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グリム童話の悪役、改め貞淑な王妃です

騒ぎを聞きつけた白雪姫は若い貴族の中でもイケメンの部類に入るであろう侯爵家の次男坊の背中から顔をぴょこっと覗かせる。

他の人がやったらあざといことを平然と自然にやってのける白雪姫に称賛を送りたいくらいだ。

その仕草は小動物みたいで、普通の人が見れば可愛いと思うだろうが私視点では獲物を草場から覗く獰猛なライオンにしか見えない。


白雪姫の胸元にはフォックスから買った私が虹色の宝石のネックレスもとい、この国に出回っていない私の部屋の宝石箱の中からなくなったはずの天然オパールのネックレスが輝いていた。

おおかた、私がここに来ないと高を括っていたのだろうか?

それとも何も知らないでつけているのか?


「ごきげんよう、白雪姫。本当は挨拶は白雪姫からしなくてはいけませんが、今日は誕生日ですものねぇ。浮足立っていますのね。わたくしはお呼ばれしておりませんし、立ち去ることにいたしますわ」


訳:挨拶もできねーのか、この礼儀知らず。誕生日だからって浮かれて王族の品位を落とすなよ?というか誕生日パーティーの招待状送られてきてないんだけど。舐めてんの?


訳した口調がだいぶ荒々しいがだいたいはこんな感じだ。

貴族は遠回しに言葉を伝えるのが様式美とされているため、単刀直入には言わない先手必勝のカウンターパンチを白雪姫にくらわせる。

白雪姫は目をパチクリさせ、周りの貴族たちははしたなく口をあんぐりとさせている。


「あ、あの…失礼ですがどちら様でしょうか?貴族の方なら全員に招待状を送ったはずですが…」


周りに貴族達の目がある手前、白雪姫はこの前のように大胆な行動はできないはず!とあたりをつけて先手必勝のカウンターパンチを仕掛けたつもりなのだが、白雪姫は私が誰だかわからないと言い出した。

同じ城に住んでいるからたまにすれ違うことだってあり、先週だって廊下ですれ違ったのに……

わざとわからないふりをしているにしても、それは無理がある。白雪姫の真意を探ろうと口を開こうとした矢先、バルト氏が白雪姫の元へ駆け寄りなにか耳打ちする。


白雪姫は目を大きく見開き、私を信じられないような目で見るとこう言った。


「嘘……グリムヒルデ?」


あら?もしかして私だって気づいてなかったの!?

確かに黒い布に髪の毛をしまって強そうに見える化粧を施していた、明らかに悪役な風貌から儚い美人にビフォーアフターしたけども…そんなに気づかないもの!?これぞ劇的ビフォーアフター!

というかあまりの衝撃にいつもの猫かぶりが外れて、挙句の果てに呼び捨てしちゃってますよ!白雪姫さん!


「どうかしましたか?この前も廊下ですれ違ったではありませんか。義理母であるわたくしのことを忘れてしまったのですか?」


「え……いや、あの…これは……」


私のいきなりの登場に驚いているのか、私の顔が劇的ビフォーアフターしていることに驚いているのか、はたまたその両方か。

返答に詰まっている白雪姫にこれ幸いと畳みかける。


「たくさんの招待者がいたんですもの…忘れてしまっても仕方のないことかもしれないわ。母は母でも義理の母ですもの……」


私はそう言いながら下を向くと、それを見ていた貴族たちがざわめく。


「さっきから話を聞いていると…まるで白雪姫様が王妃様に招待状を渡さなかったみたいに聞こえるのですが…」

「奇遇ですね……私もそう聞こえます。これは一体どういうことなのでしょう?」

「白雪姫様に限ってこんなことをするはずがない。何かの間違いでは?」

「あまり表舞台に出られないので王妃様を初めて見ましたが噂の王妃様と違って貞淑なイメージを受けますわ。一体なぜひどい噂が流れてるのでしょう?」


白雪姫に対する疑心と私の噂とのギャップに戸惑う貴族達。概ね計画通りです。


「あ、じ…実は招待状を手渡しで渡したくてずっと機会をうかがっていたのですが、とうとう渡せずこの日を迎えてしまったんです。私が至らぬばかりに申し訳ございません!」


言い訳にしては少々苦しいが、とっさの機転にしては上出来であろう。

「そうだったのか!義理だとしても母であることに変わりはないしな!」

「白雪姫様は恥ずかしがり屋であらせられる」

白雪姫信者の若い貴族の男たちがうんうんと頷く。


そしてそれに勢いをつけたバルト氏は白雪姫との話に割り込む。

本来、王族の話に割り込むことはやってはいけないタブーなのだがそのことには誰も触れない。


「王妃様は今日が白雪姫様の誕生日と知っていながら、このような黒の喪服のようなドレスを着たのですか?義理の娘である白雪姫様を疎ましく思っているからあえてこのようなことをしたのでは?」


バルト氏の一言に周りの貴族たちの目が厳しくなるのを肌で感じる。

貴族社会では後妻をとることがよくあるため、後妻と前妻の子供という家族関係は珍しくない。

そして後妻と前妻の子供たちは仲良くあるべきという風潮が貴族の男のためにあるのか根強いのだ。


「そんなっ!心外ですわ!わたくしはただ前王妃様に娘である白雪姫が立派に育っているとご報告させていただいたまで。招待状が送られていない以上、わたくしは出る幕はないと思い静かに去ろうとしていた時、呼び止められましたの」


私はそういうと膝から崩れおち、シクシクと涙を流しハンカチで涙をぬぐう。

ちょっと大げさな仕草だったかしら?と周りの様子をうかがう。

シクシクと泣く儚い王妃の姿を見た貴族たちはバルト氏を非難の目で見やると、私を立たせドレスについた埃を払ってくれる。


「大丈夫ですか?とんだ言いがかりを…かわいそうに…」

「女性を泣かせるなんて紳士の風上にもおけないな」


貴族たちの様子を見るに同情心を買うことができたみたい。

口々に私をかばう貴族たちの声にバルト氏は慌て、不服そうではあるが頭を下げた。


「早とちりで王妃様にとんだ無礼なマネをしてしまいました。申し訳ありません」


それに続き、白雪姫も頭を下げる。


「私からも謝ります!お義理母様…本当に申し訳ございませんでした。せっかく出向いてくださったんですもの!よかったらどうぞ。王宮のシェフが丹精込めて今日のために準備してくれましたの!」


白雪姫もこの空気で私を帰すのは得策ではないと判断したのだろう、パーティー会場の中へと案内される。

さすが特大の猫をかぶっているだけあって、バルト氏のような嫌そうな顔はおくびにも出さない。

貴族たちの噂の悪女というイメージから貞淑な王妃というプラスのイメージに変えることに成功したし、白雪姫の誕生日パーティーの会場に潜入も成功ね!


第一段階は難なくクリア。

次のトラップはもう白雪姫はひっかかっているのだけど…気づいてないようね?

今までの私の物を盗んだ罪、ここで償ってもらうわよ。



この小説がおもしろい!と思った方はブックマーク・高評価などよろしくお願い致します。

また、感想や誤字脱字報告もありがたいです。

引き続き物語をお楽しみください

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