丁寧な心の折り方
エルリとルエリをファーレン聖教国、聖地セルファスへ送り届けた次の日、ユリス、ルノアール、フィーヤの三名は天使と悪魔のメイド、エルとデルとの戦闘訓練をする為に王都リライアの屋敷地下…訓練場へ集まっていた。
フェイナが三名に課した目標…一人でエルとデルのどちらかと対等に戦えるようになる事。
ユリスは既にSランク冒険者として他者にも実力が認められている程だった。
ルノアールとフィーヤも登録したすぐに実力を示してBランクスタートとなっており、実際の実力はSランクの力を持っている…が、極端に近接戦闘が拙く、近づかれた時の対処が未熟という事でBランク評価となっていた。
そんな三人が一対一で相手をするメイドの二人…エルとデル。
彼女達はメイドの格好をしているが《SL》の課金ガチャで出る大当たりアイテムから召喚されたNPCで、かなり当たりが絞られたガチャだった為、持っているプレイヤーもかなり限られていた。
そんな渋いガチャの大当たりで手に入る二人が弱い訳は無く…もし無理やりに冒険者ランクで強さを測るのならばSが四つほど付く強さだ。
《SL》でエルとデルはプレイヤーホーム、ギルドホームを守るNPC…防衛戦等で要になるほど強く、何の対策もしていない上級プレイヤーですら骨の折れる程の実力だ。
そして彼女らはこの世界で初めて自我を持ち、設定になかった事も自由に出来るようになって普通の人と何ら変わらないメイドとなった。
そのうちの一人、黒髪黄目、白い天使の羽を背に持ち、頭には金色の天使の輪を浮かべているエルは床に倒れ伏しているユリスの腹に真っ黒の刀を突き刺しながら言葉を浴びせるように吐き捨てる。
「この程度でフェイナ様の防御を突破する…?大きく出たものですね、ユリス様?」
エルの表情は無表情…ゴミを見るような、突き刺さる様な冷たい視線を真っ黒な刀で床に縫い付けられているユリスに向ける。
「うっ…」
ユリスはどうにか動こうとするが全く力が入らず、腹の痛み、血の抜ける感覚に意識が薄くなってくる。
「…ここまでですね」
エルもこれ以上はまずいと思い腹から真っ黒な刀を抜き、肌の色が青白くなっているユリスに訓練場の倉庫に備蓄されているポーションを雑にぶちまける。
腹に開いた穴はすぐに元に戻り、失った血も戻って顔色が健康な色まで回復するがふらふらと立ち上がったユリスを睨みつけながらエルは言う。
「こんな愛玩動物を仲間に加えようとするアエリア様のお気持ちがわかりません…愛玩動物は愛玩動物らしく、ペットの様に可愛がられていた方が宜しいのではないでしょうか?」
「っ…!」
ユリスは戦闘開始した直後、急に視界が天井を向いたと思ったら腹に真っ黒な刀を刺されていた。
それほどの実力の差があるのであれば…実戦だったら目の前に立っただけで首が落ちているという事実にユリスはエルから吐き出される言葉に反論出来ず、唇を噛みちぎらんばかりに噛みしめるしか出来なかった。
そして今まで訓練に付き合ってくれていたエルとデルは実力の半分も出さないで…遊んでくれていたのだとユリスは悟る。
その光景を見守っているルノアールとフィーヤも明らかにいつもの訓練とは違う事を感じ取っており、表情は暗くなっていく一方だった。
ユリスが両の手の短剣を構えて言う。
「もう一度…お願いします!」
エルは冷酷な雰囲気のまま言う。
「威勢は獅子、実力は愛玩動物。自身の事を獅子と勘違いしている愛玩動物を躾けるのは大変ですね。かしこまりました、ユリス様が二度と立ち直れないよう、ユリス様がご自身の事を愛玩動物と素直に認められるよう、お相手をさせて頂きます」
エルは先程立っていた開始位置に足音も立てずに戻り、ユリスに向き直る。
同じメイドのデルが無感動に言う。
「それでは、戦闘開始」
ユリスはその言葉で瞬発する。
(まずは刀の振り辛い間合いに飛び込む!!)
