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 未完の長編連載があるにも関わらず、新作長編に手を出してしまうという禁忌に手を染めました。

宜しければ、こちらも、もう一つの作品も読んでいただけたらと思います。


 ブクマ、リアクション、宜しければお願いします。励みになります。

毎日社会に揉まれて憔悴しきる私こと、星宮ハスミ26歳。注意散漫な私は、赤信号である横断歩道を突き進んでいた。


 キキィィィ!!!!!


 気づいた時には、トラックが私を吹き飛ばしていた。


 【…あぁ、あの子達1人になっちゃう】


 意識が途切れるまで、気がかりだったのは家にいるペットたちだった…。ごめん、みんな。


⭐︎⭐︎



 「ナナホシ、気をつけていくのよ?」

 『うん、ママ。行ってくるね』


 大きなトランクをよいせと持ち上げ、暫く帰れない家を見つめる。帽子を被り直して、家族に別れを告げた。

 迎えの馬車へ乗り込めば、馬の嗎が響き、ゆっくりと動き出す。




 ナナホシ・ウィルクス。

この世界での私の名前だ。15歳になり、明日より学校に入学、寮生活が始まる。


 グランディア王国にある、貴族が大半を占めるという魔法学校ーーグランディア王立魔導学院から、何故か庶民である私に手紙が届く。内容は、推薦状。何の⁈⁈


 【貴方の魔力が、類稀な資質を保有している事が判明しました。是非、我がグランディア王立魔導学院へ入学してくださることを教師一同お待ちしております】


 その手紙を読んだ家族は、それはそれは大層喜んだ。あっという間に入学手続きを済ませてしまい、入学に至ったという訳だ。

 喜んでいる両親の手前、何も言えなかったが心の内は靄がかかったままである。


 (…私、魔法なんて碌に使えないのに)


前世の記憶が戻ったのはつい最近である。日本に生まれ育った私には当時魔法なんてものは無く。そして、魔力も平凡な私は、コンロに火をつける、物を少し引き寄せる、程度の魔法しか使えない。

 だが、私の入学する学校は、いわば魔法使いエリートが通う学校と名高い場所なのだ。何人もの優秀な人材を輩出し、国家に尽力しているそう。


 (先が思いやられる…)


 そんな予測は的中することになる。




⭐︎⭐︎




 入学式当日。


 ワイシャツに、紺のワンピース。赤いリボンを締めて準備はできた。自分の身なりを確認して、寮を出る。家が遠い者のみが、入学式前日から入寮が許される。といいつつも、それは私だけのようだが。


 入学式会場へ赴くと、私と同じ制服の子がまばらに見える。男子は、黒の詰襟に金の刺繍が施された長衣を身につけているようだ。


 案内された席に着き、こっそり周りを見渡す。


 (みんな、いかにもお金持ちですって感じ…)


 いい香りで、小物一つ一つが輝いて見える。所作も美しく、貴族の出であることが一目で分かった。田舎者の私だけ、浮いているのは明らかである。


 (……下、向いておこう)


 自分の気恥ずかしさに溺れる私を横目に、入学式の開式を告げる鐘の音が鳴った。



⭐︎⭐︎



 「皆さん、ごきげんよう。入学、おめでとう御座います」

行動に集められた1年生の前に立って挨拶をするのは、私たちの担任であるエレノア・アルベルク・ハワード先生。先生は、数々の凄腕魔術師を輩出してきたハワード家現当主の奥さんだ、と皆がヒソヒソしているのを盗み聞きする。


 (凄い人なんだな)


 「静粛に。皆さんは今日からこのグランディア王立魔導学院の生徒になるのです。一人一人が学園の顔だと自覚を持ち、振る舞いには充分気をつけるように」


 アメジストの瞳を細めて、クラスを一瞥する。思わず居住いを正す。皆の引き締まった顔を見て、満足そうに頷いた。


 「では、皆さんお待ちかねでしょう。これから、貴方たちが3年間共に学び、共に戦う相棒の召喚式を行います」


 え?召喚式って………??

召喚って、ゲームみたいなモンスターを召喚する、あの召喚⁈⁈普通の魔法も使えない私が、召喚⁈⁈⁈1人で焦っているのは私だけ。皆は心待ちにしていたかのようにソワソワしていた。

 ナナホシの記憶を覗いてみても、召喚についての詳細は無く、この子自身も未知の体験だと知る。


 「では、出席番号順で前に。この術式に触れれば、魔力相応の召喚獣が現れることでしょう。さ、前に」


 金髪の少年が前に出ていく。早速手をかざせば、眩い光が辺りを包み込み、やがて収束していく。視界が開けた頃、魔法陣の真ん中には、彼の髪色と同じ鱗を持つ小さなドラゴンが鎮座していた。それをみたクラスのみんなが一斉に湧き上がった。


 【うぉぉおお!!すげぇ、ドラゴンだ!!!】

 【初めてみたぜ!!本当にいるんだな!!】

 【さすが、王家の嫡男だな】


 王家??あの爽やか金髪イケメンがまさかの王子様なんて…。皆の歓声に、緩く手をあげて答えていた。


 それはそれとして、召喚術のやり方はわかった。見様見真似でやってみるしかない。次々にクラスメイトが相棒を召喚していく。


「では次はナナホシ・ウィルクス。前へ」


「は、はい!!」



 目の前の壇上へ歩いていく。その途中、ヒソヒソとコチラを見ながら話している者が何人かいた。


 【あの子よ、例の庶民の】

 【なんで入学してるのよ】

 【まぁ、見すぼらしい】


 何十の目がコチラを向いている。こんなに注目された事なんてない。無意識に早足になった。


 壇上へ上がると、先生に手をかざすように言われる。

 何が出るんだろう。恐る恐る手のひらをかざすと、眩い光が放たれた。しばらくして、光がなくなっていく。


 (一体、何が…⁈)


 「え?た、たまご…………??」

 

 教壇に一つ、ごろりと人の頭一つ分の大きさのたまごが転がっていた。


 静寂が教室内を包んだかと思えば、栓を切ったように皆が笑い始めた。


 【おいおい!!卵だってよ!!】

 【前代未聞ですわ!相棒が生まれてすらいないなんて!】

 【これだから庶民は!ここは、魔法学校でしてよ?】


 「皆、静粛に!!」


 重い声が、皆を一斉に押さえ込む。

そして、私に再度向き直ると先生は言った。


 「ウィルクスさん、もう一度やってみなさい。これでは、この先の授業に支障が出ます」

 卵を、そう言われて手渡す。もう一度、意を決して魔法陣へ手を伸ばす。


 眩い光が解き放たれ、収束した時、絶望した。


 また卵である。2個目の、卵である。



 「…………」

 何度見ても、それは卵で間違いなかった。召喚は失敗してしまったのだ。


 「ウィルクスさん…」

 「せんせぇ、もう無駄じゃないですかぁ?あと詰まってるから進めてくださいよぉ!」


 茶化すように、一体となって笑う彼らに私は惨めな気持ちになった。

 その後の召喚式は、記憶になかった。

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