく見たといいますが、どこで見かけたんですか?」

「……何を聞き出したいのですか?」


 彼が眉を顰める。和やかに行きましょうよ、私はあなたの未来を守りたいんです。ゲームの明智新吾? さん。


「冥加さんは背も高いしカッコいい、かなり目立つと思うんです。私が気づかないのはおかしくありませんか?」

「なるほど、私が見たのは赤の他人だった、と言うんですね?」

「はい」


 よし、鬼気迫る尋問のような会話より、お互いの意見を擦り合わせる会話に出来そうだ。恐怖で解決するのは勘弁して欲しい。


「それは無いです。私は車でしたから」

「え? ……車の中から?」

「はい」


 ならば見つけようが無い。むしろ気が付かなくて当たり前だ。


「解りました。でも昨日今日で物事を判断するのは少し気が早いと思うんですけど」

「そうでしょうか?」

「偶然、ですよ」

「私にはそうとは思えません」


 きっぱりと断言される。本能的な何かを感じ取ったのかな? でも名前が違う。


「たかだか数回あっただけで、何かあると思うのはおかしいです」

「む……そうですが」

「それに私がどうやってあなたをつけ回す事ができるというんです? 今日なんか校内を掃除中ですよ? おびき出すなんて無理です」

「だからあなたを疑っているんです」

「そんな」


 ただの中学生に何が出来るというんだ、無茶振りは止めてほしい。


「私だって現状に驚いているんです。昨日ですよ? 昨日好きな人を聞かれて、冥加さんがタイプだって話したら」

「話したら?」

「違うクラスの生徒に話したのに、自分のクラス及び先生たちにまで広がったんですよ?」

「ほう」

「おかしくありません? しかも先生も協力的なんです。何故に!」


 本当に解せぬ、です。教師も応援する恋ってなんなんでしょうかね。


「そこであなたの登場、私の気持ちわかります?」

「ふむ」


 つい今日感じた苛立ちをぶつけてしまう。

 めちゃくちゃ焦ったし、あの後大変な目に遭ったんだから! その事を言わずにおれない。


「一体何が起きたんだと混乱しましたよ。しかも意味不明な言葉を残してあなたはいなくなるし、周りにいたクラスメイトも楽しげに言いふらしていくし……もう、なんだか前世で悪い事をしたんじゃないかと思うくらいに何かに巻き込まれて」

「わかります」

「へ」

「今のあなたの気持ち、十分にわかります」

「分かってくれましたか!」

「私もあなたと一緒です」

「え?」


 先程と違い、彼はうんうんと頷く。


「私も同じような立場です、今日のお気持ちは分かりました」

「冥加さんもそうでしたか」

「ええ、私もです」


 和解できた! やはり話し合えば何事も穏便に済ます事が出来るんですね、文明社会万歳!

 場の雰囲気が柔らかくなる。これは誤解が解けたんですよね? 敵対モードから和解モードに変わったのだと喜ぶ。

 私のゲームにそんなシステムはライバル女子にしかありませんが、男子相手もありなのかもしれない。


「誤解が解けて嬉しいです」

「ええ」


 彼がにこやかに笑ったまま、肩をそっと掴んできた。


「でもね」

「はい」


 あれ? でもまだ空気がおかしい気がする。


「あなたが入学式に私を見て驚いた理由にはならないんですよ」

「えええええ」


 憶えていたかー! なんて記憶力! 忘れちゃってくださいよ、そんな事。


「その理由を聞くまでは、納得できませんね」

「理由と言われても……」


 その理由はとても言い難いものなんですってば。


「そんなに変な顔をしていましたかね」

「間違いありません」


 恐る恐る聞けば、笑みが消えた。ひぃいいい、人形みたいでちょっと怖いですよ、冥加さん。

 でも本当にしつこいぞ? 少しは妥協や融通も人生に必要だ。なんでも気にしていたら気が狂うって……こうなったら、一目惚れを押し通す。通して見せる!