相手の真っ黒な刀は長物…故に取り回しが難しい相手の懐に一直線で突っ込んでいく。
だが、猛スピードで迫ってくるユリスをつまらなさそうに見つめて、エルは言葉と行動でユリスを迎える。
「だから愛玩動物なんです、ユリス様」
「がっ!?」
その言葉と同時にユリスの顔の中心にエルの靴裏が当たり…ボールの様にユリスは後方に吹き飛び、何度も床を跳ねて壁にぶつかる。
ユリスは何が起きたのわからず、遠くからこちらに近づいてくるエルを霞む目で見つめる。
「相手の武器が長物という事を考慮して扱い辛い超近距離での戦闘、いい考え方でございますユリス様。ですが、それはユリス様と同じぐらいの実力の者にしか通用しない小細工なのです。小細工は何重にも、幾重にも重ねる事によって初めて格上に傷を負わせる事が出来るのです」
壁に寄り掛かり頭からの出血、鼻からの出血で顔を赤く染め上げているユリスの目の前に立ち、真っ黒の刀をまたユリスの腹に突き刺す。
「う!ぐぅううううう!!!」
「ユリス様は相手の懐に飛び込んだ次の事をお考えでしたか?相手が武器を持っていたら、武器だけで攻撃してくるという思考に囚われておりませんでしたか?間合いに入るまでの間にユリス様が認識できない程の速さで攻撃されるとは思いませんでしたか?」
エルは真っ黒な刀をユリスの腹から抜き、太ももに真っ黒な刀を突き刺す。
「ああああああ!!!いっ…うううう…!!」
ユリスの目から涙が流れる。
「泣いている暇が今のユリス様にあるのでしょうか?動かない身体を死ぬ気で動かすつもりはございましたか?何故、今ユリス様は座ってわたくしの話を泣きながら聞いていらっしゃるのですか?ユリス様は何をなされたいのでしょうか?無様にアエリア様の前で、フェイナ様の前で、皆さまの前でユリス様の死に様を、死体となったユリス様を見せつけたいのでしょうか?」
容赦ない言葉がユリスに突き刺さり、嗚咽を漏らしながら短剣を握りしめていた両手から力が抜けていく。
ユリスの心が折れそうになり、戦闘意欲がさっぱりと消え失せてしまった事を感じ取ったエルは無感動に太ももから真っ黒な刀を抜き、刃に付いた血を振り落として鞘に納める。
虫を見るような、蔑む様な目を向けながらユリスの首を掴み上げて目を合わせさせる。
縋る様な、許しを乞うような表情をしているユリスにエルは言う。
「わたくしやデルがこのお屋敷に召喚される前、ユリス様はルノアール様にこう仰っていたと伺っております。『あんたが魔族に操られない程強ければ、こんな事にならなかったんじゃないの』と。ならユリス様はいかがでしょうか?ルノアール様にそのようなお言葉を言える程、ユリス様は強いのでしょうか?」
「っ!」
一年前、ユリスがルノアールに吐き捨てた言葉を思い出す。
思い出して目から流れる涙が止まらなくなる。
「ユリス様こそ、悲劇のヒロインになっていらっしゃったのではないでしょうか?」
ユリスの身体がビクリと震える。
「もし、ユリス様がルノアール様と同じ立場だったらどうでしょうか?今度はユリス様がルノアール様の様に皆から問い詰められるのです。どうでしょう?お考えになられましたか?辛いですか?悲しいですか?死にたくなってしまいましたか?実際、ルノアール様とフィーヤ様は一度死なれているそうですね?ユリス様もルノアール様とフィーヤ様の様に一度死んでみたら何か変わるのではないでしょうか?」
ユリスはエルの言葉を聞き、掠れた視界で訓練場の隅に顔を青くして泣きそうな顔になっているルノアールとフィーヤを見る。
ユリスは自分の心がバキバキと音を立ててひび割れる感覚を感じながら、
