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『異世界リペア工房 ~ハズレスキル「鑑定・修理」でガラクタも人生も直します~』  作者: 森


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70/113

第69話 最初に聞く音


翌日。


異世界リペア工房。


朝。


修は。


机の上に。


三つの物を並べていた。


一つ。


古いランタン。


二つ。


取っ手の外れた木箱。


三つ。


片方の車輪が。


ガタつく手押し車。


「今日は」


「まずこれ」


リペが。


元気よく答える。


「はい!」


そして。


地下への階段を指差す。


「その後!」


「地下工房」


「はい!」


さらに。


机の端。


第六の遺産。


星渡りの天秤の地図。


「その後!」


「まだ行かない」


「ええっ!」


「地下工房を直してから」


「アルドがそう書いてただろ」


リペが。


少し考える。


「では」


「アルドさんを無視すれば」


「早く行けます!」


「二百年前の人に反抗するな」


「旅が好きなんです!」


「知ってるよ」


修は。


ランタンを。


手に取った。


【対象:携帯ランタン】


【損傷率:11%】


【点火機構:摩耗】


【油路:詰まり】


「さて」


修が呟く。


「どこが痛い?」


リペが。


隣で。


ランタンへ耳を近づける。


「何か言いました?」


「言わない」


「ご主人様には聞こえるのかと」


「聞こえるっていうか」


修は。


金具を外す。


カチ。


「見るための」


「きっかけかな」


「きっかけ?」


「ああ」


油路。


細い。


煤。


古い油。


一つずつ。


取り除く。


リペが。


覗き込む。


「最初に聞く音」


「何ですかね」


修の手が。


少し止まる。


地下工房で。


第一巻に。


浮かび上がった言葉。


『最初の音は』


『職人が』


『最初に聞く音だ。』


「まだ分からない」


修が答える。


「金槌?」


リペが言う。


「それなら」


「職人っぽいです!」


「確かに」


「カン!」


「カン!」


「カン!」


「今叩かなくていい」


リペは。


木の机を。


指で叩いていた。


修が。


ランタンを組み直す。


シュッ。


小さな炎。


灯る。


【損傷率:0%】


「よし」


依頼人。


旅商人の男が。


嬉しそうに。


受け取った。


「助かった」


「これ」


「親父からもらったやつでな」


「買い替えてもよかったんだが」


「捨てる気にはなれなくて」


修が。


少し笑う。


「まだ使えます」


「大事にしてください」


「ああ」


男は。


銅貨を置き。


帰っていった。


リペが。


ランタンの消えた扉を見ながら。


言う。


「音」


「しました?」


「何が?」


「第一の音です」


「いや」


「しなかったと思う」


「では」


「違いました」


「判定早いな」


次。


木箱。


農家の。


種入れ。


蓋。


蝶番。


片側。


完全に外れている。


【損傷率:14%】


修が。


外れた蝶番を見る。


「新しい蝶番に」


「替えた方が早いけど」


依頼人の男が。


首を振る。


「できれば」


「そのまま使えないか?」


「理由は?」


「祖父が作った箱なんだ」


「蝶番も」


「自分で鍛えたらしくて」


修は。


古い金属を見る。


錆。


曲がり。


でも。


まだ。


死んでいない。


「分かりました」


リペが。


また耳を近づける。


「聞こえますか?」


「だから喋らないって」


「おじいさんの声とか」


「怖いこと言うな」


曲がりを。


少しずつ。


戻す。


錆を。


落とす。


軸を。


調整。


最後。


木箱へ。


取り付ける。


ギィ。


蓋が。


開く。


閉じる。


パタン。


修が。


その音で。


少し止まった。


パタン。


もう一度。


蓋を。


開いて。


閉じる。


パタン。


「……」


リペが。


真剣な顔。


「来ました?」


「何が?」


「第一の音!」


「いや」


「普通の箱の音だよ」


「惜しいです!」


「何を基準に惜しいんだ」


午前。


最後。


手押し車。


これは。


