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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第五章 エルフの英傑と黒の勇者
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二人目の『勇者』

『てめぇ!!俺は勇者だぞ!?何舐めた口聞いてんだよてめぇ!!!魔法ばっかで役に立たねぇもやしが!!!』



 野次馬から悲鳴が聞こえ、千棘は何かあったと思いながら近くの建物に跳躍して野次馬の上から状況を見た。



(あいつ何やってんだ!?やりすぎだろ!?)



 千棘がそう思うほど野次馬に囲まれた当事者達は酷い有様だったのだ。



 まず当事者は四人、一人は赤い制服…騎士学校の制服を着ていて金髪の男、三人は皆同じ白い制服…魔法学校の制服を着ており、緑、赤の髪を地面に垂らし、鼻からは血が流れだして元の顔の面影がわからないぐらい腫れている。



 更に髪を地面に垂らしている二人の身体を見れば腕が折れているのか不自然な曲がり方をしていて痙攣しており、明らかにヤバい状況だった。



 残りの一人は女子生徒らしく、二人に庇われていたのか傷一つないが目の前の光景に涙を流しながら黒髪を地面に垂らしていた。



 赤い制服を着た金髪の男は痙攣している赤髪の男の頭を踏みつけながら力を込めているように見え、



「雑魚のくせに俺に指図してんじゃねぇ!!てめぇらがその女を渡してればこんないてぇ目にあわねーですんだのによぉ!?」



 赤い制服の男が足を振りかぶり顔を蹴り飛ばそうとした瞬間、千棘は瞬発した。



(喧嘩の範疇を超えやがった!!)



 足が赤髪の男の顔に当たる前に足を受け止めてしっかりと持ち、軸足になっていた膝関節を思いっきり前から蹴りつけ逆に骨を折る。



「ぐっ!?あああああ!!なんだてめぇえ!!」



 軸足を折られて前のめりに倒れそうになっていた男は受け止めた足を持たれている為に頭が下になったまま喚き散らす。



「君、少しやりすぎじゃない?」


「おごっ!?」



 千棘は一言呟いてそのままがら空きになった腹に一発の拳を振り抜いて吹き飛ばし、野次馬は吹き飛ばした男を避ける為に一目散に散らばっていき、誰も受け止めてくれることなく近くにあったゴミ捨て場へ突っ込んでいった。



「君達大丈夫?意識があるならこれあげるから飲みな?」



 そう伝えてボロボロだった男性徒二人に赤いポーションを渡し、自分で飲んでもらう。



 すると身体が一瞬光った後、酷く折られていた腕や顔も元通りになり精悍な顔つきが拝めた。



「あ、ありがとう…だけど、あいつは勇者と言われているやつだ…今のだけじゃ…危ない!!」


「ああ、大丈夫だよ」


「「っ!?」」



 男子生徒が千棘の後ろを見ながら警告してくれるが千棘はまだ攻めてくることを察知していた為、後ろを振り向かずに首をへし折ろうとした一撃を首を傾げて避ける。



「不意打ちするなら殺気を消さないとバレバレだよ」



 千棘の顔の右側に勇者と呼ばれた男の手がスッと伸びてきているのを確認し、左手で勇者が突きこんだ右腕の手首をがっちりと握りしめて…勇者の肘を逆方向に右の掌底で折る。



「があああああ!?!?」


「「ひっ!?」」


「ぐぞがっ!!!」


「はい、残念」


「ぶぐっ!?」



 汚い悲鳴をあげながらもまだ折られていない足で膝蹴りを放ってくるが握りしめた腕を振り抜いて石畳に叩きつけ、受け身を取る事すら許されず大量の息を吐かされる勇者。



「ぐあはっ!!!!く、くそが!!絶対に殺してやる!!」



 そう勇者が叫ぶと傷を負った部分が淡く発光して傷が癒えていく。



(ふーん…魔法じゃないな…勇者だからそういう自動回復みたいチート能力的なものか…?)



