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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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オリエンテーション


 今日も快晴、澄み切った青空が大変きれい。

 本日より、第三中学校の1年生宿泊オリエンテーションが始まった。御影山までバス移動、みんな気持ちが落ち着かずに会話が弾んでる。


「頼元さん、大丈夫?」

「う……」


 私は隣で頼元さんが苦しげに上を向き目を瞑っているので、気が気でない。酔いやすいと教えてくれたが、バスに弱すぎる。窓際の席を譲り窓の外を見ていたら? と勧めたけど今は何を見てももう無理と目を閉じた。

 あまり大丈夫ではなさそう。手に持つビニールを握り締め、頑張る姿は見ていてハラハラする。


「気持ち悪かったら、すぐに言ってね」


 私は膝に乗せていたリュックを足元にある学校指定のスポーツバックにおろし、そして彼女の体の向きを変えて膝の上に頭を強制的に置いた。


「ふえっ!」


 次に驚く頼元さんの目の上にタオルを乗せる。


「靴脱げる?」

「あ、はい」


 言う通りに靴を脱いでくれた。それがなんだか嬉しい。信用してくれているって事だよね?


「膝を曲げて席に乗せれる?」

「こうですか?」


 頼元さんに真上を向かせる。


「少しは気分違ってよくないかな?」


 行き場のない手をあたふたと動かす彼女に、寝るように言いふくめた。朝から顔色が悪かったんだよね。もしかしたら、遠足の前の夜は眠れないタイプなのかもしれない。だから酔うのが早かったのかも。

 ならば、寝るのが一番! ちょっと偉そうですかね、私。


「狭いから寝心地悪い?」

「そんな、でも、その」


 頬が赤く染まっていくのを楽しく見てしまった。


「いいから。着いたら一緒に頑張ろうね」

「……はい」


 しばらく固くなっていたけど、少しするともたれ掛かってきた。なんか懐いてくれた様で嬉しい。寝息を立てる彼女の為に私も酔わないように気をつけよう。

 顔を上げると、先生がデジタル一眼レフカメラを構えていた。


「!?」


 シャッター音が聞こえ、しまったと焦る。が、先生は気にせず、そのままバスの後ろに移動してシャッターを切っていく。突然の行動にみんなから非難やら催促やら飛ぶ。


「専属のカメラマンも来ているが、俺も撮るぞー」


 後部座席で嬉しそうな声を聞くと、先程の写真の削除を言い出しにくい……。願わくば、頼元さんが不快な気持ちになりませんように。


「画像データは学級委員に渡しておくから、欲しい奴は頼めよ」


 さらりとすごいこと言ってませんか?


「そんな、先生!」

「プリント代は各自な~」


 長谷川さんが声を荒げると、先生は豪快に笑うのみ。現像代回収やプリント作業が嫌なんだろうな。ただ、新品のカメラを自慢したいだけでは。

 頼元さんを気にしながらゆっくりとリュックからしおりを取り出す。これからのスケジュールを確認しておこう。


 10:30 施設到着

       施設利用による注意とオリエンテーションについての説明

 12:10 昼食 

 13:00 テントへ移動 荷物整理

       ※係員の指示に従う

 14:30 個人目標作成

       生徒一人ひとりが中学生活に向けてこれからの目標を立てる

       夢や目標を原稿用紙2~3枚

 17:00 食事

 20:00 入浴 各クラス15分

 21:30 就寝


 初日のスケジュールを見ただけで、精神的疲労を感じてしまう。個人目標はLHRで先生が考えとけよと忠告されてたが、容易に答えなんて出てこない。

 どう答えたらベストなんでしょうね。

 真面目に答えるのも先生受けを狙って書くも、方向性にも悩む。大人しく勉強に読書に頑張ると書くのが本筋に適っているかもしれない。

 では私も少しは眠って体力を回復させますか。

 目を閉じてそのまま浅い眠りに入った。


 御影山キャンプ場に到着する前に、自然と目が覚めた。膝枕している頼元さんはまだ眠ってるから、よほど睡眠不足だったんだ。

 周りをみるとかなり静か。通路を挟んでお隣の席の男子も、睡眠中。実はみんな楽しみすぎて眠れなかったタイプですか!

 そう思うと中学一年生ってまだまだ可愛いものかもしれない。


「ぐぉおおおおおお」


 私が目が覚めた理由で更にそう思う。

 それは先生のいびきだ。気にせず眠れるクラスメイト達は、深い眠りについているんでしょうね……ここでも私はぼっち?

 酔いやすい頼元さんがいなければ、先生の後ろの席など真っ平御免。一番前の席は先生が荷物を置いて、占有している。両側4つの席を、です。具合が悪くなった生徒の為と言ってますが、大きなバッグを座席に置いている時点で違うと思う。先生は一体何を持ってきているの?