「ユリス様に酷い事を言われたのにも関わらず、ご自分の事の様に心配してくださる方がいる。とても素晴らしい事です。ですが…ユリス様はたった今、ただの愛玩動物に成り下がりました。そんなユリス様は皆様の仲間でいる資格はございません…おやすみなさい、ユリス様」
エルの言葉と共に感じる投げ飛ばされた浮遊感、自分の身体が床に落ちた瞬間、心が折れた音が聞こえたユリスは意識を手放した…。
■
「デル、ユリス様の治療ありがとうございます」
エルはデルの足元に投げ飛ばしたユリスを治療してくれた事に感謝をデルに伝え、床に倒れているユリスを壁際まで運び、その場に座って膝にユリスの頭を乗せる。
ルノアールとフィーヤは先程のやり取りをしっかり聞いており、複雑な表情でエルとユリスを交互に見ながら心配している。
そんなルノアールにデルが言う。
「問題ありません。では、わたくし達も始めます。ルノアール様、準備の程宜しくお願い致します」
軽く頭を下げた白髪黄目、黒い悪魔の羽を背に持ち、頭には悪魔の象徴とも言える真っ黒の角が二本、腰の少し下あたりから槍の様な見た目で鞭の様にしなる黒い悪魔の尻尾を持つデルは真っ白の刀を腰に差し、開始位置まで歩いていく。
「わかりました、よろしくお願いします」
ルノアールもユリスの事を心配しながらも応答し、腰から指揮棒の様な杖を手に持ち、開始位置へ移動する。
鞘から刀を抜かずにルノアールが魔法を発動する為の準備を待つが、一向に準備をする気配がないルノアールにデルは問いかける。
「ルノアール様?いつもの様に魔法の発動待機はされないのでしょうか?」
ルノアールは杖をデルに向けて言う。
「実戦で魔法を準備させてくれる相手なんていません。だから、大丈夫です」
デルはつまらなさそうに呟く。
「左様でございますか」
デルの雰囲気が先程のエルと同じ冷酷なものに変わっていくのをルノアールは感じて背中に冷や汗をかきながら喉を鳴らす。
そしてユリスを介抱しながらエルが無感動に言う。
「それでは、戦闘開始」
その言葉でルノアールは自身の中で最高速度で発動できてその中で最大威力の魔法を放つ。
「氷結牢獄!!」
魔法の名が叫ばれ、10m程離れたデルの周りに氷の密閉空間を作り出し閉じ込めたルノアール。
そして油断なく次の魔法を詠唱しようとした瞬間、ルノアールが杖を持っている腕…右腕が杖を持ったまま宙を舞い、ルノアールの目に映る。
「…えっ?」
ルノアールは何が起きたのかわからず目を見開き、状況を確認するが…ユリスと同じように急に視界が天井に切り替わった。
「…は?」
ようやく自分の状況が理解できてしまったルノアールは右腕の切断、腹に刺さっている真っ白の刀の痛みに襲われる。
「あ、あああああぁぁぁ!!!ぐうううううう!!!!!」
今まで出した事のないような苦痛に歪んだ声が自分の喉から出ていると気づかず、結果に絶望する。
戦闘開始と言われてから3秒…それだけでルノアールは二回死んだ事を理解してしまった。
もし、右腕を切り飛ばした攻撃が首なら、もし腹を刺した攻撃が首なら…。
痛みで霞む意識と視界でデルを見る。
そこには悪魔に相応しい、痛みに耐えて歪んているルノアールの顔を見て嬉しそうに笑っているデルの表情が見えた。
「ルノアール様は随分と可愛らしい声をあげられるのですね?もう片方の腕も斬り落としたらもっと声をあげてくださいますか?ルノアール様」
本能的に恐れてしまう、後ろに下がりたくなるが腹に刺さっている真っ白な刀が後ろに下がる事を許してくれない。
そしてデルは言う。
「ルノアール様は一度死なれているそうですね?どうでしょうか?このままもう一度死んでみますか?アエリア様がご自身の命すら賭け皿に乗せてようやく救ってくださった大切なルノアール様の命、ここでもう一度無意味に無くされてみますか?それともこの程度の実力で、皆様と戦われて、皆様の前で無様に死なれますか?」