「ハッハッハ!!ビビったか!?俺は勇者だからこんな傷を負ってもすぐ直っちまうんだよ雑魚が!!いくら不意打ちが上手くたって真正面からじゃ俺にはかなわねぇぞこのクソガキが!!」



(いや二回目はお前が不意打ちしてきただろ…)



「ねぇ魔法学校の君達?このクズは本当に勇者なの?」


「あ、ああ…こいつは勇者だ…だがルノアールを無理やり連れていこうとしたんだ…」


「ルノアールってそこで泣いている子かな?」


「そうだよ…」



 ルノアールと言われた子はいつの間にか顔をあげており、じっと涙目で千棘の事を見つめていた。



「ふーん…なるほどねぇ…」


「てめぇこのクソガキが!!」



 ずっと無視されていた勇者は不意打ちで何度も拳を振ってくるが全て躱しながら会話を続けていく。



「君達はこの辺で人目につかない場所ってわかるかな?」


「え、え…いや攻撃されて…あ、えっと…」


「流石にそう簡単に人目がつかない所はないかぁ…どうしようかなー」


「てってめぇ!!さっきから何無視してやがんだ!!殺すぞ!!」



 そう吐き捨てながら先程よりもスピードを上げて殴りかかってくるが千棘にはスローモーションにしか見えず、特に意に介さず避けていく。



(んー…人目がある所でこれ以上やるのは……仕方ないか)



「おい、さっきから鬱陶しい雑魚勇者。本気で相手してやるから僕についてこい。もしついてこなかったらこの街にガキに負ける雑魚勇者って噂広めてやるよ」


「っ!…上等じゃねぇか…ぜってぇ殺す…」



 そう言うと勇者は殴るのを止めて空間から剣を出して腰に吊るし始める。



(ふぅん…アイテムボックスね…今のも魔法じゃなかった…やっぱ勇者としてのチートか…)



「じゃぁ君達はもう帰っていいからね?」


「ちょ!…っと待ってくれ!名前を教えてくれ!!」


「んー…血染めの天使、とだけ言っておくよ」



 そう魔法学校の生徒三人に言葉を残して三階建ての建物の屋根に跳躍すると、流石の勇者も三階建ての建物は飛べなかったのか喚き散らす。



「てめぇ!!逃げる気じゃねぇだろうなぁ!!逃げたらこいつらどうなるかわかってんだろぉ!?ああ!?」



(こいつ…外道か)