村の老夫婦が。


畑で使っている。


【対象:手押し車】


【損傷率:18%】


【右車輪軸:摩耗】


【荷台:軽度亀裂】


「車輪軸」


修が。


しゃがむ。


「これ」


「結構使ってますね」


老人が。


笑う。


「四十年くらいだ」


「長いですね」


「俺より働いてる」


「それは言いすぎだろ」


隣の妻が。


すぐ突っ込む。


二人。


笑う。


リペも。


笑う。


修は。


車輪へ触れる。


「直せます」


「ただ」


「全部新品にすると」


「たぶん軽くなります」


老人が。


少し考え。


言う。


「重くてもいい」


「今の感じが」


「慣れてる」


「分かりました」


修理。


軸。


摩耗部分だけ。


金属で補強。


荷台。


木片。


同じ種類。


同じ硬さ。


亀裂へ。


合わせる。


最後。


車輪を。


回す。


ギィ……


ギィ……


以前より。


少し。


静か。


でも。


完全な無音にはしない。


老人が。


押してみる。


「おお」


「いいな」


「この音だ」


修が。


顔を上げる。


「この音?」


「ああ」


老人は。


手押し車を。


ゆっくり押す。


ギィ……


ギィ……


「若い頃から」


「ずっとこれだ」


「畑へ行く時」


「これが鳴る」


「帰る時も」


「これが鳴る」


妻が。


笑う。


「朝」


「この音がすると」


「また働きに行ったなって」


「分かるんだよ」


老人が。


少し照れる。


「何十年も」


「聞いてりゃな」


修は。


手押し車を見る。


音。


ただの。


軋み。


新品なら。


消せる音。


普通なら。


消した方が。


良いと思う音。


でも。


この二人には。


生活の音。


だった。


「音って」


修が呟く。


リペが。


顔を上げる。


「はい?」


「何でも」


「残せばいいって」


「わけじゃないけど」


「消せばいいって」


「わけでもないな」


「難しいです」


「だから面白いんだろ」


老夫婦が。


帰る。


ギィ……


ギィ……


その音が。


遠く。


小さくなる。


修は。


しばらく。


聞いていた。


昼。


時計台。


地下工房。


昨日。


見つけた。


アルドの。


本当の修理工房。


今日は。


町長。


ガイン。


鍛冶屋。


大工。


そして。


修とリペ。


六人。


「複数人推奨だったので」


修が説明すると。


町長が。


腕をまくった。


「町の時計台なんだから」


「町の人間が」


「手伝って当然だ」


大工も。


頷く。


「木は任せろ」


鍛冶屋。


「錆びた金具は?」


「こっち」


ガイン。


「俺は?」


修が。


考える。


「重い物」


「分かりやすい!」


リペが。


手を挙げる。


「私は?」


修が。


即答。


「余計な物に触らない」


「仕事じゃないです!」


「最重要任務」


「責任重大ですね!」


「前向きだな」


地下。


扉を開ける。


昨日より。


明るい。


ランタン。


複数。


設置。


修が。


改めて。


工房全体を。


鑑定。


【対象:アルド地下修理工房】


【損傷率:38%】


【使用可能率:21%】


【問題箇所】


【木製棚:腐食】


【工具類:錆・劣化】


【床面:一部沈下】


【換気機構:停止】


【照明機構:停止】


【中央作業機構:停止】


「まず」


「安全から」


修が言う。


「床」


「換気」


「照明」


大工が。


頷く。


「棚は後だな」


「はい」


町長が。


感心したように。


地下を見る。


「二百年も」


「こんな場所が」


「町の下にあったとはな」


リペが。


胸を張る。


「秘密基地です!」


「お前のじゃない」


「みんなのです!」


「それならまあ」


作業開始。


大工。


床。


沈下した板を。


外す。


鍛冶屋。


換気機構。


錆びた。


連結棒。


ガイン。


重い。


鉄製格子。


持ち上げる。


修。


照明機構。


魔石。


配線。


リペ。


「応援します!」


「作業して」


「何を?」


修が。


周囲を見る。


「埃」


「掃いて」


「はい!」


リペ。


箒。


持つ。


そして。


全力。


バサァァァァ!