腹から真っ白な刀を抜き、残っている左腕に突き刺す。
「あああ!!ううううううう…い、い…ぐうう…」
デルはルノアールがあげる声を聞きながら笑顔で言う。
「やっぱりルノアール様はいい声をあげてくださいますね?どうでしょうか?他者にご自身の命が握られている感覚は。ルノアール様はもう既に体験されておりましたよね?克服されましたか?どうでしょうか?…その震えるような、許しを乞うような目をされているという事はまだ克服されていらっしゃらないのですか?」
腕から真っ白な刀を抜き、刃に付いた血を振って落とし、鞘に納めてエルと同じように首を掴み上げてルノアールの目を覗くように笑顔で顔を近づける。
「ひっ…」
ルノアールは目の前に悪魔の笑顔が近づいてきた事に反射的に身体を震わせ、短い悲鳴を漏らす。
「随分可愛らしい悲鳴をあげられるのですね?そうやって他者に握られている命を手放してもらうよう懇願されるのでしょうか?アエリア様であれば先程の先制攻撃でわたくしの首を一瞬で跳ね飛ばす事も可能でしょう。教科書通りの魔法なんてわたくしからしたらお遊びみたいなものなのです。アエリア様の様にオリジナルの魔法を扱う事すらしないのでしょうか?…そんなアエリア様に命を救われたルノアール様はこの程度で怯える程、弱々しい方だったのですね?…その目、戦う事を諦めてしまいましたね?…ではルノアール様もおやすみなさい」
ルノアールはデルの口から発せられる言葉のナイフで心をズタズタに引き裂かれ、一瞬の浮遊感の後に来る床に叩きつけられたような衝撃と共に心が折れ、意識を手放した…。
■
フィーヤはユリスに続き、ルノアールも同じように心を折られ、意識を刈り取られ、自分の足元に転がってきた親友を見て泣いてしまう。
ルノアールにポーションをかけ、無くなった腕と刺された傷を癒し、無傷になったルノアールを抱きしめてエルとデルを睨み怒声をあげた。
「ここまでやらなくてもいいじゃない!!!なんで酷い事を言って心を折る様な事をするのよ!!!」
エルとデルは顔を見合わせて項垂れながら溜め息を吐き、エルがデルに手を差し向ける。
デルはフィーヤの元へ歩き出し、首を掴んで持ち上げてルノアールと同じように目を覗きこみながら言う。
「フィーヤ様はまだそんな甘い事を仰っているのですね?サクラバ・シンジとフェイナ様のお話を聞かれていたのではないのですか?既にそんな甘い事が許させる事態ではないのですよ、フィーヤ様。今回の相手は魔王、それも200年もの間、特殊な力を授かった勇者を殺し、その力を蓄え続けている相手なのですよ?もし、魔王にフィーヤ様や皆様の心の隙に入り込む様な能力を持っていたらどうでしょうか?もし、時間を止めて一瞬でわたくし達の首を落とす事が出来る力を持っていたらどうされるのでしょうか?相手は未知、どの様な事をこちらにしてくるのか一切わからない相手なのですよ?各国を偵察して、暗殺者が仕向けられても大丈夫なように訓練をするお遊びの時間はとっくのとうに終わっているのですよ?お分かり頂けましたか?フィーヤ様」
デルから告げられる事の深刻さにフィーヤはうめき声をあげながらも震える。
自分の考えが甘かった…そう思ったフィーヤの耳にデルの言葉が聞こえる。
「フィーヤ様は今、ご自身の考えが甘かったと思われましたか?その通りでございます。甘いのです。既にその段階は過ぎ去っているのですよ。フィーヤ様は覚悟が出来ているとフェイナ様に仰ったそうですね?なのに甘い考えをずっと改めず、仲間を、親友をボロボロにしたわたくし達に『ここまでやらなくてもいいじゃない、なんで酷い事を言って心を折る様な事をするのよ』と、仰いましたね?その時点でフィーヤ様はここにいていい存在ではありません。フィーヤ様の甘さが仲間が、親友が死ぬ要因を作っている事すらお分かり頂けませんか?もし、ご理解頂けないのでしたらそのイヤリングを速やかにフェイナ様へ返却し、このお屋敷を出ていかれたほうが宜しいかと思いますが、いかかでしょうか?フィーヤ様」