 先生が座っている席の通路を挟んでお隣はクーラーボックス。今日の夕飯に使用される冷蔵品が納められてる。

 お肉大丈夫かな……一応冷凍しておいたので、傷みにくいと思う。


「はぁ……」


 外を眺めて考え事をしていると、バスが御影山の駐車場に到着した。

 頼元さんを起こさねば。


「頼元さん……愛梨ちゃん」


 さりげに下の名前を呼んでみたり。


「え、ハイ!」


 急いで頭を上げるであろう彼女に気をつけ、上体を少し反らす。だけど、頼元さんは目の上のタオルを取ってからゆっくりと起き上がった。


「もう着いたんですね」


 そして嬉しそうに窓の外を見る。どうやら気分は良くなったみたい。酔って体調悪化したら大変だから、良かった。

 ホッとしていると、彼女が恥ずかしそうに俯く。


「あの、ありがとうございました。とても、よく、眠れました……」

「いきなり偉そうにしてごめんね、気分が良くなった?」

「それは良く! 膝は大丈夫ですか? しびれていたりしません?」


 ちらちらと足を見られるが、そんな事は無いので軽く叩く。


「ううん、全く……あ、もしかして固かったかな?」

「そんな事ない、です。あの、その、花音さん……ありがとう」


 うう、『さん』付けかぁ……明日くらいには『ちゃん』付けになるよう頑張ろう。バスが到着したにも係わらず、こんなやり取りを愛梨ちゃんと出来たのは、先生がまだ眠っていたからだ。運転手さんが困惑している様子が目の端に映るが、先生のいびきは消えない。バスの扉が開くも、全く反応なしだ。先生にあまり係わらないようしていたいが、これは酷い。

 私は立ち上がると、前の席の先生を起こした。


「先生、着きましたよ」

「お、おう」


 先生が立ち上がり、生徒に指示を出す。


「急がす順番にバスから降りろー」


 目を擦りながらなので、威厳もあったもんじゃない。

 リュックとスポーツバックを担ぐとバスから降りた。もちろん荷物はそれだけじゃない。クーラーボックス二つに、食材の入った袋7つ。バスの荷台にはペットボトルの水とお茶が控えている。これをいちいち運ぶのは、きついかも。運ぶ台車が欲しい。


 キャンプ場到着時刻から遅れているので、みんな大忙しだった。駐車場とキャンプ場の広場はお隣なのだけどクラス毎に場所が決められていて、そこまで荷物を運ぶ事から始まったのだから。まずは自分の荷物を運び、次に食材やペットボトルの箱を運ぶのだ。


 運び終えたら集合して、施設説明が行われた。そして昼食が配られ、食事後テント移動。

 なんだけど……想像のテントと違ってた。組み立て式のテントではなく、板張りの上にビニールハウスのような丸屋根? いや、かまぼこタイプだ。床を雑巾で拭いてから荷物を運びいれ、キャンプ場の貸し毛布を貰いにいく。

 この毛布、色々と大丈夫? 枕が無いのでリュックで代用ということかな?

 山の側面からキャンプ場までにたくさんのこういったテントがあるけど、自分たちのテントを間違えそう。


 だいたいの整理が終わると、次は個人目標を書く時間。疲れているから気分が落ち込みそう。それが終われば夕食準備。次から次にとやることがたくさん。


 うちの班の夕食は、炊き込みご飯と具沢山の味噌汁。後はウィンナーとジャガイモをアルミで焼く予定だ。簡単に出来て余ったら明日でも食べられそうなものにした。

 明日のオリエンテーリングで何があるかわからない、そう思って献立を提案をしたのはこの私です。


 最初はみんな怪訝に思ったけど、最後には協賛してくれた。

 全ては春休みに読んだサバイバル本、こうやって生き延びようという諦めない前向きな対処法の本から、なのだが。

 大人の時に読んだ本をまた目にすることが出来、読めて嬉しかったのを覚えている。本当にある本なんですよ? もう、前回よりのめり込んで読みましたって。

 外国の方が著者なので、内容がワールドワイド。これでワニに会っても冷静に対処法を伝えられます。底なし沼もどんと来いです。


 持参したサランラップに残ったご飯を包んで1人2個ずつ。私の熱弁とこの通常とはかけ離れた環境によって、みんな命の飯だと受け取った。

 中学生なんだから、ノリよく行きましょう!

 打ち解けた愛梨ちゃんも嬉しそうにおにぎりを持ってくれた。明日はものすごく楽しいに違いない、そう感じてしまう夕食時間だった。


 ただ、少し気になる事があったけど。


 調理の途中、氷室くんが味噌汁用の鍋に水を継ぎ足そうとして、火元へこぼして竃の火が消えてしまった。

 もくもくと上がる白い煙、舞い上がっていく灰。

 薪をつついても完全に濡れていた。

 急いで新しい火を! とノック式のライターと濡れていない薪を貰いに行こうとしたらポンという音が!? 軽い爆発かと思ったら、竃には赤々と火が着いていた!

 なんでと驚く中、江里口くんだけが冷静だった。彼曰く、小さな火が奥にあったのだとか。

 完全に消えたと思っていたのに。

 でも網の下の火元を覗くと、三本の薪に火が着いていたけど、周りの灰は濡れていた。だから、あれ? ともっと覗こうとすると江里口くんに止められた。


「薪が爆ぜたら危ないよ?」


 彼の不自然な態度と竃に、もしかしたらオイルか何か使った? もしかしてオイルってライターのオイル缶だったりするの? もしかして、もしかして……。

 近づいて臭いを感づかれないように止めたのは、やはりそうだから?

 

 頭の中で夜の街にいる彼がタバコに火を……学級委員の江里口くんにまさかの不良疑惑。変な二面性を私が見る事がないよう祈るばかり。

 いつまでも学級委員の江里口くんのままでいてね!

 食事の片づけ中、そんなことばかり考えてた。



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