「好みどストライクな顔が存在したんですよ、驚きますって」

「そんなにこの顔が好きなんですか?」


 見る分は十分大好きです。


「もしかして理解していないんですか? 自分の顔の破壊力を」

「破壊力?」

「すみません、例えです。魅力です、魅力」


 こほんと誤魔化す。


「結婚サイトや出会い系サイトに顔写真付きで登録してみてください。きっと唸るほどの問い合わせが来ますよ」

「そうでしょうか? そういうサイトでは顔よりも年収と聞きました」

「あ、そっか」


 意外な点を指摘された。そりゃそうだ、年収が低ければ問い合わせが低いだろう。では、どうすればイケメンだと自覚させれるだろうか。


「こういう時ってバーで飲んでいると女性から声をとか……」

「私の顔はどうでもいいです」

「それはイケメンだけが言える言葉です」


 話のすり替え失敗。でもすごい言葉だよね。

 その時、胸がほんのり温かくなる。夕方は出やすい時間なので、危険だ。


「あの、また今度お話しませんか? 私用事があって」

「どんな用事ですか?」

「家に早く帰らないと、弟が」

「そういえば歳の離れた兄弟がいましたね」


 なぜ知っている? そういえば私を調べたと言っていたけど、何の目的で……。どこからどうみても、立派な一般市民なのに。

 疑うような目で見れば、自慢げに口の端を上げた。


「色々問い質したいのは私の方な気がするんですけど」

「うちの情報員は優秀です、正確なデータを集めてもらいましたから」


 この人は本当に明智新吾(仮)?


「個人情報保護法というものが……」


 胸のお守りが温かくなっていく。近づいてきているのかな?出来れば走って逃げたい。


「冥加さんの話なら、また突然会えますよね? その時にまたお話しませんか?」

「逃げるので?」

「正直時間が無いです、走って帰りたい」


 焦ってしまう、痴漢か変態か……危険度指数が低い人であってほしい。相手も望んでそうなった訳じゃないから、出来うる限り避けたいのだ。傷つく人が少ないほうが良いに決まっている。

 あと、一番怖いのは冥加さんを巻き込んでしまうこと。

 顔が綺麗過ぎる男性はそういう人にも狙われるんじゃないかと心配しているんです。


「書面上は何もおかしな点はありませんでした。でも今のあなたは何かある」

「本当に急いでるんですよ」


 掴んでいる肩に力が入っていく。無理やり離れて逃げ出すか? でも近くにいるのが変態なら? この人が怪我するかもしれない。

 ゲームの中で運動はからきし駄目っぽかったので、置いていけません。見た目弱そうだし。


「何を隠している?」

「では場所を移動しましょう」

「どこへ?」

「えっと……」


 肩を離してくれたので、少し左に歩いてみた。胸の温かさは変わらない。では右ならどうか。反転すると、冥加さんに抱きとめられた。


「予告も無しに振り返られると危ないです」

「気を、つけます」


 すぐさま離れて右の道を進む。だけど温かさが分からない。自分の顔が熱いからだ。


「こ、こっちに行きます」


 今度は軽く振り返り、彼に告げる。

 またあんな事されたら、心臓が爆発してしまう。恥かしかったけど、ぶつかった時に良い匂いがして驚いた。


「分かりました」

「あの、少し急いでもいいですか?」

「何故です?」

「嫌な予感がするんです、逃げなきゃいけないと」

「それは勘ですか?」


 いいえ、江里口くんからのお守りです。と、言えないので頷くしかない。

 いいんだ、電波女だと思われたって。


「あなたは昨年、事件に遭われましたね。それからですか?」

「私じゃなくて違う方が遭ったんです」

「調べはついています。あなたが熱を出して寝込んだ事も」


 誰かが喋ったんだ? 愛梨ちゃんは違う、明智くん江里口くんも……なら氷室くん?