埃。


舞う。


全員。


咳。


「げほっ!」


「リペ!」


「綺麗になります!」


「空中に移動させただけ!」


しばらく。


窓。


ない。


地下工房。


換気。


停止中。


最悪。


町長が。


目を細める。


「最初に」


「換気だったな」


修が。


咳き込みながら。


頷く。


「ですね」


鍛冶屋が。


笑う。


「身をもって分かったな」


リペが。


箒を持ったまま。


小さくなる。


「すみません」


修が。


ため息。


「次から」


「ゆっくりな」


「はい……」


一時間後。


換気機構。


修理。


錆。


落とす。


軸。


磨く。


歯車。


油。


最後。


鍛冶屋が。


レバーを。


押す。


ガコン。


ゴ……


ゴゴゴ……


天井。


古い羽根。


回り始める。


地下の。


重い空気。


ゆっくり。


流れる。


町長が。


息を吸う。


「おお」


「違うな」


修も。


感じる。


風。


弱い。


でも。


確かな。


空気の流れ。


その時。


カラン。


地下。


どこか。


小さな。


音。


修が。


顔を上げる。


「今」


全員。


止まる。


「何か鳴った?」


大工が。


耳を澄ます。


また。


カラン。


奥。


作業台。


方向。


修が。


近づく。


一つ。


小さな。


金属製の筒。


風が。


通ると。


揺れている。


風鈴。


に似ている。


【対象:工房呼吸鐘】


【損傷率:0%】


【用途:換気機構作動確認】


【製作者:アルド】


リペが。


言う。


「呼吸鐘」


修が。


頷く。


「工房に」


「ちゃんと空気が通ってるか」


「音で確認する装置か」


カラン。


もう一度。


静かな。


音。


修の鞄。


アルド修理手帳。


第二巻。


光る。


「……!」


修が。


取り出す。


ページ。


勝手に。


開く。


『二つ目の音は』


『急がなければ』


『聞こえる。』


その下。


新しい文字。


『風は』


『何かを動かすためだけに』


『吹くのではない。』


『人が』


『立ち止まった時』


『初めて聞こえる音もある。』


修が。


目を細める。


風。


第二の遺産。


風車村。


風時計。


あの時。


修たちは。


ずっと。


風の音を。


聞いていた。


風車。


草。


小さな鐘。


そして。


風時計。


「第二の音……」


時計台修復ノート。


光る。


開く。


【第二の音】


【記録解析中】


【一致する音響記録を確認】


そして。


文字。


【第二:風待ちの音】


【解読完了】


「……!」


リペが。


覗く。


「風待ち?」


修が。


頷く。


「たぶん」


「風そのものじゃない」


「風を待つ時間」


「急がないで」


「聞く音」


風車村で。


学んだ。


寄り道。


待つこと。


風は。


人間の都合で。


吹かない。


だから。


焦らず。


待つ。


その時に。


聞こえる。


音。


それが。


二つ目。


だった。


町長が。


不思議そうに聞く。


「分かったのか?」


「一つだけ」


修が笑う。


「昔聞いた音の」


「意味が」


そのまま。


作業。


続行。


照明。


地下。


古い。


魔石灯。


四つ。


うち。


三つ。


点かない。


一つずつ。


接点。


清掃。


導線。


修復。


一つ目。


パッ。


二つ目。


パッ。


三つ目。


点かない。


修が。


内部を見る。


【魔石:正常】


【導線:正常】


【接点:正常】


「何で?」


リペが。


横から。


「叩きます?」


「古い家電みたいな直し方するな」


修が。


再度。


調べる。


配線。


間違いない。


魔石。


正常。


でも。


光らない。


大工が。


言う。


「何か」


「聞こえるぞ」


「え?」


全員。


静かにする。


コツ。


……コツ。


……コツ。


壁。


中。


一定の。


小さな音。


修が。


壁へ耳を。


近づける。


コツ。


……コツ。


「歯車?」


鍛冶屋が。


頷く。


「たぶんな」


壁板。


外す。


奥。


小さな。


歯車。


引っかかっている。


原因。


細い。


木屑。


修が。


取り除く。


カチッ。


歯車。


回る。


魔石灯。


パッ。


地下工房。


一気に。


明るくなる。


リペが。


歓声。


「おおー!」


【照明機構:復旧】


【使用可能率:21% → 34%】


だが。


修は。


さっきの。


音を。


思い出していた。


コツ。


コツ。


小さな音。


故障。


異常。


機械が。


出していた。


助けを。


求めるような音。


「……最初に聞く音」


修が。


呟く。


リペが。


振り向く。


「第一ですか?」


修は。


答えない。


代わりに。


第一巻を。


取り出す。


『最初の音は』


『職人が』


『最初に聞く音だ。』


修は。


今まで。


修理したものを。


思い出す。


時計。


船。


玩具。


ランタン。


暖房炉。


橋。


オルゴール。


そして。


いつも。


最初。


何をしていた?