 千棘の勇者を見る目が最初はただのヤンチャなガキを見るような目だったのが、犯罪者を見るような目になっている事を気付かずに建物から降りてしまう。



「「「ひっ…」」」



 すると魔法学校の生徒たちは千棘の顔を見て小さい悲鳴を上げて震え始め、尻餅をつきながらずるずると後ろに下がっていく。



 だが勇者はそんな千棘の威圧感などわからないといった表情で睨みつけていたので、



「喚いてんなよガキ…自分が出来ねぇ事されて周りを脅しの道具に使ってんなら…二度と立ち直れない程の傷を与えてやるよ…覚悟しろ…」


「は、はぁ!?何マジになってんだよこのクソガキ!!てめえが先に手ぇだしっ…」



 喚く勇者の顎を掠めるように拳を振り抜き、頭を揺らして意識を飛ばすと前のめりに倒れてくるのを利用して肩に抱き上げる。



 ようやく静かになった勇者を肩に担ぎながらにっこり笑って、



「君達怖がらせてごめんね?もし衛兵が来たら学生同士のいざこざがあったって誤魔化しといてくれるかな?」


「「ひ…わ、わかりました…」」


「えーっと…ルノアールちゃんだっけ?君もそれでいいかな?」


「…その勇者を…どうするの…?」



 ルノアールは千棘が肩に担いでいる勇者がこれからどうなるのかが気になったようだ。



「んー…お仕置きかな?この勇者、この街で随分好きに暴れてるらしいし、それに頼まれちゃったから仕方ないんだよね」


「だ…誰に…?」


「名前が合ってるかわからないけど魔法学校のミラー先生?かな?」


「っ!?み、ミラー先生…」



 その言葉はとても小さくて千棘の耳に入る事が無く、勇者を抱えたまま屋根に跳躍してティクスの外へ向かっていく…。



「あ、あの人はミラー先生の知り合いなの…?」



 ルノアールはすぐに立ち上がり自分の担任の先生の元へ走っていった…。





 ■





 今、千棘達はティクスの外壁を乗り越えた先にある森の深い場所にいた。



 ここはAランクの魔獣が出る為、滅多な事が無い限り人が来ない場所で千棘は都合がいいという事でここに勇者を運んできた。



 勇者はまだ気を失っており、肩から下ろされて地面に寝かされているが一向に起きる気配がない…ので、千棘はインベントリから水を取り出して顔に零す。



「っ!?ぐはっ!ゲホッゲホッ…っ!?てめぇ!!何しやがる!!」



 水をかけた途端、威勢よく起き上がった勇者を見つつインベントリから真っ黒の刃で持ち手部分に赤いバラの装飾がされた片手剣を抜き放つ。




「ん?何をするって…殺し合いでしょ?さっきそう言ってたよね?街中でやると止められちゃうからここまで連れてきてあげたんだけど…なんかまずかった?」


「は、はぁ!?てめぇ、ガキの喧嘩でここまでやんのかよ!?」



 流石にこの状況の異常性に気付き始めた勇者は少し声が震えだす。



「ガキの喧嘩?犯罪染みた行動をしてガキの喧嘩?…ふざけるなよ…?相手が死にそうになる程の怪我をさせてガキの喧嘩か…?僕が助けなかったらあの二人は二度と息をしなかったかもしれないんだぞ…?お前が折った腕も二度と使い物にならなかったかもしれないんだぞ…?」


「はぁ!?お前には関係ない事だろうが!!」


「いや、お前は僕に向かって殺すって言ってくれたよね…?だから僕はそれを受けた。殺せるなら殺せばいい。言っておくけど君…勇者の肩書に隠れているだけで既に犯罪歴付いてるから僕が君を殺してもこっちは罪にならないんだよね。震えてないで早くその立派な剣を抜きなよ、勇者君?」


「は、はぁ!?俺に犯罪歴なんてつくわけねーだろうがぁ!!俺は勇者なんだぞ!?魔王は俺しか倒せねぇんだぞ!?」



 剣も抜かずにぎゃあぎゃあ喚いている勇者にだんだんと苛立ち始めた千棘は、



「ごちゃごちゃうるさい、早くその剣を抜け。抜かないなら腕を斬り落とす」



 声のトーンを落とし、抜身の黒い薔薇の剣を右手に持ちながらゆっくりと勇者へ近づいていく。



「くっ…くそ!!」



 流石に剣を抜かなくちゃ危ないと思った勇者は震える手で剣を抜くとその刀身は金色の片手剣で千棘には物凄い見覚えのあるものだった。



(おいおい…まさかあれ…ウルカリバーか…!?)



 勇者の剣はもろに『武具大会』で千棘が使った金色の片手剣、勝手に街の人達が名前を付けた『神剣ウルカリバー』と見た目が同じだった…。



 自分の恥ずかしい名前の剣をこれ見よがしに見せつけながら勇者は、



「マジでやるならこっちも容赦しねぇからな!?こっちには『神剣ウルカリバー』があるんだ!!てめぇのキタねぇ剣なんて粉々にしてやる!!」



(やっぱりウルカリバーなんだなあれ…てかあれ誰が作ったんだよ…)



 千棘が心の中で頭を抱えていると勇者がやっと突っ込んできた。



 勇者と言われるだけあってかなりの速度と威力の剣を振っており、1秒間に80回ほどの斬撃を生み出していた。



 千棘はその一つ一つを丁寧に受け流していき、攻撃をせずに勇者の事を鑑定する。



(名前はウィアマト…犯罪歴の所に勇者って見えるけど…傷害、殺人、脅迫、強姦、窃盗その他諸々…こいつマジでいかれてる…)



