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現実

男side


 「よし、飯も食ったし行くか。」


 大毅がみんなが食べた非常食を片付け、この家を出る準備を始めた。

それに合わせて俺も下ろしていた武器やリュックを背負い、いつでも出発できるようにした。


 「そろそろどこに行くか決めておかないと」


 優が独り言のようにそう言ったのを、俺は聞き逃さなかった。

俺は腕を組み、その言葉に答えた。


 「家に帰るか。」


 俺の言葉にみんなが俺の方を向いた。

その表情はみんな同じで、驚きの表情だった。


 「お兄さん......」


 少女が帰りたくないとばかりに俺の袖を引っ張った。

俺は少女の頭を撫で、大丈夫と言い聞かせた。


 「このまま全員で動くのは効率が悪い、非常食をくれた奴にお礼を言った後に、俺とこいつは解散する。」


 迷いもなく、俺は全員に向けてそう言った。

優が俺の前に立ち、心配そうな顔を向ける。


 「危険よ、いくら強くても。」

 「大丈夫だ、また会えるさ。それまで元気に生き延びてくれよ」


 俺は優の手を握り、力強く言った。

それでも心配な顔をしていたので、微笑んであげると、優もつられて笑顔になった。


 「さて、行こうか。」


 俺は日本刀を抜き、玄関のドアを開けた。



優side


 彼には、強がっている様子が一切なかった。

強くいることが彼にとって当たり前のような、そんな気がして私は彼についていきたくなる。

それでも、私には守らなければいけない人がいるから一緒についていくことはできない。


 「家に帰ろう。」


 その言葉が私にとってはかなり重く感じた。

かつては私の疲れをいやし、多くの思い出を作ってくれた家が、今となっては帰りたくないものになってしまった。


 玄関のドアが開き、私は考えていたことを忘れるために頭を振った。

彼を先頭に非常食をくれたというお店に着くと、私は目を疑った。


 「そんな......早すぎるわよ......」


 ほんのさっきまでは感染者の魔の手が迫っていなかったといわれていた八百屋は、窓が割れ、扉が開いて、開いた扉から感染者の姿が見えた。


 「間に合わなかったか。」


 いつものように少女を真奈美に任せて彼は店の中に入っていった。

少し離れたここからでも、感染者の肉を切る音が聞こえてきた。


 「いいぞ、はいってこい。」


 血の付いた日本刀を振りながら、彼は私たちについてくるように指示した。


 店の中は惨憺たるものだった。

棚は崩れて食料が散乱して、蛍光灯が落ちていた。

そしてその奥、レジカウンターには......


「悪かった、爺さん。守ってやれなかったな。」


 首から血を流し息絶えているおじいちゃんと、その横に座る彼がいた。

彼はおじいちゃんの目を閉ざして、手を合わせた後、立ち上がった。


 「また、ばあさんと会って、幸せになってくれ。」 


 小さな声で、そういっている彼を見て、私は涙が流れそうになったけど、私は涙をのんだ。


 「これが、現実なんだね......」


 真奈美が少女を後ろから抱きながら、目を背けずにおじいちゃんを見ていた。


 ――そう、これが現実――


 その言葉を、口に出すことはできなかった。

真奈美を、これ以上傷つけたくなかったから......


 八百屋を出て、彼は私たちを一瞥いちべつした後、一言だけ話した。


 「また元気に会えたら、今度はごちそうを持ってきてやる。」


 ニコッといたずらな笑顔を浮かべる彼を見て、私は加寿を重ねてしまいこらえていた涙がこぼれた。

真奈美が私を支え、背中をさすってくれる。


 「そんな泣くなよ、美人が台無しだぜ?」

 「それなら、一緒にいたいのに......」


 言葉を詰まらせながらも、私は彼に今の気持ちをぶつけた。

しかし、その言葉に答えはなく、次顔を上げたときには、彼と少女は背中を向けて歩き始めていた。


 「また、会いましょうね!必ず!」


 彼の背中に向けて私が叫ぶと、親指を立てただけで、私に顔は見せてくれなかった。

それがさらに悲しくて、私はしばらくその場で声を出して泣いていた。

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