見る。


触る。


聞く。


鑑定。


そして。


「さて」


「どこが痛い?」


それは。


物に。


聞いている言葉。


でも。


本当に。


聞いているのは。


何だ。


ガタつく。


ギィ。


カチ。


鳴らない。


止まる。


震える。


焦げる。


漏れる。


割れる。


全部。


物が。


出している。


「最初の音……」


修が。


壁の。


小さな歯車へ。


触れる。


「壊れたものが」


「最初に出す音か?」


第一巻。


淡く。


光る。


新しい文字。


『職人は』


『金槌の音を』


『最初に聞くのではない。』


次。


『壊れたものが』


『助けを求める音を』


『最初に聞く。』


修が。


息を呑む。


リペも。


文字を。


覗く。


「助けを求める音……」


その瞬間。


時計台修復ノート。


開く。


【第一の音】


【意味解読】


【第一:傷みの音】


「傷みの音」


修が。


ゆっくり。


読み上げる。


それは。


大きな音とは。


限らない。


むしろ。


小さい。


誰も。


気にしない。


少しの軋み。


一瞬の。


引っかかり。


いつもと。


違う。


ほんの少しの。


音。


職人は。


そこから。


始める。


壊れた後ではなく。


壊れ始めた時の。


声。


それを。


聞く。


リペが。


修を見る。


「だから」


「ご主人様は」


「どこが痛いって」


「聞くんですね」


修が。


少し考え。


笑う。


「……そうかもな」


昔。


何となく。


言い始めた。


言葉。


でも。


その言葉は。


アルドの。


修理の考え方と。


同じ場所へ。


つながっていたのかもしれない。


修復ノート。


更新。


【七つの音】


【第一:傷みの音】


【第二:風待ちの音】


【第三:帰港の鐘】


【第四:終刻の鐘】


【第五:継承の音】


【第六:未取得】


【第七:未取得】


五つ。


並んだ。


リペが。


指を折る。


「一」


「二」


「三」


「四」


「五」


そして。


嬉しそうに。


「あと二つです!」


「今度は合ってる」


「成長しました!」


「そこ?」


地下工房。


作業。


夕方まで。


続いた。


床。


安全。


換気。


復旧。


照明。


復旧。


工具棚。


半分。


使える状態。


【アルド地下修理工房】


【損傷率:38% → 24%】


【使用可能率:21% → 51%】


「半分超えた」


修が言う。


町長が。


腰を叩く。


「今日はここまでだ」


大工も。


頷く。


「続きは明日だな」


鍛冶屋。


「古い工具」


「何本か」


「俺の工房で錆を落としてくる」


修が。


頭を下げる。


「お願いします」


ガインが。


汗を拭く。


「しかし」


「アルドって人は」


「すごい職人だったんだな」


修が。


地下工房を見る。


「はい」


そして。


少し考える。


「でも」


「たぶん」


「一人でやったんじゃない」


町長が。


修を見る。


「どうして分かる?」


修は。


床。


換気。


照明。


棚。


を見る。


「一人で」


「全部やろうとすると」


「無理がある構造なんです」


「大工が必要で」


「鍛冶屋が必要で」


「重い物を動かす人が必要で」


「使う人も必要」


リペが。


手を挙げる。


「掃除する人も!」


全員。


一瞬。


黙る。


「ゆっくりならな」


修が言う。


「はい……」


帰り。


時計台。


外。


夕方。


風。


少し。


冷たい。


町長たち。


解散。


修とリペ。


二人。


残る。


時計台を。


見上げる。


修復率。