 ウィアマトの全霊の攻撃を簡単にいなしながら質問していく。



「なぁ、ウィアマト…今までお前がやった事覚えているか?」


「てっ!てめぇ!何で俺の名前を知ってやがる!!」


「そりゃお前は一応勇者なんだろ?名前ぐらいは知ってるよ。んで?質問に答えろよ?」


「ハッ!!そんなの覚えちゃいねぇ!俺がやる事は全部正義だからな!!」


「生かす価値ないな…」



 そうポツリ言葉をこぼして初めて攻撃を一回する…それは片手で放たれた下から上に向かう斬り上げ。



 その斬り上げはウィアマトがウルカリバーを持っている方の手を肩からしっかり斬り飛ばし、ウィアマトの後方に剣を持った片腕がぼとりと落ちる。



「はぁ…?っ!?ぎゃあああああああ!!俺の!俺の腕がああああ!!」



 ウィアマトは自分の腕が斬られた事に一瞬気付いておらず、自分の腕から勢いよく噴き出す血を見て初めて痛みを理解して喚く。



「ん?どうしたの?剣拾いに行かないの?」



 千棘は喚いてるのも構わず早く落とした剣を取りにいかないのか気になり質問をする。



「うううううう!!!俺の腕が俺の…勇者の俺の腕が腕が腕がぁぁ!!」


「はぁ…取りに行けないなら、行かせてあげるから…ほら行ってきなよ…」


「うぐぅ!!ああああ!!!」



 千棘の質問に答えず、自分の腕が無くなった事ばかり気にしていたウィアマトの腹を蹴りつけて吹き飛ばし、自分の腕の所までウィアマトは地面を滑っていく。



 改めて自分の腕を見たウィアマトは本当に自分の腕が斬り落とされている事実に股を濡らし始める。



「ひ、ひぃ…た、助けてくれ…」


「ん?今までそう言った人を助けたのかな?君、人殺してるでしょ?」



 そう告げた途端、一気に顔色が悪くなったウィアマトは口を閉ざす。



「あれ?図星かな?まぁいいんだけどさ…んで、漏らしてるけどここはトイレでもないし、殺し合いの場なんだよね…やる気あるならさっさとさっきみたいに折れた腕や足を治した力使って治しなよ。待っててあげるからさ」


「…」



 ウィアマトは顔色を悪くしたまま口を閉ざして何も言おうとしない…そんなウィアマトを見て千棘は、



「ああ、もしかして喋り辛いのかな?もう片方の腕もない方が喋りやすい?」



 そうウィアマトに問いかけながら近づいていき、残っている腕を斬り飛ばす。



「ぐああああああ!!!!だ、だれかぁぁ!!たすけてくれぇぇえ!!」


「やっと喋ったね?ほら、自分で治せないなら腕治してあげるからもっかい剣を持ちなよ?」



 千棘はインベントリからポーションを取り出して喚いているウィアマトの口にぶち込んで強制的に腕を元通りにさせる。



 元通りになった腕で剣を持つかと思ったら四つん這いになりながらこの場を去ろうとするウィアマト。



「往生際が悪いよ?ウィアマト君。君には逃げる場所も、助けてくれる人もいないんだよ」




 今は丁度太陽が真上に上がったばかりの昼、ウィアマトの声は夜が更け朝になるまで森に響いた…。





 ■





 千棘は勇者の存在が気になりウィアマトの目と耳を塞いでノエルに通信をする…。



『ノエル、チヅルだけど今時間大丈夫?』


『チヅルさん、大丈夫ですがどうしました?』


『この世界の勇者ってどうやって選ばれてるの?』


『…?…そうですね…基本的には魔王が現れるのに呼応して、この世界の何処かにいる潜在的な能力を秘めた人が現れるのです。…まぁ魔法が使えないのに魔法が使えるみたいな感じですね…それを王がその者を勇者と認めれば晴れて勇者となります』



(なるほどね…アイテムボックスの魔法が使えたのもその潜在能力が覚醒したからか…だから魔法っぽくなかったんだな…腕を斬り落としてもすぐに回復しなかったのもハイヒールとかをかけれるぐらいだったか…)



『ふーん…なんだか曖昧なんだね…神に選ばれたとかそういうのじゃなくて、たまたま強い人が王に認められたら勇者になっちゃうんだ…』


『ええ、なので勇者は今チヅルさんがいるティクスの二人以外に、別の国の勇者がいたりしますね…いわば魔王を討伐する国の代表者を王が選び、その代表者が勇者となる…そういうものです、勇者とは』


『そっかー…ちなみにその勇者が、勇者の名前と権限を使って殺人だったり盗み、人を脅したり傷つけた場合って何も罰はないの?』


『過去に一度だけそういう者がいて、かなり荒れた事があります…昔は確かにその者しか魔王を討伐出来ないとされていたので何も罰はなかったのですが…今はそういう過去の失敗を生かし、例え勇者でも罰は下ります。勇者は人々の希望、もしその者がそういう事を行っているのであれば死罪は簡単に決まってしまいますね』


『なるほどねぇ…僕からしたらその勇者制度って言うのに穴がありすぎると思うんだよね…ていうか、そういう勇者が出てこないように勇者に任命する時に言ったりしないのかな?』