フィーヤは自分の心が折れた音を聞いた。
「…フィーヤ様はユリス様、ルノアール様の様に戦ってすらいないのに、痛みも恐怖も味わってすらいないのに、心が折れてしまったようですね?その様な覚悟の弱いフィーヤ様にわたくし達は失望してしまいました。ユリス様とルノアール様の介抱をお願い致しますね?フィーヤ様。それぐらいなら今のフィーヤ様にも出来るかと思いますので、よろしくお願い致します」
デルは首から手を離し、フィーヤを床に落としてエルの元に行き、エルの膝で寝ているユリスを横抱きで抱えてフィーヤの元に寝かせる。
そしてエルに言う。
「エル、フェイナ様にご報告しに行きましょう。傷の舐め合いは同じ者同士でするのが効率的です」
エルは立ち上がり、服の皺を直しながらデルと共に歩き始める。
「そうですね、ユリス様もルノアール様もフィーヤ様もここで過ごされても構いませんし、お部屋に戻って頂いても構いません。今後はわたくし達の仲間としてではなく、お客様として扱わせて頂きますのでよろしくお願い致します。それでは失礼致します」
エルの言葉を涙を流しながら聞いていたフィーヤは二人の姿が訓練場から消えた途端、ユリスとルノアールの身体を抱きしめて大声で泣き続けた…。
■
「…という具合に初日の訓練は終了致しました」
エルが無表情で告げた内容に頭を両手で掴み俯くフェイナ。
そして長い溜め息を吐き、身体を椅子の背に預けてエルとデルに労いの言葉をかける。
「エル、デル、少しやり過ぎだけどありがとう、嫌われ役を押し付けちゃってごめんね、お疲れ様」
フェイナの言葉を聞いたエルとデルは頭を下げてフェイナにデルが言葉を発する。
「やりすぎなのはわたくし達も重々承知しております。ですが、わたくし達もユリス様、ルノアール様、フィーヤ様に死んで欲しくは無いのです。アエリア様の大切な仲間です。わたくし達が嫌われてユリス様、ルノアール様、フィーヤ様が死ななくなるのであれば、わたくし達が嫌われるのは些末な事なのです。立ち直れず、戦う事を諦めればそれでも死なない、強くなれば戦っても死ぬ確率が低くなる、どちらに転んでもユリス様、ルノアール様、フィーヤ様の為になると思います。…ですが、もしフェイナ様のお時間が許すのであれば…様子を見て頂く事は可能でございますか?」
エルとデルは顔をあげ、申し訳なさそうな表情でフェイナにお願いする。
フェイナはそんな二人の表情に苦笑しつつ了承する。
「ん、別に時間は聖女が起きるまでたっぷりあるから大丈夫だよ~。…そんな表情するぐらいなら最初からちゃんと理由を伝えてからすればいーのに」
エルは申し訳なさそうな表情のまま言う。
「そうしてしまうと何処かで緩みが生じて訓練の効率が下がってしまいます。だからこれが最善だとわたくし達は思いました」
フェイナはこの世界で召喚したNPCがここまで人間臭く、自我を持つものなのかと嬉しくなりながら笑顔で言う。
「おっけーおっけー!エルとデルの気持ちはわかったからエルはユリス達のご飯をちょっと豪華にしておいてよー?デルはユリス達がゆっくり休めるよう、しっかりお部屋の掃除とか身の回りを整えておくよーに!」
いつもの無表情に戻ったエルとデルは軽く頭を下げて言う。
「かしこまりました」
フェイナは二人の後ろ姿を見ながらどうやってフォローしようか考えていく…。




