過ちのターニングポイント-2
(更新遅くなりましたが再開します)
・・・
今日もいつものように怪人を倒し、変身を解く前に妹たちの様子を見に行くことにする。そろそろ学校も終わるころだろう。
自分はまだ変身しているので魔力をまとう者としての認識阻害に加えて、光の魔法で姿を隠している。見つかることは、まずない。
まぁ……、通行人も避けてくれないので普通に道を歩くときは逆に気を付けないといけない。
それに、物理的な距離も取っている。光の魔法は望遠レンズのように景色を収束させ視力を上げるようなこともできる。
消費も変身の強化範囲にほぼ含まれるためコスパも非常に良く、本当に便利だ。
……といってもそんなには離れていないんだが。せいぜい数百メートルってとこか。
強化すれば強めることもできるが、消費しすぎて見失っても本末転倒だしな。
雑居ビルの上。ちょっとカッコつけてしゃがみ、手のひらを丸めて筒のようにし覗き込み、遠くの一点を定点観測する。
まるで忍者のように。……恰好はシスター服だけど。
「……!」
「……?」
そして待つこと数十分。見つけた。
というかやって来た。そもそも通学路だからここを通らないとおかしいんだが。
しかし……? 何か言い争ってるような感じもするな……?
というより雛美がヒートアップしているように見える。
どうしたものか。揉め事だろうか。
女子中学生だからそこまで大したことじゃないとは思うが……。
現在の変身属性は光と、風。
風の魔力は上手く制御すれば音をも操る。
集中し、空気の振動を操り、指向性マイクのように遠くの音を拾う。
(ほんと器用というか才能の無駄遣いだね。というか実際、無駄遣いじゃないかい? いざというときのためにちゃんと節約したほうがいいよ)
うるせぇ、俺にとっちゃ大事なことなんだよ。いざはいつだって後悔しないための今なんだ。
……まぁ冷静に考えたらだいぶ不審者というかストーキングのような気がしないでもないけど気にしてはいけない。大事なことだし。
ここから妹たちの距離もあるので雑音も多いが……、徐々に話の内容が聞こえてくる。
「マジなんなのあいつ……」
「まぁまぁ。でも、ひーちゃんも助かってるんだよね?」
「それはそうだけど、いやそもそも仲間なのあいつ……? あーイライラするー……!」
「まぁまぁ。いつも会うなら少しずつ、だよ。次あったときにどうするか考えて備えよ?」
「むむむむ……」
どうやら俺のことで怒っているらしい。まだ今日は会ってないが、ここ数回は会話らしい会話もしてないし、怒らせて当然といえば当然か。
雛美は妹に対し、肝心なことは言わないが割とスレスレなことを愚痴をこぼすこともある。親の手伝い、みたいに誤魔化してるものの結構無理がある。
妹はそれをあまり本気で受け取ってないみたいだが、ともあれ雛美が何か詳細を離せない秘密の人助けのようなことをしているとは理解しているみたいだ。
怪人の噂は、それの延長にあるものだと考えているのだろう。常識だけで考えれば辻褄が合わない部分は、いろいろ想像でカバーしてるみたいだが。
しかし、妹が俺に話す噂話には危険が付きまとうものが多いが、妹が雛美を制止する様子は見られない。
……まぁ、流石に事態の最前線にいるとは思ってないんだろうな。他に対処する大人か何かがいる、と思っているのかもしれない。
それにしても、妹と雛美は仲が良さそうに見える。
中学からの馴れ初めだと思うが、正直に言えば全く知らなかった一面だ。
大事だと思っておきながら、そこまで関心を注ぐことができていなかったという事実。
余裕を失いつつあったとはいえ、過去の自分がずいぶん冷たいやつに思う。ダメな兄だったなホント。
(ところで、気づいてるかい?)
「……、気づいてるって何がだ?」
クネヒトの問いかけに一瞬、邪魔されたような気がしてイラっと来た。
が、無視するわけにもいくまいと苛立ちを抑えて問い返す。
……ホント、どうにもこの姿になってから感情の制御が面倒になってきてるな。
(君の妹にも、適性あるよ。君ほどではないけど)
「……」
……。
「だろうな」
まぁ、予想はしていたので動揺は無い。
男の自分に適性があったというのなら、妹にもあって不思議ではない。
それにクネヒトによると、魔法少女でない女性の魔力は生まれてくる子供の新たな魂を導くという。
ならば、魔法の適性の遺伝的性質も有り得るだろうし、恐らく母にも適性があったのではないだろうか。
「……巻き込まない。守る。俺がすべきことはそれだけだ」
(そうだね。それがわかっていればいいんじゃないかな)
知ったところで何も変わらない。いまの俺に残っているのはただ一つ。
家族を守る。もうそれだけの命なのだから。
……ていうか意識を逸らしたら妹たちを見失った。クネヒトのせいだ。
魔力で風を掴む。音を捉える。
……。
よし、見つけた。
……。
「……あ」
「? どうしたの?」
「えっと、……ごめん。今日もまたちょっと仕事行かなきゃいけなくて」
「あー、うん。わかった。気を付けてね」
「もう……、大丈夫だってば。今まで手間取ったことはあってもピンチになったことは一度だって無いんだから」
「ほら、油断禁物、だよ」
「はいはい。じゃあ行ってくる!」
……。
(敵だね。遠い)
「俺たちも向かおう」
魔法で風に乗れば先回りすることも可能だろう。機動力はこちらの方が上だ。
だが、ふと思う。ここに妹を放置しても良いものかと。
怪人に襲われる条件は不明だ。多少の偏りはあるが、被害者は老若男女問わない。
しかし怪人は魔力を持っており、魔力により退治される。
もしかしたら、魔力への適性があると怪人に狙われるのでは?
……妹は雛美と別れて人混みに紛れていった。
これまでの怪人被害の傾向からして、迂闊に一人きりになったりしなければ大丈夫なはずだ。
少なくとも、確認した限りでは人目の無いところでしか襲われない。今までだって何の問題も無かったのだから。
(? どうしたんだい?)
「……いや、なんでもない。行くぞ」
わずかばかりの逡巡。時間にして数分も無い程度。
視界の先にいたはずの雛美はとっくにイグナイトに変身して駆け出していった。
そうだ、何を考えてるんだ。怪人退治こそが家族を守る一番の近道だろう。
守るべきものの近くに敵の反応は無く、遠くに危険をもたらすかもしれない倒すべき敵がいる。
ならばそちらを対処するのが最善に決まっている。
出遅れてしまった。急がねば。
・・・
→【過ちのターニングポイント-3】