六十四パーセント。


でも。


今日。


二つの音。


意味が。


分かった。


修は。


思う。


時計台の修理。


歯車を。


直すだけではない。


アルドが。


残した。


修理という考え方。


その一つ一つを。


理解することも。


必要なのだろう。


リペが。


言う。


「ご主人様」


「ん?」


「第一の音」


「私にも」


「分かるようになりました」


「本当?」


「はい!」


リペが。


自分の腕を。


動かす。


キィ……


小さな。


軋み。


「ここが痛いです!」


修が。


固まる。


「……」


「どうしました?」


「ずっと鳴ってた?」


「今日からです!」


修が。


額を押さえる。


「それを先に言って!」


「傷みの音です!」


「実践しなくていい!」


「第一の音!」


「教材になるな!」


工房へ。


戻る。


修は。


すぐ。


リペの腕を。


外す。


確認。


軸。


わずかに。


摩耗。


【損傷率:5%】


「軽いうちで良かった」


リペが。


作業台へ座る。


「どこが痛い?」


修が。


いつものように。


聞く。


リペが。


笑う。


「ここです!」


右腕。


指差す。


修も。


笑った。


「分かってる」


カチ。


軸を。


調整。


油。


一滴。


組み直す。


キィ……


音。


消える。


リペが。


腕を。


ぶんぶん。


回す。


「治りました!」


「よし」


「修理代は?」


「助手から取らないよ」


リペが。


考える。


そして。


木製しゃもじを。


差し出す。


「では」


「これを」


「いらない」


「第六の遺産かもしれません!」


「まだ言ってる!」


その夜。


地下工房から。


持ち帰った。


完全設計図。


机。


広げる。


第一。


第二。


第三。


第四。


第五。


それぞれの。


音。


今なら。


少しずつ。


意味が。


見える。


傷みに気づく。


待つ。


帰る。


終わらせる。


渡す。


修は。


五つの言葉を。


指で追った。


どれも。


修理に。


必要なもの。


そして。


残り。


二つ。


第六。


星渡りの天秤。


その横。


完全設計図に。


今まで。


なかった。


小さな文字が。


浮かんでいた。


『六つ目の音は』


『音ではない。』


修が。


眉を寄せる。


「……また分からないやつ」


リペが。


覗き込む。


「音なのに」


「音じゃない?」


「そう書いてある」


「矛盾です!」


「アルドだからな」


「なるほど!」


「納得するなよ」


さらに。


もう一文。


『星渡りの天秤は』


『重さを量らない。』


リペ。


首を傾げる。


「天秤なのに?」


「ああ」


そして。


最後。


『修理屋が』


『選べなかったものを』


『量るために作った。』


「選べなかったもの……」


修は。


地図を見る。


王国南東。


山。


巨大な橋。


第六の遺産。


星渡りの天秤。


そこでは。


今までとは。


少し違う。


修理が。


待っている。


そんな。


気がした。


だが。


その前に。


地下工房。


残り。


約半分。


地上。


修理依頼。


まだ。


三十一件。


修が。


修理札の束を見る。


そして。


笑う。


「まず」


「こっちからだな」


リペが。


元気よく。


答える。


「はい!」


旅は。


まだ。


少し先。


明日も。


異世界リペア工房は。


いつも通り。


壊れたものの。


小さな声を。


聞くところから。


始まる。

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