表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

第18話 『未来視』

戦いは終わりました。

 ガドと名乗る男からの提案で停戦交渉が成った。

 菊川さんにも停戦の呼びかけをしに行った。


「おい、ダン!! 停戦だ!」


 大声でガドがそう叫んだ。

 こちらも倣って菊川さんに呼びかけた。


「菊川さん、停戦しましょう!!」


 とりあえずこれで駐車場から響く衝撃音は消えた。

 工場の駐車場に戻った。


「ガドさん、すみませんが工場の中の橋本なんとかさんを治療して頂けませんか?

 俺がナイフで切りつけたもので、浅くない怪我をしているんです。

 入り口入ってすぐの所に縛り付けているんで」


 俺は工場の入り口を指差してそう言った。


「そうか、そちらを先に見てこよう。シュウジ、ダン……この大男に対して説明しておいてくれ」


 ガドは工場の入り口に向かって行った。さて、ダンと呼ばれた人を見るが……でかい。

 菊川さんも相当身長が高いが、それよりも高いので2m近いのではないだろうか。


「菊川さん、ダンさん、今回は話の行き違いだそうなのです」


 俺がそう切り出した。

 後はガドから聞いた話をそのまま伝えた。

 菊川さんは腕を組んで聞いている。

 ダンの方は話の途中で呆れたかのようにため息をついていた。

 

「なるほど、事情はわかった。橋本が功に走ったとしか思えんな。

 大変申し訳ない」


 ダンは見た目通りの渋く低い声でそう言った。

 菊川さんがそれを聞いて口を開いた。


「シュウジが目的だった、と? それも『異能』が覚醒していないのならば、と。

 辻褄が合っていないのではないか? シュウジの能力が必要ならむしろ覚醒していたほうが都合がいいだろうに」


 俺もさっきそう思ったが言わなかった。どういうことなんだろうか?

 

「それは俺も聞かされてないな。死ななければ良いのだとは思うのだが。そもそも俺たちが何だか知っているのか?」


「『エクソダス』の一員でしょう?」


 アヤが口を挟んだ。


「そうだ。俺たちは別に『異能者』の保護さえ出来ればそれでいい。

 仲間になってくれた方が良いに決まってるが、今の段階では必要ないとのことだ」


 ダンの答えには何か含みがあるように聞こえる。

 俺は問いかけてみた。


「今の段階では、というのはどういうことだ?」


「……いるのね、『未来視』を出来る人が」


 俺の質問にアヤが確信を持った声で問いかけた。


「レアな能力だから誰が、とは言えないがな。見えるのは確実な未来ではなく

 いくつか分岐する未来が見えるそうだ。

 確実に言えることはお前たち全員が未来に必要な『異能者』だ。誰が欠けてもまずい」


「俺を襲ってきたあいつの未来は読めなかったのか?」


「望遠鏡で本を読んだりしないように、『未来視』で影響が強くないものを視たりはしない。

 橋本は現時点で未来に大きな影響を与えることはないということが視えていた、とのことだ。

 伝聞で申し訳ないが、俺も聞いただけだからな」


 そこにガドが戻ってきた。


「その橋本だが、治療してきた。問い詰めたが、やはり嘘を吐いていたので、殴っておいた。

 無駄足だ、帰るぞ。説明も終わったのだろう?」


「間違いでした、ごめんなさい。で帰ろうというのか?」


 菊川さんがそうガドを責めた。


「いや、申し訳ないので橋本を人質として渡しておこうと思う」


 ダンがそう言った。未来に関係ない非重要人物じゃなかったのか?

 お荷物を押し付けようとしてるんじゃないだろうな?


「人質なんて要らん。それよりも未来に何が視えたんだ? それは教えてくれても良いだろう?」


 菊川さんも橋本は必要ないとのことだ。

 ダンとガドは目配せし、ガドが頷いた。その後、ダンは話しだした。


「そうだな、お前たちには一応話しておこうか。断っておくが誤差の大きい話でな。

 数年~10年以内に人類が人口総数の98%以上死ぬ可能性がある。

 人口が激減しない分岐側の未来ではお前達3人は確実に存在する。

 人類は98%が死滅すると文明を保ってはおけずに滅亡する可能性が高いそうだ。

 

 滅亡の原因が何かははっきり視えないそうだが、キーとなる人物は何人か視えたらしい。

 そのうちの3人がお前たちだ」


 あまりの事態の大きさに現実感がなくなる。胡散臭いと思ってしまったのだ。

 『未来視』もどこまで信用できるのだろうか?


「あんまり現実味がないな。信憑性がない。原因くらいわかりそうなものだけど?」

 

 俺は素直な感想を言った。

 ダンはそれにこう答えた。


「嘘臭いと思ってしまうのは仕方がないだろう。俺も半信半疑だった。

 『未来視』が全くデタラメだったら俺も無視していただろう。

 だが、当たるんだよ。その『未来視』の能力者の言うことは。

 災害で死んでしまう『異能者』を救ったりもした。拉致されてしまう『異能者』も救ってきた。

 人類が滅びない選択に関わるものは全て視えているそうだ。

 『特異点』であるものが視えているのかも知れん。

 どちらにせよ、人が死んだり拉致されるよりはそれを防いだ方が良いだろう?」


 確かにご尤もだ。返す言葉がない。

 菊川さんはどうだろうか? 視線を移すと考え込んでいる。アヤも同様だ。

 1分ほどの沈黙の後、菊川さんが口を開いた。


「事情はわかった。そういうことなら停戦するしかないだろう。

 人類滅亡についてはどうやれば回避できる?」


「原因がわからないから俺も答えようがない。『異能』をできるだけ鍛えておけ、くらいしか言えることはないのだ。

 一応連絡先を渡しておこう、利害で敵対することもあるかも知れんが対話くらいはできるだろう?」


 ダンが差し出してきたメモを菊川さんが受け取る。

 結局やることは鍛えること、か。

 安全の確認だけはしておこう。


「じゃあ、俺はもう襲われる心配がないんだな?」


「あぁ、『エクソダス』からの襲撃はないだろう。だが、他の集団はわからんから、努々注意を怠らんことだ」


 俺からの質問はもうない。菊川さんとアヤに目配せしたが特に何もなさそうだ。


「では、俺たちはこれで失礼する。また会うことがあればよろしくな。

 願わくば、次は敵同士でないことを」


 ダンとガドの2人組は去っていった。



 これからのことはとりあえず廃工場内で話そう。ここに持ち込んだものを片付けないといけない。


「菊川さん、とりあえずここを引き払うために片付けってことでどうです?」


「そうだな、シュウジが家に戻れるならそれに越したことはないしな」



 3人で工場内に入った。

 入った後にアヤが、


「ちょっと待って。誰かいるわ……!」


 と言った。

 まさか……と思って見てみると金髪の男、橋本がワイヤーに縛られたまま放置されていたのだ。

 あの2人、本当に置いて行きやがった……

これで第一章は終わりです。何話か後日談が入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