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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第四章 双子の精霊が守りたいモノ
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大きいイカはいいイカ

 熾天使騒ぎから5日経ったアクエリア王国のとある海上、コルは赤い水着姿で海の上を座って高速移動していた…。





 ■





(ヤバい…アイシャからアルマロスは精霊族と翼人族の居場所を掴んだって聞いてたけど…儀式の方法を国民の生贄に変えたって言ってたから場所はわからないと踏んで、何も聞かずに倒したけど…ちょっと聞いてみるべきだったな…)



 熾天使騒ぎの後、千棘はアイシャにクエストを完了扱いにしてもらい、船を乗り継いで全領地に赴きエルリとルエリの捜索をしていた。



 だが何も手掛かりが掴めず、3日ほどでアエリアの転移も駆使して陸地は探索終了してしまった。



 次は空からと思った4日目、千棘はコルに姿を変え、フェニックスで出来る限り高い場所を飛びながら王国内を空から見て回っていた。



 だがイヤリングを渡したアイシャから…



『リアさん!!今、王国内で神鳥を見たって騒ぎになってます!!リアさんですか!?』


『あらぁ…ごめんなさい~、すぐ降りるから熾天使の時と同じ対応をお願いしますぅ…』


『あ…あれ?リアさん声と話し方変わってます…?』


『私はコルですよぉ?とにかく下に降りるので後はお願いしますねぇ』




 と、王国で熾天使騒ぎの次は神鳥騒ぎになりかけたのですぐに目立たない陸地に降り、近くの宿で一日過ごした次の日…コルは船でもフェニックスでもフェンリルでもなく、幻獣シーサーペントを召喚し、その背に乗って海面ギリギリで姿を隠すように泳いでもらっていた。



 何も知らない人が今のコルの状況を見たら、とてつもないスピードで赤い水着を着た女の子が海の上を座って移動しているという怪奇現象の様に見えていたはずだ。



 たまに海に住んでいる魔獣が襲ってくるが全てシーサーペントが倒してくれるのでコルは背の上から辺りを見渡すだけだった。



(んー…精霊の国ぃ…きっと隠れ住んでいたのも合わせて結界か何かで認識できない~…見えないようにされてるはずだから結界にさえ入ってしまえばぁ…んー……見えない、消える、海…船?…神隠しぃ…!!)



 コルは「見えないように何か細工されているのではないか」と思ったので当てもなく海を漂っていたがさすがに無謀過ぎた為、一度陸地へ戻り船乗りに王国で神隠し的なものがあったか情報収集をする事にした…。





 ■





「ん?神隠しか?そうだな…昔からこの海の何処かにクラーケンが住んでいるっていうのは聞いたことあるが神隠しは俺はしらねぇな…なんか調べてんのか?」


「はい~、私そういうお話好きなので色々聞いてみたいんですぅ」


「物好きな嬢ちゃんだな?そうだな…この島の領地ならあの建物のじー様が詳しいから行ってみるといい」


「ありがとうございますぅ。お話のお礼ですぅ」



 赤ずきんの格好に戻ったコルは手に持った編み籠から小さい袋に入った手作りのお菓子を手渡し、手を振ってじー様がいるという建物を目指す。



 コルと喋った船乗り風の男は「可愛い…不思議な嬢ちゃんだな…」と思いながらもらったお菓子を眺めていた。



 少し小高くなっていた場所に遠くでも見えていた建物は近づくにつれて存在感を増していき、いかにも貴族の屋敷と思わせるような家構えで敷地に入る門の前には二人の門番がいた。



(じー様って貴族でしょうかぁ…でもあの口ぶりですとだいぶフレンドリーなんですかねぇ…?)



 そう思いながらコルが近づいていくと普通であれば威圧的に「止まれ!これから先は~」という言葉を投げられるはずだったが、門番二人はコルに優しく言葉を投げる。



「どうされました?ここは領主様のお屋敷ですが…お菓子売りですか?」


「いえ~、私はこの国で起きる不思議な事を調べたくて船乗りさんにお話を伺ってここを案内されたのですぅ…もしお話が難しそうなら引き返しますのでぇ…」



 そう伝えると門番の二人は微笑み門を開けていく。



「そう言う事ですか。わかりました、領主様はそういうお話をするのが好きな方なので是非お話を聞いていってください。一応、安全の為に女性の警備に武器等の持ち込みがないか確認をしてもらいますが、問題ありませんか?」