「それは、誰が言ったんですか……」

「秘密です」

「氷室くんでしょ? そんな口が軽いのは彼しかいない」

「違いますよ」

「え、うそ」


 信頼を置ける三人が口を開くのなんて、信じられない。つい、立ち止まってしまった。


「気にする事はありません、極秘事項なので外に漏れることはないです」

「そうでしょうか」


 冥加さんに知られている時点で漏れているも同然だ。

 疑いたくないのに疑ってしまう気持ちを持ってしまった私は、普通に彼らに接することが出来るのか自信が無くなる。正直、涙が出そう。


「酷いです。私が気に入らないなら、無視しちゃえばいいのに」

「泣かないでください」

「泣かせてるのはあなたじゃないですか!」


 私はただ、好きな人同士が仲良く笑いあう姿を見たいだけなのに、何も悪い事は考えていないのに。


「すみません」

「明日から友達にどう接したらいいんですか、信じたいのに」

「すみません。だから逃げないでください」

「触らないでください、離れてください」


 抱き寄せられたので、胸を叩いて抵抗する。鼻水つけるぞ。


「世間には漏れない情報です、あなたの友人から聞いた話ではありません、落ち着いてください」

「バカー!」


 それを先に言ってよ! もう昨日今日と散々で、泣きたくないけど涙が出てくる。


「新吾様、未成年への淫行はおやめください」


 第三者の声に驚いて、振り向く。

 そこには美人なお姉さんが立っていた。スーツ姿がカッコよくて、姿勢が正しいので凛々しくも見える。


「何もしていない!」

「体に触れています。アウトです」


 いや、まさに今、まさにあなたから抱きしめられています。


「慰めていただけだ」


 彼はこちらを見ず、お姉さんへ言い返している。が、勝てそうに見えない。ゲームの中では冷静沈着な対応で無敗を誇っているのに。


「一目惚れはよろしいですが、後数年はお待ちいただかないと世間が五月蝿いです」


 聞き捨てならない単語がボロボロ出てくる。これが先程言っていた私と同じ状況だというものかしら。なんだか涙が引いてきた。


「だから、一目惚れじゃない、危機管理だ」

「はいはい、分かりました。でも、この場を変えてください」

「お前までなんだ」

「近辺の護衛が複数の不審者と接触しました。危険回避の為、車へお移りください」


 複数の不審者にドキッとしてしまう。

 でも護衛と接触? なにかあったのかな? 相手は普通の人でゲームにやらされているだけなのだ。酷い事はしないでほしい。


「分かった、さ、行きましょう」


 彼に肩を優しく押され、道を曲がればバンにしては大きいのでミニバスかな? 車があった。黒色に窓ガラスも黒とくれば、怪しさ全開。

 私が躊躇すると、お姉さんが手を引っ張って彼から引き離す。


「いい加減離れなさいって。不安な状態に追い込んで良い事は何もないと何度も言ったでしょう」

「だから、これは……」

「はいはい分かったから、早く乗ってください。あなたに何かあればみんなの生活が」

「もう言うな、分かっている」


 お姉さんに掛かると冥加さんは途端に弱くなる。もしかして、これから素敵な関係が?


「もう少し付き合ってね? 家まで送ってあげるから」

「でも」

「聞きたい事もあるでしょう。お答えしますよ?」


 私の話せる所まで、と付け加えられる。そして私を車へ乗せてくれた。

 車の中で冥加さんは一番後ろに座ってたので、運転席のすぐ後ろに座る。一席分空けたので彼が遠い。

 先程お姉さんとの会話に信じがたい言葉を聴いたので、距離があると助かります。私に浮いた話は要らない、だから離れていて欲しい。

 私のお隣にお姉さんが座り、扉を閉めた。


「緊張しないでね?」


 お姉さん……もしかして彼女が冥加さんの幼馴染なんでしょうか? 綺麗で素敵でカッコいい、女性の憧れがつまった様な人だ。

 こんな女性が側にいたら、いくらイケメンでも告白は厳しいだろう。

 私がジッと見ていると、苦笑してハンカチを差し出された。


「良かったらどうぞ?」

「あ、ありがとうございます」


 真っ白でしわ1つ無いハンカチは、手触りがよく、何も匂いがしませんでした。……って、あれ? 普通なら素敵な香りがするんじゃ?

 頬を拭きながら首を傾げていると頭を撫でてきた。


「ごめんなさいね、もう少し早く来たかったんだけど事情があってね」

「!」


 事情は先程の不審者の件だろうか? 警察への通報は待ってほしいし、怪我をさせて欲しくない。


「あの、不審者の方々はどうなっているんでしょうか?」

「なぜ?」

「警察への通報は待ってほしいんです」

「あら? 他の人が危険に遭うかもしれないわよ?」

「その、それは無いです。正気に戻れば、きっと後悔して苦しみます」

「その確証は?」

「昨日です、泣いて後悔してました」

「犯罪者は得てしてそういうものよ? 惑わされては駄目」

「本当なんです。なぜか私が近づくとそうなるんです」

「え」

「原因は分かりませんが、望んでそうなっているようでは無いみたいなんです」


 驚きますよね、でも信じて欲しい。ゲームの所為でどこかの家庭が崩壊するなんて嫌だ。警察に通報されたら、罪を望んだわけじゃないのに、強制で罪を行わされただけなのに罰を受けなければならない。


「どうします? 新吾様」

「ならば拘束して経過を見よう」

「はい」


 お姉さんが携帯を取り出し、指示を出していく。


「それが隠していたことですか?」


 冥加さんが席を移動して、私のすぐ後ろに座る。

 チッ、近くに来たか。


「はい」


 意を決して頷く。

 呪いにも近い氷室くんのゲームの影響力を憎みながら。



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