『伝えたとしても、そういう事を起こす人の頭には残っていないと思いますよ』


『ちゃんと説明の責任は果たしているって事ね…』


『…それにしてもどうして今そんな事を?もしかしてティクスの勇者がそうだったのですか!?』


『う、うん…二人いるうちの一人が…そのー犯罪歴てんこ盛りで、今僕の椅子になってるんだよね…』


『は、はぁ!?な、何やっているんです!?確か、天狗になっているから上には上がいるって事を教えて、真っ当な勇者にするって言ってませんでしたか!?』


『いやー…実はそうするつもりだったんだけど、魔法学校の生徒を二人程この勇者が殺しかけているのを見ちゃってね…それで邪魔した僕を殺すって息巻いていたから人目のない所で捕らえてるんだよね…』


『はぁぁぁ…チヅルさんの無計画っぷり…もし勇者と任命された者が無罪になってしまう時はどうするつもりだったんですか!?』


『その時はその時で考えてたよ…ほら、魔法でそういう事出来る人いるでしょ?』


『精霊女王ですね…ハァ…わかりました、その勇者はどうするのですか?』


『どうしたらいいと思う?もう戦えないほど心は折ったはずだけど…放置してたら流石に動いちゃうかな?』


『でしたら今からシエルをそちらに向かわせるので私から王へ直接お話します』


『わかった。じゃあ、今までこいつが迷惑かけた人達にシエルが来るまで謝らせに行くからシエルに着いたら通信して欲しいって言っといてくれるかな?』


『わかりましたわ。…後、一つ伝えないといけない事があります…』


『ん?帝国関連?』


『はい…アルマート公爵家…覚えてますか?』


『クーデターの時のだよね?』


『ええ、実はそのアルマート公爵…現当主なのですが魔族の疑いがあります…』


『魔族の疑い…ていう事は帝国は魔王復活を企んでいる…?』


『可能性があります。こちらで秘密裏に手に入れた情報ではかなり黒の可能性が…後、そのアルマート公爵家を皇帝がやけに庇うんです。憶測ではありますが海上王国アクエリアと同じ可能性…もしくはそれ以上に厄介な事になっていると思います』


『アクエリアより…皇帝もグルで魔王を復活させようとしてるって事?』


『かなり高い可能性でありますね…』


『そっか…わかった、ノエルありがとう。とりあえずこっちでも帝国を知ってそうな人がいるから聞いてみる』


『わかりました、ではシエルを向かわせますのでよろしくお願いしますね』


 ……


「さて、ウィアマト君。今まで君が迷惑をかけた人達に謝りに行こうか」



 目と耳を塞いでいた物を取り外しながらウィアマトに伝える。



「……」



 だが。息をしているものの何も反応を示さないので黒い片手剣でほんの少しの斬り傷をつける。



 すると…



「ぎゃあああああ!?!?い、いたいいたいいたい!!」


「ほら、ちゃんと聞こえてた?今から謝りに行こうか」


「はぁ!はいいい!!」



 千棘の黒い刃の片手剣は罪の薔薇剣という《SL》の剣で、本来は《SL》でプレイヤーを辻斬りする犯罪者プレイヤーへのダメージを増加させるという特殊な剣だったが、この世界では犯罪歴があればあるほど痛みを増すという効果に変わっていた。



 なのでちょっとした斬り傷でもウィアマトからすれば腕を斬り落とされたと同じ痛みを味わっていた。



 ウィアマトが逃げ出さないよういつでも斬れるからという脅しの為に罪の薔薇剣を腰に吊るしながらウィアマトを抱えて外壁を上り、ティクスまで戻ってくる千棘とウィアマト。



 そして街の人達にウィアマトを連れて謝り倒し、半分ほど終わった頃には既に夜になっていた。



 千棘は仕方ないと思いながら適当な宿に二人で泊まろうかと考えていたら千棘の後ろから懐かしい声がした。



「ちー…お前…随分やってんなぁ…」



 若干顔を引きつらせながら絵画から飛びだしてきたと思わせる程美形のエルフとその隣に、



「ミラー!…と、ルノアール…?」



 長い黒髪、黄色の瞳にメガネをかけ、白い魔法学校の制服を纏った二人目の『勇者』が一緒にいた。

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