「はい~、是非お願いしますぅ」



 二人の門番のうち女性の方がコルに「失礼します」と声をかけてコルの身体を調べていく。



 途中、胸辺りを触って女性の門番が驚愕した顔をしており、男性の門番が首を傾げていたが女性の門番が「想像以上の物をお持ちだ…!」と、迫真の顔で言うので男性は顔を赤くして「お前!それはダメだろ!!」と、女性の門番の行為を咎めているやり取りを微笑みながら見ていたら問題ないと言われたので屋敷の扉まで一人で歩いていく。



(あの門番の雰囲気からしてだいぶ砕けた感じですねぇ…まぁ高圧的な人より好感は高いからいいけですけどぉ…庭園が少し荒れてますねぇ…)



 屋敷へ向かう為、庭園を歩いていたが綺麗に手入れされているとは言い辛い状態になっている草木や花を見つめながら屋敷の扉へ辿り着き、呼び出し用の鐘を鳴らす紐を引きしばらく待つ。



 すると執事服を着た男性が扉を開けてこちらを見つめ、少し首を傾げたがすぐ笑顔になり要件を聞いてくる。



「すみません、どういった御用でしょうか?」


「はい~、この国で起こる不思議な事について調べててぇ…船乗りの方からこのお屋敷のじー様という方なら詳しいと言われて案内されたのですぅ」


「ああ、なるほど…それはこのお屋敷の主、テルカ・ディール様の事ですね。お話は出来るかと思いますが、一度確認をさせて頂きますので応接室でお待ち頂けますか?ご案内致します」


「もし難しそうなら無理は言いませんのでお願いしますぅ」



 そう伝えて執事の後ろについていき応接室へ入室する。



 応接室に入る前に屋敷の中を見渡していたが、貴族とは思えない程に煌びやかなものは置かれていなかった。



 だが屋敷の中の清掃は丁寧に行き届いており、外の庭園とのちぐはぐ差が不思議な感覚を生み出していた。



 しばらく応接室で自分で作ったお菓子をぱくついていると扉からノックが聞こえ、「どうぞぉ」と声をかけると先程の執事が木で出来た手押し車に一人の男性を乗せて入室してきた。



 後ろからメイドさんがお茶やお菓子が乗ったワゴンを運んでおり、一緒に入室してテーブルの上にお菓子やお茶を準備し、一度頭を下げてワゴンの傍で待機する。



 執事は手押し車に乗った男性をコルの傍まで連れていき、お菓子が用意された場所へ手押し車を止め、その隣で待機する。



 手押し車に乗っている男性…テルカ・ディールであろう男性は30から40代ほどで、身体つきを見る限りかなり鍛えていると思える上半身をしているが、足元はひざ掛けでよく見えなかった。



「待たせたお客人、私がこの島の領主、テルカ・ディールだ。一応、爵位は授かっているが今はただの老骨としてここにいるのでな…だから仰々しい肩書は今は必要ない。だからテルカでもディールでも好きに呼んでくれたまえ」


「私はウルと申しますぅテルカ様…テルカさん。そんないきなり怖い顔しないでください~」


「いや何…様付けで呼ばれるとどうしてもな?」


「ええ、当主様はそういうのを嫌う方なので…」


「お前も様を付けているだろう!」


「いえ、私は貴方様に仕えているのでご容赦を…」


「まったく…で、ウルよ、不思議な話を聞きたいと言っていたがどういった話が聞きたいのだ?」


「そうですねぇ…あ、その前にお近づきの印としてお屋敷の方に配ってください~毒味もしっかりして頂いて構いませんのでぇ」



 そう伝えて編み籠ごとテルカさんの隣にいる執事に渡し、執事が一度口をつけてにっこり微笑み、ワゴンの傍で待機しているメイドさんに渡す。



 そのメイドさんもお菓子を口に運んだ途端、目を思いっきり見開き、さっきまで凛とした雰囲気が霧散し、少し興奮したようにおいしい!と何度も呟いていた。



 それを見ていたテルカさんは苦笑いをしながらお菓子のお礼を言ってくれたので、メイドさんに作り方が乗っているレシピを渡したら目をキラキラさせながらお礼を言ってくれた。



 少し上機嫌になりながらまたワゴンの傍で待機するが、嬉しさが全く隠せていなかった。



「すまないな、お菓子作りに目がないのだよ」


「いえ~私が作った物があんな笑顔をさせれたなら嬉しいですよぉ」


「そうか、では私も後で頂くとしよう。…で、話を戻すがどういった話が聞きたいのだ?」


「ええ、出来れば海にまつわるお話を伺いたいですぅ。例えば魔獣が多くなったとかそういうのでも構いません~」


「そうだな………昔この付近にクラーケンがいたのだが、最近は住処を変えたのかさっぱり見なくなったな…」


「クラーケンでしょうかぁ?船乗りさんに被害とかはなかったのですかぁ?」


「確かに縄張りに入った時は酷く暴れるが、縄張りにさえ入らなければ特に攻撃も仕掛けてこないし、逆に何度か助けられたこともあったぐらいだ」


「なるほどぉ…いいクラーケンさんだったんですねぇ」


「そうだなぁ…こんな話もあったな。以前、海賊が頻繁に現れる事があってな?一時期かなり領民たちも怯えていたのだが…突然その船が消える事があったのだよ」



(この話はあたりっぽいですねぇ…)



「突然消えたのですかぁ…」


「ああ…領民達も海賊に怯えたと思ったら次は消えた事に怯えてな?しばらく漁に出る事が出来なかったのだが、私が冒険者に依頼をして調査に来てくれてな?特に問題がなかったようでそれからは船が消える事もなくなったが、それを気味悪がった海賊たちはそれ以来ここに来ることもなくなったな」


「ふむふむぅ…それってこの地図だとどこ等辺でしょうかぁ?」


「む…アイテムボックスの魔法が使えるのか…そうだな…確か、こことここ辺りで起きていたはずだ」



 テルカは執事から羽ペンを受け取りコルが出した地図に二ヶ所に印をつけるとコルはそれを見つめて地図を丸めてインベントリに戻して頭を下げる。



「教えて頂きありがとうございますぅ。お礼としては何ですがぁ…私に出来る事などありますかぁ?」


「別に礼などは構わんよ。こちらが好きで話した事だ」


「そうですかぁ?…では失礼を承知でお伺いするのですがぁ…テルカさんは脚、どうなされたんですかぁ?」



 そう尋ねるとテルカさんはかなりバツの悪い顔をし、執事さんは若干苦々しい顔をしながら何も言わずにやり取りを見守る。



「ああ、実はな…この前、熾天使様が降臨された事があっただろう?」


「ええ、神々しい方でしたねぇ…」


「ああ…その時、私は趣味の庭園の手入れをしようとしていたのだ」


「ふむふむ…」


「それでその…熾天使様の加護で痛めていた腰が治り、少しはしゃいでしまってな…高い所の作業をしようとしていたのでな?その台から落ちてしまって鋏が下敷きになり身体に刺さってしまったのだよ…」


「う…お話を聞くとかなりの大惨事ですねぇ…」


「ああ…庭園の手入れをしてたまに台から落ちたりすることもあって腰を痛めていたのだが…今までしてきた怪我より今回は酷くて脚が動かなくなってしまったのだよ…ポーションを使って命は助かったのだからそれだけで儲けものだがな?…それで手入れ前だった庭園は荒れてしまっているのだ…」


「そうなのですねぇ…わかりました。それならお力になれそうですぅ」


「む?庭園の手入れをしてくれるのか?」


「いえ、庭園の手入れも出来るのですがぁ、その脚を治させてもらいますぅ」


「な!?そんな事が出来るのか!?」


「ええ、確実に出来るとは申し上げれないですがぁ…生まれつき動かない、というわけじゃないのならなんとかなるかとぉ」



 そう伝え、インベントリから『SL』のガチャから出た外れアイテムの『神雫(しんだ)のポーション』を取り出しテーブルの上に置く。



 そのポーションは光の当て方で様々な色に変わる虹色で、ポーションの入っている瓶は明らかに高そうな造形だった。



「このポーションを飲めばその怪我は治るかと思いますぅ。ですが…瓶を開けて他の方が毒味で一口でも口をつけてしまうと効果が毒味された方に現れて効果を失ってしまいますぅ。なので私を信用して飲んで頂くしかありませんがどうでしょう~?」



 そう伝えると初めて執事の表情が崩れ、心配そうな顔になり、ワゴンの横で待機したメイドさんも心配そうに顔を歪めている。



 ここで何も言ってこない二人を見て、テルカさんの事をとても信頼していると思わせてくれる。



「そうか……………わかった、ウルを信じよう」



 そう一言呟き、ポーションを手に取るテルカさん。



 手に取ったのを目にした従者の二人は覚悟を決めたような顔をしてこの先を見届けようとしている。



 コルは少しでも不安が無くなるように笑顔でその光景を見守り、テルカさんがポーションの栓を開け、一気に飲み干す。



 飲んだ瞬間、身体の活性化がされたようでテルカさんが「むっ!?な、なんだこれは!?」と声をあげ、メイドさんが素早い動きでテルカさんに近づき、執事も傍で膝をついておろおろしていた。



 10秒ほど沈黙が続き、テルカさんが手押し車に手をついて徐に立ち上がるとテルカさんは信じられないといった顔で自分の両脚を見つめ、従者二人も二度と立つことが出来ないと思っていた為、目に涙を貯めていく。



 その光景を見てこれが本当の主従愛かと思いながらコルは一言、言葉を発する。



「ふふふっ、テルカさん、治ってよかったですねぇ」



 その後三人は抱き合って涙を流し、お礼を伝えてくれる。



 ポーションの代金を払うと言ってきたが、屋敷の中を見てかなり領民の為に還元しているのだろうと思ったコルは特に代金を受け取る事はしなかった。



 ついでに庭園の手入れを申し出たが、「私の楽しみだから奪わないでくれたまえ」と笑いながら答えてくれたので、庭園の道具を全てコルが修繕し、新品同様…それ以上の物となり、嬉しそうにしてくれたがまたお礼をと言ってきたのでしっかり辞退して領主の屋敷を後にする。



 敷地の門に戻ってそのまま海へ行こうとしたら女性の門番がニコニコしながら両手で胸を持ち上げる動作をしたのでこの人は…と思いながら同じ動作をしてあげた。



 親指をあげてコルと意思疎通できたのを嬉しそうにしていたが、門番の男性に柔らかそうなもので頭を叩かれ、気持ちのいい音を響かせながら叱られているのを苦笑いしながら見つつ、海へ向かう…。





 ■





 コルはまた赤い水着に着替えてシーサーペントの背に乗り、海面を座りながら移動してテルカさんに付けてもらった目印の場所に向かっていた。



「流石に事前情報なしだとここまで来なですよねぇ…テルカさんには感謝ですぅ…」



 テルカさんにお礼を言いつつ、シーサーペントの背を撫でつけながら海を進んでいくと突然シーサーペントが速度を緩め、止まってしまう。



「あらぁ…?どうしたんですかぁ…?」


「…」



 この辺に何かあるのかと思い周囲を見渡すが何もなく、シーサーペントも動き出さないので首を傾げていたらだんだん周囲に霧が立ち込め、流石のコルも警戒する。



「いきなり霧ですかぁ…?何が起きてるんでしょう~…」



 コルがそう思っていると突如海面が持ち上がって大量の海水をまき散らしながらクラーケンが姿を現し、その光景を見て少し気圧されながらもクラーケンを見ていると、クラーケンは背後を守るように触手を伸ばす。



「あらあらこれはぁ…」



 その行為を見てコルはこの先に精霊の国があると確信し、言葉が通じるかわからないが大声で叫ぶ。



「クラーケン!私はこの先にいるエルリとルエリに会いに来たんですぅ!!案内をしてくれないでしょうかぁ!?」



 そう叫ぶもやはり伝わらないようで伸ばした触手をうねうね動かすだけだった。



「ん~…やっぱり駄目ですかぁ…」



 クラーケンの話をテルカさんから聞かなければ問答無用で攻撃をしていたが、話を聞いた後だと縄張りさえ犯さなければ助けてくれるクラーケンにどうしようかと頭を悩ませる。



 しばらく考えているとクラーケンも一向に攻撃してこないコルに敵意がないというのがわかったのか、触手を伸ばす事を止めて巨体を少し海面に沈ませていく。



 するとシーサーペントが一声鳴き、長い首をコルに向けてからクラーケンの奥の方を見る。



「ギュアアア」


「…?どうしたんですぅ?」


「ギュアアア…」


「…?」



 シーサーペントは通っていいという事をコルに伝えるが、よくわからないコルは首を傾げるだけだったがクラーケンがその光景を見て一本の触手を後方に差し、そのまま沈んでいくのを見てようやく理解したコルはシーサーペントの背を撫でつけて進むよう指示する。



「通っていい…て事だったんですねぇ。教えてくれてありがとうシーサーペント」


「ギュアアア!」



 シーサーペントはゆっくりとクラーケンが守っていた後方に進んでいく事数十分…ずっと濃い霧が立ち込めていた視界がだんだんと薄くなっていき、ついに霧から抜けた。



「わぁ…これはぁ…何とも幻想的ですねぇ…」



 霧を抜けた先にはとても巨大な亀の様な生物が顔と平な甲羅だけを海面からだし、佇んでいる光景があった。



 そしてコルはその光景を見ながらゆっくりと巨大な亀に近づいていくと…



ちーちゃーん!!(ちーちゃーん!!)待ってたよーー!(待ってたよーー!)


「…あらぁ、あらあらあらぁ!」



 双子の精霊が同じような声、同じ言葉、同じ姿で空を飛び迎えてくれる…。

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